むかし野菜の四季ーPART2ー体感型生産観光農園始動開始

2023.6.25(日)曇り、最高温度28度、最低温度20度

              じゃがいも掘り

 

草に覆われてしまった10番の畑、両サイドは里芋が植わっている。

除草をしなければと思いながらも、追いつかない。

梅雨の間、草の勢いは止まらない。途方に暮れながらも頑張るしか無い。

ジャガイモの茎はとっくに枯れてしまい、草を抜きながらひたすらジャガイモを掘る。

 

 

「食糧安全保障」

(その一 国民の危機感欠如)

 

農業及び食糧を取り巻く世界の趨勢から述べておきます。

欧州各国の食糧自給率は100%を超えております。穀類の輸出国として知られている

米国・豪州・ロシアを含む中央アジア、最近ではブラジルなどは広大な畑が広がる

世界の穀倉地帯です。除草剤・農薬・化学肥料を大量に投下し、大型機械を使った粗放農業を行っており、世界はその穀類生産に頼り切っております。

米食とパンの消費比率は去年逆転し、パン食の家庭の方が年々増えつつあります。

日本では気候条件が合わず、パンや菓子類の原料となる強力粉や薄力粉の生産が難しく、ほとんどが海外からの輸入に頼っています。

 

狭い農地しか無い日本では、麺類の原料となる中力小麦や豆腐・味噌などの原料となる大豆などの穀類生産量は需要の2%程度しか有りません。(内外価格差が数倍と言う事情もあります)国産小麦や大豆は無いに等しいのです。

国産小麦や大豆は海外産とは太刀打ちでき無いと言う事情もあり、日本の農政は国産の小麦・大豆・トウモロコシの生産拡充を諦めているようにも見えます。

勿論消費者や加工業者が価格の高いそれら国産穀類を好んで選択するようになれば事情も変わるのですが・・・

そういった穀類事情の中で、日本では食糧自給率が(カロリーベース)30%台と落ち込んでいるにも拘わらず、国は穀類である麦・大豆の国内生産を積極的に支援していくことをしていません。むしろ、農業潰しでは無いかと思える政策や法令を次々と打ち出しています。

それに対して日本では米の生産量だけは需要分を上回るだけの生産量が今の処はあります。但し、専業農家が減少の一途をたどり、兼業農家も激減しております。そのため、5年後は需要分も賄えなくなるでしょう。

世界の食糧生産は不安定となりつつある気候変動リスク・国家間紛争による食糧生産リスク・自国主義の台頭による輸入量減少リスク・世界の穀倉地帯の砂漠化リスクなどの危機をはらんでいる中では、食糧安全保障の課題は大きいのです。

すでに中国では穀類の国境閉鎖リスクを見越して食糧の国内確保の政策を次々と打ち出しております。

日本は食糧確保への動きは全くと言って聞こえてきません。穀物価格の急上昇は国民の生活を圧迫して行きます。先進国の中でカロリーベースとは言え、食糧自給率が30%台となっている国は日本だけです。

国も国民もその危機感を感じておらず、国の農業軽視に何の異議も唱えないことに危惧しております。

農園マルシェ準備中、奥のテーブルには菓子類・惣菜・パン類などが並ぶ。
そこで使われている麦類や大豆はむかし野菜の邑で自然栽培により生産されている。

最近では自然栽培のお米の人気が高くなり、生産が追いつかなくなることを危惧して

おります。

 

(その二 農業潰しに走る日本と言う国)

この設問に「そんな馬鹿なことを考えている訳け無い」と考えている人は昨今の農業に関わる様々な法令や政策を理解していないか、あるいは、日本の農業の未来に何の疑問も感じていないからだと思われます。

 

(地域小規模農業の切り捨て)

これまでは日本という国は農協を通じて農地を守ると言う名目であらゆる農業に補助金を出してきました。それが20年前から変化し始め、米作の抑制・農業の法人化政策や大規模農業者への支援、そのための認定農業者制度の制定へと進み、小規模農業者への支援打ち切りとなってきました。

日本では干拓地や北海道以外は国土の農地のほとんどが小規模農地の集合体です。アメリカ並みの大型機械を駆使した大規模農業は日本ではできません。

小規模農地しか持っていない地域農業(中山間地農業)は衰退し、農業後継者も著しく減少し、豊かな田園風景はあちこちで放棄地が目立ち、原野へと変わっています。

 

