農園日誌Ⅱー「活きること」PART20ー本社社屋建設

2019.6.5(水曜日)晴れ、最高温度29度、最低温度19度

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                       麦物語

 今年も第一陣の麦の収穫を行った。
早速、皆様に焙煎した麦茶をお送りした。折悪しく蒸し暑い日々が続き、汗を流しながらの焙煎作業であった。
麦茶は当農園では裸麦で作る。市販のもの(大麦)とは異なり、一味違う味と香りがしてくる。たとえて言えば、暑い盛りにごくごくと飲み干すのではなく、テーブルの上に茶托を置いて、ゆっくりと味わう。そんな表現がぴったりとくる味です。

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早速、お客様から催促のメールが届く。
「麦ご飯セットはまだでしょうか?待ちきれなくてご連絡を致しました」
これは裸麦8:古代麦2の割合でブレンドした麦ご飯です。お米カップ1杯に大さじ
1が基本にします。これも香しい味と香りがするご飯となります。

さらに農園の直売所で、お客様から催促がありました。
これが表題の写真の野菜万頭です。
具の中には、キャベツ・玉葱・乳酸発酵の漬物などが入っており、それはそれで美味しいのですが、何といっても、この万頭の特徴は、皮にあります。
噛んでみると、最初は具の美味しさが出てきますが、最後は皮の味、即ち、麦の香りが突然と表れてくるのです。
これは、中力小麦8;古代小麦2を粉にしたものです。

麦の圃場(大豆も同じ)が草木堆肥による土作りが進んで、一段と美味しくなりました。むかしの人達は随分と美味しい穀類を食べていたんだな!と実感しております。
課題なのは、低窒素自然栽培であるため、収量が慣行農法(化学肥料や牛糞)に
比べて半分もしくは2/3にしかならないことです。


「活きること」ーむかし野菜の新社屋建設
2016.12.22 六次産業化事業育成補助金の交付

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軒下二間(360センチ)、広い外空間がある。ここには、玉葱・にんにく・干し大根と野菜が大量にぶら下がる。所謂、乾燥ヤードとなり、同時に、野菜などの整理を行う。農家にとっては大切な土間となる。この空間が以前より欲しかった。
イベントやセミナーなどの際は、机・椅子が所狭しと並べられる。
この空間にも農林水産省はかなりしつこく問い合わせがあった。

 
大分市へ社屋建設に向けた開発許可手続きを進めながら、六次産業事業育成補助金の申請・折衝を行っていた。
国の補助金など始めてのことで、適合資格や前提条件などがやっかいなことは覚悟はしていたものの、これがまた、開発許可申請以上に規則・適合基準判断の狭さや前例主義に阻まれた。
民間の常識ではあり得ない役人の常識があるらしい。
 
設計図と施設利用計画書を送ると、施設の利用図を提示するようにとして、大分県及び大分市を通じてこのような回答があった。
 
①更衣室や事務所は補助金対象外であり、事務机・ロッカーは置けない。
②社員用便所は対象外。
③多目的施設や部屋は認められない。使用目的を限定すること。
④外部への排水施設工事一式は対象外。
 
この施設は、集荷した野菜の整理ヤード・箱詰めなどの出荷ヤード・農産物の加工ヤード・製粉室及び竈や麹部屋・加工品及び野菜のストックヤード・訪れた子供連れの休憩ヤードからなっていた。
 

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この施設は、常には、農産物の収穫整理及び発送作業を行うが、時には、加工作業・加工品のストックヤードとなり、農産物直売所となる。
そのため、温もりのある施設にしたかった。

①②の更衣室や休憩ヤードは補助金対象外建物として、別途建築することにして、社員用便所もそちらに付けた。④はこちらで折衝する事を諦めた。
この時点で、補助金2/3に減額されたため、当初計画していた借入金は7百万円増加し、計画していた収支計画や返済計画は大きく狂っていた。
 
国や県の対応が余りにも紋切り型で官僚的でもあり、補助金申請を断り、施設計画も変更を決意して、熊本の農政局支所(九州の本部)へ質問状と共に、大分へ出向いてくるように強く要請した。
県及び市の担当者同席の上、熊本農政局の担当者と向かい合い、その場で、このように切り出した。
 
「貴方方は、国の農業振興を担う重要なポジションにおられる。日本の農業は大きな曲がり角に来ており地域農業の壊滅の危機に瀕している。農業者が真に独立しなければ、今後の日本の農業は衰退していくしか無い。そのための、一次産業である農業生産と二次産業である加工産業及び販売サービス産業である
三次産業の融合を目指しているのが、この六次産業化ですね。その点の確認ですが、よろしいですか?」
 
