農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.5.20(水曜日)晴れ、最高温度23度、最低温度16度

f:id:sato-shizen-nouen:20200520192912j:plain

          黄金色に染まる裸麦

 

 今年は暖冬の影響で、麦の出来が良い。ここは草木堆肥歴3年目の

小原君の圃場。麦は高窒素(化学肥料や牛糞多投)でないとグルテン

も少なく出来が悪いと農業試験場の方がおっしゃっていた。草木堆肥

は典型的な低窒素栽培である。

今までの失敗を活かして、やや堆肥の振り方を多くした。今までで

あれば、5年の土作りを経てようやく何とか麦が実ってきた。

それだけに、小原君の3年目の圃場の出来具合が気になっていたが、

何とかなりそうである。

f:id:sato-shizen-nouen:20200520194902j:plain

こちらは、草木堆肥歴6年目の麦の圃場。やはり出来は小原君の圃場

と比べてかなり良い。背丈が高く、実入りも良い。向かって右側は

小麦です。

 

2020.5.15 ハーブ料理とは?

f:id:sato-shizen-nouen:20200520195957j:plain

またかと思う独裁・独善・自己保身の道を歩む安部総理、それを自制

させようとしない自民党議員達にも呆れてしまう。検察はある意味

では法の番人であり、行政府権力の暴走を抑えることのできる公正性

の監視役でもある筈。

ロッキード事件を思い起こしてみれば分かる。
その検察庁のトップ人事を行政府が握れば、権力の暴走や隠蔽はいかねばならない。
とあるジャーナリストの記事を読んだ。「自民党公明党・維新の会

などの国会議員に各選挙区でこの法令を支持した議員の対抗馬に投票

する」と意思表示したらどうか、と言うものである。
これなら特定政党や特定議員を支持するということにもならず、無色

透明であり面白い。
選挙において自民党の支持層はそんなに多くは無い。無党派層が圧倒

している。
それほど、国会議員は信頼されていないということも、悲しいこと

ではあるが、声なき声を現実化させるには妙案だと思うのだが・・・
いずれにしても、日本のメディアが政権に対する忖度が目立ち、真実

を伝え切れていない中でSNSツィッター・ラインの影響力は良きに

付き、悪しきに付き、大きい。

f:id:sato-shizen-nouen:20200520200051j:plain

さて、農園では、年に二回、春と秋にハーブセットを皆様にお送り

している。

日曜日の農園マルシェでも、常時、フレッシュハーブティをお出し

している。
その他にもクリスマス頃には干した赤唐辛子とローリエ(月桂樹)

のセットを必ずお送りする。

このハーブと農園主は実は長い付き合いがある。
私が銀行員時代、とある住宅不動産会社の再建出向で、住宅の企画

設計や広大な遊休地の売却処分をしている時、どうしても売却し難

い歯抜けとなっている3万坪の土地があった。
そこは、風光明媚な海岸線に沿っており、廃墟となったビニールハ

ウスの残骸に覆われていた。
その本社で企画室長と言う肩書きで、午前中、住宅企画設計の指導

・営業販売管理チェックなどの日常業務を終えて、昼からは一時間

半を掛けて土木・農作業担当の作業員達の現場へ走って行った。
廃墟の片付けから3万坪の用地の図面割りを行い、当時、流行掛か

っていた観光ハーブ園の設計作業や現場の作り込み作業に掛かりきり

になった。現場の作業員に混じってトラクターに乗ったり、鍬やツル

ハシを振るい陣頭指揮を執っていた。

それと同時に、飲食開発に取り組んでいた。ハーブ料理なるもので

した。
何しろ、ハーブの使い方どころか、ハーブの育て方さえ分からない

手探りの状態でした。
およそ、半年で何とか形を作り上げ、ハーブを育て、約一年を掛け

てようやく開園に持ち込んだ。
周囲の人からはその脅威のスピードに気狂いだと言われていた。

f:id:sato-shizen-nouen:20200520200944j:plain

ハーブピザ;数種類の食用フレッシュハーブとオリーブ油・塩胡椒のシンプルな

ピッザです。生地は農園のブレンド粉を使っていますイベントで大人気でした。

 

