農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.3.18(水曜日)晴れ、最高温度15度、最低温度2度

f:id:sato-shizen-nouen:20200318190219j:plain

初春の農園は、うららかな天候に恵まれ、農作業も順調に進み、やや余裕が生まれている。唯、小松菜・青梗菜・蕪などのアブラナ科の野菜達は、一斉に花芽を持ち始め、

出荷を断念せざるを得なくなっている。農園はこれから花盛りとなる。

 

2020.3.11 突然の電話

農園は、今、菜の花・エンドウ豆・空豆などの花が春の風に揺られ、長閑な時間が流れている。
天気は目まぐるしく替わり、雨の合間に畝作りを行い、キャベツ・ブロッコリー・白菜などを定植したり・葉野菜・ほうれん草・蕪・人参などの種蒔きを行っている。
気温は暖冬の中でも、ようやく平年の気温に戻りつつあり、例年通り4月初旬の花冷えがいつもの通り訪れてくると予想したが、夏野菜の第三陣の種蒔き(胡瓜・ズッキーニ・南瓜)を迷った末に、いつもの季節よりやや早めに行った。(4月10日頃、寒の戻りがあり、暖かいからといって夏野菜を定植していると遅霜でやられてしまうことが多いのです)

f:id:sato-shizen-nouen:20200318191225j:plain

宮崎のKさんから久しぶりの電話が入った。Kさんは今から7年前、医者から悪性リンパの癌宣告を告げられ、ネットで探し、藁にも縋る思いで、当農園へ野菜の申し込みをしてこられた。
その際は、かなり深刻な状況で、こちらも当農園の野菜の特性(高ミネラル・ビタミン糖質などの栄養価に富んでいること)や野菜の調理の仕方(温野菜や油を絡めて食することなど)などの御助言を行った。
癌の進行を止めるには、健全で美味しい野菜を食べることによって自らの治癒能力を引き上げ、正常細胞の再生を促し、異常細胞を抑えることに賭けてみますかと申し上げた。
その後、お便りは無かったので、良い方向へ進んでいると農園主も喜んでいたのだが、もしや?との不安が頭をよぎる。
電話の内容は、今回のお願いは、急性の腸閉塞を患い入院をしなければならなくなり、しばらく野菜を止めて欲しいとのお話であり、悪性リンパ腫瘍も今では消えておりますとのこと。
思わず、良かったですねと言ってしまった。しまった!と思い、緊急手術を要する内容であり、「お大事に!」と言葉を掛けた。何という間の悪さか・・・
それでも、Kさんから、「今生きているのも農園の野菜のお陰です」と言う言葉に、そうですね!私達も含めてこの野菜達に感謝しなければいけませんですね、とお答えした。
このようなお客様も私の知る限りでは少なくともKさんを含めて4人居られる。
未だにご継続して野菜を取って頂いていると言うことは、この自然栽培の野菜の力によって命を支えられているのだろうと思っている。

f:id:sato-shizen-nouen:20200318191328j:plain

後藤君の畑(9番)に全員で畝作りを行っている処。

里芋・金時生姜の植え込み、露地ニラの株分けと植え替え作業を行っている。

一人農業では中々に作業が捗らないし、途中で心が折れてしまう。むかし野菜の邑では、月~金までは全員で農作業を行う。自分の畑でも無いのに、皆、黙々と相互に手伝い作業を行う「結いの仕組み」が出来ている。

 

近時、世界を席巻している通販会社アマゾンやゾゾタウンなどの所謂プラットフォームビジネスが曲がり角に来ているとの記事を読んだ。
その取扱商品に模造品がかなりな数混じり始めているとのこと、また、商品力と言うかブランド力のある会社から撤退を始めつつあると言った内容であった。(ナイキ・オンワードミキハウス等々)

ブランドとは、「品質」のことであり、変じて消費者からの「信用」を得ていると言う意味でもある。
中小メーカーは例え品質が優れていても知名度が無く、消費者からの信用を得ることは容易ではない。
アマゾンなどのプラットフォームを利用していかねば消費者とのコンタクトは難しい。
しかしながら、生産者が商品の品質を守り維持していくには、たゆまざる努力と研究開発が必要である。
そのためには、インセンティブや中間手数料を払うより、その分の手間やコストを品質の改善に力を注ぎたい筈である。
ナイキ・オンワードなど、販売の拡大より、商品の充実・品質の保持に重きを置いたと言う事であり、その行動を支持する消費者の支えがあることになる。このブランド力は生産者だけでは、到底作りえないし、維持継続も難しいのです。

当農園も開園以来、直接販売を行ってきた。「品質」には自信を持ってはいるが、お客様の信用を得るには、まだまだ長い時間が必要なのかもしれない。
そんな時、全面的に信頼をしていると言う宮崎のKさんのお電話は嬉しかった。
健全で美味しい商品作りに向けて改めて身の引き締まるものを感じた。

f:id:sato-shizen-nouen:20200318192225j:plain