健全な農産物とは?ー残留農薬問題ー

2024.3.8(金)晴れ、最高温度11度、最低温度6度

 

―農薬より怖い除草剤・抗生物質・化学物質・硝酸態窒素による土壌複合汚染―

有機農産物は安全?有機無農薬野菜?についてどこまで消費者は知っているので

しょうか?

消費者は農産物の安全性について農薬のことしか言いませんが、農産物の安全性を

阻害している以下のような四つの課題があるのです。

 

PART5.―残留農薬問題―

「必要悪の農薬」

草木堆肥を使って土を育てる「自然栽培」でも、畑には普通に害虫はおります。

そもそも、野山の土には小動物を頂点にして、もぐら・みみず・小虫・微生物・菌類

・ウィルスなどが棲んでおり、自然の生態系を作り上げている。

そのような野山の土壌に近づけようとして、草木有機物を施肥していますから害虫が

居るのも自然態です。彼らも生きていくためには野菜を食べねばなりません。

そのため、当農園も害虫発生が続く時季、幼苗の段階で害虫を瞬殺する劇薬を2~4

回は使います。

ある程度野菜が大きくなってくると、自力で育ってもらい害虫に負けるな!と激励

して回り、害虫を見つけると捕殺します。農業とは殺生の連続です。


※野菜が持つ害虫からの自己防衛機能

野菜本来の味と香りや微毒は害虫から身を守るために野菜が備えている防衛機能であり、肉厚な葉もその防衛機能の一つです。高窒素栽培では葉は薄く茎は細く味香りが

薄く害虫も食べやすくなります。近代農業(高窒素栽培)では化学肥料と農薬は一つ

のセットであり、近代農業の歴史は窒素肥料と農薬の発明の歴史でもある。

畜糞肥料等の有機栽培も高窒素栽培と言う意味では化学肥料と同じなのです。

 

害虫多発の5月から10月までの期間、ある程度の虫食い痕のある野菜については、

当農園の定期購入のお客様とのコンセンサスは得ておりますが、出荷に耐えられ無い

ほど食い荒らされた野菜達は、害虫多発の時季、一畝全て抄き込むこともしばしばで

あり、自然栽培とはリスクの塊なのです。

 

※農薬の分解(無力化)

農薬は化学合成されたものであり、それを散布する農業者の人体には危険です。

そのため、一部の農薬を除いて必ず分解して無害になるように当初から設計されて

おります。

分解には、光合成分解・水溶性分解・微生物分解・自然分解があり、即効性の劇薬

ほど分解が早くほぼ一日で分解されるように設計されています。

そうで無いとその劇薬を使用した農業者が危険に晒されるからです。

実は消費者に取っては効能が長く続く(つまりは分解速度が遅い)緩効性農薬

あるいは、浸透性農薬のように効能が消え難い農薬が危ないのです。これが残留農薬

問題です。

劇薬は分解速度が速いので、出荷直前に使わない限りは消費者にとっては一番安全な

農薬となります。

私は苗が害虫から自分を守れない幼い間、2~3回その劇薬を葉面散布しております。野菜が自らをある程度守れる大きさになった場合は農薬の使用を極力抑えます。

貴方は生まれたばかりの赤ちゃんを自然界にそのまま放置できますか?

害虫などの害を防ぐ術も無い幼苗も同じなのです。

 

私が有機栽培を始めた頃、有機栽培の先駆けと言われている先達に教えを請いに行ったときの話です。

彼がハウス内のトマトの撤去をしている場面に出くわしました。「佐藤さん、ハウスに入ってはいかんよ。農薬を使ったばかりだから」

「えっ!農薬を使っているのですか?」と尋ねると、「害虫が発生し始めたのでトマ

トの出荷を止め、木の撤去をしているんだ」「劇薬を使い、害虫を瞬殺しておかないと。次の植え付けの際、困るからな」と・・・

有機栽培をしているのに農薬を使うのですか?」と批判がましく質問をすると、

彼はこう言い切った。

有機であろうとなかろうと、害虫は常に発生しており、農薬を使わないと農業は

できん。同じ使うなら農薬の成分が残り続ける緩効性農薬よりは即分解する劇薬で

瞬殺する方が安全というものだ」

その後、同じような意味の質問が消費者から出てくる度にこの話を思い出す。

私も恥ずかしながら、当時は「有機無農薬ですか?」と質問をする消費者と同じでしたから・・・20数年経過した今、彼と同じことをしている自分がここにいます。

現在の農家は出荷する相手が農協や流通であり、消費者では無いのです。流通側は、

一般消費者がお客様ですから当然に見てくれの良い、虫食いのない均一な野菜を農家

には要求します。

そのため、出荷直前であっても防虫のため効き目が長く続く農薬を散布します。

「それはおかしい」と消費者は農家を非難することは出来ません。彼らも生活がかかっているのですから・・・

当農園主は多少見てくれが悪く虫が喰った痕が残っていても、健全性を保つため、

私たちの取り組み方を理解して頂ける消費者への直接販売の途を選んだのです。

私たちも同じ野菜を食べるわけですから生産者が食べたくない野菜は出荷したくない

のです。