その経験からハーブについては多くの事を学んだ。
皆様はハーブ料理と言うものがあると思われておられるかもしれま

せんが、結論から言うと、そんなものは無くて、欧州ではハーブ調味料や保存料として広く家庭料理に浸透している。

現在農園では、毎年春と秋に二回ほど、全国2百数十名の定期購入の

お客様へフレッシュハーブをお送りしている。
コモンタイム・レモンバームスペアミントレモングラス・ジャー

マンカモミールなどです。
ハーブは一種類だけ使うのでは無く、基本的には数種類を混ぜて使

った方が味香りのハーモニーが出せて美味しくなります。ですから

ミントティーではなく、レモン系の味がするものと混ぜるとより飲

みやすくなります。料理に使う場合もまったく同じです。

ハーブティの場合、数種類のフレッシュハーブを熱湯で数分間蒸ら

します。

一煎目は香りを、二煎目は味を楽しみます。
タイムは、フライパンに刻んだニンニクをオリーブ油で炒める際に

加えます。

そこに肉類をソティしますと、肉類の臭みや余計の脂分を抑えてく

れます。
当農園の人気商品の一つであるコロッケにも使います。野菜コロッ

ケが主体ですが子供さんはやはり肉の入ったプレーンコロッケに

人気が集まります。

肉類の臭みを取るために、タイムは欠かせません。

農園では、ハーブビザなどをイベントの際、皆様へ提供しております。
これもハーブ園を開いた際のメニューの一つで、その当時はスカボロ

ピッザと呼んでいました。
ハーブの代表的な食用ハーブであるパセリ・セージ・ローズマリー

&タイムの歌のタイトルです。
当農園のブレンド小麦粉を使い、その食用ハーブを載せ、オリーブ

油と塩胡椒で焼いたものですが、人気があり、何時の日か、予約制

で農園マルシェの定番商品にしたいと考えております。

f:id:sato-shizen-nouen:20200520201831j:plain

農園にはあちこちにさりげなくハーブが植わっております。お入り用であれば、株分け

致しますよ。

 

コロナウィルスとの共存若しくは共生をしていかねばならなくなると

したら、今までの生き方や価値観を少しずつ変えていかねばならない

かもしれません。
余りにも化学に頼った、あるいは、実利ばかりを追い求める生活の

価値観から、余裕・ゆとり・利他主義(他への思いやり)もその価値

観の中に入れていかねばなりません。
その時、夜、静かな一時を過ごす際に、是非ともフレッシュハーブ

ティなどでゆったりと過ごす時間を作ることも必要なのではないで

しょうか。

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.5.13(水曜日)晴れ、最高温度23度、最低温度13度

f:id:sato-shizen-nouen:20200513193724j:plain

                 夏野菜の定植

これは茄子です。農園では、茄子の味香りを残している昔ながらの種子を大切に

している。茄子であれば、黒陽・筑陽と言う品種。

その他には、東南アジア系の色茄子(紫・白・緑)、これはクリーミーで、炒め

物に適している。そして、賀茂茄子、半切りにして味噌を付けて焼くと美味しい。

様々に試してみたが、残ったのが、食感風味とも納得のいったこの三種です。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20200513194630j:plain

              トマトの初期設定

手前の方はすでにひっくり返っている。これを芽掻きし、下葉も落とし、太陽の

方向に、50度に傾けながら斜めに誘引作業を行う。

枝はほぼ3本として太陽に向けて伸ばしていく。最長5メートルにもなる。

 

 

2020.5.8 全豆類が一気に最盛期を迎えた

f:id:sato-shizen-nouen:20200513200018j:plain

                スナップエンドウが鈴成り

今年は暖冬から始まったが、3~4月は意外と寒く野菜の方も常の気候と違う

と感じている。
ニンニクは芽が吹き出すことも無く球根から葉っぱが出始めてしまった。

こうなると球にはならず、今年のニンニクはほぼ壊滅状態となった。
春白菜は花芽が付いてしまい、巻かないまま終わってしまった。
豆類については、例年であれば、4月初旬頃から絹莢エンドウが出始め、

