農園日誌ー明けましておめでとうございます。

28.1.6(水曜日)晴れ、最高温度12度、最低温度6度

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               春を待つ農園の冬景色(5番の畑)

長い冬休みを頂いております。明けましておめでとうございます。
新春を迎えて、皆様方にとって良い年であることを祈っております。
野菜達は、今の処、極寒の時季もなく暖かい冬を過ごしております。

そのせいか、冬季恒例のビニールトンネルが少なく、野菜達も凍結することもなく
穏やかに、かつ、緩やかに成長している。
通常ではブロッコリーは、1月の厳冬期には出荷できる状態ではないのだが、
今年は一月中旬頃には皆様の元へ届けられそうだ。
同じカンラン系のキャベツもアブラナ科の巻いた白菜も一月に送り出せることは今までになかった出来事となりそう。

去年は、皆様方のご紹介によって、お陰様で農園の仲間たちが120名増えて、
250余名に至っており、感謝しております。
但、残念なことはむかし野菜から離れていった仲間達も60名ほどおられました。
その多くが経済的な事情からで、日本経済の浮揚が国民に届いていないようです
大企業重視・国民の生活感軽視・地方切り捨ての政策を受け入れざるを得なかった一年だったのでしょうか。
当グループでは、このような経済的事情によって、お客様が大量に離れていったことは今までになかったことでした。

今年はむかし野菜グループにとって、加工場兼ゲストハウス建設という基幹基地
立ち上げの一年となります。完成しましたら皆様へご案内を差し上げます。
昨年から始めた自然農の穀類生産(加工品の主原料となる)は、よちよち歩きの
一年生です。現在、試行錯誤を繰り返しておりますが、発酵食品の代表的な加工食品である味噌作りは手狭ながら佐藤自然農園にて、今年から本格的な始動を
始めております。そのため、農園主は昨年の暮れから今年にかけて大豆の選別
作業に追われております。
年初に、ほんの少しだけ、皆様へ粒の不揃いな自然農大豆をお届けいたします。

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開墾から4年目を迎えた7番の畑。

レタス系野菜がこれも
この時季には珍しく
トンネルをかけずに
越冬できております。

冬を越したレタス系
野菜は肉厚でパリパリとした食感が美味しいです。


去年の暮れから今年の初めに種を蒔いた小麦は青々とした新芽を吹いており、
子供たちも手伝ってくれて、随分とムラの多い青い絨毯が広がっております。
本当は雑穀栽培歴一年生(慣れずに)のせいですが・・・いずれ写真を公開。

去年は、多くのお客様の問い合わせが、自然農の・・、在来種の・・ご質問が多かったように記憶している。
年初にむかし野菜の邑の社長を引き受けて頂いている、平野さん(自然農のお米と梨)との会話をここでご紹介しておきます。
(彼は地元で奇人変人扱いを受けていたやさしい方で、私が美味しい野菜作りのセミナーを数回行った際に出会った人で、筋金入りの信念を曲げない方です)

「自然農のお米作りができるまでに何年かかりますか?」の質問に、
「そんなに難しくはないですが、4~5年は必要です。それまでは稲の外敵となる雑草との闘いで、満足のいく収量は得られないですね」と穏やかに語る。
「佐藤さん処も野菜つくりには数年かかるでしょう?」
「みんなには三年とは言っていますが、実際には五年は最低必要ですね。草木堆肥歴5年でようやくまあまあ納得のいく味や美味しさが得られますね」
「三年と言わないと新規就農の研修生はみな逃げて行ってしまいますから」
「本当に手ごたえを得られるのは10年を経過した頃からですね」

最近自然農でないと、との問い合わせや要望が多いですが、消費者はどこまでこの難しさを理解しているのでしょうかね、と振ってみた。

「むかし、最初に自然農を志した農家の人は、ここまで自然農という概念が独り歩きするとは思っていなかったでしょうね」
「そもそもは、家庭菜園で採れただけ、で始まった農法であり、商業的な農作物では無理がありますね。そこまで普通の農人は我慢できないでしょうし、生活ができませんですから」
「今の農人にそんな生活を求めても無理でしょう。もし、そんな自然農の野菜がある程度できて、お客様に提供して生活をしていくとしたら、通常の価格の数倍はもらわないと合わないでしょう」

「現在、何反作っておられますか?」以前は7反と聞いていた。
「歳ですから、2年に一反ほど増やしておりますよ。グループのおかげで出荷量が増えてきましたから、八反半くらいですが、今は古代小麦の生産にチャレンジしております」
「それは楽しみですね。それは古代のローマ時代から栽培されていた一粒小麦ですね。現在は二粒小麦が市場の99%を占めていると聞いております。
遺伝子組み換え小麦が話題になってからは消費者がかなり警戒しておりますね」
「新しく加工場ができたら、粉にして仲間たちに届けてやりたいものですね」
「全粒粉ではちと重たいので、3分つきくらいでしょうか、いずれにしてもその時が
楽しみですね」
「それはそうとして、当農園のほうは現在雑穀生産にかかりきりで、自然農のお米
作りまでは手が回らないのです。お客様のためにもお米作りの田圃を少し増やすことはできませんか?いずれは農園の研修生が平野さんの圃場の跡は引き継ぎますよ」

以上、いずれが狐か狸の会話でした。

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ツァーサイ
(中国の冬野菜)
独特の苦みがアクセントになる野菜。
草木堆肥で育てると
嫌な雑味が消えて
美味しい茎菜になる。
トンネルをかけて
ここまで大きくしてきたが、出荷前の二週間は
トンネルを剥ぎ、寒にあてて、野菜を引き締めて旨味を上げる。


お解りでしょうか?
この会話は農業の、特に自然循環農法の難しさとそれぞれの独自の工夫を話し合っている内容です。
自然農という概念に縛られることなく、私たちのグループはそれぞれの体験と勘、
そして自らの体を使った農産物作りをしている。
これを対価で換算すると慣行農法の労力の数倍、有機栽培の2~3倍の労力をかけていることにお気づきだろうか?
それは確固たる信念がなければできないことなのです。
佐藤自然農園は世の中で言われている「持ち込まない持ち出さない自然農」とは違い、草と木(葉っぱ)を使った循環型の堆肥を圃場に持ち込み、土作りに全精力を費やしている。
もし本当に概念上の自然農の野菜があるならば、市価の数倍の単価を取らないとやっていけないことになる。
自然農野菜よりはるかに栄養価の高い美味しく安全な野菜を如何に手軽な価格で仲間たちに提供できるかが、むかし野菜グループの最大のテーマであり、それぞれに工夫を行っていることは是非ご理解して頂きたいと、新年を迎え、願っている。

平野さんは穏やかに語ってくれましたが、その費やす労力の多さを私は知っているからこそ、グループ全員の思いをここにお伝えしております。

今年もどうぞよろしくお願い致します。

                                             敬具、