「気候変動による露地栽培の危機」

2024.1.4(木)晴れ、最高温度12度、最低温度1度

 

新年最初の農園日誌です。農園日誌をご愛読頂きありがとうございます。

今年もよろしくお願い致します。

皆様にはもうお気づきの事とは思いますが、去年から様々なタイトルに分けて

皆様により分かり易く、現在の日本の農業の現実をお届けしております。

現在様々な農業政策を見るに付け、国が農業を見捨てているとしか思えない現状を

ご理解して頂きたいのです。

日本の健全な食を確保していくことは、農業者だけの問題では無いのです。

世界的な食糧危機は目前に迫っております。

日本の食糧安全保障の観点で消費者の皆様へ訴え続けて行こうと考えております。

 

2.美味しい野菜(旬菜)が無くなるーPART4.「気候変動による露地栽培の危機」

ー露地栽培野菜の衰退― 

 

毎年、異常な気候変化が続いており特に最近の10年間はその異常さは際立っている。気温は乱高下し、四季は乱れ、雨期と乾期が極端になり始めている。

温暖化に伴って害虫被害も10年前とは比べようも無く多発している。一昨年はピーマン・万願寺トウガラシ・パプリカなどが壊滅しました。

夏・秋にメイン野菜が無くなるのです。その要因はカメムシの大量発生です。

異常な気候が日常化しており農産物は急成長したり未熟であったりと過去の実績と経験が役に立たないことも多い。毎年、農業者の勘でその対応策に工夫を凝らすしか無い。

管理し易いハウス栽培とは異なり、露地栽培は常に気候変化の影響を大きく受ける。

平均気温が1~2度違えば、農産物の成長は狂ってくる。それが一気に10度近く乱高下する気候が続けば、野菜にとっては迷惑な話であり、伸びてよいのか、縮こまったほうがよいのか、迷ってしまい、結果として異常な発育をしてしまうことも多い。

 

      定植作業を行っているスタッフ達

このスタッフ達は皆農業経験が無かった方々です。農園主が手取足取りで教えたスタッフ達です。

最初の1年間はほとんど役に立ちません。2年・3年と実践を積み重ねベテランとなっていきます。そして私の大切なパートナーへと育っていきます

 

ある県会議員が当農園を訪れて有機野菜を育てていたある農家が廃業したという話をして帰られた。

その農家はこう言ったそうだ。「ある予定の時季に出荷を見込んで育てた野菜が早く育ってしまったり、間に合わなかったり、出荷先との約束ももうできない。露地栽培は止めてハウス栽培に切り替えるしか無い。それならもうしない」

有機生産者は市場ではなく特定の流通業者へ出荷している。それはいつ頃何をどれくらい出荷するといった約束事で成り立っている。それが守れなくなったことは既存流通に依存している生産者にとっては大きなリスクとなる。

 

当農園は農協も含めて流通へは一切出荷をしていない。

全国の飲食店や個人消費者などの定期購入顧客や農園マルシェなどで直接販売している。

そこには規格・均一・出荷時期などの制約は無い。常に畑での出来合いの野菜を届けることで成り立っており、サイズは大小様々、見え形は不揃い、虫食いの痕も時季によってはひどいものもある。その代わり、美味しさ・食感・味香り・栄養価などは数倍以上あり、それを評価して頂く消費者との信頼関係が全てと言うことになります。

慣行栽培野菜に慣れた消費者への啓発啓蒙活動を続けながらのお客様とのコミュニケーションが大切にはなるが、それもまた新たな出会いとなり楽しい。今日もお試し購入のお客様から「蕪のような丸い野菜はどう食べたら良いのですか?(蕪キャベツ=コールラビ)」と携帯電話が鳴る。

固定客となったお客さんはこう言う。「一週間、あるいは、二週間に一度届けられる野菜達を洗って冷蔵庫に直す。スーパーへは行かない。無駄遣いも減った。冷蔵庫にある野菜で何とかする。その習慣が出来ると献立を考えるのが楽しい。以前ほど今日は何を作るのか悩むことも無くなった」

それらの固定顧客は当農園の野菜しか食べない方が多く、「今野菜がありません」と言うことはできない。

スタッフ達はご家庭の食卓を支え、ご家族の健康を守っていると言う使命感と自負心は強い。

 

 コールラビ(蕪キャベツ)

キャベツの芯が太くなったと考えたら良いです。薄くスライスして炒めたり、サラダにしたりすると甘くて美味しい。欧州では一般的な野菜で、当農園は20年前から取り組んでいます。

 