スナップエンドウ実えんどう、5月に入ると、空豆と続き、6月頃から

インゲンで、豆街道は終える。

処が、気候の歯車が狂ってしまっているようで、野菜達も敏感にそれに反応

している。農業は平均気温が1度異なると大きく狂ってしまうものであるが、

どうやら今年はそれ以上の変化がもたらされたようだ。
今年は、時間差はあるものの、絹莢エンドウとスナップエンドウの出荷時期が

遅くなったために、4月下旬に出荷時季が重なり、すぐに実えんどう空豆

と続いてしまった。
こうなると、お客様へは、同時に2~4種の豆類を送らねばならなくなりそう。
最近の露地栽培農業の難しさを痛感している。
当農園は、全てがお客様への直接販売が基本の農業スタイルである。

その意味では、固定のお客様若しくは、仲間達との契約栽培に似ている。
生産者と消費者との信頼関係を永年構築してきており、定期購入のお客様を

我々は仲間と、勝手に、呼んでいる。お客様にとっては迷惑かもしれないが、

同じ野菜をそして、価値観を共有する仲間ということになる。
農園での生産量はその仲間達の消費量を予定して栽培している。
処が、このように気候が狂ってくると、一気に野菜が出揃ってしまい当然に

収穫量は一時的に増加してしまう。野菜に成長を待ってくれとは言えない。
このような時、農園では、価格は抑えて量だけ増やす「増量」発送を行う

ことにしている。

f:id:sato-shizen-nouen:20200513200140j:plain

                      絹莢エンドウ

例えば、今年スナップエンドウは走り旬には100gで180円だったものが、

二週目で150gが200円となり、三週目の最盛期には300gで300円

となっていく。

f:id:sato-shizen-nouen:20200513195645j:plain

これほど収量が多い年も初めてであり、嬉しいような、困ったような、兎に角

毎日豆だけの収穫作業に8時間を要する。熟れすぎて放置すると野菜はすぐに

終わってしまう。「私は子孫を残したからもう終わりです」となる。

折角の自然の恵みは、大量に採れた時季は破棄すること無く農園の仲間達と

分け合うことにしている。
当農園基準で、走り旬(野菜の収量は少ない)・中旬(収量は適量になって

いる)・最盛期の旬(野菜が農園で溢れている)では野菜の価格は大きく変動

してくる。

農園の野菜の価格は市場連動していない。
市場で野菜が溢れている時季も、市場で野菜が採れ難い時季でも、価格は

基本的には変えない。
何故なら、特定の定期購入のお客様しか居ないわけですから、農園で採れた

野菜は分け合うと言うのは至極自然な流れだからです。
関東のお客様からは時に、こんなに安くて良いのですか?との質問が寄せら

れることもある。それは以上のような販売スタイルを取っているからです。
農園の仲間達からの暖かいメールが寄せられる度に、改めてうちは良い仲間達

に囲まれていると実感する。

f:id:sato-shizen-nouen:20200513200400j:plain

                      空豆

空豆は熟してくると、下を向く。実に収穫のタイミングが分かり易い

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.5.6(水曜日)晴れ、最高温度25度、最低温度16度

f:id:sato-shizen-nouen:20200506190919j:plain

       3番の圃場からむかし野菜の社屋(青い屋根)を覗く

 

連休中、最もずーっと子供が農園に居るため、連休の様なものだが、農園直売所

に、多くの方々がお見えになられた。

固定顧客化が進み、お菓子類だけではなく、ようやく野菜を本格的に購入して頂

くようになってきた。時折、口コミ等で新規客も混じる。

どう言うわけか、10時オープン直後にお客様が集中する。じっくりとお客様と

対話をしたいとは思うのだが、それもままならない日々が続いている。

f:id:sato-shizen-nouen:20200506191738j:plain

 

2020.5.5 国民を守らない政府

大型連休始まり、あいにくの雨の日曜日、今日、農園直売所には多くのお客様が

訪れてくれた。とは言っても、午前中でおよそ30組のお客様なのだが。
「草木堆肥による自然栽培は、手間と労力の塊です。中々大分の方々には理解

していただけない」と訪れたお客様にこぼすと、「良いではないですか、

こうして多くのお客様が見えているでは無いですか。その美味しさと健全性を

理解してくれる人だけで良いのでは・・」と励まされた。

コロナショックの影響で、東京では配送料金が高いにも拘わらず食のデリバリー

(個別宅配)が増えてきている。飲食店は生き残りを掛けて宅配やテイクアウト

を行い始めている。

そう言った中、一時送料の大幅値上げの影響で、当農園も多くのお客様が去っ

て行かれた。
処が、最近になって、宅配の申し込みが目に見えて増加し始めている。
同じく、農園直売所にも徐々にお客様が集まり始めている。
当農園の取組や野菜の質を評価して頂いているのも其の一つの要因ではあろ

