むかし野菜の四季ーPART2

2022.4.27(水)曇りのち晴れ、最高温度24度、最低温度14度

               由布市狭間町の麦畑

 

左端は日本の古代麦(一粒小麦の原生種)、右側は裸麦。

麦作りを始めて8年目。当初の2年間は収穫0でした。

草木堆肥による土作りが進んできた3年間にようやく慣行栽培の1/3程度の収穫が

ありました。

麦は肥料喰いの農産物です。そのため、低窒素である草木堆肥だけでは育たない

との農業振興局や農業試験場の提言に反して敢えて低窒素・ノン除草剤の栽培に

チャレンジしてきました。

これは何とか小麦アレルギーの出ない低グルテン仕様の小麦粉を作りたかった

からでした。

今ではむかし野菜の邑の菓子類・惣菜に使われてお、圧倒的な存在感があります。

 

       弥富麦(日本古来からの原生種である一粒小麦)

               裸麦(大麦)

 

農園では麦ご飯セット・麦茶などに使われております。

麦畑を見ていると日本の原風景が目の前に浮かんでいるようです。

日本人の主食はお米と皆様は思っておられると思いますが、むかしからそれは武士や

貴族達の主食であって、農民は麦・粟・稗をもっぱら主食としてきたのです。

当時はハイグルテン仕様の麦などありませんでしたしアレルギーなど無かったのです。

 

農業マーケティング

有機農産物の現状と消費者動向」

 日本の有機JAS野菜はオーガニックの認定を受けていない。つまりは信用されていない。有機JAS認定は取得するのにも大変な労力と費用を要するほど細かく規程が盛り込まれている。それほど厳格なのに、何故なのか?

問題は五つあります。一つは一度取得してしまえば、後はフリーパスとなっており(

毎年日誌と書面の申請は必要ですが)形式基準が厳しい割には実態と遊離しているということで、世界には信頼されていない訳です。

 

二つ目は、「有機物なら何でも良い」と言うことにあります。

例えば、あれほど化学合成された物を嫌っている規程には、薬品・抗生物質・農薬などが大量に含まれている(家畜飼料)配合飼料を餌として食べた畜糞には触れておらず、結果として、その畜糞主体の有機肥料が畑に大量に投下されることになり、土壌の微生物や菌類を駆逐しており、有機本来の自然循環する土壌を汚染させているのです

 

三つ目は、この規程は緯度にして北海道に該当する寒冷地である欧州で作られたものを踏襲しており、日本の農地の95%以上が温暖地にあり、さらに温暖化が進む日本の気候では害虫が多発しており、「化学合成した農薬を使ってはならない」と言う規程が実態にはそぐわないことです。

たとえ有機農家であっても特に春から秋にかけての野菜の生育期に旺盛に繁殖した害虫の餌にされてしまうと農家は生きてはいけないのです。

結果として、有機JAS規定では禁止されている農薬、特に危険な浸透性農薬を使っている有機農家も出てきます。

 

四つ目は、日本の消費者の意識であり、流通の問題です。

本来的な有機野菜は手間が掛かり生産リスクがあり、価格は慣行栽培野菜と比べてやや高くなります。さらには、規格サイズは揃わず、見てくれは悪く、虫食いの痕もあるなど、その健全性や品質の割には日本の消費者からは評価されず、売れにくいのです。

また、不揃いで虫食いの痕の見える有機野菜は大量流通に取っては扱い難い農産物であり、敬遠されております。欧州のように露天マルシェで販売されていることもありません。

 

五つ目は、厳しい規制の対象となる有機野菜生産農家への補助金などの助成処置はほぼ無いと言ってよいのです。

有機農家から見ても、費用を掛けて煩わしい書面申請をしても、その見返りはほとんど無く、申請費用や煩わしい報告書の作成や一品当たり50銭のシールを貼らねばならない有機JAS野菜を申請する農家が減って行くのも当然の結果でしょう。

 

それならということで、実際に有機野菜であっても敢えて有機JAS申請をしない農家も多いのです。結果として、有機野菜は農産物の0.2%以下しか無い。

これは政府の公表数値ですが、これすらも妖しいほど、実態は少ないようです。

除草を兼ねてじゃがいもやブロッコリーの土寄せ作業を行っているところです。

両サイドは南瓜が植わっております。

 

