農園日誌Ⅱー「活きること」PART21

2019.6.12(水曜日)晴れ、最高温度26度、最低温度18度

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         初期設定(剪定誘引作業)を終えたフルーツトマト

 今年はトマトが良い。降雨量が少なく、晴れた5~6月の気候の影響。
代わりに茄子・ピーマン系・胡瓜などの成長が遅く、茄子などはようやく生きている
状態で、太らない。

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胡瓜は二回植え替えた。二回目は雨を待って植え替えたのがよかったのだろう。
ようやく個々までに成長した。

毎年、気候が変る。もう慣れっこになってしまった。これからの農業、特に露地栽培は、先ずは、気候の先読みから始まる。それに対応できただけ野菜が育つ。
今までの気候のセオリーは通用しない。但、経験を積み重ねることは大切であり、
要は、その経験値の応用力が試されているのかもしれない。


「活きること」PART21

2017.4.30.  むかし野菜の邑のオープニング

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朝から大勢のお客様がお見えになり、農園のお披露目に合わせた収穫体験は主には、子供さん達が主役となった。
 
最初は、新築記念のセレモニーも考えたが、やはりうちに似つかわしくないと思って、かって開店10周年に協賛させられた福岡のフレンチレストランである「ジョルジュマルソー」へ、一緒に、むかし野菜の邑オープンに参加しないかと問いかけた。
招待客は、既存の定期購入のお客様とマルソーのお客様達、県及び市職員・金融機関の社員・地域のお年寄りの方々とした。

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この日に合わせてマルソーのスタッフ全員が駆けつけてくれた。何しろ、高級フレンチがこの農園で楽しめるのだから・・
 
来園者は120名程度と予測して、その受入の準備作業に入った。
椅子・机は白木の手作りのものを用意する。スタッフは鍬から金槌に持ち替えた。
広報・販促活動のスタッフは、スコップから筆に持ち替えて看板からチラシ等の準備に忙しい。
農園ランチは、女性スタッフ達の仕事。今まで農園体験で培った料理の集大成となり、麦ご飯を竈で炊き、作り溜めた乳酸発酵の漬物を添え、春野菜の様々な総菜を用意する。食器も新たに買い足した。
おやつには、古代小麦や中力小麦をブレンドしたやせ馬に同じく自然栽培の大豆を焙煎し、黄な粉を作る。お茶は、裸麦を焙煎し、麦茶を用意する。
さらに、麦の味香りのする素材感豊かな皮で、春野菜を包む野菜万頭を作る。
何しろ、飲食店並の量と種類の食べ物を用意しなければならないから、大変である。
 
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ご覧の有様。ごった返し、餅搗きあり、団子汁あり、やせ馬(小麦粉を湯がき、黄な粉をまぶす)あり、その賑やかなこと賑やかなこと。
勿論この後、マルソーのフレンチ量に舌鼓を打った。


参加者は、思いの他多くて180余名に昇り、ぎゅうぎゅうのすし詰め状態となってしまった。
かねてからお付き合いのあったKBC九州朝日放送・地元OBS放送なども取材に駆けつけてくれた。
農園での収穫体験の後、農園ランチとフレンチの共演となり、来園された方は、お腹いっぱいの笑顔で帰って行かれた。準備やおもてなしにスタッフ達はやつれ顔だったが、他方では、チラリと誇りの笑顔も覗かせていた。
 
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マルソーのオーナーシェフに無茶振りをして、家庭で出来るフレンチなどの実践を即興でやってもらった。みんな興味津々ではあった。


一夜明けて、ようやく農園の日常が戻ってきた。
これからが実は大変である。
むかし野菜の邑のメンバー構成は、二つのグループに分かれる。
 
一つは、外部の協賛農業者達で、みんな、自然循環農業を行うメンバー、数人は出資者となり、共同出荷を行う。

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・自然栽培のお米と梨を生産している(彼には年長者であり、社長を引き受けてもらっている)

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・露天原木椎茸栽培(庄内産の餅米で丸餅を製造してもらっている)