気候不順を繰り返す気候変動に対処するためには、露地栽培農家は気候の変化を読む農業者の勘が必要になり、従来の経験やセオリーは通用しない。

季節の変化の先を読み、種蒔き時期を常に変えて行かねばならない。

今までは2月中旬頃に種を蒔いていた大根・人参・春白菜などを1月初旬頃に種を蒔き始めたり、初夏野菜であるズッキーニの秋作を試みたり、南瓜の二期作を行ったりと、試行錯誤を繰り返し、捨て植えの連続となる。露地栽培では平均気温が1度違っただけで、野菜の受けるダメージは相当なものになり、発育が狂ってしまうのです。

このように消費者への直接販売を継続的に行っていくためには、露地栽培農家は野菜を切らさない創意工夫と農業者の勘が重要になってきています。

 

消費者とのコミュニケーションを図るため、定期的に農園体験会を行っております。

時には子供さんも含めて200人を超えることもあります。大切なことはお母様達の

食に対する意識を変えていくことですが、これが中々に難しいのです。


ただ、直接消費者へ野菜を届ける直販という仕組みは良いことだけではありません。

健全で美味しい個性豊かな野菜を食べて頂ける消費者を自ら探さねばならず、そういった価値観を持っておられる消費者とのコミュニケーション方法が難しくなります。

メディアに紹介されても物珍しい感覚で一時的に増えたお客様は長続きしません。

やはりこの野菜達は食べて頂いている同じ価値観を持つ消費者の皆様に頼るのが一番早道です。つまり口コミしか無いのです。当農園では今居られる定期購入のお客様などの固定顧客(仲間達と表現していますが)には徹底的にサポートしております。やはり信頼関係がもっとも大切なのですね。

 

 

3,健全な農産物とは?「肥料栽培による土壌汚染―過剰な硝酸態窒素(毒素)」

2023.12.26(火)晴れ、最高温度13度、最低温度0度

 

「肥料栽培による土壌汚染―過剰な硝酸態窒素(毒素)」

―農薬より怖い除草剤・抗生物質・化学物質・硝酸態窒素による土壌複合汚染―

有機農産物は安全?有機無農薬野菜?についてどこまで消費者は知っているのでしょうか?

消費者は農産物の安全性について農薬のことしか言いませんが、農産物の安全性を阻害している以下のような四つの課題があるのです。

麦作りの圃場に草木堆肥を振っている処

ここの畑も4年目です。今年は沢山の小麦が採れることを期待しております。

 

「消費者の皆様は有機無農薬と言う概念や言葉に踊らされている」と私は思うのです。

農薬より怖い窒素過多による土壌汚染のことを知っておられますか?

これは有機農業も含めて近代農業の大きな課題点なのです。

18世紀の終わり頃、欧州では硫安という窒素肥料を発明したことにより簡便な肥料栽培に移行してから二世紀を経ようとしています。それは食糧大量生産ができる近代農業の夜明けでした。

その欧州で20世紀後半、硝酸態窒素による水質汚染が起こり、ブルーベイビー(青い血液)の問題が発生し、それを契機にして化学肥料を使わない有機農業(オーガニック)が提唱されるようになりました。

さらに土壌に蓄積され続けた窒素(硝酸態窒素)分により塩基濃度(塩分と言った方が

分かり易い)が上昇し続けて土壌が風化していきます。農地の砂漠化です。

アメリカ中西部・ロシアやウクライナなどの大穀倉地帯の砂漠化が憂慮されています。

 

※ブルーべービー問題

化学肥料はどうしても過剰投下に陥り易くなり、継続して使い続けるため土壌は窒素

過多になり易く、硝酸態窒素という形で河川に流れ出し、土壌に浸透していきます。

特に恒常的に使用している圃場は土に交わりにくくなり、地下に浸透していきます。

これが地下水汚染です。飲料水の汚染を招いたと言う訳です。

体内に入った場合は亜硝酸態窒素と変化し、血液のヘモグロビンに結合し、酸欠状態

になり、呼吸困難に陥る。

やっかいなのは、野菜は土中に窒素分があればあるほど吸収してしまうという性質を

持っており、野菜に取り入れられた窒素は硝酸態窒素として蓄積されますから、

野菜の成長のエネルギーとして消化されない分は、大量に残ったままで出荷されて

いきます。野菜にもどうしても硝酸態窒素は残留します。

これは毒素なのです。

 

