むかし野菜の四季ーPART2

2022.2.11(金)晴れ、最高温度10度、最低温度3度

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                  開墾作業

 

 新たな畑を借りることになりました。

約3反ですが、その1/3は雑木や竹林です。

先ずは男3人で雑木の幹をチェンソーで切り、枝を落とす作業と並行して

竹林の伐採を行っています。

この後、木や竹を焼いて重機で根の伐根を行い、ならし作業を行ってから、葉っぱ葉っ木や葉っぱの破砕屑を全面に振り、土作りから始めます。

ほぼ一ヶ月は要します。

その後、荒れ地に適したさつまいも・大豆を植えて、3年以上、土を育ててから

始めて野菜が植えられます。

 

「持続可能な農業」

(F1種子と遺伝子組み換え種子の話し)

当農園のホームページに「貴農園はF1を使っていますか?」という質問がよく届きます。どうやら自然栽培と言っているので、在来固定種の野菜を栽培している筈であるとの思いからでしょう。

私はこうお答えします。

「当農園でも何種類かの固定種を栽培してはおりますが、F1の種の方が圧倒的に多いです。現在の農業では掛け合わせによる品種改良や新種子の開発が当たり前のように行われており、F1を外した農業は難しい」

そもそも固定種と言う種子は無く、長い年月を掛けて緩やかに自然交配を繰り返しながら地域の気候に馴染み、遺伝子が固定化し他の品種と交配し難くなった種子のことを在来固定種と呼んでいます。

それに対してF1種は、ある性質が優勢に出る種子同士を交配させて、新たな種子を人為的に作り出したものです。その新たな種子の遺伝子は不安定で、自然界ではすぐに同系統の他の野菜と交配しますので、その種を採取したとしても同じ性質の野菜はできません。

 

自然界では、普通に他の品種と交配を繰り返して今の種子があります。

例えば、人の社会では、古来から近親相姦を忌み嫌っております。それは何故でしょうか。平家の落人部落が次第に滅んで行きました。これは他の社会と交流せず、近親相姦を繰り返したため、奇形児や虚弱体質の子供が多く生まれてきたからです。

当農園でも長らくエシャロットを作っておりました。処が10年近く経過したとき、種子が次第に小さくなりはじめ、ついには死滅してしまいました。

在来を扱っている「野口種苗」の店主も、時々は他の品種と掛け合わせを行わないと育たなくなってしまうため、他の品種と交配を行うとのことです。

在来固定種は種類も乏しく、元来が雑種ですので、形状や育ち方が異なります。

普通の消費者は常に同じ野菜を食べ続けていられるでしょうか?必ず飽いてしまいます。

F1品種が危ないと言って敬遠されておられる消費者もおられますが、危ないという科学的根拠はありません。

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                   焼き灰

有機物を焼くと炭素やミネラルなどの無機物(元素)になります。

凝縮したミネラル分が得られます。

これをむかしは農地に入れて農産物を作っていました。

「枯れ木に花を咲かせましょう」の花咲かじいさんは逸話では無く本当の話だった

のです。

 

種子法の撤廃・種苗法の改定・引いては食品表示方の改正など矢継ぎ早に農業関連の法律を改正(改悪)し始めました。

「日本古来の種子を守る必要性が無くなった」「外国から種子を取られてしまうから自家採取を禁ずる」「自然界でも交配による突然変異は起こるのだから種子のゲノム編集は認める」「産地が混じることも多く食品表示はしなくても良い」と言う。

その裏側には農業大国アメリカ(種苗の独占)の影が常にちらついて見えるのは私だけでしょうか?

「遺伝子組み換え大豆・小麦・とうもろこしなどは安全なのか?」

消費者は染色体遺伝子を組み換えた農産物だから怖いと言うだけでは無く、除草剤を大量に吸い込んだ農産物が何故安全と言えるのでしょうか?と言った疑問を何故抱かないのでしょうか?

遺伝子組み換え作物や除草剤を扱っているアメリカの巨大企業であるモンサント社は種子の独占を狙っているし、この会社の強力な枯れ葉剤(除草剤)を輸入している先進国は日本だけです。ラウンドアップと言う名の除草剤です。

今や国の農業政策は無いに等しく、日本の食の安全性や食糧の確保を考えない国はやがて滅んで行くことを危惧せざるを得ない。

在来固定品種にこだわるのもよいのですが、むしろ遺伝子組み換え作物の輸入解禁や

食品表示義務を無くすなどの法改正の方が問題なのでは無いでしょうか?

 

ただ、種苗会社がF1種の開発にしのぎを削っていると言っても、その目指すべき方向性に問題があります。最近の種子メーカーは見栄え・量産可能・耐病性・育て易さなどを追求しており、味香り・栄養価・美味しさなどの品質を軽視しております。

何故そうなったのか?それは流通に乗せ易さ、あるいは、生産者の作り易さを選択しないとその種子を買ってもらえないからです。流通側のニーズに縛られている生産者も当然に作り易さや見栄えのする野菜を選択します。

 

むかし野菜では、年間10種類程度の新たな種子を試験的に植えてみますが、残るのはその中で1品種程度です。当農園では、見栄えなどより、先ずは美味しさや個性を重視しており、交配した元の原種の遺伝子を多く残している種子しか選びません。

大量流通社会では生産者と消費者とのやりとりが無くなり、真に消費者が望む個性があり美味しい品質の野菜が消えていこうとしております。

 

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                雨を待つ野菜達

冬期には貴重な雨が日曜日に降る予報で、農園のビニールトンネルを一斉に剥ぎます。

しばらくは寒に曝し、ひ弱になった野菜を引き締めます。

冬はこれを繰り返し、野菜を育てているのです。