農園日誌Ⅱー「活きること」最終章

2019.9.4(水曜日)曇り、最高温度30度、最低温度23度

 

f:id:sato-shizen-nouen:20190904183832j:plain

           甲州とうもろこしを軒先に陰干し

 

 今年もわずかしか採れなかったとうもろこし。

除草剤・土中消毒・浸透性農薬を使えば、量が確保できるのだが、それでは意味が無く、あくまでも自然栽培にこだわるため、例年、収量は通常栽培に1/5以下となる。

これは、小麦・古代もち麦・大豆粉などとブレンドし、自然栽培だけの粉作りを行うために生産しているためです。

農園では、9月末頃から毎日曜日午前、野菜だけでは無く、自然栽培のお米・ブレンド粉・麦ご飯セット・麦茶などの穀類、その粉を使ったパン・ピザ・野菜饅頭・焼き菓子・コロッケなどの直売所を開催しようとしており、現在、その商品開発中です。

同時に販売に際しては、ブレンド粉を使ったやせうま・クレープ・団子汁・石垣餅などのレシピを添えて皆様にご紹介していきます。

 

 

「活きること」最終章ーこの国の行方

f:id:sato-shizen-nouen:20190904190405j:plain

 

2019年9月  この国の行き着く先は?
日本という国は資源を持たない。そのため、資源を輸入しそれを加工して外国へ商品輸出し外貨を稼ぐ。それらの加工産業やそれに関連した産業によって、多くの国民の生活が成り立っている。
そのため、常に日本を取り巻く国々と仲良くして行かねばならない。武力行使を行う事を放棄し、ひたすら自国防衛に徹しなければならない。経済戦争を仕掛けることも出来ない。そこに独立国家としての日本経済や政治外交の難しさがある。

但、この時代、世界が民族主義自国主義の闘いが始まると、加工貿易による産業だけで、グローバルな大企業を中心とした産業だけで日本経済が支えられるのか、それらの大企業が豊かな日本の経済を雇用を消費を担ってくれるのかと言った疑問が湧いてくる。
今まで、長い時間を掛けて日本という国は、殖産興業に邁進し、世界NO3の経済力も身につけてきた。そのため、世の中の、あるいは、政治・経済・社会の関心は、全て中央に向けられてきた。
その行程の中で、地域は次第に見捨てられてきた。地域の産業は、極論すれば、農林水産業しか無い。
今、その地域産業に大きな危機が訪れている。担い手がいなくなっている。それは特異な技術や優れたノウハウを蓄積してきたを職人・地場産業もまた、同じこと。

日本のGDPのうち、貿易に占める割合は30~40%と言われており、国内循環しているGDPは60~70%もある。その産業に従事している人達は生産者であるだけでは無く、消費者でもあるわけで、国内消費を支えている。
「国力の物差し」は、何も殖産興業・加工貿易、ひいては、大企業だけにあるわけではないのです。

特に農業は、国民の食糧を生み出す産業です。
その農業の担い手がいなくなることは、国内での食糧の確保ができなくなると言うことです。それは世界的な天候異変による食糧危機や自国主義が進んだ後の経済戦争の道具にされることに繋がります。
これは余り知らされていないことですが、欧州各国では、農業特に露地栽培農家に対して手厚い保護政策を行っております。国土保全・食糧確保は国力維持に繋がることを知っているからです。(施設栽培には補助金は出ません)
先進各国が農業維持を重たいテーマと捉えていることに、関心を示そうとしない日本の政治家のみならず、日本の消費者も、実は、大きな問題なのです。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20190904223355j:plain

 

農業を17年やってきました。そこで感じたことは、如何に農産品が安いかと言うことです。
サラリーマンも経験してきただけに、労働対価として、割に合わないのです。
これが農業を嫌う農業後継者の実態です。親が農業をしてきた子供さん(跡取り)ほど、農業を嫌って出て行きます。その親も子供には生計も成り立たない農業をさせようとはしない。結果として、地域には、田舎には、人が居なくなっているのです。

