26.2.13(木曜日)曇り後雨、やがて雪に変わる、最高温度5度、最低温度2度
農園は春野菜の種蒔き作業に追われる。空いた畝を作っては種を蒔く。
毎年どの畝を空けるか、成長の遅れた野菜でも畝を空けないと春野菜が植えられ
ない。思い惑いながらの作業が続く時季ではある。
そんな中、例年記憶に無いほどの連日の雨、今日などは春野菜の種蒔き作業の
合間に小雨がぱらつき、濡れながらの作業。その雨が霙に変わり、いつの間にか
本格的な雪に変わる。その農園の風景が上の写真。雪は深々と降り続けている。
明日は雪を掻き分けながらの収穫作業となる冷たい一日になりそうで、風流でも
ある。
雪を被ったキャベツ
明日は雪の中に埋もれていそう
キャベツなどのカンラン系野菜
は、二月、日照時間が長くなる
と莟立ちを始めることが多い。
そのため、一月末頃には、トン
ネルを剥いでおく。
二月の寒に晒し、季節は
まだまだ冬ですよ!とキャベツ
に思い込ませる。
そのまま思い込んでくれれば
3月には巻いてくれるのだが・・
夫婦が農園に研修にやってきた。
少しは京都にて自然農の農園で研修を積んできたようだが、農業にて独立するに
はかなり難しい。話を聞いていてこちらのほうが不安になってしまう。
二週間前に当農園に訪れた際にハーブや春菊を食べてもらったが、その味の濃さ
に絶句していた。
※自然農の問題点
持ち込まない、持ち出さないというのが自然農の定義。
有機野菜との差は、動物性のもの(畜糞など)は使わない、ことのようだ。
特にアンモニアを極度に嫌う。あくまでも自然の力だけで野菜を育てる。
当農園の草木堆肥には牛糞が約一割程度は発酵促進材として入っているが、
それ以外は自然農と大きく思想は変わらない。決定的に異なるのは、地球の力
を取り込むことこと。その理由は以下の通り。
自然界に育つ木や葉っぱに含まれている多種多様な菌類や微生物、及び地中深く根を張る木々はマントルから豊富、かつ、多様なミネラル分を吸収している。
畑は、山から水を引くわけではないため、腐葉土に含まれたミネラル分は当然に
畑には入らない。野菜生産は、何十年にも亘って畑からミネラル分を収奪し続ける
ことになる。そのミネラル不足を補う農法が草木堆肥を常に施肥し続け、同時に多種多様な放線菌・微生物をも畑に補給し続け、かれらの力で畑を耕し、特定の雑菌
がはびこる事を防いでくれる。これが自然循環農法と言われる所以。
Sさんから自然農の人参と大根及び今では希少な天日干しのお米を頂いた。
試食用です。農業者としてはっきりと彼らにはこう伝えた。
両者とも自然農の特徴がよく出ている良品です。
食感は瑞々しく、歯切れが良い。次に、香りは強く、ほんのりと甘みは感じる透明感に溢れた野菜達です。只、それだけです。
味は薄く、舌の奥に感じる旨みを感じない。
灰汁は、ミネラル分が豊富にあり、低窒素の土で育つと旨みに変ずる。このそれぞれに本来あるべき野菜の個性(味や旨み)が出ないということになる。
慣行農法や畜糞主体の野菜と圧倒的に異なる味香り・食感・旨みを出さないと
消費者の心は動かせませんよ。そして、自然農だから、労力をかけているからと
いう理由だけでこの野菜は高いのだ、といった理屈や驕りは捨てなさい、と・・・
寒風に晒した大根
まるで雪国にいるような
風景。
この干し大根は、粕漬けや
糠と一緒に漬ける大根漬
となる。
寒の残る間にまだまだ
たくさんの大根を干す
ことになりそうだ。
今、少ないとは言えども、多くの若者たちが、農人を目指して農業の世界に飛び込
んでくる。希少な人達であり、大切な農業後継者でもある。
それだけに、野菜作りの経験や苦労を積まず、販路の当てもなく、いきなり、過疎地
に農業を目指して飛び込んできている。
そのほとんどが心だし半ばで、行き詰り、3~5年以内で消えていく。
真に惜しく残念でならない。
佐藤自然農園はそんな若者達に指針を与え、目標を示し、農法を教え、消費者
マーケットとのコミュニケーションを教え、育てていくことを目標にして開いた農園
であること、これからの農産物商品として(今の農法)自然循環農法により、近い
将来に訪れるであろう本質の美味しさを求めるマーケット(品質重視)を作り上げ
ていくこと、そこで心豊かに暮らせる農人グループ(コミュニティ=邑)を作ること、
そのためには、驕りを捨てて真摯に農業と価値観を共有できるマーケットに向き合
うこと、等々を、彼ら夫婦と夜の9時頃まで話し合った。
最後に彼からこんな質問が出た。
「一体日本はこの後、どんな姿になっていくのでしょうか?」
多くの若者が漠然と不安と不満を抱いていることが窺い知れる質問。
確かに今の政治は民の方に向き合っていない。国家及び権力にしか目が向いて
いない。
これは不幸だね。資本主義の悪い面が全面にでていくことになっている。
例えば、一部の、しかも巨大なマネーが投資ではなく、投機に使われている。
それが国家をも動かしているか、動かし始める。
それはどの国も同じで、これからは民族主義が吹き荒れるでしょう。
そんな世相の中で、人間にとって一番大切、かつ重要なことは「食べる」ことです。
今までの農産物の量や大きさや見栄えなどの価値基準ではなく、「質」を重視する
価値観が静かな広がりを見せ始めている。
貴方達は、そこで頑張ってみてはどうですか?「質」を求めるということは、同時に
物事に謙虚に向かい合うことと同じです。もっと厳しく自分を追い込んでいかない
とね、と伝える。
このように、志を抱いた多くの若者が集まってくれば、農園を開いた趣旨に近づい
ていくことができるのだが・・・