農園日誌Ⅱー「活きる」ーPART13ー自然の試練

2019.4.10(水曜日)雨後雲り、最高温度18度、最低温度6度

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                      夏野菜の植え込み

春じゃがの畝の横にトマトの苗を定植。この時季は、春野菜と夏野菜が同居する。
出荷中及び生育させる春野菜と、7月以降に収穫となる夏野菜による圃場の争奪戦になってしまい、例年、畝を空けるのに苦労する。
さらに早春は遅霜の心配をしなければならず、気が抜けない。4.13(土)は最低温度4度の予報が出ている。


2014年2月13日―自然の試練

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            2.13の夕方から雪が積もり始めていた

日暮れから降り続ける雪で農園はうっすらと白く覆われる。
そのまま夜を迎えて、明くる朝、農園に出てみると、無残にも湿った重い雪に押しつぶされたビニールトンネルの残骸の山となっていた。このままでは、野菜は潰されてしまう。
スタッフ全員で覆い被さった雪を除去しながら、新たな竹の支柱を差し込み、応急処置をして回る。手足は感覚を無くし、腰は軋む。復旧作業に丸一日を要し、みな、へとへとになっていた。
前日の夜にでも農園に出て雪の除去作業をしておけば良かったと悔やむ。
九州でも年に2回程度は、こんなことも起こる。それ以降は、月が積もる度に、スタッフ達はビニールトンネルに積もりかかった雪を払うようになった。

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翌朝、圃場に出てみると、約45張りのビニールトンネルは完全に潰れていた。このままでは2~3月出荷予定の野菜が無くなってしまう。


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スタッフ全員で、大急ぎの復旧作業。朝から夕方まで重い雪と竹の支柱との格闘が続いた。

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大人達の懸命な作業の中、子供は元気に雪に興じて飛び回る。

自然によってもたらされる被害は多い。
台風到来によって、全滅状態になったのが二回、半滅に近い打撃を受けたことは数知れない。
夏野菜の支柱が根元から折れ、吹き倒され、重たい茄子を引き起こし、ほとんどの枝が折れ、葉っぱや実は千切れている。「頑張れ」と野菜に語りかけながら復活を願う。
ある時は、全ての圃場から野菜が消えていたこともあった。あちこちに残骸が散らばる風景が目に飛び込む。しばし、呆然と佇む。
すぐに片付けに入る。まる二日を掛けて片付けをしながら、30種類の野菜の種蒔きの計画を練る。耕し直してまた一から種を蒔く。悲観している暇は無い。
 

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氷点下3度以下が連日続き繊維が凍傷にかかり野菜が半滅した冷害・一カ月半一滴の雨も降らず砂漠化した圃場に野菜が立ち枯れる干魃・一週間連続した集中豪雨と一か月間連続の雨と曇天により根腐れを起こした野菜など、毎年続く異常気象により、三ヶ月間、休園を余儀なくされ、収入ゼロが続くことも多々あった。
こちらも黙って野菜が痛めつけられるのを見ているわけではなく、旱魃の度に、軽トラックにタンクを積み込み、一か月間、10カ所の圃場に水遣りをし続ける。遅霜の際には、夜中でも織布を掛けて回る。
豪雨が続く時には、合羽を着て、水路を掘り、水を畑から逃がす。台風到来の度に、トマトなどに紐掛けをし、支柱を補強する。それでも救えない場合も多い。
それら自然の理不尽さの度に、めげていては、どうしようもない。
自然と黙々とひたすら向き合うのが農業であり、こんなこともある!過ぎたことはすぐに忘れる!
自然の中で生かされている、それが農業であると思うことにしている。

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「持続可能な農業」
 有機農産物とその加工品作りによって、疲弊し、やがて消滅していく地域を再生できるのではないか、と始めた有機野菜生産農園は、その遠大な地域再生への一歩、足がかりになると考えていた。
実験農園から始めた様々な肥料を使った有機栽培は、自然の織りなす自然循環のシステムから眺めると、人の思い上がりでしか無かったことに気がついていた。
有機物しか使わない、化学合成したものは使わない有機栽培」と言った有機JASの概念は、所詮は人が作り出したものでしか無く、有機物なら何でもよいと言った暴論の大きな矛盾に気がついていたということです。
化学合成した肥料や農薬(抗生物質も含む)もなかった時代に、日本人の先人達が営んできた土作りの歴史そのものが自然循環農業であったと気づかされた。

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              草木堆肥作り

刈り取ってきた草を10センチに積み上げ、その上に放牧牛の牛糞を発酵促進剤として3センチの厚さに敷き、さらにその上に破砕した剪定枝と集めた葉っぱを厚さ5センチに三層に重ね、トラクターのロータリーを利用して混ぜ込み、タイヤローダーによって高さ約2メートルに積み上げる。
約三週間に二回切り返しを行い、酸素と水を補給して完熟一歩前の草木堆肥が出来上がる。
微生物と放線菌がビビットに活きている状態の堆肥を直接圃場に振っていく。
完熟しては意味が無く、もはや肥料にしかならない。その微生物達が土壌を掘り起こしてくれる。この堆肥作りを一ヶ月に二回行う。

土壌には、木・草・動物の死骸(有機物)を分解してくれる放線菌や微生物が棲んでおり、豊かな自然を維持している。それこそが自然循環のシステムであり、本来の有機農業であったのです。
但し、自然そのものに任せていては、大量に生産しなければならない現在の農業では、無理があり、そうなれば、どの程度人の力を加えていけば野菜等ができていくのか?土を再生していけるのか?自然を損なわないで農業生産が続けられるのか?それが大きなテーマであっただけでした。
結果として、農園を開いた際に決めていたことは、唯一つ、化学物質は極力土に持ち込ませない、そのためには、肥料は使わない、草木堆肥一本に絞ることでした。
一年間にわずか3センチの深さしか「団粒化」が進まない。10年掛けて土壌は30センチの深さしか微生物層はできていかない。それでも草木堆肥を補給し続けた土は常に成長している。まさに持続可能な農業ということになります。
 
※団粒化とは、微生物や有機物残渣を核として砂状にさらさらとなった土の粒のことを指す。

 この団粒化が進むと、土壌には酸素が入りやすくなり、水持ちが良く、保肥力も上がる理想の土になります。この土こそ、微生物層が成長し続け、自然循環の土壌となります。
化学肥料や畜糞を使った土壌は、常に窒素過多となり、土は固くなり、団粒化とは真逆の土壌になり、微生物や放線菌が生息し難い環境になってしまいます。

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