むかし野菜の四季ーPART2

2022.1.15(土)晴れ、最高温度13度、最低温度0度

 

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                  極寒の白菜

 

久しぶりに気温が10度を超えてきたので、日中、お日様に当てるためにトンネルを

剥ぐ。

巻き始めている奴も巻きかねている奴もいる。

白菜やキャベツは芯の部位が急成長して始めて巻きます。この寒い時期には成長が

遅く、ビニールトンネル程度では霜除けにしかなりません。夜間は氷点下に下がります。そのため、個々の野菜の力が強い奴は巻くし、そうでない奴は開きます。

そのため、2月~3月出荷の白菜は「巻かない白菜」として当農園の冬の名物となっております。果して今年はどうか・・・!

 

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白菜の隣は芽キャベツです。

キャベツ系は秋に定植し、真冬の1月~3月頃までの出荷となります。

キャベツ系は冬に強い野菜なのです。

 

毎年のことですが、1月~3月初旬頃、出荷野菜が不足してきます。

中秋から初冬に掛けて、この時季用に野菜の種を蒔き、定植をしてはいるのですが、

野菜の繋ぎが上手くいかず、お客様も増加したことも重なり、今年も相変わらず農園主は頭を悩ませております。

 

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              エンドウ豆系の野菜

 

中秋から晩秋に掛けて種を蒔きます。極寒の間、彼らは根を張り、寒さに耐えて耐えて

育ちます。あまり早くに種を蒔くと感に堪えられない野菜は落ちていきます。

野菜の生命力の強さに驚かされます。

 

 

むかし野菜の四季ーPART2

「草木堆肥の実践」

草木堆肥は肥料ではありませんので、新規の畑に堆肥を振ったからと言って窒素分が少ないため野菜は成長不足となりますし、栄養価の高い美味しい野菜とはなりません。

土が育つまでちょっとだけ我慢してください。それでは実際にどのように草木堆肥を使って土を育て、野菜を育てていくのかを詳述致します。

 

(新規の畑の場合)

草木堆肥を振った畑で何も収穫物が無いと言うのも困りますので、土がある程度育つまでは以下の作物を植えます。

 

土作りの初期には、麦と大豆の二毛作栽培を行いながら土を育てて行きます。

大豆; 初夏6~7月には大豆の種を蒔き、11月頃収穫。

麦類; 大豆収穫後、11~12月には麦類3~4種類の種を蒔き、翌年梅雨入り前に収穫。

夏の雑草は大豆を覆い尽くす勢いで繁茂しますので、管理機で入念な土寄せを行い、畝下の除草と畝に土を被せます。それでも雑草の勢いは強いので草刈り機で畝間を除草します。

このように除草剤を使わない穀類生産(自然栽培)は中々に厳しいものがあります。

 

初期的な畑でのもう一つの方法が窒素分を好まないさつまいも栽培です。

さつまいもはジャガイモ(茎が変化したもの)などと違って根物野菜です。栄養価に富んだ畑ではさつまいもは茎や葉っぱが育つ蔓ぼけと言う現象を起こします。サツマイモは根物ですから上部が育つと根(芋)は育ちにくいのですね。

そのため、土を育てねばならない初期的な畑では有効なのです。

このように初期の畑では、草木堆肥による土作りを行う約三年間は穀類(麦と大豆の二毛作)を生産したり、窒素肥料が不要なさつまいもなどを生産する。ただ、土が出来ていないため収量が少ない(1/3以下)

草木堆肥歴2年を過ぎた頃から、土は数㎝の深さに団粒化(砂状)の兆候が出始める。

 

尚、化学肥料を使っていた畑は化学物質と除草剤や農薬により、微生物が棲める環境ではなくなり土が死んでいます。さらに、化学肥料や畜糞施肥によって窒素過多となり、塩基濃度が高く、酸性化が進んでいる畑などは、pH調整(中和)とミネラル分の補給をしなければなりません。団粒化した土に変わるのには3年以上掛かることもあります。

そのため、ミネラル分豊富なアルカリ性苦土石灰・蛎殻・焼き灰により土壌改良を行う。尚、籾殻・燻炭なども有効です。炭素分の多い有機物を投入した方が良いのです。

逆に、数年以上放置されていた畑の場合は、雑草に覆われていたため微生物層ができており、草木堆肥歴二年目頃からでも美味しい野菜ができる可能性があります。ただ、雑草の種子が多く残され、しつこい雑草も多く2~3年間は除草作業に追われます。

 

以上のように新規の圃場は穀類の二毛作等で、年間二回草木堆肥を振り、最低2年間の土作りから始めます。

但し、水田の跡地の場合は、泥田が固まっており、土壌の表層(10㎝程度)部分は腐食化が進みますが、水捌けが悪く周囲(側溝)を掘り下げ、水を逃がします。

新規の畑は先ずは土木工事から始めなければなりません。

 

