肥料を使わない自然栽培

2023.12.9(木)晴れ、最高温度14度、最低温度6度

 

肥料を使わない自然栽培農業―野菜を育てるより先に土を育てろ!―PART3.


自然栽培と言う言葉は一般的では無いようです。自然農と言う言葉が良く使われております。
自然農(持ち込まない・持ち出さない)と言う概念は多くの消費者が誤解していたり、
間違った認識をしているようです。
自然農と言うやり方は長い農業の歴史の中では存在しておりません。
「これは採れても採れなくとも良い」家庭菜園でのお話です。
それでは農家は生活が成り立ちませんから現実味の無い農業となります。

ここでは自然農では無く、日本古来からの草木を使った自然栽培について話を進めます。

                                       手前が完成した草木堆肥(二次発酵済み)

農園体験会の一シーンです。大人達には草木堆肥の作り方や草木堆肥が土壌をどのように変えて行くかの紹介をしました。
子供さん達は積み上げた草の上で遊んだり、タイヤショベルに乗ったり、と楽しんでいました。

左の山は草、堆肥の向こうに見えるのは堆肥作りに広げた草、奥に見えるのは園芸会社が持ち込む剪定枝の山です。
これだけの堆肥の量だと半月分です。畑作りのシーズンには月に2回以上は堆肥を作ります。

 

私も農業を始めた頃は有機農業を目指して様々な有機肥料を試みました。

米糠・油粕・畜糞・海藻・魚腸・骨粉・籾殻などを発酵させて肥料としていました。

処がこれらの高窒素成分を多く含む有機物をやればやるほど、野菜は成長し続けるのですが、味香りが無くなっていきました。私が目指している有機野菜はどこか違うと、

図書館通いを始めました。

野菜の性質のこと、発酵のこと、微生物や菌類のこと、土壌のことなどなどでした。

そして、江戸時代の農業本と出会い、意味は不明ながら(私に学識が無いため)古人達の土作りの歴史を知ることができました。

そこで今から25年前に高窒素となる有機材料を捨てて、低窒素である草・葉っぱ・木屑に絞り、草木堆肥を作り始めました。動物性の材料を入れないと発酵が遅く、藁や草を食べさせている繁殖牛や放牧している牛糞を10%ほど加えることにしました。(人糞の替わりですね)

今となってはそれが正解だったのですが、鶏糞・豚糞・肥育牛の糞には多量の抗生物質や化学物質が含まれており、どうしても畑に化学物質を持ちんでしまいます。

特に抗生物質は菌類や微生物達を排除する危険な存在です。(配合飼料の中に大量の抗生物質を入れて畜舎の中で病気が蔓延することを防止している)これが草木堆肥に辿り着いた経緯です。

最もウィルス・菌類・微生物の繁殖力は強力であらゆる有機物を分解します。
例えば、ダイオキシン・石油・化学物質・抗生物質までも分解して自らが増殖します。
ただ、様々な薬品や抗生物質が入った畜糞を直接、畑に施肥した場合はやはり危険です。
残念ながら畜糞を使用している多くの有機農家さんの土は死んでいます。
土壌がごわごわ状態で微生物・菌類はおそらく死滅してしまっているようです。


              草木堆肥の切り返し作業

堆肥を積み上げてから20日前後で一回目の切り返しを行い酸素を補給します。二回目の切り返しで完熟一歩前の堆肥は完成です。当農園では完熟堆肥は作りません。
完熟してしまうと有機物残渣は無くなり、それを餌として増殖する菌類や微生物は数少なくなってしまいます。
畑を耕し続けてくれる彼らには生きていく食糧(有機物残渣)が必要なのです。

草木堆肥は草6:葉っぱや木屑3:牛糞1の割合で混ぜます。発酵に約一ヶ月半ほどを要します。
この方法は加圧式と言います。


家庭菜園で草木堆肥は作れますが、何分にも量が少なく圧力が加わりませんから発酵が遅く、数ヶ月を要しても当農園のような堆肥は出来ません。それでも良いのです。

木の種類は雑多で、それぞれの木に多様な菌類や微生物が棲み、割合の異なったミネラル分が含まれています。
これが大事なのです。畑のバランスを保ってくれているのです。何故、木屑や葉っぱかと言いますと、木は地中深く根を張りマントルの中に多様に含まれているミネラル分を吸収しているからです。
農業に使われている圃場はこの希少なミネラル分を収穫の度に持ち出しており、雨しか補給はなされず常に不足気味なのです。
草木堆肥は不足したミネラル分を補ってくれており、かつ多様な生命相を畑にもたらせます。

               堆肥作りの風景

草を広げ、その上に牛糞を被せ、さらにその上に木屑や葉っぱを重ね、トラクターで混ぜ込みます。

それをタイヤショベルでおよそ2メートルの高さに積み上げ水分量を調整しながら発酵を促します。その前に草集めと剪定枝の破砕作業を行います。これらの一連の作業は大きな労力と手間を要します。今ではこのような草木堆肥を作っている農家は全国には居ないでしょうね。

 

最後に人間も含めて生物は細胞形成する中で多様なミネラル分の働きにより正常な細胞分裂を促します。
このバランスを損なうと病気にかかりやすくなるのです。

私たちは畑を耕し、野菜を植えて野菜のお世話をしていますが、自分で作り上げたと言った実感が沸かないのです。健全な野菜は微生物や菌類が土を育て、野菜を育んでいるのです。

どうでしょうか?このむかし野菜を皆様の体が美味しいと感じてくれると思いますよ。