むかし野菜の四季ーPART2

2021.10.29(金)晴れ、最高温度21度、最低温度15度

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12月初旬から寒波が来るとの予報で、それまでに冬野菜の種を蒔き発芽させて

おかねばと、急ピッチで畑作りを進めねばならない。

 

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               人参の種蒔き

研修生に種の蒔き方を教えているところ。先生は農園歴15年のベテラン女性。

この圃場は草木堆肥歴15年目の畑。人参は当農園の顔であり、プラチナ級の

畑にしか蒔かない。マルシェで「人参はまだか」の催促がかまびかしい。

 

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こちらは農園の李の木。10月なのに季節を勘違いしたのか、花が咲いている。

 

 

むかし野菜の四季ーPART2

「高集約型農業」

アメリカ型の大規模農業の場合は、人の労力を抑えて大型機械を駆使して、広大の農地を耕さねばなりません。従って、化学肥料や農薬、そして除草剤を使う粗放農業が適しており、北海道や干拓地にはその粗放農業が行われております。大豆・麦類・とうもろこし・じゃがいもなどの大量生産型の近代農業が発展してきました。

大量の除草剤を使うため、(除草剤でも死なない)アメリカでは遺伝子組み換え作物が普及しています。

農産物の品目は年間2~3種類程度の大量生産型の単作栽培が行われております。

広大な農地を大型機械を使って栽培する作物は量の確保や拡大が優先され、大量流通に載せるために均一化された農産物が要求されます。これが粗放農業です。もちろん量産型であるため反当収量は少ないです。そこでは、農産物の安全性とか、栄養価とか、美味しさとかはあまり評価されません。

例えば、ジャガイモの種蒔き前に除草剤を使い、収穫直前にじゃがいもの茎や葉を枯らすためにもう一度除草剤を使います。大型の収穫機械を使い易くするためです。

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一つの畑に10数種類の野菜が育っている。昔であれば当たり前の農園風景でした。

家庭菜園の大型バージョンです。

 

日本の国土は狭く、農地は一反(300坪)単位であちこちに点在しており、特に中山間地を多く抱えた日本の農地には大規模(大型)機械化農業は効率が悪く不向きです。

日本では古来から狭い農地を労力を掛けて年間3~4回転させる少量多品種型の高集約農業が行われてきました。反当収量は粗放型農業と比べて3~4倍と高いが、労力や手間が掛かるわけです。

肥料や堆肥にも個性やこだわりがあり、土作りに力を入れて品質や美味しさの競い合い、手作り感がありました。草木堆肥などは大量には作れず施肥する手間も掛かるが、栄養価・安全性・美味しさなどの高品質農産物でした。

むかし野菜の邑は、高集約型農業の現代のモデル農園とも言えます。

しかしながら、戦後、食糧増産を目的としてアメリカ型の近代農業が国策として農協などを通して推進され、急速に日本型の高集約型農業は衰退していきました。

日本の農産物は農産物の内外価格差(4~5倍以上の格差)という課題に直面し、品質の同じ大陸の農産物と競い合わねばならず、大規模な機械化農業と競争しても勝てるわけがありません。このことによって「日本の農産物は安全である」という神話は崩壊しました。

その結果、日本の風土に合わない大規模機械化農業を国策として推進した日本の農業は衰退の一途を辿り、農業生産者は減少し、農業環境や基盤の消滅の危機を迎えております。

今では政府も国民も日本の農業の再生に関心を失い、農業政策が無く未来が見えない農業劣等国に落ちてしまいました。

農産物の自給ができないとなると、食の確保は海外に頼るしか無くなり、気候変動の問題を加味すると国の安全は確保できなくなります。食料安全保障の大きな問題です。

 

同じ品質では数倍の価格差がある安価な海外産の農産物と対抗できないとすれば、日本の農業は、小さな農地でしか、なし得ない労力と手間の掛かる品質重視や安全性を追求した農産物作りを目指し、安価な海外産の農産物に対抗すべきではないでしょうか。

これが日本古来からの高集約型農業です。

次の項で述べますが、高品質野菜は必ず低窒素栽培に行き着きます。

高集約型農業だからといって有機肥料などを多投すると、化学肥料と同じく高窒素土壌となり、土壌は汚れ、品質は落ちていきます。肥料が多いと野菜は良くできるというのは大きな間違いなのです。

草・藁・籾殻・葉っぱ・木屑などの炭素分の多い植物性有機物が土を育てていきますので、念のために申し上げておきますが、肥料は野菜は育てるが土は育ててはくれないのです。

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草木堆肥を作っているところです。草を厚さ10センチに広げ、その上に放牧牛の
牛糞(草が飼料であり輸入飼料を使っていない)を厚さ3センチに置き、さらに剪定屑

や葉っぱを5センチに厚さに重ね、混ぜ合わせます。

草木堆肥は窒素分が少なく炭素分が多く低窒素となり、かつ、ミネラル分の宝庫です。

 

量では無く品質で勝負するとすれば、消費者の支持を得ることが重要になります。

日本の流通事情では、質で評価を得たい農業者は流通を介すること無く消費者と直接やりとりができる直接販売方式が適しているということになります。

そこで、品質志向の農業者はマーケティング能力(販売ターゲット戦略や戦術・商品開発能力・販売促進を行うための消費者とのコミュニケーション能力など)が必要となってきます。

これは別項で詳述致します。