うが、むしろ、コロナショックの影響の方が大きいような気がする。
免疫力強化のため、無理をしてでも自然野菜を食べようとする心の動きが垣間

見える。コロナウィルス感染対応の出口が見えてこない。

f:id:sato-shizen-nouen:20200506192438j:plain

      満開のジャーマンカモミール。3番の畑の中央を占拠している


政府は、ひたすら自粛自粛と繰り返し、人命尊重とはほど遠く、経済弱者だけ

ではなく、飲食店他、休業による困窮を深めている中小事業者への保障救済も

念頭には無かったようだ。
ようやく国民の批判を浴び、上から目線の様子見を止めざるを得なくなり保障

に動き出した。
それでも、他人ごとのように政権争いや自己保身に目が向いている政治家達と

事勿れ主義や前例主義にしか事を進めきらない官僚達にこの国はむしばまれて

いくのかと慨嘆するしかない状況にある。
国家の非常事態には、人・物・金を集中させて、一気にスピードを上げて対応

していかねばならないのに。

感染者を自宅待機にさせるのも驚きであり、家族はどうなっても良いのか?

自己責任だとでも考えているのか、PCR検査体制を敷くこともできず、感染者

受入施設の拡充もせず、医療関係者の実情は放置し、その精神力にだけ頼ろう

とする。アベノマスクには思わず絶句してしまう。
この国の政治は、一体誰が舵取りをし、責任を負おうとしているのか?
コロナ対応のまずさだけが目に付き、出口は全くと言って見えてこない。
日本は世界の笑いものになっているのにも気がつかない。これは何も政治家

だけでは無いと思う。

f:id:sato-shizen-nouen:20200506192744j:plain

春恒例のフレッシュハーブティセット。コップに差して一時楽しむのも良し、熱湯を注いでティー

楽しむのも良し、フライパンにオリーブ油を入れ、傾けてニンニクと一緒にハーブを入れ、香りを

移して肉のソティを楽しむのも良し、鬱積した心を癒やしてあげて欲しいと願っている。

相も変わらず、総理は官僚達の文案を棒読みし、漢字も読めず、国民の将来を

担っていると言う気概は感じない。彼ら政治家を選んだのは間違いなく国民で

ある。
このままで推移していけば、日本経済は泥沼化してくることになる。報道関係

者の矜持は何処へ行ったのか、時の政権に忖度を繰り返すばかりである。国民

ももっと声を上げていかねば、私達の生活は守ってはいけない。

農園は、来店されるお客様や定期購入の仲間達に健全な野菜をお届けし続ける

ことしかできないのが、どこかもどかしい。

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.29(水)晴れ、最高温度21度、最低温度9度

f:id:sato-shizen-nouen:20200429213226j:plain

 

今日は出荷日。そして農園直売日。

朝から多くのお客様が訪れてくれて、店頭に並べた野菜が次から次と無くなる。

その度に、畑に走り、野菜の補充をすることになった。

これもコロナショックなのかもしれないし、ようやく大分の消費者に認めて

頂けるようになったのかもしれない。

訪れてくれるお客様の顔も、始めた頃、恐る恐る野菜を手にしていた雰囲気とは

異なり、確信を持って買って頂いているように見える。

お客様の声も、他の売り場とは違って、説明を聞いてもどこかやさしい気持ちに

なれると言って頂いている。ありがたいことだ。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20200429205134j:plain

