農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季-2

2021.3.3(水)晴れ、最高温度11度、最低温度3度

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                キャベツの定植

 キャベツは春キャベツ(品種名)を植える。昨今の消費者は使い切りサイズの

野菜を好む。それなら、小さく、歯切れの良いサラダにも向く品種の方が良い。

お客様には交互にお届けできるようにと、白菜も同時に定植している。

隣に見えるのは、エンドウ豆系3種。豆が登りやすくするため竹の枝を残して

支柱としている。

キャベツ・白菜は去年の秋から春にかけて年間を通して7~8段階で定植する。

 

(露地栽培の危機)

蕪類の球が育っていない。葉っぱだけ大きく葉を広げている。

色蕪が大きく育っていると思って、引いてみると球は極端に小さいのにすでに

莟を持ち始めている。10月に種を蒔いた大根もすでに莟立ちを始めた。

九条葱は3月の初めだと言うのに白っぽく葉の色を変え始めている。

例年は3月下旬頃葱坊主が出始めるころに見られる変化です。

これに反して、寒で成長が見込めないため、緊急避難的に育苗ハウスに種を

蒔いたホウレンソウや葉物野菜は頗る順調に一か月半で大人になっている。

(露地だと二ヶ月半掛かる)

昨日、二宮県会議員が農園を訪れて有機野菜を育てていたある農家が廃業

したという話をして帰った。「ある予定の時季に出荷を見込んで育てた

野菜が早く育ってしまったり、間に合わなかったり、今までの経験が全く

役に立たない。出荷先との約束ももうできない。露地栽培は止めてハウス

栽培に切り替えるしか無い。それならもうしない」と言ったそうだ。

有機生産者は市場ではなく特定の流通業者へ出荷している。それはいつ頃

何をどれくらい出荷するといった約束事で成り立っている。

それが守れなくなったことは露地生産者にとっては大きい。

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           ハウス横の李(スモモ)に花が咲く


 ここ数年、異常な気候変化が続いており、特に去年から今年にかけては

その異常さは際立っている。気温は乱高下し、雨は降る月と降らない月が

極端に動き始めている。

ハウス栽培とは異なり、露地栽培は常に気候変化の影響を大きく受ける。

温度が1~2度違えば、野菜の成長は狂ってくる。それが一気に10度近く

変化している気候が続けば、野菜にとっては迷惑な話であり、伸びてよい

のか、縮こまったほうがよいのか、迷ってしまい、結果として異常な発育

をしてしまう。

 当農園は流通業者へは一切出荷をしていない。

全て直接、飲食店や個人消費者などの定期購入顧客へ届けている。

そこには規格・均一・出荷時期などの制約は無い。常に畑での出来あいの

野菜を届けることで成り立っており、消費者との信頼関係が全てと言うこと

になっている。

 それでもこの異常な気候変動による影響は大きく、年間百種類以上の野菜を

作り続け、全国のお客様に安定的に、かつ、15種類以上の野菜を届けるには

別の悩みがある。

野菜の安定的な生育が見込めず、アイテム数の不足と不出来の場合の量の確保

が難しくなるということです。

土作りを行い無肥料で育てる自然栽培では、野菜の成長は遅く、気候変動や

害虫被害などの影響を受けやすく生産リスクの塊となる。

そこで、当農園では絶えず変化する気候に合わせて数年前から捨て植えを

行っている。

例えば、出来るかどうか不安の残る野菜は種蒔き時期をずらし、二週間置き

に植え込むようにしている。そうするとどちらかが上手く行くという目算です。

ただ、両方とも上手く育ってしまうと野菜がだぶつくことになってしまう。

 

 気候の変化をまともに受けてしまう露地栽培農家は、年々減り続けている。

自然に順に育つ露地物野菜は益々希少価値が出てくることになる。

ハウス栽培と比べて季節に合った美味しい露地野菜の事を知らない消費者が

多い。

その意味では、私達の取組を伝える市場啓発活動は続けて行かねばならない。

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                冬のビーツ