農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.1.23(土)終日雨、最高温度12度、最低温度8度

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            待望の雨を待ちトンネルを剥ぐ

今日土曜日、二ヶ月ぶりの本格的な雨の一日となった。

どうやら日本の気候は雨期と乾期に分かれ始めたように思える。

夏季は梅雨が明けるとほぼ二ヶ月間雨が降らないし、秋晴れの続く9・10月も

秋雨前線が出来なければ、少雨に終わり、冬はずーっと冬晴れの気候が続く。

そのため、いつも台風の襲来を心待ちにせざるを得ない。

この天気の傾向はほぼ数年間続いており、露地栽培がかなり難しくなってきて

いる。

 野菜達の成長は太陽の光と雨により促され、適度の雨と太陽の光が無ければ

順調には育ってはくれない。出荷を控えて全ての野菜の成長が止まっていた。

今日の雨で農園もようやく野菜不足の解消へ向かいそうだ。

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厳しい冬期の寒さをトンネルの中で耐えていた白菜も「巻き」は今一ですが、

今週から出荷を始める予定です。この時季貴重な葉野菜となる。

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          去年の11月に種を蒔いたほうれん草

本来なら今頃は出荷直前の大きさに育っている筈だったが、未だこの状態。

12月に訪れた急激な寒と雨が降らなかったことにより明らかに成長不足。

この他にもキャベツ・ブロッコリー・カリフラワーも全く同じ状態です。

このように露地栽培野菜は気候の変化によって大きな影響を受け、人智

超えている。

 

施設(ハウス)栽培なれば、寒暖や水の調整は可能ですが、露地栽培の場合は

自然に委ねるしかありません。

最もその分、野菜は厳しく育ち、根をしっかりと張り大地の栄養素を取り込み

美味しく育つのですが・・・

 

露地栽培農家の場合は、自然がもたらす変化や環境に一喜一憂していても

仕方がなく、自然の営みをそのまま受け入れるしかありません。

現在、もう一つの自然からの大きな試練を人間界では受けております。

コロナウィルスの脅威です。

当農園の取引先である10数件の飲食店も閉鎖や一時休業に追い込まれて

おります。そこで働く人たちも別の意味でどう生き残って行けばよいのか

大変な労苦を体感していることでしょう。

飲食店だけではなく、皆様も、また当農園も気候変動やコロナの影響で出荷が

減り、農園の維持も難しくなってきております。

このような自然がもたらす理不尽さに、あまり後ろ向きの考えを持たないほう

が良いのかもしれません。

他の人の労苦を思いやる利他主義的な発想も持たねばなりません。

自然界からある意味で試されているのかもしれませんですね。

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厳しい寒さに凍えながら、生きようと頑張っているエンドウ豆系の野菜達です。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2021.1.8(金)曇り時折雪、最高温度1度、最低温度-3度

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                 春野菜の準備

 去年12月末種蒔きを行った。1月にポットに揚げ、2月定植し3月下旬頃

出荷する春野菜です。育苗トレイの下には電熱器が入っている。

この時季の種蒔きは管理が難しくビニールトンネルを覆っていると太陽の光が

入り難く徒長(もやし状態)し、剥ぐっておくといくら育苗ハウス内でも凍傷

にかかる。そのため朝夕の開け閉めが必要となる。

この他にも別棟で、1月中旬定植し、2月下旬頃出荷予定の幼苗を育てている。

厳冬期は冬ごもりで農作業はお休みとは決してならないのです。

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    育苗ハウス内の余った畝に緊急避難的に葉物野菜の種を蒔く

去年、気候を読み誤り(寒気がこんなに強いとは思わなかった)葉物野菜・蕪類

などの種蒔きをしていなかった。失敗でした。

そのため、急遽、露地には蕪類や葉物野菜の種を蒔いたが、2月中の出荷野菜が

欠乏する。待って頂いているお客様に野菜が行き届かないことになってしまう。

それでもなんとかしなければと言う事で、育苗ハウス内に葉物野菜の種を蒔く。

 

