農園日誌ー研修生日誌

29.9.6(水曜日)曇り、最高温度32度、最低温度21度

イメージ 1由布市狭間町の大豆畑

 鳩に蒔いた種を食べられて歯抜け状態となっている。
ここ以外に、庄内地区に約4反の大豆を蒔いている。今年はなんとかなりそう。
去年は発芽すらしなかったが、今年は味噌や大豆粉がお客様に配れそう。
穀類生産は、まだまだ小学生程度の知識しか無く、まして自然農となるとさらに
難しい。
それでも草木堆肥で育った穀類は、味香りが高く、実に美味しい。課題は毎年、同じように収穫できるかどうかとなる。気候変動に左右され易く、野菜と違って一発勝負となり、やり直しが効かないため、できないときはまったくできない。
江戸時代、大規模な飢饉がたびたび発生し、多くの農民が亡くなったと聞く。
今の気候変動もその時の気候変動に近くなっているのかもしれない。

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今秋初めての種蒔き
右側が小松菜などの
葉野菜。
少し少なめの蒔き加減
スタッフに文句を言う。
全部が育つとは限らないため、やや多めに蒔いておく必要がある。

左側は蕪類。
これは今のところ、
程良い発芽状態。

新たな季節が始まり、新しい命が芽吹く。そんな小さな喜びの積み重ねが農業。


研修生日誌―小原昴太
 
2016年春、熊本の調理専門学校を卒業。喉に障害を持っており、言葉がうまく発せられない。料理の修行を望み、面接等にも出向いたものの、飲食店への就職活動もうまくいかず、さりとて、ホテルでは歯車の一つでしか無く、悩んでいた。
その時、偶々、佐藤自然農園のテレビ放映を見ていた同級生からのアドバイスで、当農園のホームページを覗く。「飲食を目指すなら、素材を作っている農園で勉強をしてみたい」との思いから、親の反対を押し切って、佐藤自然農園の門を叩く。その時、まだ18歳。
 
華奢な体でのいきなりのきつい、きつい農業の現場。まだ高校生の体と頭しか無い。
国の農業支援の補助金を受け、研修生として受け入れたものの、先輩達に付いていくのも大変。
支柱用の竹の切り出しに出向いた際、耳にウォークマンを差し、音楽を聴きながら鉈を振るっていた。
それに気がついた先輩の後藤君からいきなりやかましく怒鳴られていた。
「農業に関わらず、仕事中にそんな集中力の無いことをするとは、・・特に危険な鉈を振るっている作業中に。仕事は遊びでは無い」などとお説教を受けたこともあった。
また、除草作業中に疲れてきたのだろう。皆の目が届かないところで動作が緩慢になり、今度は竹内先輩から畑の真ん中で怒鳴られていたこともあった。
 
途中、熊本の震災で一時帰郷。約3カ月間のブランクが出た。
帰ってみたものの、何のことは無い、一人の避難民を増やしただけであったが・・・

イメージ 3種蒔きをしている
彼は赤が好きで、
好んで赤系の衣服を
身にまとっている。
種蒔きの筋引きは
かなりいびつで、
くねくねと曲がっている
一生懸命にやっている
但、他から見ると、
飽いてくると動作が緩慢になっているように見えるようだ。


まだ学生の気分が抜けきらないのは致し方ない。長い目でみてやることにしている。これは一年目の晩秋の時季。

 彼もきつい真夏を乗り越え、現在20歳となり、今ではすっかり逞しくなってきた。弱音を吐かないことは何よりである。但、日常の作業はこなしてはいるものの、やはり、まだまだ若すぎて、今一乗り切れていない。
現在、農園主は除いて男子4人で共同作業を行っているが、他の三人は一度は社会に出てそれなりの経験をしてきており、明確な目標と目的を持っている。
そのため、彼らはしっかりと前を見据えた動きをしている。
その中ではまだまだ社会人になりきれない幼さが残り、一人だけ浮きかかっているように思えた。
 
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 現在、むかし野菜の邑は年間百種類の野菜生産に加えて、穀類の生産を4年前から実験を始めている。
新社屋を建設することを見越した動きであった。
ここでは、加工場を併設しており、穀類の製粉、そして穀類から派生させる加工品と野菜の加工品作りを射程に捉えている。
大麦と古代小麦の麦ご飯セット・麦茶・小麦粉・トウモロコシ粉・大豆粉・乳酸発酵の漬け物・味噌・甘酢漬け・粕漬け・麹漬け・餅・あられ、そして、紫蘇やバジルペーストやドレッシング、乾燥野菜、パン屋さんとのコラボなどと広げていくつもりである。
素材はすべて草木堆肥で育てた自然農の農産物であり、全国でもオンリーワンの加工品となるだけに、懐かしさ・素材感・味香り・旨み、そして当然に安心して子供さんも食べれるものとする。

 その中で、彼には一つの得意ジャンルを得て欲しいとの思いから、野菜を使った加工品の開発を女性陣と一緒になって担当させようと考えている。
加工品などの商品開発はむかし野菜の一つの大きなテーマである。
同時にそれは、他に例の無い加工品であるだけに、マーケティング・試作・単価計算・食べ方の開発などと幅が広く難しいジャンルでもある。
共同作業及び共同加工というチームで取り組むべき大きな課題も抱えている。

コータも近い将来、一人の農園主として独立も果たさなければならないが、そのチーム(グループ)の中での存在価値を見つけることが彼の今後を決めていく。

頑張れコータ!と農園主は思うのである。