日本でも戦後、化学肥料と農薬を使った近代農業が急速に発達していきました。

日本古来からの草・藁・人糞などを使った農業(日本式有機農業)は次第に駆逐され、

1960年頃にはほとんど消滅していました。

その中でも小規模ながら有機農業を提唱する農業者が現れ始めました。

牛糞・鶏糞・油粕・米糠・魚腸・骨粉に稲藁・籾殻などを加えた有機堆肥を主には

使っていました。

2003年頃、国は消費者保護の名目で欧州の有機農業を真似て有機JAS法を制定

しました。この資格を取らないと有機農業とは名乗ってはいけないと言うことで

多くの既存有機農業者は憤り、資格を取得せず、かつ、老齢化も進みこの段階で

日本の有機農業者は一旦壊滅してしまいました。

 

日本の有機JAS法では化学合成していない肥料・農薬を使わないことが有機農業と言う定義となっています。有機物ならば何でも良いのです。

ここで高窒素肥料施肥=硝酸態窒素の問題がすり替わってきました。

高窒素肥料を使う農業が問題とされていたのに、「化学合成している肥料・農薬」と言うことにされました。

有機野菜は有機無農薬栽培であると言う誤った認知が進み、「有機野菜は安全である」

と言う思い込みに変わっていったのだと思われます。

 

有機肥料に最も多く使われている畜糞も化学肥料と同じく高窒素肥料なのです。しかも、家畜の餌に含まれている抗生物質・化学物質が新たな問題を起こしています。

有機肥料による高窒素栽培及び飼料に含まれている抗生物質・化学物質・農薬などの

理由によって農学者の一部からは「有機野菜が危ない」と問題提起されるようになっています。

麦踏みの風景

この圃場は草木堆肥歴8年目の畑です。

今ではこのような麦踏みの光景は見られないでしょうね。

 

さらに、小麦アレルギーも社会問題となっています。

農業試験場の所長に小麦アレルギーに苦しむ子供達のために草木堆肥による低窒素栽培で麦を作ることを相談しました。

即座にこう言われました。「佐藤さん、それは無理ですよ。麦は窒素分を欲しがる穀物です。特に昨今は高タンパク(ハイグルテン)の麦で無いと市場からは見向きもされませんよ」と・・・

それでも、当農園ではひたすらアレルギーの起こらない麦作りのために、草木堆肥に

よって土作りと除草剤を排する麦作りにチャレンジしました。4年間にようやく

グルテン仕様の麦が採れました。

当初はその啓発啓蒙活動に苦戦しましたが、今ではアレルギーを発症しない小麦粉として農園の定番商品になっています。


そもそも農園主が低窒素栽培が可能となる草木堆肥による土作りと肥料を使わない

自然栽培に梶を切ったのは、有機肥料を多投する有機栽培では土壌は育たず、

むかし懐かしい美味しい完熟野菜ができないと言う結論を得たからです。

今では草木堆肥による土作りを行っている農業は、おそらくは世界でも唯一の農園と言うことになっているのかもしれません。

これは実は悲しいことです。

欧州のモデルとなった日本の古来からの農業が無くなっていると言うことになるからです。

現在は、おそらくですが、唯一無二の農法となっていることは、日本の農業の中では孤立していることになり、中々に消費者の理解を得にくい事に繋がります。

それでもむかし野菜の邑では、地道に消費者への啓発・啓蒙活動をしながらこの農業の承継者を育成することに傾注しております。

露地栽培の衰退ー美味しい野菜が無くなる

2023.12.19(火)雨、最高温度7度、最低温度2度

 

(草木堆肥による土中のミネラル分及び菌類・微生物との相関関係)

地表面、特に農地は農産物の収穫によってミネラル分が持ち出され続け、慢性的なミネラル不足になっています。
その補給はわずかな雨(極く微量なミネラル分)によってしかもたらされません。

私は常に不足するミネラル分を畑に補給するにはどうしたら良いのか、考えました。
日本の先人達は林から大量の柴を切り出し、1~2年を掛けて土や草や少量の人糞に混ぜて堆肥を作っていたことに着目しました。

木は地中深く根を張り、地殻に存在する豊富なミネラル分を吸収しています。
その多様なミネラル分を吸収した枝や葉っぱを主原料としたのが草木堆肥です。
捨て場所に困っている造園会社にお願いして、当農園の堆肥場に運んでくれるように頼みました。
その剪定枝を中型破砕機で破砕して堆肥の主原料とします。

さらに太い木や破砕機に掛かり難い短い枝は燃やして焼き灰を作り、草木堆肥と一緒に畑に振ることにしました。
草木堆肥と焼き灰のダブルで圃場にバランスの良いミネラル分を圃場に補給し続けます。