2020.4.13 夏野菜の本格的植え込み始まる

一月からハウス内の育苗用トレイに種を蒔いて、ポットに揚げ、踏み込み堆肥の

上で育ててきた夏野菜の第一陣から定植が始まった。

トマト類・ピーマン・パプリカ・とうがらし類・茄子類など。
例年であれば、4月初旬、畑に定植し、4~5月の春の暖かさで根を張らせ、

6月の梅雨時期に一気に枝を広げ、7月初旬頃からぼちぼちと実を成らせ始める。

本格的出荷は7月後半から8月の盛夏になる筈である。日本の四季のサイクルは

旬野菜の生育を促してくれていた。

唯、最近の数年間は、日本の四季が壊れてきており、雨期と乾期のサイクルが

巡り始めており、年によって出来不出来が激しくなり始めている。今後、

自然環境の中で育てる露地栽培はリスクも大きく、その栽培に経験に基づく勘が

必要なこともあり、露地栽培農家が激減している。

露地栽培は栽培ノウハウや経験・知識がものを言う。さらには、毎年変化し続け
ている気候変動が露地栽培の難しさを加速させている。
そのため、管理し易い施設園芸が主流となっており、季節感の乏しい促成栽培

抑制栽培などのハウス栽培野菜が市場を占めている。
現代農業は、露地で美味しく育つはずの「旬菜」と言う言葉が失われつつある。

 

 

さらに農業者を育てて行くには現在の世相は難しくなってきたことを実感して

いる。特に、当農園のような低窒素栽培(自然栽培)の場合、成長が遅く、

目まぐるしい自然条件の変化に晒される。味香り豊かな(繊維を感じさせない)

歯切れの良い本来の有機野菜は厳しい自然環境に晒されることでより美味しく、

栄養価も豊かになる。そのことを、どれだけの消費者が理解してくれるだろうか。

f:id:sato-shizen-nouen:20200429210212j:plain

「美味しい野菜は栄養価がある」このことを知っておられる消費者はどれくらいいるのだろう。

化学物質を排した土壌から生まれてくる野菜達は、人の体を癒やしてくれる。腸内細菌は活性化し、

化学物質等の異物の入っていない野菜は免疫力を確実に付けてくれる。

そのことは知らない消費者でも何となく自然栽培は良さそうと感じておられるのだろう。

コロナショックに見舞われた消費者の方々は、普段はやや高いと感じている野菜でも本能的にそれを

求めようとしているのかもしれない。

 

兎にも角にも、今年も穏やかな四季の国であってくれることを祈っている。
古来より、農民は天の神に、五穀豊穣を願い、穏やかな四季が訪れてくれる

ように神社に祈りを捧げてきたものだ。残念ながら農園主は信心も薄く、徳も薄く

神社に祈ることはしないが、自然の神には、畏敬の念を抱いており、一所懸命に

努力している全国の農家が良い年であることを願っている。

f:id:sato-shizen-nouen:20200429210648j:plain

さて、夏野菜の植え込みである。
今年から佐藤自然農園にて学んできた竹内さんが、いよいよ、独立農家として

一人立ちすることになった。それも夏野菜のメイン圃場である5・6番(約4反)

を担当することにした。
この圃場は、草木堆肥歴7年目を迎える。この地域でも高地にあり、水捌けの

良い畑である。
そのため、水を好まない南米原産のトマトを植え込む。そして、比較的水分を

好まないピーマン・パプリカ・万願寺とうがらしなどが夏場のメイン野菜となる。

f:id:sato-shizen-nouen:20200429211033j:plain

茄子類・胡瓜類は、水分を好むため、佐藤自然農園の圃場である乾燥し難い

2・4番の畑に植え込む。

草木堆肥の特性は低窒素であり、次々と成って行く実物に対応するために、

畝全体に草木堆肥・焼き灰を撒き、鋤き込む。定植する際に、先肥と称して、

スコップ二杯ほどの草木堆肥を遣り、そこに直植えする。

根を充分に張りだした頃に草木堆肥の肥料効果が出始め、枝を茂らせる。
一番果が付き始めた頃、追肥と称して草木堆肥を畝間に施る。丁度この頃、

梅雨が終わりかけで、畝上の土が長雨で洗い流され、畝下に落ちてしまって

いる。
土寄せと言って、畝下を深く揚げることにより、根に酸素が供給され、木は

活性化し始める。これを中耕と言う。
これが夏野菜の生長を促す作業であり、梅雨の長雨によって堅くなった土を

ほぐし、野菜が呼吸しやすくしてやらねば、野菜の生育は止まってしまう。

f:id:sato-shizen-nouen:20200429211325j:plain

長い梅雨時期に降り続いた雨のため、畝の土は流され、畝が無くなっている。

梅雨が終わるか終わらない時季に草木堆肥を畝上に施肥し、畝下を鍬で埋まった土を深く掘り上げる。

 

