むかし野菜の四季ーPART2

2021.10.15(金)晴れ、最高温度28度、最低温度17度

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          端境期の畑は夏野菜と秋野菜が同居

 

左端から茄子・ズッキーニ・ほうれん草・人参・白菜・里芋と夏秋混成に

植わっている。この状態が11月中旬頃まで続きます。

畑は晩秋にもなると秋冬野菜一色になり、時が止まったかのように「静」の

農園風景となり、私はその時季の畑の風景が一番好きですね。

 

農園は今、夏野菜の撤去と秋野菜の種まき・定植作業が一段落し、やや落ち

着きを取り戻してはいるものの、お客様が漸増しており、出荷する野菜が

少なくなってきており、農園主としてはやや心細い気持ちになっている。

端境期になると毎年同じことを繰り返し、秋野菜の成長の遅さにやきもきと

することになる。

そんな際、捨て植え(できるかどうか分からない野菜のこと)の野菜がいつも

助けてくれる。まさに綱渡りの毎日です。

 

 

むかし野菜の四季

 

「日本の農業の現状」

野菜は本来、味香りや五味や食感などにそれぞれの個性があり美味しさがあります。

時には微量な毒素も含んでいます。これは虫などの外敵から身を守るためのもので

化学肥料や畜糞・ぼかし肥料などの高窒素肥料で育った野菜は、短期間で急成長

するため野菜の個性である味香りを無くしていき、葉肉は薄くなり、倒れないよう

に筋張っていきます。

そのため、害虫の好む食糧となります。そこで肥料の開発が進めば進むほど、害虫

対策として農薬が不可欠となって行きます。近代農業では化学肥料と農薬がセッ

で開発が進められました。(有機肥料も同じです)

有機肥料も畜糞が主体であり、ハウスなどは米糠・油粕・骨粉などのぼかし肥料も

使われておりますが、いずれにしても窒素分は多く、高窒素栽培となっています。

そのため、化学肥料とほとんど同じことになり、農薬使用は不可欠です。

 

勿論、自然栽培でも害虫の発生は抑えられません。にんにく・とうがらし・ドク

ダミなどを使った忌避剤でも他の畝に逃げて行き今度はその畝が被害を受けます。

結果として害虫対策にはなりません。

そのため、有機であれ自然栽培であれ虫の発生しにくい寒冷地でなければ農薬を

多少は使わなければ、野菜を育てることはできません。(農薬の話は後ほど詳述致

します)

よく自然農であれば害虫は寄りつかなくなると主張しているサイトがありますが、

自然界にそんな農場があったら怖いですね。念のために・・・

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野菜には炭水化物とデンプンが蓄積され続け、糖質やビタミンへ変換されないまま

出荷されます。肥料過多で育った野菜は苦い味がします。それはデンプンが苦いか

らです。

野菜は基本的には窒素で生長します。地中に窒素分があれば野菜の中に成長酵素

ミトコンドリア)が発生し野菜の成長を促します。そのため、慣行栽培(化学

肥料と農薬)、若しくは畜糞栽培の場合、土中の窒素分が消えない限りは、野菜は

成長し続けることになります。野菜は困ったことに土中に窒素分があればあるほど

吸収してしまう性質を持っているのです。

すると、野菜の中に吸収された窒素分は野菜の体内で生きるエネルギー源として

硝酸態窒素へ転換されます。ここで問題となるのが高窒素土壌で育った野菜は消化

されない硝酸態窒素が野菜の体内に蓄積され続けます。硝酸態窒素は毒素なのです。

化学肥料施肥の歴史が長い欧州において、戦後すぐに「血液が青いブルーベービー」

が生まれたのです。

当時これは大騒ぎになり、硝酸態窒素による農地の汚染を防ぐために有識者達が

低窒素栽培の農法を探し回り、見つけたのが、日本の昔ながらの有機栽培でした。

こうした経緯があり、今から100年ほど前の日本の農業を学んで欧州にて

「オーガニック野菜」が生まれたのです。

 

※硝酸態窒素;野菜に取り込まれた窒素分は硝酸態窒素(毒素)に変化し、イオン

化して野菜に吸収され成長を促す。化学肥料であれ畜糞であれ米糠・油粕であって

も高窒素肥料となる。野菜は土中に窒素分があればあるだけ取り込んでしまう性質

を持っている。有り余った窒素分は野菜や土中に硝酸態窒素で残る。従って、高窒

素栽培の野菜にはこの毒素である硝酸態窒素が多く含まれていることになる。あ

る意味では残存農薬より問題が多いかもしれません

 

皮肉なことに当時、日本では食糧増産を目指し、遅れた日本の農業を近代化させる

ためにアメリカ型の大規模機械化農業を推奨しており、狭い農地をフル回転させて

他品種栽培が主流であった高集約型農業から単一栽培である近代農業(粗放型農業

)へまっしぐらとなっていました。

狭い国土と小規模の農地しか無い日本の農業は元来大規模農業には不適であり、

アメリカとの農産物価格差が数倍ある中では、むしろ高品質農産物で対抗すべき

でした。

日本の農業政策は農協頼みとなり、衰退していく日本の農業に何ら具体的な改善策

を打ち出せておりません。その農協の全国組織では、組織が膨らみその組織を維持

するために金融業に精を出し、本来、農業者を助けて農業振興を行うべき農協の姿

とは遠く離れております。

農政=農協という構図は、国の規制だらけとなっており、自由な農業を阻害し、

農業者の自立を押さえ込んでおり、農協に属さないと、国の支援は実質ゼロとな

ります。メディアも農政・農協に忖度しており、こうした農業の実態は報道され

ません。

 

他方、欧州のオーガニック規程を真似て国民保護という名目で「有機JAS法」を

制定し、奨励政策では無く「規制」に乗り出しました。様々な方法で古来からの

有機野菜を復活させようとしてきた日本の有機農家は有機野菜を名乗ることも出来

ず、ほぼ壊滅しました。

窮屈で日本の気候にそぐわないこの有機JAS野菜は、余りにも実効性が乏しく、

信頼性や信憑性が薄いと言う事で欧州のオーガニック野菜の認証を得られていま

せん。

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さらに課題となるのが膨大な手間の掛かる除草作業です。日本の高温多湿な風土

では雑草除去作業に時間を費やされるため、恒常的に除草剤を使っている農家が

ほとんどです。

当農園は草を抑えるための黒マルチ(地表面を黒いビニールで覆い、穴を開けて

そこに野菜を植える)は使いません。黒マルチは科学的には呼吸しているのです

が、自然とのやりとりはし難い。ハウス栽培に近いものがあり、温室栽培に似て

おります。

そのため、例えば、当農園では人参の草取りは最低三回は行います。

高窒素栽培による硝酸態窒素・農薬・除草剤などにより、日本の農業もアメリ

並みに持続不能な粗放農業へと変わってしまいました。

 

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  むかし野菜で採れた自然栽培の穀類の使った惣菜・お菓子の販売風景

             (農園マルシェにて)