・南瓜・さつまいもを主力としている、
・栗・さつまいも・里芋・かぼすを主力としている、
・南瓜を主力としている、
・山菜採りの名人も加わっている等々の農家の面々。
それぞれが、得意の分野で農産物をむかし野菜の邑の出荷場まで持ち込んでくる。
 
二つ目のグループは、インナーの農園主やスタッフ達。
佐藤自然農園は、年間百種類以上の野菜を生産するむかし野菜の邑の中核農園、すなわち私である。
男子4名の将来的に農園主として独立していくスタッフ達。
女子3名のむかし野菜のスタッフ達。
このインナーのスタッフ達は、共同生産・共同出荷・共同加工を行う。
このグループは、「結い」の相互扶助を理念として、働いた分は等しく分配を受け取れる仕組みとして完成させていかねばならない。
このグループはむかし野菜の邑の中核を担う農業後継者達である。
 
この邑では、農業の知識経験も無く、資金力も持たない若者達が、身一つで飛び込め、数年を掛けて
独立し、10年を掛けて、自立していくことをその事業の核にしている。
さらには、自然循環農業を市場に広め、多くの消費者に理解して頂かねばならない。
スーパーに常に並んでいる比較的安い農産物を食べ慣れた消費者に理解してもらうことは簡単ではない。
我々がどれだけ手間と労力をかけて、安全かつ健全な農産物及びその加工品を作ったとしても売れるとは限らない。有機野菜であろうが、自然栽培であろうが、消費者は概念で食べ続けられるものではない。
やはり野菜や農産物は、栄養価が高くて、美味しくて、品揃えがあって、食べて楽しいものでなければいけない。そして、何より、体が美味しいと言ってくれなければ高品質農産物とは言えない。
そうした努力や価値を評価して頂ける消費者を味方に付けることがもっとも重要となる。
そうしない限りは、折角復活させた自然循環農業は、そして、日本の先人達が作ってきた健全かつ高品質な農産物作りは、結局は消滅していくことになる。
健全かつ持続可能な農業生産者とその農産物を支持してくれる消費者達は一つのグループ、仲間達と考えている。このことが、むかし野菜の邑の精神であり、思想なのです。
 
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この精神や思想を一方的に若い農業者に押しつけることはできない。何しろこの労力の塊のような農業を維持し続けること、及び消費者との絶え間ないコミュニケーション活動には、不屈の精神力が求まられます。これが農園主の大きな命題であり、苦悩となるのです。
必然的に、むかし野菜の邑は、生産する農産物の品質のことを消費者市場に知ってもらうため、絶え間ない市場啓発・啓蒙活動をし続けていかねばならない大きな命題を抱えている。
 
農園主は、今までの数多くの消費者とのやりとりの中で、こう考えている。
自然循環の農法(低窒素・高ミネラル)で育てた野菜及び穀類は、それぞれの農産物固有の味香りがあるものなのです。そして、甘さだけではなく「旨み」があります。
所が、野菜であれ、穀類の加工品であれ、消費者や料理人達は、その農産物固有の味香りの無さに慣れすぎており、つい、味付けを濃くする習慣がついてしまっていることです。調味料・ドレッシング・旨み調味料などです。
その感覚や意識は、農園主も農業を始める以前はそうでした。
一つの例として、麦を草木堆肥で育て、始めて、麦ご飯として食べた時でした。

炊きあがったご飯を噛みしめたとき、今まで感じたことのない味と香りが口いっぱいに拡がっていきました。これには、我ながら驚きでした。裸麦を焙煎し、麦茶として飲んだときはさらに驚きました。
本来の麦って味香りがあったんだと・・・
これが美味しいと言うことなのだと改めて実感させられました。
消費者の感覚や価値観も様々です。この美味しさが口先だけのものなのか、体が美味しいと感じているのか、この違いは大きいように思います。
そして、美味しいとは、健全で、かつ、栄養価が高い農産物であることを決して忘れてはならないと思います。

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