ミネラル分及び炭素が豊富な草木堆肥は、そこに棲み着く微生物や放線菌によっ

て分解され、土を育ててくれる。その土の力によって低窒素栽培でも野菜が育つ。

それは草木堆肥にしか達成できない美味しい野菜の秘密なのです。

その秘密は先人達の叡智でもある。

f:id:sato-shizen-nouen:20200429212727j:plain

3番の畑に番の 自生したジャーマンカモミール。野生の生命力の強さを感じる。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.22(水曜日)晴れ、最高温度17度、最低温度9度

f:id:sato-shizen-nouen:20200422183709j:plain

             由布市庄内の小麦畑にて、

除草剤を使わないため、畝間は大きく空けて、雑草に覆われるように麦が育っている

出穂寸前です。

 

2020.4.9 俵万智さんがやってきた その三日目

今日は最終日、連日の取材にいささか気疲れしているが、俵さんも含めて取材

スタッフ達がこの番組は良い番組ですと声を揃えて語っていた。彼らの熱意に

乗せられていつも以上に熱く語っている自分がいた。霧島酒造の試み(地域伝統

の技を伝える)に感謝している。
朝から、剪定枝の破砕作業・葉っぱと小枝の選別作業・草木堆肥作りなど、

農園の日常の撮影を行った。

f:id:sato-shizen-nouen:20200422184508j:plain


取材スタッフからの質問攻めとなり、微生物・放線菌の働きとは?草木堆肥と

ミネラル分の関係は?何故草木灰を使うのか?土作りの団粒構造とは?野菜の

美味しさと栄養価の関係は?完熟野菜の仕組みとは?などなど、さながら理科

授業の屋外研修の様相を呈してきた。

f:id:sato-shizen-nouen:20200422184817j:plain


そもそもが草木堆肥を使った土作りやその野菜の特性などを語り始めると、

日本の農業の歴史から自然循環の理・微生物や放線菌の果たす役割・農産物の

栄養価とは何か・野菜の成長とその生理の仕組みなどこれだけで延々と10時間

ほどを語らなければならない。
さらには、むかし野菜の加工品のこと、お客様とのコミュニケーション方法の

こと、むかし農法の伝承や後継者育成のことなども織り込まなければならない。
4回に分けて放映するとは言え、わずか2分×4回で語ることなど到底できる訳け

ない。
FM放送の方は、15分×4回となり、俵さんとの対談と言う事であり、どのよう

になるのか。
語るほうも、取材・編集するほうも真剣勝負とならざるを得ない。

ようやくお昼のランチタイムとなり、焼き野菜・だんご汁・麦御飯と漬物・野菜

コロッケ・野菜饅頭などなど、俵さんや取材スタッフのお腹に次々と詰め込まれ

ていく。

こちらは、疲れて食べる気力も無くなっていた。

f:id:sato-shizen-nouen:20200422184957j:plain

午後は撮り残しの撮影や味噌作りのシーン、俵さんとの対談、むかし野菜の邑

ファミリーの集合写真、出穂した麦畑を疾走する子供たちのシーン、俵さんの

締めの言葉に思わず涙しているうちの奥さんなど、ようやく解放されたのが、

午後6時を回っていた。
残念なのは、俵さんの締めの言葉を聞き漏らしたことであり、放映の日まで待た

ねばならない。
彼女に聞くと、「佐藤さんから私は語らされていた」とおっしゃって頂いたこと

がせめてもの救い。
今まで多くの取材に応じてきましたが、これほど疲れたのは初めてで、それだけ

中身の濃い取材であり、撮影であった。
最後は、スタッフ全員で野菜の収穫を行い、袋一杯に詰め込んだ野菜達を抱えて

帰っていった。

f:id:sato-shizen-nouen:20200422184717j:plain

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.15(水曜日)晴れ、最高温度18度、最低温度7度

f:id:sato-shizen-nouen:20200415191632j:plain

     むかし野菜の邑の仲間達、平野さんの自然農栽培の梨園にて

 