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(草木堆肥歴3年未満の畑)赤ラベル

小麦・大豆・さつまいもなどの栽培で1~2年間ほど土を育てた圃場は、2年ほど経過した後、根の浅い葉物野菜や枝豆等の窒素固定化野菜(根粒菌により空気中の窒素を根に取り込む)穀類を育てていきます。

 

※草木堆肥施肥量の目安

施肥量の目安は、長さ80mの畝二ヶ分に軽トラック1台分の草木堆肥を撒く。

同時に、焼き灰2:苦土石灰6:蛎殻2を蒔き土を耕す。酸性雨が多く降る日本では圃場の土をできるだけ中性に近づけるようにしなければならないことと、元々堆肥は弱酸性ですので、弱アルカリ性の石灰等が不可欠となります。

完熟一歩前の草木堆肥には、増殖中の微生物や菌類が活きており、草木などの有機物残渣と草や菜の花などの鋤き込んだ緑肥を餌にして土の中で増殖し続ける。微生物等の増殖作用そのものが、畑を耕してくれていると言う訳です。

草木堆肥施肥によって土は1年間でおよそ深さ3㎝腐食化(団粒化)が進む。3年間土作りをしてきた畑はおよそ10㎝の深さまで腐食が進む。そのため根の浅い葉野菜から生産を始める。歯切れはあまり良くないが、味香りが出てくる。土壌には明確な団粒化の跡はまだ見えないが、鍬の入りが良くなる。

むかし野菜の邑の等級では「赤ラベル級」の価格を設定している。

葉物野菜は年間4回転はする。初期的な土作り途上の畑は堆肥施肥をなるべく多くするために回転率の高い葉野菜などを育てる。

 

赤ラベル級の畑で育てる主な野菜の種類

小松菜・青梗菜などの葉野菜、レタス系、じゃがいも、分葱、玉葱などの根の浅い野菜

 

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(草木堆肥歴3年以上5年未満の畑)銀ラベル級

 この頃から土壌は深さ15㎝まで腐植が進み、少しずつ団粒化(砂状)の跡が見え始める。

野菜の味にも明確な変化が出始め、味香りが明確になり、歯切れも良くなる。

この段階では大根・ホウレン草・蕪類・胡瓜・ズッキーニ・南瓜などが育てられる。

 

(草木堆肥歴5年以上の畑)金ラベル級

土壌には団粒化の痕跡が顕著に見られ始め、鍬の入りは断然に良くなる。

野菜の味にも明確な変化が出始め、味香り・食感に加えて旨味が出てくるようになる。

野菜を使い慣れたシェフや味覚の鋭い主婦層には違いが分かってもらえる。勿論、普通の舌しかも持たない農業者(私も含めて)はこの違いを見分ける訓練をしなければならない。

木もの・実物・根菜など何でも育てられる。白菜・キャベツ・セロリ・ブロッコリーなど

生育期間の長い野菜には、堆肥の量を増やすか、先肥を行う。(後述)

 

むかし野菜の等級

赤ラベル・・・土作り歴3年未満      土の団粒化は深さ10㎝ほど進む

銀ラベル・・・土作り歴3年以上5年未満  土の団粒化は深さ15㎝ほどに進む

金ラベル・・・土作り歴5年以上      土の団粒化は深さ20㎝まで進む

プラチナラベル・・・土作り歴10年以上  深さ40~50センチまで微生物層あり。

尚、土作り歴10年以上の畑は、オールマイティな畑となり収量も多く、栄養価に富み美味しい野菜ができる。

 

このように、土が育つには長い年月を要します。

ある学者が「一度に大量の草木堆肥を施肥すれば、短時間に土が出来上がる」と書いているのを読んだことがありますが、それは無理です。土壌に小虫・微生物・菌類などの生態系ができあがるには長い年月を要します。

そのため、最初は作物の回転が速く、根の浅い葉物野菜からはじめます。

自然循環の仕組みは人間が一朝一夕にできる業(わざ)では無いのです。

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※小規模農園や家庭菜園を行う場合

草木堆肥を本格的に作るとなると大変なので、以下のようにされると良いと思います。

  • 除草した草や収穫した野菜の屑や残渣を畑の一カ所に集める。
  • 公園や山間から葉っぱを集めてきては草に混ぜておく。
  • 市販の鶏糞や畜糞をその上から時折振りかけておく。
  • 厚手のビニールをその上に掛けておく(微生物や菌類は直射日光に弱い)

ある程度それらが溜まってきたら、フォークなどで高さ1m位に積み上げ、水分量を調整しながら(湿っている程度で良い)踏み固めておく。これを踏み込み堆肥と言います。

高さが足りないため、圧も低く完全発酵には至りませんが、ある程度熟れてきたら隣に切り返します。(酸素を補給)堆肥がぼろぼろになったら土に混ぜ込みます。

 

草木堆肥の切り返し

堆肥の切り返しは季節にもよりますが、約一ヶ月半が目安です。良い堆肥ができたら嬉しくなりますよ。

家庭菜園では、追肥として米糠・油粕などを約2ヶ月間発酵させ使います。

これも水分を加えて厚手のビニールを掛けておきます。(ぼかし肥料と呼びます)