むかし野菜の四季ーPART2

2021.11.18(木)晴れ、最高温度20度、最低温度9度

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11月中旬、この時季は冬の寒さが訪れる前の最も忙しい季節に当たります。

玉葱は一年間のストック分を大量に定植し無ければならない。(数万本です)

秋麦は蒔かねばならない。(約6反分)

大豆は収穫しなければならない。(除草剤を使わない分、収量は他の農家の1/4)

これに加えて、秋冬野菜を今、種を蒔き、苗を定植しておかないと12~3月

までの出荷野菜が無いということになってしまうからです。

最高気温が10度を切ると発芽が難しくなってしまいます。そのため、この時季

一斉に種蒔きを行う訳です。

発芽さえしてしまえば、後はビニールトンネルを掛け、成長を促すことができます。

あとはあまりにも厳しい寒さが来ませんようにと天に祈るしか無いのですが・・・

 

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              定植中のレタス系野菜

 

むかし野菜の四季ーⅡ

 

「農薬の話」-1

 

※野菜が持つ害虫からの自己防衛機能

野菜本来の味と香りや微毒は害虫から身を守るために野菜が備えている防衛機能であり、肉厚な葉もその防衛機能の一つです。高窒素栽培では味香りが薄く害虫も食べやすくなります。近代農業(高窒素栽培)では化学肥料と農薬は一つのセットであり、近代農業の歴史は窒素肥料と農薬の発明の歴史でもある。畜糞肥料(窒素過多)等の有機栽培もその意味では同じ事なのです。

 

農園のメールに時折、「貴農園は有機無農薬野菜ですか?」との問い合わせが舞い込む。

その度に、農薬の話を詳しくして差し上げるのだが、大概の方は「えっ!農薬を使っているのですか?」と・・・、正直またか!と思ってしまう。

いつの間にか、「有機野菜は無農薬である」と言う間違った概念が定着してしまった。

近年は地方自治体からカメムシやアカダニの異常発生情報が流され、全地域の農家に農薬の散布を要請されることもしばしばです。何故なら、一気に撲滅しないとその地域全体に大きな被害がもたらされるからです。昨年は当農園もピーマン・パプリカ・万願寺とうがらしなど、その90%以上がカメムシ被害に遭い、出荷不能となった。

 

近年になって地球温暖化による異常気象が常態化し始め、害虫の異常発生が続いている。

例えば、種を蒔き、4日ほどするときれいに新芽が芽吹く。二週間後、本葉が出揃ったころ、その新芽がことごとく食べられている。又、成長し始めたキャベツの葉っぱはすだれ状になり、何とか巻き始めても底のほうから夜登虫が大穴を空け、中から芯を食い尽くす。シュウ酸と言う微毒性を有するほうれん草や臭いの強いニラなどにも害虫が付く。こうなると最早為す術がない。

この姿をその質問者に見せてやりたいとの衝動に駆られる。有機無農薬と言う言葉が独り歩きを始めたものですから、ほとんどの有機農家は、こう答える。「はい!農薬は全く使用しておりません」と・・・

そう答えないと、その有機農家から野菜を買ってもらう人が居なくなってしまいます。

これが有機JAS認定を取得した農家であっても農薬を使わないと死活問題になります。特に蛹から成虫となった蛾などが飛び回り始める5月中旬頃から11月初旬頃までが農薬を使用する頻度が上がります。葉っぱなどに産み付けた卵が孵化し、幼虫が葉っぱを食い荒らすからです

これが農業現場の実態です。消費者はもっと現在の農業現場を知る必要があります。

消費者や国家の誰が農業者を守ってくれるでしょうか。慣行農業であれ、有機栽培であれ、自然栽培であれ、農業者も生きていかねばならないのです。

通常の農家では一ヶ月の間に5~7回ほど農薬を散布します。減農薬栽培でも10日に一回は散布します。特に出荷直前になると使用頻度は上がってきます。何故なら虫食い痕のある野菜は消費者が買ってくれないからです。責められるのは流通や消費者達なのです。

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表面は何事も無いきれいな白菜ですが、中に夜登虫が入り込み、食い荒らしている

ことも多いのです。時にはアブラムシがびっしりと付いていることも。

 

 

むかし野菜の邑でも、こんなメールが飛び込んで来ることもあります。

「こんなにひどい状態の葉物にはお金を払えませんよ。流石にこれはひどいですね」と写真を添付して送られてきた。確かに葉っぱは虫食いの痕が多く、葉っぱを食いちぎられている。

それでもせっかく育った野菜ですから、煮込んでしまえばどうと言うことも無いのですが。

お客様の野菜定期購入のお申し込みの際、お断りを入れて居たことはすっかり忘れていらっしゃるようでした。

そこで農園主はこうお返ししました。

「出荷できた葉野菜は畝全体の1/3しかないのです。後はみな鋤き込んでしまいました。

何とか出荷に耐えうるものだけをお送りしたのですが、お支払い頂けないのであればやむを得ないですね。この時季は3~4日間隔で農薬を使用すれば良いのですが、私たちもお客様と同じものを食べますので、農薬の使用はいたしませんでした。次回からは虫食いの痕の無い野菜をいずれからかお買い求めください」と・・・このお客様は以降、返信は無いが、未だにご継続頂いております。分かって頂いたと信じたい。

気持ちは分かるのですが、農薬の怖さと虫の怖さといずれが本当に恐ろしいのでしょうか?

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玉葱の定植は一年間に一回しかありませんので、一年分を植えておかねばなりません。
厳しいのは面積を取られ、他の秋冬野菜を植える場所に苦労しています。

 

草木堆肥を使って土を育てる「自然栽培」でも、畑には普通に害虫はおります。

そもそも、野山の土には小動物を頂点にして、みみず・小虫・微生物・菌類などが棲んでおり、自然の生態系を作り上げている。そのような野山の土壌に近づけようとして、有機物を施肥していますから当然害虫も居るわけで、彼らも生きていくためには野菜を食べねばなりません。ですから、当農園も害虫発生が続く時季、害虫を瞬殺する劇薬を2回は使います。ある程度野菜が大きくなってくると、自力で育ってもらいます。

ある程度の虫食い痕のある野菜については、当農園の定期購入のお客様とのコンセンサスは得ているからです。ただ、出荷に耐えられ無いほど食い荒らされ、一畝全滅することもしばしばです。

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       野菜の自然な色合いにはびっくりさせられます