匠の会(霧島酒造主催)の撮影二日目。

俵万智さん他、取材陣一行は満開の梨園を訪れた。農薬も化学肥料もやらない

自然農栽培を続けている平野さんとその苦労話をしていた。彼は、農薬も肥大ホル

モン剤も使わず、梨とお米を作り続けている。私以上に頑固者である。

唯、時として、カメ虫の大量発生の年などは、ほとんど梨の収穫が無いこともある。

この自然栽培の梨は、余りにも美味しくて、農園の仲間達の心をしっかりと掴んで

いる。但し、余りにも気まぐれで、出荷量は少ない。正に奇跡の梨です。

俵さんも白い花の咲く梨園は初めてのようで、興味深く話を聞いていた。

f:id:sato-shizen-nouen:20200415193243j:plain

ルッコラの花。サラダセットには必ず入るハーブの一種。胡麻の味香りがし、10種類の野菜が入るサラダセットののアクセントとなっている。

 

2020.4.8 俵万智さんがやってきた その二日目

二日目はテレビ西日本のクルーにFM福岡のスタッフが本格的に合流。総勢9名となる。
放映される番組は霧島酒造(専務担当)の番組であり、地元九州の匠の技を伝承していくプロフェショナルな方々の考え方・生き方などを紹介する取組である。未だに試行錯誤を繰り返している農園であり、小さく中途半端な当農園が何故選ばれたか、おそらくは、こうであろうと勝手に推察している。
以前いきなり霧島酒造の専務一行が当農園を訪れてきたことがあった。
その際、専務さんには、このような話をした覚えがある。

 

「今では飛ぶ鳥を落とす勢いのある霧島酒造であり、地域産業のリーダーでもある。

霧島酒造さんは製造メーカーであり、その主力農産物は芋ですね。となれば、地域の農家と結びつき、連携して共に歩んでいかねばなりませんですね。今からの時代は、一人勝ちの時代は終わったと私は考えております。
どうか、地域農業を慈しんでやってください」とお願いしたことがあった。
さらに、「今の日本は、古き良きものを捨て新しいものを作り出そうとしています。果たしてそれで良いのでしょうか?技術革新は常にしていかねばなりませんが、長きに続いてきた伝統の技やそれを継承していく日本の財産でもある職人を捨てて行って良いものでしょうか?
長く続いたものの中には、価値のある本物もあります。芋焼酎などはまさにその古き技であり、本物なのでしょう。ですから、浮沈を繰り返しながらも、現在の消費者に受け入れられたと思います。
当農園の草木堆肥を使った自然循環農業も千数百年間続いてきた本物の有機農業なのです。
私はこの農法を使って、新たな農業と言う産業を地域に興していきたいと願っておりますよ」などのお話をしたように記憶している。
その話を覚えていて今回のような取材があったのではないでしょうか。

f:id:sato-shizen-nouen:20200415193602j:plain

天原木椎茸栽培農家である田北さんの椎茸の圃場。むかし野菜の仲間の一人です。

木訥(ぼくとつ)で、うまく表現できず、俵さんの質問に時折、助け船を出す。

唯、確固たる信念を持ち、ハウス栽培が主流となっている原木椎茸の中で、あくまでも

露天栽培を行っている。彼は私が開催した農業セミナーの受講生の一人であり、今日も

「先生」と言う表現が出る。その度、私からたしなめられている。「佐藤さんです」と。

f:id:sato-shizen-nouen:20200415194314j:plain

山奥の圃場に向かうため、俵さん、軽トラに乗るの風景。ようやく彼女の素の顔が出てきた。

 

ともかく取材は二日目となり、今日のテーマは、野菜の収穫・選別・発送作業のこと、水曜日・日曜日に開催している農園直販所のこと、その合間に俵さんとの対談を挟む。
お昼は数種類の野菜が乗った農園ピザを焼き、スタッフ全員で軽く昼食。皆さん、わっと喜んでいたが、時間が無いので、すぐにお腹に詰め込み、早速に出発を促す。由布市庄内町に点在している農園の仲間達の圃場巡りと麦畑の取材となった。
由布市庄内町は典型的な中山間地であり、田園風景あり、里山ありで、その真ん中を由布川峡谷が割って入り、集落が里山に沿って点在している。
むかし野菜の邑の一員である完全自然農の梨園は、今、花盛り。次に訪れたのは、山間深くにクヌギのホダ木が並んでいる露天原木椎茸の圃場で、みんなで森林浴。
最後に佐藤自然農園の小麦畑の撮影を行った。撮影の最中、田園の真ん中を走る赤い電車が通る。
長閑な田園風景であるが、過疎の集落には、子供の声がしない。悲しい現実がある。
帰りに梨ソフトを皆さんにごちそうして、この日は現地解散となった。