焼き灰を振って「枯れ木に花を咲かせましょう」と言う花咲かじいさんの逸話は実は本当のことだったのです。

さらに重要なことは、枝や葉っぱには様々な菌類・微生物が棲んでおり、草・木・葉っぱを使った草木堆肥によって、すでに畑に棲んでいる土着菌と合わせて計測不能な雑多な菌類が投入されることになります。
完熟一歩手前の草木堆肥(有機物残渣が残る)を食料にして彼らは畑でさらに増殖していきます。つまりは畑を耕してくれます。

そのことによって圃場の土は自然循環の再生浄化機能が果たされることになるのです。

これが生きた土です。

「永年除草剤と化学肥料そして農薬を使用してきたA畑」と「10年ほど放置されてきた雑草に覆われているB畑」を借り受けて草木堆肥によって土作りを同時に始めたことがありました。

Aの畑では除草作業の労力は少なくて済みましたが、2年間は種を蒔いて発芽しても野菜が中々生長してくれません。
化学肥料を投下していたので窒素分は多く残っていたはずです。

Bの畑では低窒素である草木堆肥歴1年目でもそこそこに野菜の収穫が出来ました。
ただ、草の種子が多く残っており除草作業は大変でした。2年目も野菜は順調に育ち、何より味香りはしっかりと出ていて、美味しかったです。

何故こんな違いが出たのでしょうか?

それは地力の差と言うしかありません。

Aの畑は継続して使用し続けた除草剤・化学肥料・農薬(慣行農業)によって土中の微生物等が死滅していたため、地力が低下し、低窒素である草木堆肥を数回程度施肥しても野菜が育たなかったのです。

つまりは死んだ土になっていたのです。

半ば強制的に窒素肥料(化学肥料)によって野菜を成長させ、ミネラル分は常に持ち出されてきました。

ちなみに3年目にしてようやく葉野菜の収穫はできました。土中の微生物が復活したのですね。

ただ、数年間は野菜の出来は良くありませんでした。

Bの畑は長年放置されてきたために雑草が深く根を張り菌類・微生物は自然の秩序を保ち、ウィルス・菌類・微生物層ができており草と共生していました。そのため、自然循環農業にすんなりと移行してくれたのです。

微生物等は多量のミネラル分と窒素を吸収し増殖します。ミネラル分の少ない圃場では微生物は繁殖し難いのです。
ミネラル分と微生物等とは相関関係があり、草木堆肥は土を育ててくれるのです。

野菜も微生物達も人間も同じく生命体です。その生命体の細胞増殖を持続的に促し続けてくれるのに不可欠なものがミネラル分なのです。

Aの畑は微生物層が死滅していたためにミネラル分豊富な草木堆肥を施肥しても中々、微生物の増殖が見られなかったのです。
Bの畑はその真逆なのです。
Aの畑はその後、年に4回草木堆肥を入れ続けたために8年目には根を深く張る根菜類の畑に成長してくれました。
正しく草木堆肥と微生物たちのおかげでした。

つまりは、人間もミネラル分が不足している野菜をいくら食べても正常に細胞分裂をしてくれません。
異常な細胞が増えるということは癌などの現代病に犯されやすいことになりますね。

園芸会社から持ち込まれた雑多な剪定枝を破砕している処、この後、さらに小さな小枝と葉っぱを手で仕分けし剪定木屑と葉っぱの山を築く。この中に計測不能な菌類や微生物が棲んでおり、草木堆肥の主原料となる。
同時に雑多な種類の木には地中の奥深くから吸い上げたバランスの良いミネラル分が含まれている。

肥料を使わない自然栽培

2023.12.9(木)晴れ、最高温度14度、最低温度6度

 

肥料を使わない自然栽培農業―野菜を育てるより先に土を育てろ!―PART3.


自然栽培と言う言葉は一般的では無いようです。自然農と言う言葉が良く使われております。
自然農(持ち込まない・持ち出さない)と言う概念は多くの消費者が誤解していたり、
間違った認識をしているようです。
自然農と言うやり方は長い農業の歴史の中では存在しておりません。
「これは採れても採れなくとも良い」家庭菜園でのお話です。
それでは農家は生活が成り立ちませんから現実味の無い農業となります。

ここでは自然農では無く、日本古来からの草木を使った自然栽培について話を進めます。

                                       手前が完成した草木堆肥(二次発酵済み)

農園体験会の一シーンです。大人達には草木堆肥の作り方や草木堆肥が土壌をどのように変えて行くかの紹介をしました。
子供さん達は積み上げた草の上で遊んだり、タイヤショベルに乗ったり、と楽しんでいました。

