農園日誌ー野菜の旬って?

26.5.14(水曜日)雨、最高温度22度、最低温度14度
 
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        春菊の花畑の向こうに今が盛りと生い茂るスペアミント
 
先日は福岡のフレンチレストラン、ジョルジュマルソー一行5人が農園に訪れる
6月1日の10周年イベントを安心院のワイナリーで開くことになり、佐藤自然農園
の畑の風景をビデオ撮影するためと湯布院のとあるレストランの勉強のために、
大分に入ったもの。(そのイベントにて当農園の野菜がバーベキューの主役に
なるとのこと。最も野菜はサービスで農園が持ち込むことになっているらしい)
オーナーシェフ小西さんを魚に話が盛り上がり、啓子さんの作った弁当を皆
ほうばる。
以前の小西シェフもフレンチのセオリー(形)にこだわり、修行してきたやり方を踏襲していた。随分と火花が散ったやり取りをして来た仲。
但、彼との共通点は、と言うか共通の価値観は、互いに相手を思いやる心、仁義と
いう精神を持っていたことと、旨いものを作り、お客様に提供し続ける努力は惜しまないこと。それで互いに繋がってきた。
(最近は角が取れ、人としての奥行きが出てきたように思える。ある領域に達したのかなと、うれしいかぎりではある)
 
同じ日に農業を心出す女性も訪れ、一緒に農園見学となった。
その日は偶々出荷日(月曜日)であり、雨も降り、慌しい一日となった。
またその日、農業指導をすることになっている大分のTさんが甘夏を持ち込んでくる
庭で採れた甘夏をお客様へ提供できないだろうかとの相談ではあったが、残念な
がら、酸味・味ともに薄く、お客様へ送ることはできないということになり、Tさんには申し訳なかったが、お断りした。
農薬もかかっておらず、質さえよければ、何とかなったであろうが、佐藤自然農園の作り上げてきた信用もあり、美味しくなければたとえ安全であっても難しい。
 
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極寒の2月に種を蒔き、
トンネル被覆して育てた
人参がこのように緑の
絨毯のように生い茂って
くれた。
この内、約1/4が莟立ち
してしまうが、手始めに
レストランから出荷を
行っている。
奥に見えるのはカモミール
の花。畑の邪魔者ではある
が、私達を和ませてくれて
いる。(ハーブティへも)
 
最近になってレストランからの問い合わせが増えている。飲食業界も中々に
激戦領域に入っており、どこも差別化を図ってようやく工夫をし始めている時代に
なっている。
一度お試し程度に送ってみるも、現在のレストランには馴染み難いようだ。
シェフとはこんな会話が続いている。
 
東京のあるシェフ。
「野菜の内容は如何でしたか?」と聞く。
「葉物野菜の持ちが悪く、難しい」
どのような保管方法をしているの?と聞くと、
「60度前後のお湯で殺菌して置くと、すぐに傷んでくる」とのこと。
最近流行の加温して保管するという手法のようだが・・一を知って二を知らないようなので・・
「それでは2~3日はよろしいでしょうが、それ以上は持たないですね。葉野菜が
着いたら、3~5分程度水に晒し、よく水を切って冷蔵庫で立ててビニールの中に
入れておくと、うちの野菜は10日以上は鮮度が変わりませんよ」
「ところで、野菜の評判はどうでしたか?」と聞くと、
「お客様は美味しいと言っています」
 
このシェフさんはどうやら、野菜が持たないということにのみ関心があるらしい。
こちらに聞けば済む事なのに・・・美味しいのは二の次らしい。
 
福岡の和風会席のお店のシェフ
同じく「野菜を貴店に馴染めそうですか?」と聞く。
「お客様の評判はよかったのですが」
「何か問題がありますか?」と聞くと、
「会席料理ですから、季節の先取りをした野菜が欲しいのですが、旬菜はないの
ですか?」との質問。
「基本的に当農園は露地栽培ですから世の中での旬菜とは違ってきますね」
「現在はハウス栽培が全盛です。露地栽培をしている農人はほとんどいませんね。
露地物に比べるとハウスものは味香りや食感が今一ですから当農園ではやって
いません。」
「貴方が言われている旬菜とは走り旬の野菜であって、まだ青臭く、味も香りも
薄く、見てくれは良いが、完熟していません。市場の99%の野菜がそうです。
当農園は完熟野菜しか出しません。栄養価も乏しく美味しくないからです。
折角苦心して育てた野菜を味も乗らない栄養価も乏しい段階で出荷しようとは
とても思いません。」
「貴方が美味しい野菜を提供しようと考えるか、あくまでも世の中が旬野菜を求め
ているからと言って、走り旬野菜を探がそうとするならば、市場から選ばれたほう
よろしいのではないでしょうか?」
「私の経験ではやっぱり消費者は美味しいほうを望んでいるのではないでしょうか」
 
この方からは、未だご連絡は無い・・
 
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左が走り旬のエンドウ、右が中旬(完熟期を迎えた)のエンドウ。
走り旬では鞘がまだ膨らみきれず実は薄い。中旬ではぷっくりと膨らみ、はちきれ
そう。当然に右のほうが甘み・旨みともあり、食感も歯切れが良い。
 
流通市場では野菜の99%がこの走り旬野菜となる。中旬の完熟野菜は市場価値をまったく失う。
何故そうなったかと言うと、
流通過程で完熟野菜は傷みやすく、調理する段階で、スナップエンドウであれば、
はちきれて豆が飛び出す恐れが出るなどのリスクをはらみ、流通が嫌う。
当然に消費者もそれを支持していることになる。走り旬であればクレームが出る
恐れが少ないからです。
生産者もだれよりも早く出荷し、季節の先取りをしたほうが、価格も高くなる。
 
要はおいしさなど二の次なのです。だれが先ほどのシェフ達を笑えましょうか・・
これは笑えない可笑しな既存市場の仕組み。
 
画して、野菜の市場価値(評価)は規格サイズ・みてくれが物差しとなり、美味しさや栄養価なんどはどこにも評価されないことになっている。
 
「消費者は美味しい野菜を欲している」これを潜在的(真の)ニーズと言う。
「世の中のほとんどの人がみてくれなどのきれいな野菜を欲している」これを顕在的
ニーズと言う。
さて、どのような、又、どれだけの消費者が真のニーズを求めておられるのか?
 
ある意味では当農園の試みは巨大流通システムとの絶え間ない戦いと言うことに
なるのではないか。勿論シェフも含めた消費者との闘いにもなっていく。
うちの農園の若い新人達にその心意気が受け継がれていけるのか。
彼らにもそれを強いるしかない。
 
 
但、幸いなのは、個人のお客様方の多くは、このような私の考え方に賛同し、支持
して頂いている。感謝感謝です。だから闘えるのです。
 
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農園は最近の雨でほぼ復活したといって良い。春野菜は恐ろしい勢いで成長を
始めている。これも自然の力かな。