2百数十名の方々へ定期発送を行っている当農園にとって、アイテム不足・

出荷する野菜の量が揃わないなどは決して許されないことです。

野菜の定期購入をして頂いている方々の大半は、むかし野菜しか食べられない

と思って居られる方が多い。

それだけに気候変動や虫害の多発などで野菜が途切れると言う恐怖心は皆様が

思って居られる以上に強いのです。

一度自然栽培を始めた以上は、中途では投げ出せない。

10年以上変わらず、定期購入を継続して頂いているお客様も100人以上は

居られる。良い時も悪いときもあったろうにとの思いはあります。

 

一年の初めに、そんなお客様の信頼に応え、感謝の気持ちを持ち続けることは

私達スタッフにとってとても大事なことだと思うのです。

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        去年種を蒔いた麦が青い絨毯に変わっている

 

麦や大豆は当農園のグループ3農園で分担している。

その一人、田北さんが年始に訪れた。偶々居合わせたNHKのディレクターから

質問を受けていたところでした。失礼とは思ったが、その場で田北さんにこう

伝えた。

「まだ小麦の種を蒔いていないだろ。こちらは裸麦と古代麦は蒔いた。田北

さんの分担である小麦の種を蒔いてくれないと、グループの大切な商品が揃

わないことになる。手伝いに行くからすぐに種を蒔いて下さい」

そのNHKの方は、中々厳しいのですねと・・・・

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.12.26(土)晴れ、最高温度10度、最低温度1度

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          農園は白いビニールトンネルに覆われる

 

 年末を迎えて待望の雨が降った。ようやく越冬のためのトンネル張り作業が

行えた。今年の冬は寒くなりそうだ。野菜達は実を屈めて寒さに耐えている。

葉先や茎は凍結し、解凍しを繰り返し徐々に萎え始めている。

このまま行くと、野菜も霜焼け状態となりやがて落ちてしまう。

旺盛に葉っぱを食べていた害虫達もさなぎとなり、土中深く入り込み越冬中。

そのさなぎも4月頃になると脱皮して成虫(蛾や蝶)になる。

5月も中旬頃になると、その成虫が野菜の葉っぱや土中に産み付けていた卵が、

一斉に孵化する。それを5~11月初旬まで繰り返し農園は害虫の住処と化す。

この食欲旺盛な幼虫達が孵化した度に幼い苗を守るために瞬殺する劇薬を使う。

 

(農薬の話)

私が自然循環農業の体験の中で学んだことは畑に持ち込まれる大量の窒素肥料

(化成肥料や畜糞)のうち過剰な窒素分(転じて硝酸態窒素=毒素)は、

それに付随して持ち込まれている化学物質・抗生物質ホルモン剤残存農

は同じくらい「悪」なのです。

消費者は農薬だけが一方的に悪であると思い込んで居られる方が多いようです。

私が由布市で開いていた「健全で美味しい野菜作り」講座の中で体験したこと

をお話ししておきます。

この講座には農業者・家庭菜園をしている方・消費者などが入り混じって参加

されておりました。

講座は有機栽培のこと・土作り・野菜の生理・他品種栽培のことなどを説明し

ている内に、何かしっくりとしない空気を感じておりました。

そこで、浮かない顔をしている方に何かご質問は?と問いかけたところ、

「先生の有機栽培では農薬は使わないのですか?」と問われた。どうも多くの

方は型通りの有機栽培の説明かと思っていたらしく、乗ってこなかったのが

分かった。「私も使っていますよ」と答えた。

全員の方が「ホッ」としたような顔をした。講座に参加された方々は健全な

野菜作りを目指そうとしている方達ではあるが、どうしても農薬を使わないと

野菜が出来ないことを実感している方ばかりであった。

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                 芽キャベツ

来春早々から出荷予定。小さいですが料理の用途は広く慣れてくると重宝する。

さっと湯がいて、サラダ・炒め物・スープの主役・パスタ料理など、便利な野菜です。

 

