農園日誌Ⅱー「活きること」ーPART18ー

2019.5.22(水曜日)晴れ、最高温度27度、最低温度17度

イメージ 1
             古代小麦(弥富もち麦)をブレンドしたパン

 むかし野菜の邑の麦作りは4年目に入った。
土もほぼ出来てきており、品種改良をしていない古代小麦(原始一粒麦)の生産も軌道に乗り始めた。
そんな中、北九州の「いちかわ製パン」とのコラボにより、試作パンができた。
麦生産に入る中、いつかは、アレルギーや現代病に苦しむ子供さん達に抗体反応しないパンを作ってみたいとの思いがあり、ようやく市川さんとの出会いにより、それが実現した。
これから、試作を進め、さらに美味しい「食事パン」ができれば嬉しい。

イメージ 2
           左側の紫色をした麦が古代小麦(弥富)



・菓子パンやふわふわパンではなく、食卓パンとしてハード系とする。
・外はカリカリ、中はしっとり、水分多目に、ぱさぱさしない、もちもち感
 のある新しい食感。
・麦(穀類)の生命力を頂く、芳醇な味と香りのする素朴で美味しいパン作
 りとする。
・加えるのは塩と水で、バターや砂糖を極力抑える。若しくは加えない。
・小麦の味香りが引き出せる草木堆肥による自然栽培の麦を一定の割合で加
 える。
(南の香り(九州産強力粉)70%以外は、日本在来の古代麦(弥富もち
 麦)と九州原産中力小麦を30%加える)
・小麦アレルギーなどの現在病に苦しむ消費者(特に子供さん)も安心して
 食べられるものを目指す。

2016.12.3  麦作り(野焼き・畑作り・種蒔き)

イメージ 3

由布市挟間町古市の田圃3.5反を借り受け、先ずは、ブッシュとなっていた圃場の草を刈り、野焼きをする。
できるだけ、風の吹かない夕方を狙って火を付けた。それでも、新興住宅地の方からは、クレームが寄せられた。地域の方は流石に農業そのものを理解しており、荒れた田圃を借りてくれて感謝してくれていたのか、容認してくれただけではなく、「ご苦労様頑張って」と言って差し入れを頂いた。


 佐藤自然農園にて、大豆・麦・トウモロコシ・黍粟などの穀類生産を始めたのは、2012年頃からで
あった。当時は、実験栽培であったが、2014年、由布市庄内地区に4反の圃場を借り受け、無添加醸造味噌の量産を図るため、本格的な穀類生産に着手した。お米は平野さんの自然農米、大豆は草木堆肥の自然栽培、塩は海水塩(減塩)を使用し、完全なノン化学物質の醸造味噌と言えば、おそらくは、当農園しか無いであろう。味は、どうかって?それこそ愚問であろう。ある方は、もったいないと言って、出汁も取らず、この味噌だけで味噌汁を作っているそうだ。

イメージ 4

自然栽培での大豆の生産が雑草に覆われたり、長雨・干魃にたたられ、思うように生産量が増えないため、定期購入のお客様の熱い要望に応えられず、年に3~4回、しかも一回当たり、わずか300gしか送れないと言った状況が続いた

その後、由布市狭間町古市に、卒業生の後藤さんと田圃二枚、合計4反の圃場を確保し、麦・大豆の生産も本格化していった。
県の地域振興局に相談しながら、麦生産のノウハウを集めてきた。と言うのも、米国の農学博士が「小麦(パン)を食べるな!」と警告していたことや、以前は無かったはずの小麦アレルギーの多発に、何とかアレルギーに苦しむ子供達に救いの方法は無いのか?と考えていたからである。
何故、小麦アレルギーが多発しているのか?アレルギー反応は、異物が体内に入ってくるとそれを攻撃する抗体の過剰反応であることまではわかっている。ではその異物とは何なのか?小麦タンパクが幾つかの複合汚染によって、抗体が異物(危険)と判断していることにその要因があるのではないかと言う可能性が高いのである。
穀類生産中に畑に投与される除草剤・農薬・高窒素肥料・化学物質、あるいは、流通段階で投与されるポストハーベストの問題もあろうが、ハイグルテン(高タンパク)に持って行くために、何代にも亘って品種改良がなされ、事実上、ハイグルテン遺伝子に組み替えられたことも大きな要因になるのかもしれない。
そこで分かったことは、
先ず、遺伝子組み換えの小麦や大豆は、種子としては、まだ日本には上陸していないこと、日本在来の種子であれば、問題は無いこと。
 