皆を見回していると、市の担当者だけが納得している顔をしていたが、他は渋々一様に頷く。
 
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竈(おくどさん)は、昔の農家にはみなあった。
職人さんがかなりこだわってくれて、このような味のあるものになった。
ここは、味噌作り(米を蒸し、麹を作り、大豆を蒸し、味噌を仕込む)には大活躍することになる。
年に数回繰り返す農園体験会・セミナー・料理体験会などでは、美味しい美味しい竈炊きの御飯ができる。

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かなり雑然としているが、ここには、乾燥機・製粉機・精麦機・大豆等の色彩選別機・篩機などがあり、穀類にとってはもっとも大切な施設となる。

「トイレ・更衣室・事務所などが無い施設は、最早、事業所でも無く、福利厚生以上に問題である。
この点において、貴方方と議論するつもりはありませんし、その補助金を認めなさいと言うつもりもありません。呆れかえって、諦めました。この補助金というものは、私達の血税からなっているものであり、社会の常識とかけ離れた貴方達役人の恣意によって運用されるものではありません。
今日お呼びしたのは、多目的利用は補助金として認めないと言う一点です。
そこでお聞きしますが、この六次産業化の補助金は一体誰に対して助成するものですか?
貴方方の言い分をお聞きしていると、一つのスペースを一目的にしか使用してはならないと言われておりますが、大量生産を行う大企業ならば、そうでしょうが、この補助金を活用する農業者は元来が零細企業ですよ。例えば中央の一つの小さなホールは、ある時は、野菜の整理ヤードであり、それが終わると今度は出荷ヤードとなり、別の時は加工品製造ヤードになり、またある時は、お客様への売り場に変ります。お昼などはスタッフの昼食ヤードにも変ります。
そうしなければ、莫大な投資を余儀なくされ、中小零細企業は成り立ちません。
この施設は、私の個人事業では無く、地域活性化・農業の振興・農業後継者の育成・グループ営農による農業者の自立を目的にして、一部個人の資材を投入し、国の補助金助成を求めたものです。
この計画は大きく遅れてきており、実質損害も発生しております。これ以上議論する時間も余裕もありませんので、今すぐに回答を求めます。そうでなければ、この補助金申請は今日引き下げます。
但し、その際は貴方方も覚悟しておいて下さい。国の六次産業化育成事業の補助金は、その適用において大きな問題を抱えていることやこの交渉経過や子細を、本局に抗議に行きます」

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庭は、農園主の手作りです。昔取った杵柄と言うか、学生時代、造園会社に
下宿しており、そこで3年間、庭作りのアルバイトを行った経験があり、それが役に立った。

 
実に疲れたやりとりであり、不毛の議論でした。
この後、大きく減額は受けたものの、何とか補助金は認められ、とにもかくにも、むかし野菜の邑の新社屋着工に漕ぎ着けた。
 
国の様々な補助金助成金は、不正利用を排除するために、ある程度は制約を加えざるを得ないのは分かるが、あまりにも硬直化しており、汎用性に乏しく、現実に即さない形で過度に限定し過ぎている。
そのため、その施設は、事業者が意図した用途に使われにくくなったり、無駄が多くなったり、資金が掛かり過ぎたりして、紋切り型の事業となり易い。この国の形は、どこかおかしい。
何より、与えているとの意識は、国会議員や公務員が公僕であると言うことを忘れている現れであろう。
 
市の開発許可取得、規制だらけの補助金申請に難航し、予定より一年半も遅れて、ようやく、新社屋が完成した。担当してもらっている公認会計士から、「佐藤さんが、まさか制約だらけの国の補助金の申請を行うなんて、国の補助金行政は、使う会社はほぼ限定されており、優良企業は使いませんよ」とも言われた。
とは言っても、小さな農業グループに、そして先も残り少ない農園主が数千万円の投資をして、農業の未来を託すべき若者達の将来のために、新たな事業と仕組みを作るのだから、やはり負担はできうる限り、少ない方が良い。唯、その交渉折衝は私にとって苦痛であり、上から目線の態度は屈辱的でもあった。

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保冷庫が二つ。その一つがこれです。収穫した穀類・じゃがいも・玉葱などを10度以下にてストックしておく。もう一つが漬物ヤードです。
この保冷庫ができたおかげで、安心して農産物や加工品を保管できるようになった。