2021.12.25(土)晴れ、最高温度11度、最低温度2度
3番の畑の夕景色
今年最後の農園日誌ブログとなりました。
朝から温度が下がり続けて、写真を撮った時は4度くらいに冷え込んできました。
農園ではビニールトンネルを掛けたり、不織布を掛けたり、寒に備えて冬ごもりの
支度に忙しい一日でした。
二番の畑は、一面、白の世界になりました。顔を出しているのは寒に強いほうれん草
と芽キャベツだけです。
ハウス栽培全盛の時代、露地栽培でのビニールトンネルの畑はここだけです。
これから剥いだり閉めたりの作業となります。
一年間ご愛読頂きありがとうございました。
このブログは来年か再来年一冊の本にまとめようと考えており、現在、書き綴っております。「失われた先人達の叡智」に続いて、まだタイトルは決めてはおりませんが、
先の本が入門編でしたので、今度のは、専門編になります。
入門編では書けなかった自然循環農業の実践と真の農業自立に向けた消費者と直接向き合っていくために必要なマーケティング(商品開発・ターゲット戦略・消費者とのコミュニケーション戦略)の知識などを織り込んで行こうと考えております。
農業軽視の風潮と効率だけを重視した持続不能な農業に対しての警鐘の意味を込めております。生産者と消費者が真に健全な食を一緒に考えて行くことができたら幸いです。
むかし野菜の四季-PART2
「草木堆肥を使った土作り」
草木堆肥の原料は以下の通りです。
①木屑と葉っぱ
地表面、特に農地は農産物の収穫によってミネラル分が持ち出され続け、慢性的なミネラル不足になっています。その補給はわずかな雨(極く微量なミネラル分)によってもたらされますが、人類の食の営みに追いつくわけもありません。
私は常に不足するバランスの良いミネラル分を畑に補給するにはどうしたら良いのか、考えました。日本の先人達は林から大量の柴を切り出し、1~2年を掛けて土や草や少量の人糞と混ぜて堆肥を作っていることに着目しました。
木は地中深く根を張り、地殻に存在する豊富なミネラル分を吸収しています。その様々なミネラル分を吸収した枝や葉っぱを捨て場所に困っている造園会社にお願いして、当農園の堆肥場に捨ててくれるように頼みました。
その剪定枝を中型破砕機で破砕して堆肥の主原料とします。
さらに太い木や破砕機に掛かり難い短い枝は燃やして焼き灰を作り、草木堆肥と一緒に畑に振ることにしました。
草木堆肥と焼き灰のダブルで圃場にミネラル分を圃場に補給し続けます。
焼き灰を振って「枯れ木に花を咲かせましょう」と言う花咲かじいさんの逸話は実は本当のことだったのです。
次に重要なことは、枝や葉っぱには様々な菌類・微生物が棲んでおり、草・木・葉っぱを使った草木堆肥によって、すでに棲んでいる土中菌と合わせて計測不能な雑多な菌類が投入されることになります。完熟一歩手前の草木堆肥(有機物)を食料にして彼らは畑でさらに増殖していきます。つまりは畑を耕してくれます。
そのことによって圃場には自然循環の浄化機能が果たされることになるのです。
剪定枝の破砕作業
この破砕機は人間の腕くらいの太さまで破砕できます。
それ以上の太さの木を除けながら破砕しなければなりません。破砕機に掛けた後
破砕機に掛かりにくい小さな枝は葉っぱとより分けて、太い木と一緒に燃やし、焼き灰を作ります。葉っぱの一部は剪定枝を積んでいる間に分解され腐葉土になっているものもあります。
②雑草や野菜屑
除草剤を使わない自然栽培では旺盛に茂る草には手を焼きます。
種を蒔いて野菜が芽を吹いても大きく育つまでには、除草作業は2~3回は行わねばなりません。畑の周囲の草の除去もまた大変です。除草した草はまとめて置き、枯れ始めるとこれらを一輪車やフォークなどを使って持ち出し、堆肥場に運び堆肥の主原料として溜めておきます。また、収穫した野菜を整理した残渣もまた、堆肥の原料となります。
畑の有機物は常に循環しているのです。この草集めの作業も中々に手間が掛かり疲れます。
勿論それだけでは草は足らず、河川敷などの草をもらい受けている。ゴルフ場の草は除草剤や農薬を多く使っているため堆肥原料としては当然に除外します。
収集し備蓄していた草を堆肥場一面に広げている処です。
この作業が中々の重労働です。足で踏んで確かめ厚さを均等にしなければそこだけ
微生物分解されず、均質な堆肥になりません。
③牛糞
肥育牛の牛糞・鶏糞・豚糞は使わない。これは家畜飼料のほとんどをアメリカからの輸入に頼っており、その中に含まれている薬品や抗生物質を畑に入れるのを嫌っているからです。そのため、餌の主原料が草である放牧牛や繁殖牛の牛糞を使います。鶏糞や豚糞などは窒素分が多過ぎるため除外します。ほとんどの餌が草である馬糞があればそれが一番望ましい。
草や葉っぱだけでは発酵までに約6ヶ月を要し、1ha以上ある畑を年に3~4回転させるには堆肥量が足らず、1カ月半ほどで堆肥にするためにこの放牧牛糞は発酵促進剤としてどうしても必要となるのです。
(草木堆肥の作り方)
先ずは熟らせた草を約10センチの厚さに均等に広げます。その上に牛糞を約3センチの厚さに重ねます。さら破砕した木屑・葉っぱ・腐葉土を厚さ3センチに敷き、トラクターのロータリー(回転刃)で二回後ほど混ぜ合わせます。それをタイヤショベルで高さ2mに積み上げ、水分調整をしながら圧を掛けます。堆肥の温度は微生物等の増殖熱で70度前後にまで上がります。これを一次発酵と言います。
約1カ月後に切り返し、空気を補充してやると中塾堆肥が完成する。
二回以上切り返し作業を行うと、完熟堆肥になり易くもはや肥料にしかならない。
何故、中熟堆肥かというと菌類・微生物が活性化しているうちに畑に施肥し、畑の中でさらに発酵(繁殖)させるためです。この繁殖作用により土を耕しているのです。
草木堆肥の原料; 草6:葉っぱや木の破砕屑2:放牧牛の糞2
放牧牛の糞は草を主食としており、ほぼ草であり、草木堆肥は草や木・葉っぱなどの窒素分の少ない自然の有機物を発酵させたものです。草木堆肥はN/C比(窒素分と炭素分の比率)は低く、肥料効果は少なく、畑を健全な低窒素土壌にしてくれます。
この畑には小動物から小虫・微生物・菌類・ウィルスに至るまで生命に満ちており、
生きた土です。ふかふかとした団粒構造(粒上の土)が出来上がっています。
草を広げ、牛糞を重ね、さらにその上に破砕屑と葉っぱを重ねている処です。
この後、この上をトラクターで二往復させると草・牛糞・木屑葉っぱが混ざります。
右のビニールを掛けている処にはすでに作っていた堆肥があります。
むかしは1~2年かけて作っていた草木堆肥は今では、機械がありますので随分と
楽になりました。
それでも余りにも手間と労力が掛かり、草木堆肥を作って土作りを行う農業はおそらくはこの農園だけだと思います。