※ここで言う遺伝子組み換えとは、こうである。
例えば、大豆生産(小麦も同じ)をする場合、先ずは、除草剤を撒き、雑草を抑える。
問題となるのは、大量な除草剤を使っても死なない大豆が必要となり、除草剤に耐える遺伝子を持った大豆の種子を作ることになった。これが除草剤に耐えうる遺伝子組み換え大豆である。
遺伝子組み換えだけが問題となるのでは無く、危険な枯れ葉剤を吸い込んだ大豆(麦)を食することにも大きな問題があると言うことです。
 
次には、米国では、小麦がハイグルテン(高タンパク)になるように品種改良を重ねていること。その点では、日本在来の麦は、安全では無いかということ。何故なら日本の気候ではハイグルテン仕様の強力粉
や逆に薄力粉の生産が難しいことにある。
但、麦は肥料食いであり、振興局や農業普及所では、肥料を多く撒き、必ず追肥もするように指導はしているが、中々、それに応じる農家も少ないと言う。理由は簡単である。兎に角、麦・大豆の生産価格は安いため、農家も割に合わないことはしない。

イメージ 5
        由布市庄内の4反の畑の麦踏みの風景

8人で踏んでも半日近くかかる。足は棒のようになり、冬だというのに汗だくになる。

イメージ 6
           黄金色に染まった麦畑

5月下旬から6月の初旬頃麦刈りとなる。梅雨入り前に刈り取ってしまわねばならない。
ここ庄内では、麦畑の風景はここだけと寂しい。
専業農家も一集落に一軒くらいしか無く、この長閑な田園風景は近い将来、消えて行ってしまうのかもしれない。

ここで問題であったのは、私は、穀類生産においても、化学肥料・農薬だけではなく、通常何処の農家でも使う除草剤も使いたくは無い。また、高窒素栽培の弊害は分かっており、あくまでも草木堆肥と言う低窒素栽培しか念頭には無かったことである。
その所長曰く、「佐藤さん、除草剤を使用しないと、草に負けてしまいます。また、先ずそんな低窒素栽培では、満足な麦は育たないですよ」と。
その時考えたことは、こうである。
「日本の先人達も麦は作っていた。むかしは窒素肥料も大量の畜糞も無かった。それでも立派に麦は育っていたはず。大豆と麦の二毛作では、広い圃場に、作ることに大変な労力が要る草木堆肥は大量に撒けないし、年に二回(大豆と小麦の二毛作)しか堆肥も撒けない。となると、先人たちが行っていたように、数年をかけて、土作りを行うしかない」と決意した。
 
唯、気になるのは、穀類価格の安さである。
      国際価格(kg)     国内価格   反当収量
大豆    33.5円   230円   160kg
小麦    17.3円    48円   420kg
 
内外価格の格差は比較することすら難しいほどの価格差がある。
これは、大量生産の国である米国・豪州と比較して、インフラ整備・流通コスト・国の支援(補助金)に圧倒的な差があり、結果として、穀物の内外価格差は数倍から10数倍の開きがある。
そのため、国内の穀類反当収入は、大豆で36,800円、小麦で20,160円にしかなりません。
通常米の反当収入が70,000円前後であるのに比べても如何に安いことか。
穀類価格の内外価格差と反当収入の安さから、国内の穀類がお米に集中していることがお分かり頂けると思います。
当農園では自然栽培・低窒素栽培のため、通常農業と比べてその生産量は約半分です。
価格をやや上げたとしても到底労力と手間に見合うものではありません。
必然的に、主食のお米以外の穀類は、加工品として消費者に届けていくことにならざるを得なくなる。
そう言うわけで、自然栽培による穀類生産の厳しい挑戦が始まった。蟷螂の鎌になるかもしれない。

イメージ 7