急遽、農薬の説明を行った。

私も有機栽培を目指していた頃、先輩の有機農家(当時は有機JAS規定が出来

る前)がハウス栽培の中で農薬を使っていることを知り批判したことがありま

した。農業現場の実態も知らず実に恥ずかしい話でした。

農薬は化学合成されたものでありそれを散布する農業者の人体には危険です。

そのため、一部の農薬を除いて必ず分解して無害になるように当初から設計

されております。

分解には、光合成分解・水溶性分解・微生物分解・自然分解があり、実は劇薬

ほど分解が早くほぼ一日で分解されます。従って放射能ヒ素・水銀カドミュ

ームなどの元素は分解されません。

私は苗が自分を守れない幼い間、2~3回その劇薬を葉面散布しております。

農薬は分解スピードが遅い農薬ほど効き目が長く続きます。

普通は10日間ほどその農薬の効能は続きます。繰り返し使っているとそれを

残存農薬と言います。これが消費者にとっては危険なのです。

最近になって有機無農薬と言う表現を国が禁止しております。それは自然の

実態にそぐわず、有り得ないことだと国も気づいたことと、有機無農薬神話が

あまりにも拡がり過ぎて有機農家がやむを得ず虚偽表示をし始めたからです。

さらには、有機JAS規定が実態に合わず、ついには、「減農薬野菜」と言う

わけの分からない野菜を認めております。どの程度の農薬使用が減農薬野菜か

消費者の方は分かりますでしょうか。

 

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                 春キャベツ

春に出来るから春キャベツでは無く、「春キャベツ」と言う品種です。

柔らかく甘さが強いと言った特徴があります。

 

農薬はその後、より農業者の人体に危険性が少なく散布量を減らしてより効能

持続性の高い農薬に改良される過程の中でネオニコチノイド(人体に大きな影

響を及ぼす可能性が高い)を代表とした浸透性農薬が誕生した。その農薬を

散布した野菜を食べた虫が死ぬ、あるいは、生殖能力を失わせるというもの

です。この浸透性農薬や除草剤に関しては、後日詳述致します。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.12.18(金)晴れ、最高温度10度、最低温度2度

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             畑は一面、白の風景へと変わる

 今季の冬は一段と寒くなりそうだ。畑は突然に、最強の寒気団に襲われた。

ゆっくりと冬の気候に移り変わっていくのであれば、野菜達もそれなりに寒さに

耐える準備は出来ていただろうが、この急激な寒の訪れに野菜達はいきなり風邪

を引いてしまったようだ。

農人も慌ててビニールトンネルを掛けて、畑は白の世界へと一変する。

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これからは、トンネル管理の毎日となる。
冬でも気温が最高温度が15度を超える日や雨が予測される日は、トンネルを

剥ぐり太陽の光に当てたり、雨を当てたりしてやらねばならない。

物言わぬ野菜達は小児と同じで、その顔色を見ながら育ててやらねばならない。

その慈しむ心が無い人は農業には向かない。

当農園のように、一季節40~50種類の野菜を育てている場合は、個々の野菜

によって寒さに強い弱いの特性を持っており、その特性に応じたきめ細やかな

判断と対応が要求される。

農園歴8年の竹内君も、去年独立し、正にその経験をしている処。

師匠からの指示を受けて対応するのとは大きく異なり、失敗を重ねて始めて一人前

の農業者となれる。自然循環農業の会得は難しく、人を育てるのもまた難しい。

その師匠もまだまだ失敗をする。この時代は気候が一定しない気候変動の時期に

当たっているようだ。自然から謙虚に学ぶしか無い。

 

「コロナウィルスにより人の価値観は変わる?」

 