f:id:sato-shizen-nouen:20200415194609j:plain

今では、農園の厄介者となってしまったジャーマンカモミールの花。

リンゴの香りが辺り一面の漂う。以前、注文でカモミールを植えたことがあった。

処が、それ以降毎年、あちこちで芽を吹き、かわいそうなので出来るだけ残している

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.8(水曜日)晴れ、最高温度18度、最低温度7度

f:id:sato-shizen-nouen:20200408191949j:plain

               インゲン豆の発芽の瞬間

 

新しい命が生まれる。いつもながら、この産みの苦しみを経て、生命が誕生する瞬間は愛おしく、そして神々しい。

思わず頑張れと声を掛けてやりたい衝動に駆られる。

よく見ると、雑草も芽吹いている。これも命なのですが、農家にとっては厄介者。

除草の手間が掛かる。自然の生存競争は、厳しい淘汰の中にありますね。

さらによく観察すると、畑の表面に小さな土塊が見えます。これが団粒構造に進化した

最高の土となります。

この団粒の中に水・空気・栄養分が綴じ込まれ、生命の営みには最高の条件を生んでくれます。この畑は草木堆肥歴18年目の圃場です。深さ50~60㎝まで、団粒化が進んでおります。この土によって美味しい野菜ができるのです。

 

2020.4.7 俵万智さんがやってきた。その一日目

テレビ西日本FM福岡の両ディレクターが総勢9名で、詩人の俵万智さんを連れて、当農園を訪れてきた。霧島酒造の「匠の会」のメンバーにご指名頂いているためです。
6月に4週連続してテレビ放映及びラジオ放送されるとのこと。そのため、取材期間は3日間と長い。
御担当者達は仕事とは言え、ご苦労なことです。
農園も取材のためだけに3日間を棒に振ることはできない。農園の日常をありのままにお伝え頂くことにし、畑作り・夏野菜の定植作業・収穫発送作業・味噌作り・漬物の仕作業に、俵さんも参加して、昼食は農園ランチをスタッフ達と一緒に摂って頂く。
唯、取材スタッフを含めると20人近くの食事となり、女性陣には迷惑を掛けることになる。

f:id:sato-shizen-nouen:20200408193217j:plain

ハンサムレッドと言うレタスです。まるでお花畑にいるようです。野菜の造形美も農業の一つの楽しみなのです。

 

初日の午前中から、朝からトマト・ピーマン・万願寺トウガラシ・パプリカの夏野菜の植え込み、牛蒡の種蒔き、玉葱の収穫作業をこなし、午後4時頃、俵さんの農園散策となった。
その夜は、当農園の野菜が主力となっている大分市の「然」と言う自然食レストランで、皆さん、会食をしていただいた。
後に感想をお聞きしたところ、むかし野菜のフルコースに感動していただき、「今まで食べてきた野菜は一体何だったのだろう」とのこと。
シェフのお話をお聞きしましたか?と質問したところ、「この野菜は何も手を加えないことです」と一言言われましたと。相変わらず無口の料理人です。
私はこのようにスタッフの方々にお伝えしました。「通常、料理の味付けや手を加えることが自分の腕だと思い込んでおられる料理人が多い中、彼は、野菜の素材の味香りや食感を如何に活かしていくかと言う事を知っている数少ない料理人なのです。野菜の熱の加え方、切り方など彼独自の手を加えており、その微妙な手の加え方が一流の証なのです」と・・・皆さん、静かに納得の表情を浮かべていた。

f:id:sato-shizen-nouen:20200408193432j:plain

               農園直売所にて、

万智さんです。初日はいささかお疲れ気味で、前日夜中まで取材番組の、収録があり

きつそうでした。これから三日間お付き合いが始まります。

彼女の素が出てきた時に、どのような反応が出るか、それも一つの楽しみです。