左の山は草、堆肥の向こうに見えるのは堆肥作りに広げた草、奥に見えるのは園芸会社が持ち込む剪定枝の山です。
これだけの堆肥の量だと半月分です。畑作りのシーズンには月に2回以上は堆肥を作ります。

 

私も農業を始めた頃は有機農業を目指して様々な有機肥料を試みました。

米糠・油粕・畜糞・海藻・魚腸・骨粉・籾殻などを発酵させて肥料としていました。

処がこれらの高窒素成分を多く含む有機物をやればやるほど、野菜は成長し続けるのですが、味香りが無くなっていきました。私が目指している有機野菜はどこか違うと、

図書館通いを始めました。

野菜の性質のこと、発酵のこと、微生物や菌類のこと、土壌のことなどなどでした。

そして、江戸時代の農業本と出会い、意味は不明ながら(私に学識が無いため)古人達の土作りの歴史を知ることができました。

そこで今から25年前に高窒素となる有機材料を捨てて、低窒素である草・葉っぱ・木屑に絞り、草木堆肥を作り始めました。動物性の材料を入れないと発酵が遅く、藁や草を食べさせている繁殖牛や放牧している牛糞を10%ほど加えることにしました。(人糞の替わりですね)

今となってはそれが正解だったのですが、鶏糞・豚糞・肥育牛の糞には多量の抗生物質や化学物質が含まれており、どうしても畑に化学物質を持ちんでしまいます。

特に抗生物質は菌類や微生物達を排除する危険な存在です。(配合飼料の中に大量の抗生物質を入れて畜舎の中で病気が蔓延することを防止している)これが草木堆肥に辿り着いた経緯です。

最もウィルス・菌類・微生物の繁殖力は強力であらゆる有機物を分解します。
例えば、ダイオキシン・石油・化学物質・抗生物質までも分解して自らが増殖します。
ただ、様々な薬品や抗生物質が入った畜糞を直接、畑に施肥した場合はやはり危険です。
残念ながら畜糞を使用している多くの有機農家さんの土は死んでいます。
土壌がごわごわ状態で微生物・菌類はおそらく死滅してしまっているようです。


              草木堆肥の切り返し作業

堆肥を積み上げてから20日前後で一回目の切り返しを行い酸素を補給します。二回目の切り返しで完熟一歩前の堆肥は完成です。当農園では完熟堆肥は作りません。
完熟してしまうと有機物残渣は無くなり、それを餌として増殖する菌類や微生物は数少なくなってしまいます。
畑を耕し続けてくれる彼らには生きていく食糧(有機物残渣)が必要なのです。

草木堆肥は草6:葉っぱや木屑3:牛糞1の割合で混ぜます。発酵に約一ヶ月半ほどを要します。
この方法は加圧式と言います。


家庭菜園で草木堆肥は作れますが、何分にも量が少なく圧力が加わりませんから発酵が遅く、数ヶ月を要しても当農園のような堆肥は出来ません。それでも良いのです。

木の種類は雑多で、それぞれの木に多様な菌類や微生物が棲み、割合の異なったミネラル分が含まれています。
これが大事なのです。畑のバランスを保ってくれているのです。何故、木屑や葉っぱかと言いますと、木は地中深く根を張りマントルの中に多様に含まれているミネラル分を吸収しているからです。
農業に使われている圃場はこの希少なミネラル分を収穫の度に持ち出しており、雨しか補給はなされず常に不足気味なのです。
草木堆肥は不足したミネラル分を補ってくれており、かつ多様な生命相を畑にもたらせます。

               堆肥作りの風景

草を広げ、その上に牛糞を被せ、さらにその上に木屑や葉っぱを重ね、トラクターで混ぜ込みます。

それをタイヤショベルでおよそ2メートルの高さに積み上げ水分量を調整しながら発酵を促します。その前に草集めと剪定枝の破砕作業を行います。これらの一連の作業は大きな労力と手間を要します。今ではこのような草木堆肥を作っている農家は全国には居ないでしょうね。

 

最後に人間も含めて生物は細胞形成する中で多様なミネラル分の働きにより正常な細胞分裂を促します。
このバランスを損なうと病気にかかりやすくなるのです。

私たちは畑を耕し、野菜を植えて野菜のお世話をしていますが、自分で作り上げたと言った実感が沸かないのです。健全な野菜は微生物や菌類が土を育て、野菜を育んでいるのです。

どうでしょうか?このむかし野菜を皆様の体が美味しいと感じてくれると思いますよ。

日本の農業規制(農業離れの政策)