 2011年福島で起きた原発事故、所謂原発ショックを契機にして放射能汚染

の危惧から健全な食への関心が急速に高まり、当農園も関東方面の消費者が急増

したことがあった。

当時は、放射能汚染問題に端を発して化学肥料・畜糞・除草剤や農薬と言った

化学物質による汚染に対して、農産物の安全性を求める気運が一気に高まった

時期であった。

この時期、農園のお客様(仲間と呼ぶ)が関東を中心にして一気に150名

ほど増えた。10年を経過した今でもその仲間の多くは定期購入を継続されて

おり、農園を支えて頂いている。

 

唯、わずか10年の間にその関心も次第に薄れ、安易で手頃で簡単なほうが良い

と言うノン価値観の時代へと変わって行った。時代の価値観は短い周期で変化

しているようだ。

そこに、唐突に自然界からコロナウィルスが襲ってきた。昨今の無関心・自己

本位の価値観「安・近・短」な世相は揺さぶられ始めている。今回はやや趣が

異なり消費者の熱気も薄くその価値観は内向きになっており、ひたすら身を屈

めて時を過ごそうとしているようにも見える。

 

コロナの影響で学校が閉鎖となり、うちの孫達は連日畑で過ごしていた。

自然野菜を食べ、菌のはびこった畑で遊び回るこの子達は至って健康である。

元来、人も微生物の進化形であり、微生物や菌類の棲まう自然循環の浄化の

仕組みの中では悪性耐性菌が特にはびこることも無く健康で居られる。

ここの畑では除菌・滅菌と言って、菌を悪者扱いしてはいない。もしも、

菌類がこの世に無かったら、地球は木・草・動物などの死骸だらけになっている。

菌類の繁殖の仕組みによって有機物を分解して自然環境を浄化してくれている。

本来は人間の体の内も外も菌類で覆われているからこそ健康で居られるのです。

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まん丸な目をした子供達

子供は本来、邪気も無く、好奇心の塊です。この子達は農園で育ったと言っ

ても過言ではありません。

多くの菌達に囲まれて毎日泥まみれになって畑で遊んでいました。

現在の社会環境は子供達にとって決して楽しいものではありません。

畑で育ったこの子達は、嘔吐下痢などしたことがありません。

きっと、菌に囲まれていただけに自然順応能力が付いていったのでしょう。

 

変異し続けるウィルスに勝とうと思うのは無理です。それならいっそ共生

あるいは、共存していく仕組みを作っていかねばなりません。

東洋人がコロナウィルスに比較的強いのは、もしかして、むかしの食生活文化

が残っているせいかもしれない。

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               自然栽培のお米に麹の花が咲いた

 

味噌・醤油・漬物などには乳酸菌を始め様々な菌が棲んでいる。無菌状態に置

こうとしている滅菌・殺菌などの食文化のほうがむしろ違和感を感じる。

当農園は醤油こそ作ってはいないが、そのむかしの日本人の食文化である味噌

・漬物は農園発足以来、無添加醸造・発酵食品と言う伝統的な方法で作り続け

ている。

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                  発芽したばかりの麦畑
 

世界は資本主義社会の矛盾、あるいは、大企業によるグローバリズムに至り

貧富の差が広がり、いつしか階級制のような社会が進行し始めていると言った

閉塞感の中で、人々の多くは不満や不安に満ちている。

その不満や不安が内向きになり、為政者に向かうのでは無く隣人に向かって

いる。国の運営も民主主義とは最早呼べない国民不在の専権政治に変化しよう

としている。

これは多くの国民が政治に無関心を装い、時の政権にお任せにした結果では無

いかとも思う。

「楽をする」「とりあえず」「今が良ければ」「自分さえ良ければ」などの

自己本位な価値観から、「頑張って見るか」「家族を大切に」「他の人の心も」

「おもいやり」などの利他主義的な価値観を共有していこうと考えてくれれば

良いのだがと思わずには居られない。

何故、子供達の将来を考えないのか?未来がどのような形になって行くのかを

考えようとしないのか?

