農園日誌Ⅱー「活きること」ーPART12ー新たな仲間達

2019.4.3(水曜日)晴れ、最高温度14度、最低温度4度

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                夏野菜植え込み準備始まる

 当農園では、肥料は使わず、草木堆肥のみ施肥する。
草木堆肥は低窒素のため、これから数ヶ月間、実を付けてくれる夏野菜にはやや
窒素不足となってしまう。そのため、考え出されたのが、草木堆肥の先肥という方法である。
一旦、畝には草木堆肥(蛎殻・焼き灰なども合わせて)を振り、耕した後、畝立てを
行い、そこに定植する夏野菜の箇所のみにスコップ1~2杯の草木堆肥を振り、三つ叉鍬で混ぜてから、夏野菜を定植する。
ちなみに、堆肥は酸性のため、中和するのに、苦土石灰や灰を振る。
実が付き始めたら、さらに同じく堆肥を追肥として施肥する。

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男手4人は、別の畑で、堆肥振り・畝立て作業を行っている。
この時季は忙しく、女性陣も駆り出されて、手伝っている。最も、以前は農園主と共に女性陣が堆肥振りや畝立てを行っていた。そこは、むかし取った杵柄ということで、手慣れたもの。


「活きること」PART12

2013年12月5日―自然栽培の穀類生産

田北さんの紹介で由布市庄内の田圃約三反半を借りていた。大分市では広い圃場を確保することが難しく、大分の圃場から車で30分以上掛かるのが痛い。3年前から始めていた無添加発酵食品である味噌作り増産のためであった。土を育てるのに草木堆肥を使うため、軽トラック3台を三往復させなければならない。
無添加発酵食品である手作り味噌が思ったとおり、うちのお客様からは大きな反響が出ていた。

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この頃は、機械化ができておらず、全て手作業での脱穀作業であった。
からからに乾かせた大豆を石にぶつけたり、ビール瓶で叩いたり、それは大変な作業であった。

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きれいな大豆ではあるが、手作業で脱穀してからが大変。小石や泥・殻などが混じり、傷んだ豆もあり、手作業での選別作業を行った。


 現在、大手工場で生産されている味噌の大半が、3ヶ月以内で製造される化学調味料味噌である。手間とリスクの伴う熟練の技能や経験と勘が頼りの純醗酵味噌は、大企業が行う大量生産方式には向いていない。
それは漬物もまた同じ。
おそらくは、初めて食べた若い主婦も多かったのではないだろうか、熟年主婦の場合は、むかし懐かしい味がしたことだろう。

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         米麹と蒸した大豆を天然塩と合わせる作業

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ミキサーで磨り潰して、それを味噌玉にし、樽に漬け込む。8カ月~1年間ほど発酵させる。樽を初めて開ける際は、不安と楽しみが入り混じっており、うまく醗酵が出来ていると、それはもう感動ものでした。

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 味噌増産のため、新たに、3反半ほどの田んぼを借りた。研修終了後、新規就農を目指す後藤君が2反、佐藤自然農園が1反半。
以前から、借りていた畑は、約3反半ほどあり、穀類の圃場は合わせて7反になっていた。
除草剤を使わないため、畝幅を小さく設定し、管理機で畝下を起こし雑草の上に土を被せるが、除草作業は広過ぎてやっかいであり、いつも雑草に覆われ、途中で畝下の草刈り作業を行う。
草に負けたり、雨に負けたり、日照りに負けて、時には全滅になることさえあり、穀類の収量は慣行栽培(除草剤・化学肥料)の1/4程度にしかならない。甘く見ていたわけでは無いが、自然農の穀類生産は存外と難しい事が分かった。
これは一工夫する必要があるなと感じていた。労力の割には余りにも生産性が低過ぎる。加えて、問題はその販売単価であった。

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穀類の生産で最も厄介なのは、除草作業。多くの国産の穀類は除草剤を使用している。野菜とは異なり、穀類生産はある程度広い面積が必要であり、どうしても高集約型の農業には無理があり、粗放的な農業になる。
そのため、当農園では畝幅を小さくし、畝下も広く取り、管理機での除草作業を行うことにしている。土を飛ばして、雑草を抑える。
一つ間違えると、と言うより、手を抜くと、そこは一面の雑草に覆われてしまい、草に負け、穀類が育たなくなってしまう。