農業潰しに走る日本の政治

2023.11.26(晴れ)最高温度15度、最低温度3度

むかし野菜の邑では定期的に農業体験会を実施しております。堆肥場にてオリエンテーションを行ってている風景
世界でも例を見ない草木堆肥による自然栽培の趣旨とその社会的存在価値について説明と理解をお願いしています。


自由な農業を阻害し続ける日本の農業規制―農業離れを助長

(地域小規模農業の切り捨て)

これまでは日本という国は農協を通じて農地を守ると言う名目であらゆる農業に補助金を出してきました。
それが20年前から変化し始め、米作の抑制・農業の法人化政策や大規模農業者への

支援、そのための認定農業者制度の制定へと進み、小規模農業者への支援打ち切りと

なってきました。

日本では農地のほとんどが小規模農地の集合体です。
アメリカ並みの大型機械を駆使した大規模農業は日本ではできません。
小規模農地しか持っていない地域農業(中山間地農業)は衰退し、農業後継者も著しく減少し、豊かな田園風景はあちこちで放棄地が目立ち、原野へと変わっています。

 蕪の種蒔きとレタスの定植作業を子供さんとともに行ってもらった。後の修正手直しが大変ですが・・・
生産活動に参加することは子供さん達の将来にとても大切なことです。
この体験会は消費者の農業に対する思いと食べる事への感謝の心を伝え、自然栽培に対して市場啓発活動のために行っています。


私の思い込みではないかと思われておられる方には行政上での具体的な例をお示ししましょう。

農園主は市役所に出向き、当農園に研修を希望して訪れてくる新規就農希望者のために認定農業者の資格を取得しようと動きました。
「国の新規就農者支援の補助金」助成を受けやすくするために不本意ながら認定農業者の資格を取得しようとしたのです。
勿論その就農希望の若者達は健全で品質の高い農産物生産を学びたい人達です。

 ※国の新規就農者支援制度では、認定農業者の基で農業を経験した人で無いと受けられない規程になっております。

 最初は私のその申し出に賛意を示していた市の職員達が「佐藤さんの認定農業者取得は意味が無くなるかと思います」と言い始めました。
何故と聞くと、「県や市には作物指定というものがあり、例えば、葱・紫蘇・ニラ・苺などの農業を希望する新規就農者しか国の支援は受けられなくなります」と・・・

つまりは作物指定があり、それは単一作物栽培を意味しております。

単一作物栽培農家は直接消費者と向かい合うことはできませんので農協に帰属しないと販路は確保できません。
と言うことは国の新規就農者支援策は規格農産物(慣行農業)を奨励する農協に帰属させるために有ると言うことになり、認定農業者の仕組みもそのために周到に用意されたものだと言うことになりますね。

            草木堆肥の切り返し風景

幼子達は生まれて初めてタイヤショベルに乗って興奮気味。揺れ動く度に黄色い歓声が上がる。白く立ちのぼっているのは菌類・微生物の増殖熱です。最高温度は80度にまで上がります。
自然界はこのウィルス・菌類・微生物達の」働きによって自然循環そして浄化され、

自然を保っているのです。

むかし野菜の邑では消費者と向き合うために年間百種類以上の多種類の農産物を生産しており、消費者への直接販売を行っております。

このように国の政策は自由で健全で品質の高い農産物を作ろうと言う夢に燃えて農業を目指す若者達の思いも達成できず、農業を諦めさせることになってしまいます。
認定農業者制度は事実上農協に帰属しない農業者は支援対象外にすると言うことを明示しているということになります。
このように一連の日本の農業政策は多くの中山間地を抱えている地域農業を切り捨て、
有機農業のように小規模で品質に重きを置く自立した農業者をも見捨てると言うことを意味しております。

 日本という国では、品質の高い野菜生産を目指していく農園は規格野菜を押しつけてくる農協には帰属せず、価値観を同じくする消費者達を自ら探し自立するしか無いのです。その農園の味方は消費者のみです。
多くの消費者の意識が変わらない限りは当農園の孤軍奮闘・悪戦苦闘は続いていくことになります。
新規に自然栽培を学びたい人達は当農園から給与をもらいながら生活をしていくしかありません。
当農園へ掛かる負担は実に大きいのです。

             ジャガイモ掘り体験

掘れば続々と出てくるじゃがいもに子供達は楽しそうでした。子供達は家に帰っても数日間はその楽しかった事を親に話しているそうです。


如何ですか?国は自由な農業の育成を阻止し、型にはまった農業を押しつけてくる。

農地の狭い日本の農業は大規模粗放農業には不向きであり、量より品質で勝負する農業が向いているにも拘わらず、小規模農業を切り捨て大規模農業(法人化を推進中)しか支援しないとなれば、日本の農業を潰しに掛かっていると言わざるを得ない事はお分かり頂けたかと思います。
それは畜産にも同じ事が起こっており、乳牛を一頭潰したら15万円の補助金を出すと言った誠に可笑しな法令まで出ております。
畜産農家は借金苦で年々夜逃げ同然で家業を放棄し続けています。