この国は危ういと感じているのは私だけでしょうか?

 

 

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.12.2(水)晴れ、最高温度14度、最低温度7度

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今年も麦蒔きの季節がやってきました。スタッフ総出で2反の圃場に

草木堆肥を振り、麦を蒔く。残り5反を今年中に終えなければならない。

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「土作り」

江戸時代の農業本によると、日本の先人達は、数代を掛けて草木堆肥によって

土作りを行うと、記しております。

むかしは、化学肥料も畜糞も無い時代、草・柴・葉っぱとわずかな人糞・牛糞

などの有機物を、発酵させて堆肥を作っておりました。(2~3年掛かり)

それを定期的に圃場に入れ、微生物・菌類の力を借りて、何代にも亘って土を

育ててきました。

これが本来的な有機農業であり、自然循環農業です。

有機JAS規程ができる以前に、様々な方法で有機野菜を作っている多くの先人

達がおり、彼らは、堆肥であれ、肥料であれ、それぞれの独自の方法で自ら

有機堆肥を作っておりました。

皆、異口同音に、野菜を育てる前に、先ずは土作りを!と言っておりました。

現代は、機械もあり、昔と比べて草木堆肥作りも随分と楽になりました。唯、

残念ながら、現在は草木堆肥を作っている有機農家は居なくなってしまいま

した。

今の時代、有機農家も大量の畜糞が容易に手に入り、それらを堆肥としてで

なく肥料として圃場に投与しております。

現在の有機農業では、土を育てるのでは無く野菜に直接的に肥料を与えて野菜

を育てている。

手間の掛かる草木堆肥を作る農家も居なくなり有機農家が「堆肥をやっている」

と言っているのは、実は「肥料をやっている」と言う事なのです。

 

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畑からキノコが!

当農園では珍しいことでは無い。江戸時代の農業本には、土が育って来たら、キノコが生えると

書いてあった。草木堆肥の中に棲んでいる菌類が畑でも順調に育ち、土を浄化してくれている。

それだけでは無く、他の畑のキャベツ畑に一匹の蝶々も飛んでいない。当農園では、毎日蝶々が

乱舞しているおぞましい光景を目にする。

何故なら、その後に急に青虫が湧いて出てくるからです。のどかな風景も悩みの種になる。

 

私は、様々な有機肥料(厩肥・牛糞・米糠・油粕・魚腸など)を実験農園と

して試してみましたが、そのいずれも味香り・食感などに満足が得られず

むかしの農法に戻って、肥料はやらず、草木堆肥のみの施肥による

「土を育てる」しかないと思い定めました。

 

草木堆肥を施肥すると、一年間でおよそ、3㎝ほどの深さまで、土の団粒化

が進み、年に3~4回施肥するとして、3年間で10㎝の深さまで団粒化が

進みます。

葉野菜の根はほぼ10㎝程度の深さに、根菜は15~20㎝、木(トマト・

茄子・ピーマンなど)は30㎝の深さまで根を張ります。

化成肥料であろうと、畜糞であろうと、窒素過多の畑の大根は、地表に

にょっきりと出ております。

土が出来て居らず、土が固く、土中に入っている根の部位は短い。

草木堆肥歴5年以上の畑では、地表に出ている部位は5~7㎝程度で、

地中に入っている部位の長さはおよそ25~30㎝となっています。

ちなみに地表に出ている部分は茎となり繊維質です。

柔らかい大根は地中に入っている部位です。

当農園の野菜の美味しさの評価は3段階に分けております。

草木堆肥歴3年未満が赤ラベルの土、3~5年未満が銀ラベルの土、5年以上

が金ラベルの土と分けており、木成りの野菜は草木堆肥歴5年以上の圃場で

しか育てません。

当農園の場合は草木堆肥歴10年以上の圃場が約7割を占めております。

こうなると、もうプラチナラベルです。圃場によっては50㎝の深さまで団粒

構造の土になっており、歩くと、バウンドします。

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           堆肥場

奥に積んであるのが剪定枝、左側が草、右側が作り上げた草木堆肥。

 

