農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.29(水)晴れ、最高温度21度、最低温度9度

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今日は出荷日。そして農園直売日。

朝から多くのお客様が訪れてくれて、店頭に並べた野菜が次から次と無くなる。

その度に、畑に走り、野菜の補充をすることになった。

これもコロナショックなのかもしれないし、ようやく大分の消費者に認めて

頂けるようになったのかもしれない。

訪れてくれるお客様の顔も、始めた頃、恐る恐る野菜を手にしていた雰囲気とは

異なり、確信を持って買って頂いているように見える。

お客様の声も、他の売り場とは違って、説明を聞いてもどこかやさしい気持ちに

なれると言って頂いている。ありがたいことだ。

 

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2020.4.13 夏野菜の本格的植え込み始まる

一月からハウス内の育苗用トレイに種を蒔いて、ポットに揚げ、踏み込み堆肥の

上で育ててきた夏野菜の第一陣から定植が始まった。

トマト類・ピーマン・パプリカ・とうがらし類・茄子類など。
例年であれば、4月初旬、畑に定植し、4~5月の春の暖かさで根を張らせ、

6月の梅雨時期に一気に枝を広げ、7月初旬頃からぼちぼちと実を成らせ始める。

本格的出荷は7月後半から8月の盛夏になる筈である。日本の四季のサイクルは

旬野菜の生育を促してくれていた。

唯、最近の数年間は、日本の四季が壊れてきており、雨期と乾期のサイクルが

巡り始めており、年によって出来不出来が激しくなり始めている。今後、

自然環境の中で育てる露地栽培はリスクも大きく、その栽培に経験に基づく勘が

必要なこともあり、露地栽培農家が激減している。

露地栽培は栽培ノウハウや経験・知識がものを言う。さらには、毎年変化し続け
ている気候変動が露地栽培の難しさを加速させている。
そのため、管理し易い施設園芸が主流となっており、季節感の乏しい促成栽培

抑制栽培などのハウス栽培野菜が市場を占めている。
現代農業は、露地で美味しく育つはずの「旬菜」と言う言葉が失われつつある。

 

 

さらに農業者を育てて行くには現在の世相は難しくなってきたことを実感して

いる。特に、当農園のような低窒素栽培(自然栽培)の場合、成長が遅く、

目まぐるしい自然条件の変化に晒される。味香り豊かな(繊維を感じさせない)

歯切れの良い本来の有機野菜は厳しい自然環境に晒されることでより美味しく、

栄養価も豊かになる。そのことを、どれだけの消費者が理解してくれるだろうか。

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「美味しい野菜は栄養価がある」このことを知っておられる消費者はどれくらいいるのだろう。

化学物質を排した土壌から生まれてくる野菜達は、人の体を癒やしてくれる。腸内細菌は活性化し、

化学物質等の異物の入っていない野菜は免疫力を確実に付けてくれる。

そのことは知らない消費者でも何となく自然栽培は良さそうと感じておられるのだろう。

コロナショックに見舞われた消費者の方々は、普段はやや高いと感じている野菜でも本能的にそれを

求めようとしているのかもしれない。

 

兎にも角にも、今年も穏やかな四季の国であってくれることを祈っている。
古来より、農民は天の神に、五穀豊穣を願い、穏やかな四季が訪れてくれる

ように神社に祈りを捧げてきたものだ。残念ながら農園主は信心も薄く、徳も薄く

神社に祈ることはしないが、自然の神には、畏敬の念を抱いており、一所懸命に

努力している全国の農家が良い年であることを願っている。

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さて、夏野菜の植え込みである。
今年から佐藤自然農園にて学んできた竹内さんが、いよいよ、独立農家として

一人立ちすることになった。それも夏野菜のメイン圃場である5・6番(約4反)

を担当することにした。
この圃場は、草木堆肥歴7年目を迎える。この地域でも高地にあり、水捌けの

良い畑である。
そのため、水を好まない南米原産のトマトを植え込む。そして、比較的水分を

好まないピーマン・パプリカ・万願寺とうがらしなどが夏場のメイン野菜となる。

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茄子類・胡瓜類は、水分を好むため、佐藤自然農園の圃場である乾燥し難い

2・4番の畑に植え込む。

草木堆肥の特性は低窒素であり、次々と成って行く実物に対応するために、

畝全体に草木堆肥・焼き灰を撒き、鋤き込む。定植する際に、先肥と称して、

スコップ二杯ほどの草木堆肥を遣り、そこに直植えする。

根を充分に張りだした頃に草木堆肥の肥料効果が出始め、枝を茂らせる。
一番果が付き始めた頃、追肥と称して草木堆肥を畝間に施る。丁度この頃、

梅雨が終わりかけで、畝上の土が長雨で洗い流され、畝下に落ちてしまって

いる。
土寄せと言って、畝下を深く揚げることにより、根に酸素が供給され、木は

活性化し始める。これを中耕と言う。
これが夏野菜の生長を促す作業であり、梅雨の長雨によって堅くなった土を

ほぐし、野菜が呼吸しやすくしてやらねば、野菜の生育は止まってしまう。

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長い梅雨時期に降り続いた雨のため、畝の土は流され、畝が無くなっている。

梅雨が終わるか終わらない時季に草木堆肥を畝上に施肥し、畝下を鍬で埋まった土を深く掘り上げる。

 

ミネラル分及び炭素が豊富な草木堆肥は、そこに棲み着く微生物や放線菌によっ

て分解され、土を育ててくれる。その土の力によって低窒素栽培でも野菜が育つ。

それは草木堆肥にしか達成できない美味しい野菜の秘密なのです。

その秘密は先人達の叡智でもある。

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3番の畑に番の 自生したジャーマンカモミール。野生の生命力の強さを感じる。