農園日誌ー社会的存在価値ーPARTⅦ-自然循環農法の実践

29.6.6(火曜日)曇り後小雨、最高温度27度、最低温度16度

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                  夏・秋野菜の風景(5番の畑)

 ようやく、明日から梅雨入りとなり、長らく続いた乾季も終わる。
畑は水気を失くして砂漠化と化している。
4.30.食の集い前後からの忙しさに、また、新規申込が1,200人を超しての慌ただしさも加わって、夏野菜の準備作業が遅れに遅れている。
一本葱・九条葱などの秋野菜の植え込み・雨を待って植え込む予定の茄子類、植えっぱなしのじゃがいも、トマトの剪定・支柱立て作業、梅雨前の堆肥作り、そして
除草作業と、農作業は山積み状態。
この二か月間、スタッフは休みなしの連日の作業が続いている。

トマトの初期剪定誘引作業を3列終える。まだ、13列残っている。
一本のトマトに3~4本の枝を伸ばしていく。全て南向きに40~45度角で寝かせていく。一枝が3~5メートルにも伸ばす。余分な葉を落とし、脇芽は掻く。
放置するとすぐにブッシュになるため、中秋までこの作業が続く。
気が遠くなるような作業に、心が折れそうなくらい・・・
これから梅雨入りして、合羽を着ての剪定誘引作業が続くことになる。

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今日、掘ったじゃがいも。
まだ全体の半分弱程度。

春は種類も多い。

見えているのはアンデス(赤)
他に北あかり・メークィン・男爵
紫芋など、

しばらく、菰をかけて乾燥させ
保冷庫へ移す。



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ピーマン系野菜の誘引作業
先輩から教えてもらっている
研修生達。
全部で18列ほど残っている。
まだ手付かずの状態。

初期的な支柱立て誘引作業

短めの竹で樹形を作っている処。この後、本格的な支柱を
立てていく。
今年はこの研修生達の仕事になる。
農園主と先輩たちはトマトやナスの剪定誘引作業を行うことになるだろう。


社会的存在価値―PARTⅦ―自然循環農法の実践
 
§3.種子について
テレビにより、むかし野菜の邑が紹介されたからかもしれないが、野菜作りへの問い合せも増えている。中でも、種子の選択についての質問が多い。
「在来種か固定種の種はどこで手配しているのでしょうか?」・「自家採取はどのように行っていますか?」・「F1の種子を使っているのですか?」などなど。
 
どうやら、自然農の本を読んだり、交配品種(F1)の情報が飛び交っており、あたかも、自然農では、交配品種は使わない。体に良くない。などの間違った理解をされているようだ。
では、在来種とは何か?固定種とは何?について、正確に答えられる方は殆どいないだろうし、農業現場で交配種を除けば、ほとんど野菜は無くなるという現実を皆様はどれだけ知っているのだろう。
当農園のトウガラシは、30年前に佐賀の呼子でおばあちゃんから買ったトウガラシの種を未だに栽培し続けている。それでも、毎年、亜トウガラシが1/3は混じり、その変なトウガラシを除いて翌年植えても、また亜唖トウガラシができる。
つまりは、自然界ではピーマン系の野菜が交配し、純粋なトウガラシはできないのです。
これなどはほぼ、固定種と呼べるのですが、それでも常に交配を繰り返している。
蔓紫(実際は緑ですが)や紫蘇なども毎年こぼれ種が畑で発芽し、ほぼ同じ種のものを定植し、すでに15年は経過している。これは他に交配し易い種類の野菜が無いから「種」は変わらない。
他には、島らっきょがある年、突然に小さくなってしまって、新たに種子を購入し、以前の種と混植し、3年がかりで島らっきょやエシャロットの(種を増やすつもりで)種蒔きを繰り返し、来年はようやく出荷ができそうなくらいに種が増えてきた。
同じ「種」を自家採取して毎年育てていると、次第に劣化してくる。
つまり、近親相姦を繰り返しているうちに、次第に自然界での抵抗力が弱ってきて、野菜がより小さくなってしまい、やがては消滅してしまう。
そこで、時折、同種の種子を買ってきて、混植し、他の血を取り入れ、優性遺伝子のみでは無く、劣性遺伝子との交配も必要になるのではないかと考えられる。
となると、これらの種子は交配種ということになる。

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           夏野菜と春野菜が同じ畝に仲良く並んでいる

 
おそらくは、交配種(F1)が体に悪いと伝わったのは、遺伝子組み換えの種子が問題視されたことに端を発しているのだろう。
また、米国のさる学者が、「小麦は食べるな」と学会で危険信号を出したことも大きいのかもしれない。
ここで問題を整理しておいた方が良い。
遺伝子組み換えは、3年前、自然農の小麦や大豆・とうもろこしなどの穀類を本格的に作ろうとして、県の振興局へ問い合わせに行った。
偶々、農業試験場に長く勤務していた、現在は生産流通部の部長さんがおられて、様々なこと教えてくれた。
「率直に質問します。日本に遺伝子組み換えの大豆・小麦は上陸していますか?」との質問に、「市販の小麦や大豆については、無いとは言い切れません。テストすると遺伝子組み換えのものは分かります。但し、長らく日本で栽培されてきた品種の大豆・小麦・トウモロコシについては、組み換えはあり得ません」と答えてくれた。
そこで、小麦・大豆は日本の固有種を選択して育てているし、とうもろこしは甲州・白餅の二種類は間違いなく、日本の在来固有種であり、それも育てている。
 
