農園日誌ー一年間ご愛読頂きありがとうございました。

28.12.29(木曜日)曇り、最高温度9度、最低温度1度

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             今年最後の草木堆肥作り(破砕作業)

 堆肥作りから始まり堆肥作りで終わる。いかにも内らしい。
今年は、三人の研修生を受け入れた。皆、何とか形にはなってきている。
農園主と先輩二人が先生となり、鍬の持ち方から教える。
先ずは、堆肥作り・堆肥の振り方・石灰(焼き灰と牡蠣殻も混ぜて)の混合比分量などから始めて、畝上げ・レイキ掛けが畑作りの基本中の基本となる。
この基本動作をほぼ熟せる様になるまでに最低一年間。
その間、付きっ切りの指導や手直しが続き、こちらの作業が著しく遅れ、倍以上疲れることとなる。

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越冬野菜の定植
(7番の畑)
ここの多くは、研修生が中心となって植え込んだレタス系・キャベツ
ブロッコリーなどの冬野菜達。
畝上げ機は使わず、
全て鍬・レイキなどを使った手作業。
そのほうが無駄な畝下ができず、きれいに畝上げができる。
手直しを行ったとはいうものの、ほぼきれいに畝のラインが揃っている。
種蒔き用の畝は、表面にでこぼこが出来ると大雨の際に流れ落ちてしまうため、
研修生独力ではまだまだ任せられないのだが・・
等間隔の定植には程遠いが、植え込み作業も3カ月のトレーニングを必要とした。
ちゃんと定植を行うと畑にきれいな幾何学模様ができる。出来栄えは60点かな?

 研修生達にも三者三様の様々な思いがある。
コータさんは、料理専門の高校に通ったものの、期待したところに就職が出来ず、「自分で作ったものを自らで料理し、お客様に提供したい」と考えを変えて、美味しく健康な野菜なら佐藤自然農園と決めて農園の扉をたたく。

シンゴさんは、儲かる農業を目指して長野の農業法人に就職し、大規模農業を学ぶ
そこで見たものは、除草剤・農薬・化学肥料を使い、黒マルチを使い、機械化した農場にてレタス・キャベツなどの量産型生産方式であり、彼のもう一つの農業の世界
である美味しい野菜と言う定義から大きく外れていることに気付かされた。
両親の反対を押し切って、当農園の門を叩くことになった。
彼は今、本当の農業の世界を覗いており、それは彼にとって未知の世界となっている。

チカさんは、大学が「生物学科であったためか、永年の夢であった「農業をしたい」
との思いから、IT系の会社を辞めて当農園に就職(?)するつもりで当農園の研修生となった。
彼女の希望通り、先ずは男組みに入り、農業の基礎を男性陣に混じり、学んでいるものの、大きな迷いが生まれつつある。
これは「自然循環農業を学びたい」と言った動機ではなく、只、「農業をしたい」と言った願望からきている。また、農業者になろうと言うのでもない「就職する」と言った気持が強かったため、如何にも心の定め方に問題を残してしまっているとも言える。

彼等の今後の「農業技術を学ぶ」ということではなく、「独立した農業者になる」と言う
強い気持ちが育ってくるかが、ここで生き残れるかどうかの自らとの戦いとなる。
農園主はそれを見守り続けている。

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当農園卒業生、後藤さんの圃場。
皆で里芋・筍芋の土寄せ作業を行っている。

里芋等は寒に当たると
腐ってしまうため、
少し遅れたが、年末最後の防寒用の土寄せを行う。(土中保存)




後藤さんは、この圃場1.6反を借りてから約一年半、今までは草木堆肥を振る続けてひたすら土育てを行ってきた。勿論、皆との共同作業にて・・
この冬頃からようやく出荷第一号の野菜(葉物・里芋等)を皆様にお届けし始めた。
まだ、赤ラベル級ですが、それなりに土も育ってきており、農園主はOKを出した。

12月の出荷額が20万円を超えた。最もそれがそのまま農業所得にはならないが、
とにもかくにも、独立した農業者の仲間入りを果たした瞬間でした。
彼には安定的に毎月30万円の出荷額を目標と課している。
研修生達の大きな道標となってくれることを期待している。

最後に竹内さん。研修生を経て自立していく農園主とは異なり、次に続く研修生達の先輩として、あるいは、先生としての大きな仕事が残されている。
彼には(株)むかし野菜の邑の中核生産基地である佐藤自然農園を維持しながら、研修生を育てるという大きな仕事が待っている。
農人として、経営者として、指導者として、心の成長が待たれる。
卒業生にとって、むかし野菜の邑が母であるならば、佐藤自然農園は父となる。

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来年はその邑の新たな基地(施設)が出来上がる。
ここに集うスタッフ達の様々な思いや悩み・期待を乗せて、この寄合船は何処に向かっていくのか。その船頭達を育てていくことの方が厳しいと思う農園主の心は、
当分、休まるときを得ない。

 この農園日誌は、農園主の心の動きをバックにして、そこで働く農人見習い達や、そこに訪れる多くの方々の思いにも触れ、あくまでも農園の真の姿を現していこうと
書き続けております。
時には、農業を取り巻く厳しい環境や政治の在り方にも触れ、厳しい言葉を投げてはいますが、この国が、あるいは、地域が豊かになり、ここに集まって頂いている多くの消費者がより心の豊かさを得て頂きたいとの願いを込めて、今後とも綴り続けていこうと考えております。

一年間、お付き合いを頂きありがとうございました。
来年も皆様にとって良き年であることを願い、今年の終稿とさせていただきます。