野菜を育てる前に土を育てる

2023.11.23(木)晴れ、最高温度20度、最低温度15度

「土作りの農業」

肥料を使わない自然栽培農業―PART2.

自然農(持ち込まない・持ち出さない)と言う概念は多くの消費者が誤解していたり、間違った認識をしているようです。
自然農と言う定義は長い農業の歴史の中では存在しておりません。「これは採れても採れなくとも良い」家庭菜園でのお話です。
それでは農家は生活が成り立ちませんから、ここでは自然農では無く、日本古来からの土を育てる自然栽培について話を進めます。

                       草木堆肥歴22年の2番の圃場

現代のように畜糞や化合物から作り出す化学肥料も無い時代、古人達は収穫量を増やそうと

自然物を集め、人糞を草藁などと一緒に、里山の柴を刈り葉っぱを集め長い時間を掛けて発酵させ草木堆肥を作っていました。
それを「元肥」=堆肥と呼んでいます。肥料で野菜を育てると言うより土を育て(肥えさせて)、その土で野菜を育てていたのです。そのため土作りは数代に及んでいたようです。
ちなみに埼玉の川越地区で、葉っぱで堆肥を作りサツマイモを育てている農家がお二人居ました。
私が全国を探し探し、巡り会えたのはそれだけです。今から30年以上もむかしの話です。

                      炎天下での葱の土寄せ作業風景

葱類は定植してから出荷するまでに少なくとも3回は土寄せ作業を行います。

夏場は草の勢いが強く除草も兼ねて行います。鍬により草の根を切り、草の上に土を被せていきます。

同時に掘り下げることによって根に酸素を供給し、葱に土を被せることによって暑さから身を守ります。

それでは、野菜を成長させる肥料(窒素分)を施肥しないのに何故野菜が育ち、慣行栽培よりも多くの収穫量を得られるのか?
その疑問に答えねばなりません。端的に言えば、それは菌類や微生物の働きによるものです。
私の実践に基づく経験では、慣行栽培より多くの収量を得られ始めるのは、草木堆肥歴15年を超えた当たりからでした。
目に見えて分かってくるのは鍬を使ったときです。土が軽いのです。除草も楽にできます。
土は団粒化が進み、深さ20~30センチの深さまで微生物層ができているのです。
ちなみに当農園の2番の畑は50センチの深さまで団粒化が進んでいます。

野菜を植える前に必ず草木堆肥(元肥)を施肥します。一つの畑に年に3~4回、作物を植る度に施肥しています。
完熟ではなく中熟堆肥の状態です。そのため、常に畑には植物性の有機物残渣が残り続けています。
菌類や微生物の餌(草木)が常に畑に確保できていることになり、彼らは土の中で繁殖を繰り返します。
(化学肥料や畜糞などの高窒素肥料では有機物残渣(餌)は恒常的に残らないのです。完熟堆肥はその意味で肥料です。

微生物や菌類は体内に様々な栄養素を抱えており、彼らは2~3週間から一ヶ月の間に死ぬものもおり、そこから土に窒素・燐酸・カリ・ミネラル分などが供給され続けていきます。さらに小動物・みみずなどの糞も供給されます。
土壌は自然循環のメカニズムの中で常に生きており再生・浄化され続けているのです。これが持続可能な農業です。

肥料栽培ばかり続けていると土壌は痩せていきます。土に対しての栄養補給を怠り微生物や菌類は死滅していきます。
養分過多の土壌の塩基濃度(塩を吹く)が次第に上がり続けやがて砂漠化が進みます。地下水をも汚染していきます。
肥料に頼った農業では常に窒素過多の状態となり、野菜の中には消化しきれない窒素分が硝酸態窒素と言う形で残ります。
それは毒素です。除草剤の成分と並んで農薬よりもむしろ土壌汚染の方が怖いのです。

除草剤を使わない自然栽培は草との闘いです。ここはつい一ヶ月前に除草したばかりでした。

この後、3日後、土寄せ作業を行いました。除草した草も有機物ですので、緑肥にしたり、

堆肥の原料とします。自然栽培は手間が掛かり人手が要ります。だからグループ営農なのです。

 

自然栽培そして露地栽培は期せずして農業の未来を示唆しており、地球の環境を守ることになります。

日本の先人達の叡智は忘れ去らずに未来へと残していかねばならないのです。

そのためには若い人達にこの農業を伝え、育て、かれらが未来を切り開いて行く事を信じて

私は後継者育成に力を注いでいます。