「気候変動による露地栽培の危機」

2024.1.4(木)晴れ、最高温度12度、最低温度1度

 

新年最初の農園日誌です。農園日誌をご愛読頂きありがとうございます。

今年もよろしくお願い致します。

皆様にはもうお気づきの事とは思いますが、去年から様々なタイトルに分けて

皆様により分かり易く、現在の日本の農業の現実をお届けしております。

現在様々な農業政策を見るに付け、国が農業を見捨てているとしか思えない現状を

ご理解して頂きたいのです。

日本の健全な食を確保していくことは、農業者だけの問題では無いのです。

世界的な食糧危機は目前に迫っております。

日本の食糧安全保障の観点で消費者の皆様へ訴え続けて行こうと考えております。

 

2.美味しい野菜(旬菜)が無くなるーPART4.「気候変動による露地栽培の危機」

ー露地栽培野菜の衰退― 

 

毎年、異常な気候変化が続いており特に最近の10年間はその異常さは際立っている。気温は乱高下し、四季は乱れ、雨期と乾期が極端になり始めている。

温暖化に伴って害虫被害も10年前とは比べようも無く多発している。一昨年はピーマン・万願寺トウガラシ・パプリカなどが壊滅しました。

夏・秋にメイン野菜が無くなるのです。その要因はカメムシの大量発生です。

異常な気候が日常化しており農産物は急成長したり未熟であったりと過去の実績と経験が役に立たないことも多い。毎年、農業者の勘でその対応策に工夫を凝らすしか無い。

管理し易いハウス栽培とは異なり、露地栽培は常に気候変化の影響を大きく受ける。

平均気温が1~2度違えば、農産物の成長は狂ってくる。それが一気に10度近く乱高下する気候が続けば、野菜にとっては迷惑な話であり、伸びてよいのか、縮こまったほうがよいのか、迷ってしまい、結果として異常な発育をしてしまうことも多い。

 

      定植作業を行っているスタッフ達

このスタッフ達は皆農業経験が無かった方々です。農園主が手取足取りで教えたスタッフ達です。

最初の1年間はほとんど役に立ちません。2年・3年と実践を積み重ねベテランとなっていきます。そして私の大切なパートナーへと育っていきます

 

ある県会議員が当農園を訪れて有機野菜を育てていたある農家が廃業したという話をして帰られた。

その農家はこう言ったそうだ。「ある予定の時季に出荷を見込んで育てた野菜が早く育ってしまったり、間に合わなかったり、出荷先との約束ももうできない。露地栽培は止めてハウス栽培に切り替えるしか無い。それならもうしない」

有機生産者は市場ではなく特定の流通業者へ出荷している。それはいつ頃何をどれくらい出荷するといった約束事で成り立っている。それが守れなくなったことは既存流通に依存している生産者にとっては大きなリスクとなる。

 

当農園は農協も含めて流通へは一切出荷をしていない。

全国の飲食店や個人消費者などの定期購入顧客や農園マルシェなどで直接販売している。

そこには規格・均一・出荷時期などの制約は無い。常に畑での出来合いの野菜を届けることで成り立っており、サイズは大小様々、見え形は不揃い、虫食いの痕も時季によってはひどいものもある。その代わり、美味しさ・食感・味香り・栄養価などは数倍以上あり、それを評価して頂く消費者との信頼関係が全てと言うことになります。

慣行栽培野菜に慣れた消費者への啓発啓蒙活動を続けながらのお客様とのコミュニケーションが大切にはなるが、それもまた新たな出会いとなり楽しい。今日もお試し購入のお客様から「蕪のような丸い野菜はどう食べたら良いのですか?(蕪キャベツ=コールラビ)」と携帯電話が鳴る。

固定客となったお客さんはこう言う。「一週間、あるいは、二週間に一度届けられる野菜達を洗って冷蔵庫に直す。スーパーへは行かない。無駄遣いも減った。冷蔵庫にある野菜で何とかする。その習慣が出来ると献立を考えるのが楽しい。以前ほど今日は何を作るのか悩むことも無くなった」

それらの固定顧客は当農園の野菜しか食べない方が多く、「今野菜がありません」と言うことはできない。

スタッフ達はご家庭の食卓を支え、ご家族の健康を守っていると言う使命感と自負心は強い。

 

 コールラビ(蕪キャベツ)

キャベツの芯が太くなったと考えたら良いです。薄くスライスして炒めたり、サラダにしたりすると甘くて美味しい。欧州では一般的な野菜で、当農園は20年前から取り組んでいます。

 

気候不順を繰り返す気候変動に対処するためには、露地栽培農家は気候の変化を読む農業者の勘が必要になり、従来の経験やセオリーは通用しない。

季節の変化の先を読み、種蒔き時期を常に変えて行かねばならない。

今までは2月中旬頃に種を蒔いていた大根・人参・春白菜などを1月初旬頃に種を蒔き始めたり、初夏野菜であるズッキーニの秋作を試みたり、南瓜の二期作を行ったりと、試行錯誤を繰り返し、捨て植えの連続となる。露地栽培では平均気温が1度違っただけで、野菜の受けるダメージは相当なものになり、発育が狂ってしまうのです。

このように消費者への直接販売を継続的に行っていくためには、露地栽培農家は野菜を切らさない創意工夫と農業者の勘が重要になってきています。

 

消費者とのコミュニケーションを図るため、定期的に農園体験会を行っております。

時には子供さんも含めて200人を超えることもあります。大切なことはお母様達の

食に対する意識を変えていくことですが、これが中々に難しいのです。


ただ、直接消費者へ野菜を届ける直販という仕組みは良いことだけではありません。

健全で美味しい個性豊かな野菜を食べて頂ける消費者を自ら探さねばならず、そういった価値観を持っておられる消費者とのコミュニケーション方法が難しくなります。

メディアに紹介されても物珍しい感覚で一時的に増えたお客様は長続きしません。

やはりこの野菜達は食べて頂いている同じ価値観を持つ消費者の皆様に頼るのが一番早道です。つまり口コミしか無いのです。当農園では今居られる定期購入のお客様などの固定顧客(仲間達と表現していますが)には徹底的にサポートしております。やはり信頼関係がもっとも大切なのですね。