農園日誌Ⅲー「むかし野菜の四季」ー日本の農業の原点ーⅠ

2019.9.18(水曜日)晴れ、最高温度31度、最低温度24度

 

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              小麦を使ったおやつ作り

今年9月29日(日曜日)オープンする農園マルシェのため、現在、様々な商品開発

を行っている。この写真はほぼ完成に近いパウンドケーキです。

自然栽培による九州産の筑後イズミと言う品種の小麦と日本原産の古代麦(弥富麦)

の全粒粉のブレンド小麦粉がその原料です。

穀類の自然栽培と簡単に言うが、これが実に難しく、本来、窒素を欲しがる麦の栽培を

草木堆肥と言う低窒素栽培で行うため、土作りに約5年を要した。

さらには、農薬はおろか除草剤も使えないため、労力とリスクの塊となった。

 

これは、ハイグルテン仕様の麦が使われたパンや麦を原料としたおやつは、一度、アレルギーが発症するともう食べられない。多くの消費者の声に背中を押され、それならと

ノン化学物質栽培で育てた九州原産の小麦と、日本原産の古代小麦を加えたブレンド

を作ろうではないかとチャレンジし始めた訳です。

 

危険性が問われているベーキングパウダーも使わず、しかも、もさもさした食感になりがちな全粒粉麦(中力粉と古代麦)で麦の味香りを残しながら、もちっとした美味しさ

を表現しようと試行錯誤を繰り返し、おそらくは、全国何処にも無いケーキが完成した

現在、パンなども始め、数種のおやつ作りを試作中です。

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「むかし野菜の四季」

(日本の農業の原点)
日本には四季があり、国土の中央に山があり、山間から流れる大小の河川がある。河川は扇状地を作り、やがて平野へと繋がる。
豊かな自然があり、河川には、落ち葉が堆積した腐葉土からミネラルを含んだ栄養価に富んだ水が流れ、
豊かな土壌を形成している。その豊富な水により、日本では稲作が発達していった。
そのため、水田には肥料分を入れる必要が無く、古来から自然循環型の農業が営まれていた。
水を取り入れることが難しい土地は、野菜や麦類・雑穀が植えられる畑作が行われてきた。
そんなに広くも無い畑作用地には、入会地から柴を刈り取り、草と混ぜて、わずかな人糞を発酵促進剤として加え、一年も掛けて草木堆肥を作ってきた。
その草木堆肥によってミネラル不足と窒素不足を補ってきた。これが日本の有機農業の原点であった。

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戦後、西欧から硫安(化成肥料)が導入され、化学肥料と農薬のセットによる近代農業によって、日本の農業は一変していった。
ミネラル分豊かな低窒素栽培から、高窒素栽培への転換は、農業生産量の大幅な増大ができると国を挙げて、大規模化・機械化が進められていった。その当初こそ、確かにお米の増産には成功していたが、次第に土は痩せていき、反当当たりの生産量は、戦前よりも減産に陥っていった。
それは同じく導入された近代農業によって他のアジア諸国も同じです。
大量に投下され続ける化成肥料と農薬によって、次第に農地は汚染されていき、食味や栄養価は落ち、当然に農産物はかっての輝きを失っていった。
日本の農産物は安全であると言った神話は今では過去の物語になっている。
加えて、日本の農業者は、機械化と化学肥料・農薬(除草剤含む)によって、楽な農業を覚え、有機農業の発祥の日本の伝統的な農業である自然循環農業のDNAも消えてしまっている。

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問題なのはここからである。
近代農業による安全性への危惧から、有機農業と言う概念が生まれてきた。その元となった農業こそ、
日本の古来からの農業であった草木堆肥及びそれに近い有機物を使った農業であった。
処が、今から10数年前、日本政府によって、消費者保護という名目で、有機JAS規程が生まれた。
この法令によって、折角復活し掛かっていた日本の有機農業は急速に頓挫した。
何故なら、法令施行以前の有機農業者達の野菜は有機野菜と呼んではいけなくなったからです。
そのため、古来から延々と受け継がれてきた自然循環農業(本来の有機農業)の歴史はここで途絶えた。
今では、特に欧州が使っているオーガニックと言う「称号」は日本の有機JAS野菜には適用されない。
何故なら、信用性がきわめて薄いと判断されているからです。

当農園が「むかし野菜」と名付けたのは、その理由からでした。