「農業では苦労するだけで生計が立たない」これが真の事情です。
長い時間を掛けて、農産物流通(販売)は流通に支配されてきた。それは低価格ということだけでは無いのです。流通し易い形こそ、「規格野菜」なのであり、「見栄え・形・規格サイズ」が揃わないと、流通では価値がありません。
年間高回転の効く施設栽培野菜、化学肥料と農薬で生産される野菜、土作りに三年もの時間を掛けて生産された有機野菜、いずれも流通には同じ野菜なのです。そして、それは消費者にとっても同じです。
品質や安全性は、評価されない。つまりは、生産者の思いや努力は評価されるべき対象では無いのです。
高品質農産物を生産すると言う農家の誇りは、すでに無くなっており、誇りを持てない農業に何の希望も持てないからなのです。これでは、後継者が農業を嫌うのは当たり前です。
地域は、農業は、国からも、メディアからも、そして、国民からも見捨てられつつあります。少なくとも国民の関心の外に置かれております。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20190904190822j:plain

私はそこで、どうしたら地域の生活を支えてきた農業を未来へ残せるのか?考えてきました。
その一つの試みが、農業者が良質な野菜を作ろうとすることが消費者へ伝わるには、「消費者との直接対話方式」、つまりは直販方式を採用することでした。
消費者への直販を行うには、「圧倒的な品質の差」・「美味しい野菜」を示すことが必要でした。ほぼ美味しいでは、消費者は評価してくれません。
また、定期的に購入して頂ける消費者にいつも同じ野菜では、飽きられてしまいます。そのためには、季節毎に、30種類以上の野菜を栽培するノウハウを身につけることでした。露地栽培には必ず訪れる端境期も野菜を切らさない工夫をし、「年間百種類以上の野菜」を作り続けることになりました。
さらに考えたことは、野菜だけで良いのか?と言う疑問でした。「生きるための糧とは穀類である」と言う思いに至りました。
「草木堆肥のみ施肥し、穀類生産には欠かせない除草剤を排し、健全な土を育てることに3~5年を要し、味香りがあり、穀類の旨みが感じられる」
これを目標にして栽培実践を繰り返し、数年後に出来た麦を食した時に、農園主は驚きました。
今まで感じたことの無い味や香りが、そして、美味しさがそこにありました。
この穀類の素朴な美味しさを粉にして、加工品の商品開発にスタッフ達と取組始めました。
野菜饅頭・団子・石垣餅・パン・ピザ・パウンドケーキ・クッキー、そして全て原料をグループ内で調達したコロッケ等々でした。
アレルギー・アトピー・癌などに苦しむ消費者にやさしい農産物及加工品に取り組んでおります。

f:id:sato-shizen-nouen:20190904190927j:plain

彼は、当農園にて研修し、卒業し、独立農園主となる一人です。

6人の中で、一番若くて最近研修生となったばかりの子です。彼らの未来を導いて行き

やがて、彼らの足で立つ日が来ることを祈っております。

それも皆様の持続したご支援があってこそです。

 

化学物質を極力排した健全な農産物作りは、手間と労力と、生産リスクに満ちております。それでも、自然循環農業によって産出された農産物及びその加工品は、人々や、未来を担う子供達の健康を守ってくれる。
その自負心を持った新たな農業者が育ち、地域が再生されていくと言う志を持ち続ける邑が生まれる。

この壮大な実験はこれからも若いスタッフ達に受け継がれていき、未来へ繋がってくれることを祈り、
地域の農業が量から質の農業へ転換を果たし、それを消費者が理解し、支持していただけることを願って「活きること」と言う重たいテーマに取り組んできた農園日誌Ⅱは終わりたいと思います。

f:id:sato-shizen-nouen:20190904191517j:plain

 

ご愛読頂きありがとうございました。

皆様が、ご健康で常に幸あれと願います。

 

                               農園主より、