 

ここから出来た野菜は、味香り豊かに、実に歯切れの良い食感が得られ、

体が美味しいと言ってくれます。私は思うのです。このやさしい野菜達は、

人間が作れる物では無く、自然豊かな土が育ててくれているのだと・・・

私達は、そのお手伝いをしているだけなのです。

 

※団粒構造の土

 

団粒構造の土は、小さな砂粒を寄せ集めたような土です。有機物残渣・微生物

の死骸を核として、土が固まった状態のことを指します。

 団粒構造の土には小動物・小虫・微生物・菌類が棲み着き、一定間隔で有機

を与え続けると、絶えず進化していきます。自然循環の仕組みがあり、

持続可能な農業に繋がっていきます。

土に肥料を与えずとも、有機物残渣とミネラル分豊富なその土が野菜を育て

てくれます。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.11.19(木)晴れ、最高温度22度、最低温度16度

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               秋のズッキーニ

「気遣い」

 

季節外れの陽気が農園に季節外れの収穫をもたらす。

このズッキーニは暖かい晩秋が来るのでは!と予測して、ズッキーニ・

インゲン豆・秋南瓜を植えてみた。見事に当たった。

ズッキーニの収量は流石に少なく、全員に行き渡らないかもしれないが、

一ヶ月の間には何とかお届けできるようだ。但、寒が襲ってくれば、

そこで終わりなのですが・・・露地栽培ならではです。

 

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こちらは、ビーツ。例年なら、秋蒔きのビーツは今年中には大きくならない

のですが、これも本年中には、皆様へ届けられる。

おそらくは、来来週には、人参・セロリ・ビーツ・蕪などの洋野菜が出揃う。

 

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                  白菜

 

中々巻いてくれず、やきもきさせられたが、来週中にはお届けできる。

白菜は、露地栽培の場合、8~10月の害虫多発により、晩秋での出荷が

難しい状況となりつつある。それだけ気候が変わってきたのです。

今年は、何とか秋に白菜が出荷できる。

そこで来週のメニューは、白菜・大根・九条葱・青梗菜・味美菜などの

鍋料理セットが並ぶ。

 

賢明な読者の方は、もう、お気づきでしょうが、定期配送メニューは、

週によってそれぞれテーマを設定しております。

洋野菜主体のスープ料理セット・和野菜主体の鍋料理セットと言う訳です。

勿論、配送野菜には、根菜・根もの・葉野菜と、その週で、お客様が使い

易いアイテムを必ず組み込んでおります。

これも当農園の気遣いなのです。

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コロナが第三波に入ったとの報道がなされています。ここ大分は無風地帯で

あったのですが、最近頻繁にクラスターが発生しております。

皆様の地域でも同じような状況でしょう。

当農園の野菜だけでは無く、できるだけ、低窒素栽培(栄養価が高い)の

野菜を求めて、免疫力を付けて下さい。

それらの野菜は手間と労力を掛けており、やや高いのですが、健康に

勝るものは無いですよ。

また、それらの野菜のほとんどは、菌に囲まれた環境で育てられております。

「菌は菌を持って制す」が自然界の掟なのです。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.11.4(水)晴れ、最高温度17度、最低温度8度

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              玉葱の植え込み始まる

 

 早いもので、今年もすでに11月の玉葱の植え込みシーズンが来た。

今年も約6万本の植え込みを行う。農園スタッフ総出の作業となる。

この植付け作業を終えると、季節は一気に冬へ向かう。

 

「F1種の功罪」

 

