農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.12.2(水)晴れ、最高温度14度、最低温度7度

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今年も麦蒔きの季節がやってきました。スタッフ総出で2反の圃場に

草木堆肥を振り、麦を蒔く。残り5反を今年中に終えなければならない。

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「土作り」

江戸時代の農業本によると、日本の先人達は、数代を掛けて草木堆肥によって

土作りを行うと、記しております。

むかしは、化学肥料も畜糞も無い時代、草・柴・葉っぱとわずかな人糞・牛糞

などの有機物を、発酵させて堆肥を作っておりました。(2~3年掛かり)

それを定期的に圃場に入れ、微生物・菌類の力を借りて、何代にも亘って土を

育ててきました。

これが本来的な有機農業であり、自然循環農業です。

有機JAS規程ができる以前に、様々な方法で有機野菜を作っている多くの先人

達がおり、彼らは、堆肥であれ、肥料であれ、それぞれの独自の方法で自ら

有機堆肥を作っておりました。

皆、異口同音に、野菜を育てる前に、先ずは土作りを!と言っておりました。

現代は、機械もあり、昔と比べて草木堆肥作りも随分と楽になりました。唯、

残念ながら、現在は草木堆肥を作っている有機農家は居なくなってしまいま

した。

今の時代、有機農家も大量の畜糞が容易に手に入り、それらを堆肥としてで

なく肥料として圃場に投与しております。

現在の有機農業では、土を育てるのでは無く野菜に直接的に肥料を与えて野菜

を育てている。

手間の掛かる草木堆肥を作る農家も居なくなり有機農家が「堆肥をやっている」

と言っているのは、実は「肥料をやっている」と言う事なのです。

 

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畑からキノコが!

当農園では珍しいことでは無い。江戸時代の農業本には、土が育って来たら、キノコが生えると

書いてあった。草木堆肥の中に棲んでいる菌類が畑でも順調に育ち、土を浄化してくれている。

それだけでは無く、他の畑のキャベツ畑に一匹の蝶々も飛んでいない。当農園では、毎日蝶々が

乱舞しているおぞましい光景を目にする。

何故なら、その後に急に青虫が湧いて出てくるからです。のどかな風景も悩みの種になる。

 

私は、様々な有機肥料(厩肥・牛糞・米糠・油粕・魚腸など)を実験農園と

して試してみましたが、そのいずれも味香り・食感などに満足が得られず

むかしの農法に戻って、肥料はやらず、草木堆肥のみの施肥による

「土を育てる」しかないと思い定めました。

 

草木堆肥を施肥すると、一年間でおよそ、3㎝ほどの深さまで、土の団粒化

が進み、年に3~4回施肥するとして、3年間で10㎝の深さまで団粒化が

進みます。

葉野菜の根はほぼ10㎝程度の深さに、根菜は15~20㎝、木(トマト・

茄子・ピーマンなど)は30㎝の深さまで根を張ります。

化成肥料であろうと、畜糞であろうと、窒素過多の畑の大根は、地表に

にょっきりと出ております。

土が出来て居らず、土が固く、土中に入っている根の部位は短い。

草木堆肥歴5年以上の畑では、地表に出ている部位は5~7㎝程度で、

地中に入っている部位の長さはおよそ25~30㎝となっています。

ちなみに地表に出ている部分は茎となり繊維質です。

柔らかい大根は地中に入っている部位です。

当農園の野菜の美味しさの評価は3段階に分けております。

草木堆肥歴3年未満が赤ラベルの土、3~5年未満が銀ラベルの土、5年以上

が金ラベルの土と分けており、木成りの野菜は草木堆肥歴5年以上の圃場で

しか育てません。

当農園の場合は草木堆肥歴10年以上の圃場が約7割を占めております。

こうなると、もうプラチナラベルです。圃場によっては50㎝の深さまで団粒

構造の土になっており、歩くと、バウンドします。

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           堆肥場

奥に積んであるのが剪定枝、左側が草、右側が作り上げた草木堆肥。

 

 

ここから出来た野菜は、味香り豊かに、実に歯切れの良い食感が得られ、

体が美味しいと言ってくれます。私は思うのです。このやさしい野菜達は、

人間が作れる物では無く、自然豊かな土が育ててくれているのだと・・・

私達は、そのお手伝いをしているだけなのです。

 

※団粒構造の土

 

団粒構造の土は、小さな砂粒を寄せ集めたような土です。有機物残渣・微生物

の死骸を核として、土が固まった状態のことを指します。

 団粒構造の土には小動物・小虫・微生物・菌類が棲み着き、一定間隔で有機

を与え続けると、絶えず進化していきます。自然循環の仕組みがあり、

持続可能な農業に繋がっていきます。

土に肥料を与えずとも、有機物残渣とミネラル分豊富なその土が野菜を育て

てくれます。