農園日誌ー一年を振り返って

27.12.23(水曜日)終日雨、最高温度15度、最低温度8度

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                  由布市庄内の大豆収獲

12.20.三回目の収獲作業、軽トラック3台に大豆を満載して帰る。
11~12月は暖かく雨の日が多く、大豆の乾燥が進まず、脱穀作業をしても、
殻が割れず、実付きのまま枝から外れ、手作業にて殻外しの作業をしなければならない。気候が不純な日が続き、腐った実も多く、脱穀した後の選別作業に時間がかかり、さすがにスタッフをはじめ、農園主も疲労の色が濃い。
選別を終えた豆は乾燥機にかけなければ、黴や腐れが出る。
小麦の種蒔きも新規に借り入れた旧田圃が乾かず、草木堆肥振りや種蒔きが遅れに遅れて、約1.5反はどうにか蒔いたが、残り二反分はとうとう、越年することになってしまった。
今年の穀類生産は、トウモロコシから始まり、散々な一年となってしまった。
始めに苦労していれば、後は良しということで、来年に期待することにした。

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露店原木椎茸
(田北農園)
名古屋のレストランの
シェフから岡の鮑と
お褒めの言葉を頂いた

当農園と知り合うまでは乾燥椎茸として
組合へ出荷していた。
むかし野菜グループの一員となってからは、
どんこの最高の生椎茸が皆様へ届く。

彼は根っからの農業者であり、自己都合でしか農産物を出荷しなかった。
つまりは、お客様が待っているなど二の次で、自分の農作業を優先し、この貴重な農産物を商品としての認識に欠けていた。
それから、4年を経過し、今では大分県では最高の味と言われている米(ここでは餅米ではあるが)を使って餅製造にも励んでいる。
市販の餅しか食べていなかったお客様からは、「農家の手作り餅」ということで、
大きな評価を頂いている。彼にはこう言っている。
「今ではむかし野菜の農産物の一翼を担っており、農業者としての根性は捨てなさい。誰が買うかもしれない農産物及び加工品を作っているのではない。貴方たちが作ってくれた高品質の農産物を愛でて食べて頂いている特定のお客様がいる。
もっと高い自覚と誇りを持ちなさい。そしてその仲間たちに感謝して農産物商品を送り出しなさい」と・・・

そんな彼が、この暖かい冬に必ず発生する餅黴に対処するために、真空パックをして今日持ち寄ってきた。
農園スタッフ達からは、むかし野菜の商品ではないような、と辛口の言葉が出たが、(手作り感・素朴さを重視しているため) 私は、彼の自覚が嬉しい。

今年は、佐藤自然農園から、むかし野菜の邑へのグループ形成への年であったが
残念ながら、グループ全体での農産物生産のシェアーは相変わらず、その85%が
佐藤自然農園であった。これは来年度もおそらくは変わらないであろう。
来年度研修生2名が卒園となり、農園主として独立の形とはなるが、新たに借り入れた圃場の土作りに3年は要する。
今年の初頭、190余名前後のお客様は、今では240名ほどに増加している。
その多くがクチコミで広がった。
信頼を頂いている御客様たち(仲間でもある)に安定した農産物の供給をし続ける
には、グループ全体の生産量を上げていくことが難しい現状では、佐藤自然農園の生産量を引き上げるしかなく、農園主の意図とは逆行することになる。

来年、むかし野菜の邑の生産及び流通加工の拠点基地の建設を行い、実験的な漬物・味噌・製粉などの製造と新たな加工品の開発実践を経て、その三年後には、養鶏場(鶏卵及び鶏肉)建設、五年後には、本格的な味噌・漬物の醸造所と加工品の工場及び飲食施設建設を目標としている。
そこでは、今の日本では忘れられようとしている純粋発酵食品作りやむかしのおやつや伝統的な食文化を復活させようと考えており、今の若いお母様達におばあちゃんの味の伝承を企図している。化学薬品にまみれた食品が市場に溢れており、
現在人の体が、次の世代の子供たちの体が、蝕まれていくことへの危機感が根底にある。
そこまで行くには、むかし野菜の邑グループに属する生産者を増やし、生産量の確保が絶対条件となる。時間が無いと気持ちばかりが焦る。

この思いは15年前に農園を開いた時に定めた生涯目標であり、それをある程度まで完成させ、次世代に伝えた後に、第一線から退こうと心に決めている。

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農園はようやく冬枯れ
の季節を迎えた。
例年より一か月遅れ
で冬がやってきた。

そこには、来春の野菜と新しい芽生えがある
10数年経っても、
一つとして同じ季節はやってこない。
若い農人達はそのことを今から学んでいくことになる。

今日、関西から農園見学のご家族がやってきた。
今の巨大流通システムに組み込まれた企業人であり、その組織に違和感を覚えてきたとのこと。農園主となるべく農業の現実と未来を探る旅であったようだ。
かれらに私の取り組みがどのように映ったことだろう。
個人の欲の枠組みを飛び越えた異空間を目指す試みであり、かってどこの地域にもあった「結い」=共存共栄の世界が果たして現在に成り立つのか、私自身は
壮大な試みに思えるのだが・・・