ー露地栽培野菜の衰退―

2024.1.13(土)晴れ、最高温度12度、最低温度2度

今年最初の草木堆肥作り、破砕作業と一緒に早朝から行いました。

スタッフ全員年末から年始に掛けて一年に一回の貴重な長期休暇の後でしたので、

皆、いささかお疲れ気味でした。農園にとっては無くては成らない草木堆肥です。

これから始めるのは新年の仕事始めにふさわしいのですね。

 

美味しい野菜(旬菜)が無くなるーPART5.「置き去りにされる露地栽培生産者達」

  

お客様へ直接販売する露地・自然栽培農家では、毎回同じ野菜を届けるわけにはいか

ないので一シーズンに40種類以上の野菜を育て、毎週いくつかのアイテムを変えな

がら15種類以上の野菜を定期的に届け続けねばならない。結果として年間百種類

以上の野菜を栽培するようになりました。

それに加えて露地栽培には端境期というものがある。ハウス(施設)栽培では加温

ハウスも含めて季節を調節できるが、露地栽培では季節に順な旬菜しか採れません。

植物の種子は元々それが生まれた地域に即した遺伝子を持ち、その野菜にあった気候

で育つものです。

さらに寒暖の差・雨・風・太陽などの自然に晒され、淘汰され生き残った植物だけが

成長します。ですから、季節に順な作物は美味しく栄養価もあるのです。

これが旬菜です。

ブロッコリーの定植

草木堆肥を振って耕し、畝立てを終えたら更に草木堆肥を先肥としてスコップ一杯分

施し、混ぜ合わせて定植を行う。窒素分が少ない欠点を先肥を使うことで補っている

のです。

収穫期間の長い野菜にのみ行う農法です。自然栽培には様々な創意工夫が必要です。

 

露地栽培には、その端境期と気候変動を凌ぎきるだけの栽培技術・知識経験とノウハ

ウが必要となり、10年20年と長い実践を積み重ねていかねば続けてはいけない

のです。

処が露地栽培・多品種栽培などの知識・ノウハウを持っていた農業者が居なくなって

います。

私が農業を始めた50代の頃には、農業を教わるお年寄りもいましたが、残念ながら

その農業者そのものが居なくなりました。

今は私がそれらの経験や知識を数少ない次世代の農業後継者に繋げるしか無い事に、

焦燥感さえ抱いております。

 

放棄されていた畑の再生

この畑は竹や蔓そして雑木が生い茂り荒れ地になっていました。4年前にスタッフ

総出で開墾して今は麦・大豆の穀類畑に変わっています。

年間2回草木堆肥を振って土作りの真っ最中です。野菜にはまだ適しません。

数年後には地力が上がり見事な野菜畑に変わっていくでしょう。

このようにして再生を果たした圃場が約1ヘクタール(3,000坪)あります。

 

欧州やアメリカでは国家が露地栽培農家を手厚く保護している。

例えば、一ヶ250円のキャベツを出荷すれば、露地栽培農業には同額の支援金を

受け取れますが、ハウス栽培には商業的施設栽培であると判断され補助金は出ません。

欧州においては国民の意識の中に、露地栽培農家が「食の確保と国土と自然環境を

維持保全してくれている」と言う考え方があり、当然だと認識されているからです。

果たして日本の国民にそのようなコンセンサスが得られるでしょうか・・・!

 

日本の場合は露地栽培には支援金はほぼ0ですが、ハウス栽培には規定の条件

(作物指定等)を満たせば、農協を通して30%前後の補助金が出る。施設には多額

の費用が掛かると言う理由のようです。

(ただ、この補助金には品目指定などのがんじがらめの制約が掛けられ、農家の自由

さは一切無く、市場環境の変化などにより当該品目に市場性が無くなった場合には、

作物変更は受け入れてもらえないためこの補助金を受けた農家は次第に追い込まれて

いくことになる)

中山間地を多く抱えている日本の農地は狭く生産効率が悪く手が掛かる。

農業離れが進み、地域から子供の声が消えており、膨大な水路や豊かさの象徴で

あった田園風景を維持する農業者が居なくなっている。

中山間地は荒れ果て、雑木が生い茂り鳥獣の住処となり二度と元に戻すことはでき

ないでしょう。

日本の食と国土を守ってきたのは、地域の農業者達でした。有史以来1,000

年以上の時を掛けて築き上げてきた農業用水路が消滅するのです。

世界が自国の食料確保に走る時、日本では食べるものはすべて海外から得られるこ

とになるのでしょうか?目前にその危機は迫っています。

それでも日本の政府は小規模農業を保護対象から切り離してしまっており、日本の

地域農業の消滅は時間の問題となっているのです。