むかし野菜の四季ーPART2

2022.1.21(金)曇り、最高温度8度、最低温度1度

 

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日曜日からまとまった雨が降るとの予報でビニールトンネルを全開する。

すると隠れていた冬野菜・春野菜が姿を現す。

厳しい冬の間はビニールトンネルを張り、野菜達を凍結から守ってやらねばならない。

ただ、寒いからと言ってトンネルを掛けたままでは、徒長したり、弱々しい野菜しか

育たない。水も足りなくなるし、直接に太陽に当ててやらねばならない。

急に剥いでしまうと、ひ弱に育った野菜達は寒気を受けてそのまま落ちてしまう

かもしれない。

そのため、朝からトンネルを剥ぎ、徐々に寒気に晒し、慣れさせて行かねばショックを

受ける。このトンネルを掛けたり剥いだりのタイミングが実に難しい。

これだけは経験と勘が必要となり、何より物言わぬ野菜の気持ちに添った愛情といたわりが最も重要となる。

 

 

むかし野菜の四季ーPART2

「草木堆肥の使い方」

草木堆肥による土作りがある程度進むと、本格的に多種類の野菜生産に取りかかります。

N/C比の低い草木堆肥であっても3年以上土作りが進んだ土壌は、微生物・菌類などの生物相が出来てきており、野菜の根と共生しながら野菜の生育に絡んできます。

また、有機物残渣も残っており、窒素分が全く無い訳ではありません。

そうした土壌の中に草木堆肥(元肥)を振り、併せてミネラル分補給と酸性土中和のために、草木灰1:蛎殻1:苦土石灰3を混ぜたものを施肥します。

これは酸性雨などによって酸性化が進んだ土壌のペーハー調整と青枯れ病などの病原菌を抑止するためです。

堆肥等を振り終わったら直ちにトラクターで鋤きこみます。

施肥された草木堆肥は完熟一歩手前のものを使うため、未だ増殖中の微生物や菌類が残っており、これらの菌類は太陽には弱いのです。

 

草木堆肥の特質は、以下の通りです。

完熟一歩手前の草木堆肥(元肥)を振り、直ちに種を蒔く、あるいは定植すると、

施肥後約一ヶ月  土中の窒素供給は弱い    野菜はひげ根を伸ばし基部を形成

施肥後二ヶ月目  土中の窒素供給は強い    野菜は急成長する

施肥後三ヶ月目  土中の窒素供給は微弱   野菜の成長は止まる

 

植えられたばかりの野菜は土中の微生物等によって窒素の供給は妨げられ、その間に野菜は窒素分を探して土中に根を張り、約一ヶ月間で十分に基部が育ち、二ヶ月目で微生物の活動が沈静化し始めると土中に窒素分の供給が増え、急速に野菜が生長し始めると言うサイクルが生まれます。不思議ですね。

その2ヶ月半~3ヶ月後に、土中からの窒素分の供給が止まると(窒素を切る)、野菜は内部に蓄えられた糖質(デンプン・炭水化物)を、自らが生き残るために分解し始め、生きるためのエネルギー(糖分やビタミン類)に変える。これを完熟作用と言います。益々不思議な生命のメカニズムですね。

完熟に向かっていく野菜生長のメカニズムを、この草木堆肥によって引き出していたむかしの日本人達の叡智には驚かされます。

 

むかし野菜の邑では、肥料を使わないとは言いましたが、窒素分が少ない草木堆肥の欠点を補い、安定した収量を確保して行くには草木堆肥の使い方に工夫が必要です。

野菜を安定的に育てるには、土を育てる元肥・野菜を育てる先肥・野菜の生長を増長させる追肥があります。むかし野菜の邑ではこれら全てで草木堆肥を使っております。

日本のむかしの農法では、元肥である草木堆肥の他に、人糞・藁・草などを混ぜて醗酵させた肥え(追肥)が使われておりました。

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               生育途上の芽キャベツ

この野菜も元肥・先肥と使います。

芽キャベツは下から徐々に収穫していきます。

枯れた葉っぱは掻いてやり、次第に上へと収穫をしていきます。

食感が命の野菜ですので、食べる際は一端湯がいておき、スープなどへ投入するのは

スープが完成する直後に投入しますと歯切れの良い食感と美味しさが味わえます。

 

 

それでは、むかし野菜の邑での各種野菜に応じた草木堆肥の使い方をご紹介しておきます。

  • キャベツ・白菜などの巻きもの野菜(堆肥量を二倍に)

草木堆肥は肥料ではありませんので、肥料分を欲しがる野菜を栽培する場合は、どうしても堆肥を厚めに撒く必要があります。通常の堆肥の量を二倍にします。

根を張り終わるまでは、土中からの窒素供給はあまり無い方が良いのですが、芯の部位が急成長して巻くキャベツ等については、元肥施肥後、2ヶ月半から3ヶ月で窒素供給がピークに達するようにあらかじめ通常より二倍の堆肥を施肥しておきます。

すると成長期に窒素分が野菜の芯の部位に働きかけ、急速に巻いてくるのです。

窒素供給が少ないと開いてきます。

 

  • ブロッコリー・カリフラワー・セロリ・南瓜などの成長期間が長い野菜(先肥を)

これらの野菜は樹勢が強く、成長期間も長く、多くの窒素分を欲しがります。

そのため、草木堆肥を施肥し耕した後、定植する箇所にスコップ1~2杯分の草木堆肥を施し、野菜を定植します。その際、堆肥は弱酸性のため、苦土石灰と焼き灰を少し足してやります。これを先肥と言っております。

二番果・三番果が次々と出てくるブロッコリーなどの場合は、肥料分が足りないと判断されれば、追肥も行います。

 

実が成る野菜(トマト・茄子・ピーマンなど)は先肥を施し、最初の実を収穫する頃、追肥として堆肥を施します。畑作りのための元肥、植え付けの際の先肥、実成りを良くするための追肥と、三回は草木堆肥を使います。追肥の際は、除草を兼ねて鍬で中耕(畝下をさらう作業)をして堆肥に土を被せます。(畝下を深く掘り下げることによって、根に酸素を供給してやります)

追肥のタイミングは一番・二番果がなり始めた頃です。

茄子などは秋茄子にするため、さらにもう一回堆肥を追肥として施肥することもあります。

こうすると、寒がこなければ11月一杯まで収穫が可能です。

 

※小規模農園や家庭菜園の場合

家庭菜園などでは、草木系の堆肥はそんなに大量には作れません。

元肥をやったとしても急に地力は上がってきませんので、どうしても窒素不足に陥ります。

その場合は、化成肥料やぼかし肥料を追肥として施肥することをお勧めします。

化成肥料だからと言って、土を汚すことにはなりません。要は肥料を過度にやり過ぎなければよいのです。

ぼかし肥料は、家庭の残飯・米糠や油粕や乾燥鶏糞や乾燥牛糞などを混ぜて水をやり、厚めのビニールなどを掛けて、可能ならば、葉っぱなどを加えて約2か月間ほど醗酵させれば、出来上がります。

 

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           巻き始めた春白菜(2月下旬頃)