昨日、一通のメールが入った。

孫が生まれるに当たり、F1品種の種子についての質問であった。

正直又かと思った。

消費者の中には、耳学問で、F1種の野菜が危ないとの思いからであろう。

それでも、以下のように、丁寧に農家の実情と、在来固定品種の難しさを

お話しした。

 

「病気に強い・多収穫可能・均一性を引き出すために、自然交配を重ね、

 新たに作り出された種子のことです。そのため、二代目は全く別物の

 種子しか取れない」これがF1種です。

当農園でも例えば味美菜(青梗菜と小松菜の掛け合わせ)・一本葱(下仁田葱

と九条葱)などがあります。時折、どちらかの品種の特性がでる場合もある。

これに対して、在来固定種の種子があります。

他の品種と交配をし難い種子となっており、遺伝子が固定しているものです。

この欠点は野菜の種類が少なく、いつも同じ野菜しか食べられないことに

なってしまいます。

但し、在来固定と言えども、いつも自家採取をしていると、その種子の性質が

劣化してしまい、出来た野菜も病気が出たり、小さくなってしまったりします。

時には他の品種と交配させてやらねば、最後は死滅してしまいます。

平家の落人部落に奇形児が出たり、病弱者が出て、一族の存続の危機を迎え

ます。所謂、近親相姦を繰り返したためですね。

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           太陽が落ちる寸前の3番の圃場

秋の夕暮れ時の景色は、一瞬「静」の世界となります。しばし見とれてしまう。

 

偶々、一昨日、NHKの試してガッテンの番組の中で、何故野菜が均一に

育つのか?の設定で、F1品種のことが語られていた。

そこの結論には、「F1種は、均一な野菜が育つ性質を持っている」との

事であったように記憶している。

これも又かと思ってしまう。

メディアはいつも一面的な方向でしか語っていない。

 

F1品種が均等に育つのは、化成肥料で土壌の中の窒素分(成長を担う)が

一定に保たれているからである。

大量流通市場では、店頭に並べる野菜が売り易いことが条件となる。

そのため、野菜が均一になることを望んでいるからであり、規格サイズが

求められている。

その意味では、F1品種は化成肥料を使った慣行栽培(近代農業)のために

開発されたことになる。F1種も自然栽培では、均一にはならない。

 

有機野菜は、本来、均一に育つはずが無い。

唯、昨今は、大手の有機専門の販売店が大量に捌くために、有機野菜にも

均一性を求めている。

そのため、畜糞であれ、米糠・油粕などのぼかし肥料を使って、土壌を

窒素過多にする栽培が主流になっている。

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            草木灰を作っているところ

当農園では、草木堆肥の他、この草木灰が不可欠です。常に圃場にミネラル分を

補給するのに一役かっております。

 

その有機野菜と一線を画した自然栽培野菜は、低窒素栽培となり、当然に

土壌は草木を主体とした堆肥で土を育てる。

土の力によって育った野菜は、土壌の中の窒素を求めて、曲がりくねり、

不均一に育つのが当たり前である。

何故、「低窒素土壌で野菜を育てるか」

その答えは、窒素過多の土壌では、完熟野菜と成り難いからです。

 

※完熟野菜;野菜の体内に蓄積されたデンプン質は土中の窒素が切れると、

      生き残るために体内に蓄えたデンプンを分解し、糖質・ビタミン

      類へ変化させ、自ら生きるエネルギーとして吸収しようとする。

      窒素過多で育った野菜はデンプンの塊となっているため、栄養価

      が乏しく苦い。(デンプンは苦いのです)

 

F1品種の野菜を圃場から除いてしまえば、消費者はいつも同じ野菜しか食べら

れないことになり、それに耐えられるでしょうか。

その意味でも自然交配によって作られたF1野菜も農業では必要不可欠と

なっております。

 

 

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      すっかり秋の野菜に変わってしまった2番の圃場