 国産大豆・国産小麦とは言うけれど、その実態は除草剤・化学肥料等を使っており、(遺伝子組み換えは今の処、日本には入っていない)自然栽培の穀類はマーケットには無いも同然であった。
農協等を通じて買い取られていくが、キロ単価250円前後と余りにも低く、一反当たり3~4万円程度にしかならない(お米が反当粗収入7~8万円程度)まして、収量の少ない自然農大豆となると、先ずは生産する人はいない。
 穀類価格の低迷は、穀類の内外価格差がその要因であり、海外の生産コストは日本の1/4以下である。
諸外国では、農地の広さ・物量費の安さ・露地栽培への手厚い国の補助金・インフラの整備状況、いずれをとっても、比較にもならないほど、諸外国の管理コスト(経費)は安い。
それに比べて、日本の農業は農地も狭く、大規模な機械化は難しく経費が掛かる。これでは、国産の穀類は輸入穀類に太刀打ちできない。
それでも、穀類は国民の大事な糧であり、当農園は、自然農の米・大豆・麦類の生産は続けねばならない。
既存流通市場に出すのではなく、農園が目指す自然栽培による健全な農産物を原料とした加工食品として、世に出そうとした。
佐藤自然農園では、グループ内の生産者からキロ600円(市場価格の倍の価格)にて買い取り、無添加の加工食品を製造する。それで何とか外国産の穀類に対抗しようとしている。
やや高い加工食品を支持してもらえる消費者は必ず国内に居ると信じなければ、こんな手間の掛かる農業を、若者達に続けさせてはいけない。

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自然栽培(草木堆肥使用)の大豆を自家焙煎し、小さな製粉所で粉にする。
およそ、30~40分ほど焙煎する。一度に沢山できないため、少量小分けにして、数回
焙煎する。黄な粉と言うより、大豆粉に近く、豆の香ばしい香りと旨味が実に良い。
餅と小麦粉(中力)と合わせて皆様にお送りしている。むかし懐かしいだんご汁ややせうまにするためのレシピを付けて。


 この時期、大豆は、味噌・黄な粉・蒸し大豆として何とか農園のお客様に販売していたが、麦については、自家焙煎による麦茶(裸麦)・全粒粉小麦粉程度しか発想は浮かばなかった。
一つの穀類畑(旧田んぼ)を大豆・麦・とうもろこしにて年間二回転させなければ、元来がリスクと労力の塊となるため、とても採算や効率は上がらない。
除草剤・化学肥料を使わない自然栽培技術・能力も経験値が低く、加工品としても手探りの状態が続いた。
 
そんな頃、自然栽培のお米を生産している平野さんから紹介された弥富もち麦を少量手に入れた。
古代ローマ時代から生産されてきたスペルト小麦(一粒小麦)とは異なるが、日本の中国地方で永く作られ続けてきた日本の古代小麦(一粒)である。
ハイグルテン(パンの材料)使用に品種改良されてきた小麦(強力粉)が、近年急増している小麦アレルギーの大きな要因となっているとされている。
学説的には、アレルギーの要因は、未だ詳しく解明されてはいないが、少し前までは、小麦アレルギーなど、聞いたことも無かった。
これはハイグルテン仕様(パン作り)にするため、欧米で品種改良が進み過ぎたことと、窒素系肥料の大量投下及び除草剤をはじめとした農薬などの化学薬品漬けの土壌汚染が要因ではないかと、私は疑い始めた。

※ハイグルテン(高タンパク)の小麦は強力粉と言って、パンなどの主原料となる。そうするためには、土壌が窒素過多になるほどの大量の肥料投下が必要となる。
 
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中力小麦と古代小麦ブレンドし、野菜万頭を作っている。野菜餡の美味しさもさることながら、小麦粉の皮の何と言えない存在感が口いっぱいに広がり、素朴な麦の香りが鼻に抜けていく。農園のヒット商品となった。アレルギーに困っているお子さんにも実験的に食べてもらった。アレルギーは出なかった。成功です!

そのように推量すると、ひょっとして、品種改良が進んでいない日本在来型の麦やまったく交配が進んでいない日本古来の古代小麦が低窒素・自然栽培で作れたら、小麦が食べれないアレルギー症状の子供たちにとって朗報になるのではないか、これは実験してみる価値はありそうだと考えた。
とにかく、数年がかりで弥富小麦の量を増やさねばならない。自然栽培による古代小麦及び裸麦や小麦の実験栽培が本格的に始まった。

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実際に熟した麦畑に立ってみると、「生きているな」と言う実感と「糧」の存在感に圧倒された。美しいと思った。目に潤いを感じた。涙が出ているのか。農耕民族である日本人の血ゆえなのか。