農園日誌ーこの国の行方-PARTⅣ地域復興への新たなる試み

28.12.21(水曜日)曇り、時折晴れ間、最高温度17度、最低温度7度

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           びっしりと野菜に覆われた二番の畑(プラチナ級)

 これだけの野菜が育っているにも拘らず、8~9月の気候変動の影響で、出荷できる野菜はまだ少ない。本格的な野菜の出荷時期は来年1月中旬頃になりそう。
ここには、現在出荷最盛期を迎えたセロリ、ようやく出荷を始めたほうれん草しかなく
人参・キャベツ・白菜はまだ成長過程にある。

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耕作歴5年目を迎えた
7番の畑(金ラベル級
の仲間入り)

現在出荷間近の小松菜などの葉野菜と
二月頃になりそうな
蕪類・大根・レタス系
野菜が育っている。

来年3月頃の出荷予定のブロッコリー
半分程度の面積を
占めている。

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今年害虫の大被害を
被った3番の畑(金ラベルからプラチナ級へ)

害虫被害に弱いアブラナ科を避けて、玉葱・
九条ネギ・春菊・人参
ニラなどが育っている

ここの土も腐食が進み
団粒構造のふかふかとした土に変わりつつある(草木堆肥歴12年)


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サラダ系野菜が中心となる4番の畑(金ラベル級)
ここにはサラダセット・
サラダ蕪類・芽キャベツ
レタス系・ツァーサイ
ビーツ・トレビスなどが
入っている。
ハーブもここです。
夏野菜に覆われていたため、秋野菜へのチェンジが一番遅れている


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忘れてはならないのが
卒業生後藤君の9番の圃場。
現在土作り真っ最中。
先ずは葉物野菜から始めている(赤ラベル級)

この圃場は、来年春頃からは、土中に有機物残渣・微生物・放線菌などが定着し、山野の土に近づいてくる。


そうなると、いよいよ後藤君も真の農園主の仲間入りということになる。

この他にも最大面積の5番の畑、5年目を迎える6番の畑、3年目となる8番の畑があります。次回にご紹介します。

それぞれの畑には、みな特徴があり、用途を分けて野菜を植えており、これらの畑の
栽培計画を作り、お客様に途切れることのないように、植え込み時期を調整管理し続けている。
一年目の研修生にとっては、何が何やら分からないまま、あっという間に、一年が過ぎていく。二年目でその仕組みが分かり始め、三年目でようやく先輩たちの後を追えるようになって行く。
露地栽培・自然循環農業・多品種栽培の生産管理が見え始めるのに、五年は要する。これに穀類生産が加わっているため、一人前になるにはゆうに7年はかかることになる。

―この国の行方―PARTⅣ 地域復興への新たなる試み(農業の分野へマーケティング思考を導入)
 
有機農業に取り組み始めたころは、先生がいるわけではなく、全てが暗中模索の手探り状態で12年が過ぎた。そのころから、これなら、有機農産物商品として、地域の多くの農人達が食べていけるとの確信に変わった。それが一切の肥料を排し、草木堆肥のみを使ったむかし野菜であった。
それから25年が経過した今、次の段階へと舵を切る。
 
※むかし野菜
自然農や既存の畜糞主体の有機栽培とは一線を画し、自然の循環機能(草・
葉っぱ・木屑焼き灰によって土壌に豊富な有機物残渣とミネラル分をもたら
し、子虫・微生物・放線菌が土壌を掘り起こしてくれる)によって土作りを
行う日本古来のむかしながらの農法。
 
野菜生産に加えて、人が生きていくに必要な糧となる穀類生産とその穀類等と野菜による加工品の製造に取り掛かろうとしている。そのための加工場・保冷庫・出荷施設建設と共にお客様への市場啓発を目的としたレストハウスも併設する。
佐藤自然農園で学び独立した後、新施設はむかし野菜生産グループの将来を担う若い農人達の母なる基地となり、食の未来を希求する消費者達の集う場所となる。
 
農業も従来のように農協や巨大流通に頼ったままでは変わらない。
農産物だけではなく農産加工品にまで商品を広げていくとなると、さらに多くのお客様と直接向き合うべく、マーケティングの知識や実践が必要となる。
企業では、このマーケティング思考は、当たり前に行われていることであるが、従来の農業者は、消費者に直接販売することも無く、不必要なものであった。
必然的に、農協などの独壇場になり、農業者は農協や大手流通の仕組みに埋没していき、生産者の顔は一切見えなくなってしまった。
 
また、有機野菜・自然野菜と言う概念に捉われて、多くの若者が当農園を訪ねてきたが、彼等の多くは、生産技術や気候条件などの農業の厳しさも知らず、消費者へのコミュニケーションの仕方も分からないまま、根拠のない自信を覗かせ、何とかなりますと言い切る。
そして、その後の消息が途絶える若者たちを何人見てきたことか。(マーケティング知識の欠如)
 
(農業分野へマーケティング思考を導入)
 孫子の兵法「敵を知り、己を知れば、常に百戦百勝す」
敵とは、マーケット動向(消費者動向)や競合先の農産物であり、己とは、自分が生産する農産物の力=ポジショニング(競合先との比較)のこと。
 
※市場細分化
百戦百勝するためには、一切の自己の思いや主観を排除し、あらゆる事象を細分化し、検証し、整理し、組立し、実に客観的に判断を下さねばならない。
この手法を市場細分化と言います。
 
―商品開発コンセプト―
 農産物も含めてそうなのだが、商品とは、どのような品質のものを作りたいのか、どうしたら自分が作りたい商品ができるのかから始まる。
偶々生み出した商品が市場で当たったのでは、いかにも心許ないし、長続きする商品とはならない。商品には生産者の思いが詰まっていなければならない。
 
 市場に出回っている農産物(他の有機野菜も含めて)との品質優位性や商品特性を如何に作り出すかということであり、一般的には差別化戦略と言われている。
 
―消費者動向とターゲット戦略―
自分の考えるような農産物が完成したとしても、それがどのような価値観を持った顧客層に支持されるものなのか、その顧客層はどのような消費行動をしているのかが重要となる。
如何に品質の優れた商品と言えども、それを欲する消費者層が居なければ、成り立たない。
 
 品質に優れた商品を創り出したとしても、その商品特性や品質優位性などをどのようにしてそれを欲する消費者層に伝えていくのか。販路開拓の方法や伝える術が確立していなければ、生産活動の維持すらできなくなる。
 
―ターゲットとなる消費者の潜在的ニーズを探るー
 最後に重要となるのは、「言葉にはできないが、本当はこんな農産加工品が欲しかった」とターゲットとなる消費者層の心の奥の願望が潜在的ニーズであり、現有市場に出回っている農産物及び農産加工品は顕在的ニーズの表れに過ぎない。
農業に大きな変革をもたらすものは、潜在的ニーズを探り、差別化を図り、新たな市場を切り開いていくことが必要になると考えております。
 
→次回、この国の行方はお休みで、新年にPARTⅤ市場創造へと続く