これでは日本の食糧確保はどこかの国に依存せざるを得ないように仕向けているとしか考えようがありません。
日本は独立国家ではなかったのか?と思ってしまいます。

野菜を育てる前に土を育てる

2023.11.23(木)晴れ、最高温度20度、最低温度15度

「土作りの農業」

肥料を使わない自然栽培農業―PART2.

自然農(持ち込まない・持ち出さない)と言う概念は多くの消費者が誤解していたり、間違った認識をしているようです。
自然農と言う定義は長い農業の歴史の中では存在しておりません。「これは採れても採れなくとも良い」家庭菜園でのお話です。
それでは農家は生活が成り立ちませんから、ここでは自然農では無く、日本古来からの土を育てる自然栽培について話を進めます。

                       草木堆肥歴22年の2番の圃場

現代のように畜糞や化合物から作り出す化学肥料も無い時代、古人達は収穫量を増やそうと

自然物を集め、人糞を草藁などと一緒に、里山の柴を刈り葉っぱを集め長い時間を掛けて発酵させ草木堆肥を作っていました。
それを「元肥」=堆肥と呼んでいます。肥料で野菜を育てると言うより土を育て(肥えさせて)、その土で野菜を育てていたのです。そのため土作りは数代に及んでいたようです。
ちなみに埼玉の川越地区で、葉っぱで堆肥を作りサツマイモを育てている農家がお二人居ました。
私が全国を探し探し、巡り会えたのはそれだけです。今から30年以上もむかしの話です。

                      炎天下での葱の土寄せ作業風景

葱類は定植してから出荷するまでに少なくとも3回は土寄せ作業を行います。

夏場は草の勢いが強く除草も兼ねて行います。鍬により草の根を切り、草の上に土を被せていきます。

同時に掘り下げることによって根に酸素を供給し、葱に土を被せることによって暑さから身を守ります。

それでは、野菜を成長させる肥料(窒素分)を施肥しないのに何故野菜が育ち、慣行栽培よりも多くの収穫量を得られるのか?
その疑問に答えねばなりません。端的に言えば、それは菌類や微生物の働きによるものです。
私の実践に基づく経験では、慣行栽培より多くの収量を得られ始めるのは、草木堆肥歴15年を超えた当たりからでした。
目に見えて分かってくるのは鍬を使ったときです。土が軽いのです。除草も楽にできます。
土は団粒化が進み、深さ20~30センチの深さまで微生物層ができているのです。
ちなみに当農園の2番の畑は50センチの深さまで団粒化が進んでいます。

野菜を植える前に必ず草木堆肥(元肥)を施肥します。一つの畑に年に3~4回、作物を植る度に施肥しています。
完熟ではなく中熟堆肥の状態です。そのため、常に畑には植物性の有機物残渣が残り続けています。
菌類や微生物の餌(草木)が常に畑に確保できていることになり、彼らは土の中で繁殖を繰り返します。
(化学肥料や畜糞などの高窒素肥料では有機物残渣(餌)は恒常的に残らないのです。完熟堆肥はその意味で肥料です。

微生物や菌類は体内に様々な栄養素を抱えており、彼らは2~3週間から一ヶ月の間に死ぬものもおり、そこから土に窒素・燐酸・カリ・ミネラル分などが供給され続けていきます。さらに小動物・みみずなどの糞も供給されます。
土壌は自然循環のメカニズムの中で常に生きており再生・浄化され続けているのです。これが持続可能な農業です。

肥料栽培ばかり続けていると土壌は痩せていきます。土に対しての栄養補給を怠り微生物や菌類は死滅していきます。
養分過多の土壌の塩基濃度(塩を吹く)が次第に上がり続けやがて砂漠化が進みます。地下水をも汚染していきます。
肥料に頼った農業では常に窒素過多の状態となり、野菜の中には消化しきれない窒素分が硝酸態窒素と言う形で残ります。
それは毒素です。除草剤の成分と並んで農薬よりもむしろ土壌汚染の方が怖いのです。

除草剤を使わない自然栽培は草との闘いです。ここはつい一ヶ月前に除草したばかりでした。

この後、3日後、土寄せ作業を行いました。除草した草も有機物ですので、緑肥にしたり、

堆肥の原料とします。自然栽培は手間が掛かり人手が要ります。だからグループ営農なのです。

 