農協は有機野菜に取り組むと収益源である化学肥料や農薬の販売が減り、有機野菜には消極的であり、むしろ敵視している感さえあります。

農協と一体となっている日本の農政も当然に有機野菜を増やそうとは思ってもおりません。

有機農産物生産に対して厳しい法規制は加えて、補助金や支援はほぼゼロです。行政もメディアも農協を、結果としては、農家を敵に回すかもしれないことはしないのです。

それなのに、何故か日本のマーケットには有機野菜が溢れており、東京駅周辺では有機野菜と表示した野菜が溢れているし、有機野菜使用と表示した飲食店も多数あります。

消費者は何を信じて良いのか分かりませんし、当然に消費者の信頼も薄れています。

これが日本の有機野菜を取り巻く現状です。

 

消費者も有機野菜が体に良さそうなどと、有機農産物への欲求度は80%と高い。

処が、ニーズ(金銭と言う痛みを伴って購入する)はどうかというと、価格が高いと言う理由で購入者は増えてきません。有機JAS認定を取得していない有機野菜を加えても1%にも満たない程しか無いと言うのが実態に近いのです。

例えば、スーパーマーケットなどで、一本100円のきれいな大根がある横で、線虫が這った痕のある一本150円の大根が並べられているとしますと、貴方はどちらを選びますか?虫食いだらけとなった露地物の有機葉野菜と、慣行農業のハウスで育った立派な葉野菜があったとしたら、どちらを選ぶでしょうか?

見た目きれいな野菜が良い野菜と信じている消費者、野菜は本来安いものだと思っている消費者が大半を占めている日本では、有機野菜のマーケットは拡がらない。

このような理由で実際には、有機専門の通販にしか有機野菜は集まらず、宅配中心の流通しかないというのが実情かも知れません。

大地の会(有機野菜を標榜)では、有機JAS野菜の代わりに大地の会独自の基準で作られた有機野菜(法律上有機野菜と呼べない)を宅配しております。

しかしながら、この有機野菜専門の卸売業で販売されている野菜も何故か規格野菜となっております。

自然栽培や有機野菜は本来規格が揃うはずは無いのですが・・・。

まだ国立系の大学生なのですが、当農園で研修を行っているところです。

彼はコロナ下でリモートによる授業を受けてきたようで、すでに単位は取り終えた

とのこと。大学には一年間しか通っていないそうで、この時代の学生は大変です。

大手企業の実態を見てしまったようで、夢が持てないということで就活もせず、

当農園に興味を抱き、当農園での研修となりました。期待の新人です。

 

欧州ではどうかというと、オーガニックのマーケットは15%以上に、有機野菜生産農家は10%にも膨れあがっており、今でも増え続けております。日本では中国よりも有機農産物の耕地面積は少ないのです。

フランス・スイス・オーストリア・ドイツなどでは、国が有機栽培を奨励し、手厚く保護助成しております。

この違いはどこから来ているのでしょう。

欧州には自然環境を守る、食糧を国内で確保する、露地栽培は環境保全に大きく寄与しているなどの意識が高く、安全な食と言うよりも持続可能な農業として有機野菜を支持する国民が多く、その意識が高くなっているのです。国民の支持が高ければ、国も当然に補助金や支援を厚くしております。

環境問題に関心の薄い日本の消費者と正比例して国も露地栽培や有機野菜に対しては実に消極的な態度を取っているのも当然かもしれません。

 

一つの有機農家に100家族以上の消費者が居り、日本のように宅配の仕組みが備わっていない欧州では、週末になると家族連れでその農家に集まり、一緒に農業を手伝ったり、昼食を皆で作ったりして楽しんでいるようです。しかも野菜代金は前払いが多く(年間予約性)有機農家は市民の尊敬を集めており、社会的地位も高いのです。

欧州では脱炭素社会という取組も日本などと比べて多くの国民の支持を得ております。

結論として、国民の意識が変わらなければ健全な食を求める有機農業は日本では広まりが薄いと言うしか無いのです。