次に、小麦(時には大豆も)についてはアレルギー症状を訴える子供さんが増えている。
ここからは、推定で物を言うしかありませんが、ハイグルテンの小麦を生産するために、品種改良を何代も重ねて行った結果(この場合は遺伝子組み換えではありません)グルテン含有量(グルテンの優性遺伝子のみ抽出)の多い品種を作り上げることに成功したために、劣勢遺伝子(ここでは、グルテンが毒であったら、それを中和するための遺伝子)が損なわれ、結果として、人の体の中の抗体が著しく反応して拒絶反応を起こし、アレルギー症状が出てくる。これはもう、交配品種、つまりは、F1(優性遺伝子)が行き過ぎてしまったことになる。

但し、ここで疑問なのは、アレルギー症状を起こし易いのは、パンなどの材料となる強力粉やクッキーなどの材料となる薄力粉ではないのか、このほとんどが外国産である。
日本の小麦はほとんどが中力粉であり、うどんなどの材料になり、小麦アレルギーとは本来は無縁のものなのだが・・・      
       
 当農園では、一粒小麦(古代小麦でむかしは皆一粒小麦であった)を手に入れて、小麦アレルギー症状が出て困っているお子さんにテストしてもらおうと考えて、今年1反ばかり生産してみた。但し、余りにも小さくて、通常では8袋採れるところが2袋しか収穫できなかった。高価すぎてどうかなとも考えている。
 
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                  フルーツトマトの一番果

もし、同じようなことが、今後、野菜でも起こるとしたら、消費者が危惧しているF1が危ないということに繋がってくる。但し、この仮定定義には化学的な根拠はありません。
本題の野菜についてですが、種苗会社では、生産者の要望に応えるべく、「作り易さ」・「見栄え」・「均一性」・「収量の多さ」・「耐病性」・「甘さ」などの命題を掲げて、品種改良を重ねている。(可笑しなことに、「栄養価」・「味香などの食味の良さ」など、野菜本来の美味しさなどは、命題とされていない)
これもどうやら、流通が求める野菜に、そして、生産者が求める野菜に合わせて日夜品種改良にしのぎを削った結果のようだ。
こうなると、その矛盾の一番大きな要因は、「消費者が求める野菜」に向けた品種改良と言うことになってしまう。その結果、全て消費者が悪いということに繋がってくる。
つまりは、消費者が野菜のことを知らない結果として、見栄えや価格(量が多い)を追求していくからだと思われる。
こうして見てくると、現在では食品の安全性も含めて「消費者の無知」こそ罪なのですね。
 
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 九条葱と一本葱を定植した処、梅雨入りを明日に控えてばたばたと植え込んだ

当農園では、そのようなマーケット環境に対して、抗いながら、交配品種であっても、その栽培については、このようにしている。
年間10種類ほどの野菜の栽培実験をしているが、残るのはわずか1~2種類しかない。
当農園では野菜本来の味香や美味しさを色濃く残したものでなければ、先ず、残れない。
例え、改良品種であっても、その種子の先祖の性格を残したものは(原生種に近いもの)、自然界(露地栽培)でも強く逞しく育つ。そして何より美味しい。
その栽培方法は、野菜の美味しさを引き出す草木堆肥による自然循環農法ですから、猶更です。
例えば、トマトであれば、瑞栄という品種は、酸味と味香のバランスが良く、桃太郎のように甘さのみ追求した品種ではない。
茄子であれば、黒陽という品種。これはしっかりとした濃紫の色艶があり、旨みが強い。
胡瓜であれば、(いぼいぼ胡瓜)節成・四葉などのカリッとした食感と鼻にに抜ける青臭く甘い香りが出る。
消費者に知って頂きたいことは、これらは、作り易さで言えばはっきりと作り難く、収量も少ないことです。
 
最後に、99%以上の農家が、収益性のこと、一般市場に売り易いこと、手間のかからないことが、野菜の種子選び(農法も同じですが)の元になっているのは当然です。
当農園でもそれは同じです。只、少し他と違うのは、私はマーケティングに基づいて、野菜の質、即ち、栄養価・美味しさ・安全性を求めている消費者だけをターゲットにしていることです。
最も、私たちが食べて美味しい野菜を価値観を同じくする方々へも食べてもらいたいと願っており、その価値を理解して頂ける消費者を増やしていきたいとの思いもあります。
そのため、当農園は、お客様とのコミュニケーション(触れ合い)を大切にしており、市場啓発がむかし野菜の大きなテーマともなっております。
このように、現在の農業において、古来からの在来種や固有種などは、ほとんど存在せず、品種改良及び自然交配を繰り返しております。
但、人間の欲により、または、消費者の無関心により、危険の交配種が現れないように消費者の皆様の「食」への監視をし続けることは大切です。未来の子供達のためにも。