私の思い込みではないかと思われておられる方には行政上での具体的な例をお示ししましょう。

農園主は市役所に出向き、当農園に研修を希望して訪れてくる新規就農希望者のために認定農業者の資格を取得しようと動きました。「国の新規就農者支援の補助金」助成を受けやすくするために不本意ながら認定農業者の資格を取得しようとしたのです。勿論その就農希望の若者達は健全で品質の高い農産物生産を学びたい人達です。

 

※国の新規就農者支援制度では、認定農業者の基で農業を経験した人で無いと受けられない規程になっております。

 

最初は私のその申し出に賛意を示していた市の職員達が「佐藤さんの認定農業者取得は意味が無くなるかと思います」と言い始めました。

何故と聞くと、「県や市には作物指定というものがあり、例えば、葱・紫蘇・ニラ・苺などの農業を希望する新規就農者しか国の支援は受けられなくなります」と・・・

つまりは作物指定があり、それは単一作物栽培を意味しております。

単一作物栽培農家は直接消費者と向かい合うことはできませんので農協に帰属しないと販路は確保できません。

と言うことは国の新規就農者支援策は規格農産物(慣行農業)を奨励する農協に帰属させるために有ると言うことになり、認定農業者の仕組みもそのために周到に用意されたものだと言うことになりますね。

むかし野菜の邑では消費者と向き合うために年間百種類以上の多種類の農産物を生産しており、消費者への直接販売を行っております。

 

このように国の政策は自由で健全で品質の高い農産物を作ろうと言う夢に燃えて農業を目指す若者達の思いも達成できず、農業を諦めさせることになってしまいます。

認定農業者制度は事実上農協に帰属しない農業者は支援対象外にすると言うことを明示しているということになります。

このように一連の日本の農業政策は多くの中山間地を抱えている地域農業を切り捨て、

有機農業のように小規模で品質に重きを置く自立した農業者をも見捨てると言うことを意味しております。

 

日本という国では、品質の高い野菜生産を目指していく農園は規格野菜を押しつけてくる農協には帰属せず、自ら価値観を同じくする消費者達を探し自立するしか無いのです。

その農園の味方は消費者のみです。消費者の意識が変わらない限りは当農園の孤軍奮闘・悪戦苦闘は続いていくことになります。新規に自然栽培を学びたい人達は当農園から給与をもらいながら生活をしていくしかありません。当農園へ掛かる負担は実に大きいのです。

              たわわに実るトマト


この剪定誘引作業には大変な労力と時間と、そして何より根気が要ります。

ちょっと目を離すと脇芽が成長し、葉っぱが生い茂り、枝は暴れ回ります。

害虫が発生し、風邪と光も入らず、実は成り難くなります。

露地栽培のトマトは市場にはほとんど出回りません。露地トマトは味香りが強く

酸味と旨味のバランスが良く希少価値があります。

 

如何ですか?国は自由な農業の育成を阻止し、型にはまった農業を押しつけてくる。

農地の狭い日本の農業は大規模粗放農業には不向きであり、量より品質で勝負する農業が向いているにも拘わらず、小規模農業を切り捨て大規模農業しか支援しないとなれば、日本の農業を潰しに掛かっていると言わざるを得ない事はお分かり頂けたかと思います。

それは畜産にも同じ事が起こっており、乳牛を一頭潰したら15万円の補助金を出すと言った誠に可笑しな法令まで出ております。

これでは日本の食糧確保はどこかの国に依存せざるを得ないように仕向けているとしか考えようがありません。日本は独立国家ではなかったのか?と思ってしまいます。

 

私たちが生きていく上で不可欠なものが食糧です。

農産物は本来は国が保護して自給率を確保していかねば成りません。日本では命を守る農産物生産も市場原理に任せている訳ですから(農業者は勝手にやれ!となる)、農業の担い手がいなくなってしまえば、また、農地が荒廃してしまえば、世界が自国主義に走り始めて慌てて食糧を確保しようとしても食べるものが無いあるいは、高価な価格で買わねばならなくなってしまいます。

国が当てにならないとなると、私たちはどのように対処していけば良いのでしょう。