自然栽培そして露地栽培は期せずして農業の未来を示唆しており、地球の環境を守ることになります。

日本の先人達の叡智は忘れ去らずに未来へと残していかねばならないのです。

そのためには若い人達にこの農業を伝え、育て、かれらが未来を切り開いて行く事を信じて

私は後継者育成に力を注いでいます。

有機肥料に含まれる抗生物質や化学物質

2023.11.19(日)晴れ、最高温度16度、最低温度6度


                          

草木堆肥を振り、耕そうとしていましたら、スコップの先に蝶々が群がってきました。草木堆肥の甘い香りに誘われたようです。


一心不乱に蜜を吸う蝶々。かわいそうなので、しばらくそのままにしておきました。白いものは苦土石灰・蛎殻・草木杯です。

健全な農産物とは?  PART2.

―農薬より怖い除草剤・抗生物質・化学物質・硝酸態窒素による土壌複合汚染―

有機農産物は安全?有機無農薬野菜?についてどこまで消費者は知っているのでしょうか?

消費者は農産物の安全性について農薬のことしか言いませんが、農産物の安全性を阻害している以下のような四つの課題があるのです。


(畜糞などの有機肥料に含まれる抗生物質や化学物質)

一部の学者などから現代の有機野菜は危ないと言った声が聞こえてきます。

同じ有機野菜仲間としては少し腹立たしく思ってしまいますが、それはこう言った事情があるからです。

現代の日本の畜産農家のほとんどが配合飼料(99%がアメリカ産)を使っています。

その配合飼料には除草剤を吸い込んだ遺伝子組み換え作物であるトウモロコシ・麦・大豆が主原料です。

その配合飼料には浸透性農薬(発癌物質ネオニコチノイド)が含まれ、更に怖いのは畜舎での病原菌蔓延を嫌って抗生物質(ウィルス・菌類・微生物を駆逐)が大量に投入されております。

この畜糞が有機野菜の主な肥料となっている事実があります。

多少の化学物質や抗生物質であれば、微生物は分解してしまうのですが、実際には投入量が多くて微生物等は負けてしまいます。これが次々と畑に投入されれば畑は次第に無菌状態の土壌に変わっていきます。ごわごわとした土壌になっていき、自然循環機能を失って再生不能な死んだ土壌になっていくのです。

巻き掛かっている白菜。当農園では密集栽培を行っております。野菜は競い合って大きく育ちます。より大きく育ったものから先に出荷し、次に育つ白菜を出荷し、最後に総取りとなります。ちなみに当農園の白菜は筋が目立たず、口の中で溶けていきます。

草木には無限大の種類の菌類・微生物が棲んでいます。その量も半端ではありません。

彼らは元素以外は分解してしまいます。化学物質や抗生物質は複雑な分子の絡まりで出来上がっており、その分子を分解し、無力化してしまう力を持っております。石油などもたちどころに分解します。

菌類・微生物・ウィルスは自然界を常に浄化する機能を持っており、自然界では一つの菌類・微生物・ウィルスだけが膨大に繁殖することは出来ません。例えば、オー157・サルモネラ菌などは畑に棲んでいますが、常に共生・食い合いなどを行いながら自然の秩序を保ってくれています。

その力は偉大なのです。コロナ以来その中ではやたら除菌・滅菌などと言うワードが飛び交っております。むしろ自然界に身を委ねた方が安全かもしれませんですよ。

 

当農園も草木堆肥を作る際に発酵促進剤として牛糞を10%ほど入れます。

当農園が使っている牛糞は放牧牛若しくは繁殖牛です。その主食は当然に草です。この牛糞は匂いが少なく、訪れた方は全く牛糞とは気がつかないほどです。

当農園では一回当たりの堆肥作りの時間は約一ヶ月半です。もし、牛糞を入れないと3ヶ月以上を要します。堆肥が完成するまでに三ヶ月以上掛かれば約3ヘクタールの畑には間に合いません。

 

30年以上むかしであれば、家畜の餌は自家製飼料がほとんどでした。その時代の有機野菜は安全だったかもしれません。最近では抗生物質不使用の畜糞を使っていますと表示しているホームページもちらほらと見かけます。

せめて多くの有機農家が草木を混ぜて発酵させたものを畑に投入してくれればと願っております。

 畜産農家は飼料代金の高騰を受けて国産飼料作りに取り組んでいる方も出始めております。

当農園では圃場に化学物質を持ち込むことを極端に嫌っており、高窒素の米糠・油粕なども使っていません。