農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.11.4(水)晴れ、最高温度17度、最低温度8度

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              玉葱の植え込み始まる

 

 早いもので、今年もすでに11月の玉葱の植え込みシーズンが来た。

今年も約6万本の植え込みを行う。農園スタッフ総出の作業となる。

この植付け作業を終えると、季節は一気に冬へ向かう。

 

「F1種の功罪」

 

昨日、一通のメールが入った。

孫が生まれるに当たり、F1品種の種子についての質問であった。

正直又かと思った。

消費者の中には、耳学問で、F1種の野菜が危ないとの思いからであろう。

それでも、以下のように、丁寧に農家の実情と、在来固定品種の難しさを

お話しした。

 

「病気に強い・多収穫可能・均一性を引き出すために、自然交配を重ね、

 新たに作り出された種子のことです。そのため、二代目は全く別物の

 種子しか取れない」これがF1種です。

当農園でも例えば味美菜(青梗菜と小松菜の掛け合わせ)・一本葱(下仁田葱

と九条葱)などがあります。時折、どちらかの品種の特性がでる場合もある。

これに対して、在来固定種の種子があります。

他の品種と交配をし難い種子となっており、遺伝子が固定しているものです。

この欠点は野菜の種類が少なく、いつも同じ野菜しか食べられないことに

なってしまいます。

但し、在来固定と言えども、いつも自家採取をしていると、その種子の性質が

劣化してしまい、出来た野菜も病気が出たり、小さくなってしまったりします。

時には他の品種と交配させてやらねば、最後は死滅してしまいます。

平家の落人部落に奇形児が出たり、病弱者が出て、一族の存続の危機を迎え

ます。所謂、近親相姦を繰り返したためですね。

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           太陽が落ちる寸前の3番の圃場

秋の夕暮れ時の景色は、一瞬「静」の世界となります。しばし見とれてしまう。

 

偶々、一昨日、NHKの試してガッテンの番組の中で、何故野菜が均一に

育つのか?の設定で、F1品種のことが語られていた。

そこの結論には、「F1種は、均一な野菜が育つ性質を持っている」との

事であったように記憶している。

これも又かと思ってしまう。

メディアはいつも一面的な方向でしか語っていない。

 

F1品種が均等に育つのは、化成肥料で土壌の中の窒素分(成長を担う)が

一定に保たれているからである。

大量流通市場では、店頭に並べる野菜が売り易いことが条件となる。

そのため、野菜が均一になることを望んでいるからであり、規格サイズが

求められている。

その意味では、F1品種は化成肥料を使った慣行栽培(近代農業)のために

開発されたことになる。F1種も自然栽培では、均一にはならない。

 

有機野菜は、本来、均一に育つはずが無い。

唯、昨今は、大手の有機専門の販売店が大量に捌くために、有機野菜にも

均一性を求めている。

そのため、畜糞であれ、米糠・油粕などのぼかし肥料を使って、土壌を

窒素過多にする栽培が主流になっている。

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            草木灰を作っているところ

当農園では、草木堆肥の他、この草木灰が不可欠です。常に圃場にミネラル分を

補給するのに一役かっております。

 

その有機野菜と一線を画した自然栽培野菜は、低窒素栽培となり、当然に

土壌は草木を主体とした堆肥で土を育てる。

土の力によって育った野菜は、土壌の中の窒素を求めて、曲がりくねり、

不均一に育つのが当たり前である。

何故、「低窒素土壌で野菜を育てるか」

その答えは、窒素過多の土壌では、完熟野菜と成り難いからです。

 

※完熟野菜;野菜の体内に蓄積されたデンプン質は土中の窒素が切れると、

      生き残るために体内に蓄えたデンプンを分解し、糖質・ビタミン

      類へ変化させ、自ら生きるエネルギーとして吸収しようとする。

      窒素過多で育った野菜はデンプンの塊となっているため、栄養価

      が乏しく苦い。(デンプンは苦いのです)

 

F1品種の野菜を圃場から除いてしまえば、消費者はいつも同じ野菜しか食べら

れないことになり、それに耐えられるでしょうか。

その意味でも自然交配によって作られたF1野菜も農業では必要不可欠と

なっております。

 

 

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      すっかり秋の野菜に変わってしまった2番の圃場