農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.3.4(水曜日)曇り、最高温度13度、最低温度5度

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「なんでも有機の時代が来ている」

 

玉葱の除草作業も無事終了し、春野菜の植え込み・種蒔きも一段落し、春じゃがの植え込みも終わった。
剪定枝の破砕作業の後、除草した草と混ぜ、懸案の夏野菜用の草木堆肥を作り終えた。
気候が季節外れの暖かさのせいか、野菜の成長が良く農作業も順調に推移し、突然に「ポカン」と時間が空いた。
農園ですから、やる事は山のごとくあるが、ひと段落したため、スタッフ達も疲れが溜まってきており、農園始まって以来の平日休暇を取ることになった。
スタッフ一同に、「木曜日はお休みにするぞ!」と伝えると、一瞬の間があり、みな、「ポカン」とした顔をしていた。
今日、突然に電話が入る。東京のMですが、今大分に来ております。今から農園におじゃましてもよろしいですか?野菜が欲しいのでと。
今日は農作業デイでしたが、収穫体験を兼ねて、一緒に畑を回った。食べるだけでは無く、収穫もする事でかなりリフレッシュされたようだ。雑談の中で、彼女たちはこう言った。
「今、東京では有機無農薬野菜が駅の構内も含めて至るところで売られている」
やはりそうか、と思った。
日本では、今、何でも有機と称する時代となっているようだ。レストランでも有機野菜を使っておりますの表示が目立っている。日本ほど、自称有機野菜に溢れている国は無い。有機野菜の生産量は野菜全体の0.2%しか無いと言うのに・・・
以前、大阪に赴いた際に、大分県の数人で居酒屋に行った。なんのさかなが良いかなとメニュー表を見ていると、「関アジ関サバ」の表示があった。面白そうなので、店員さんにこう告げた。「我々は大分から来たのだが、安い関アジがあるそうですね」と問うと、店員さん、急に真顔で「お客さん!止めたほうが良いですよ」と。

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一次発酵段階の草木堆肥。びっしりと白い放線菌が有機物に付き、分解している。

柔らかい有機物は微生物が、リグニン・セルロースなどの方有機物は放線菌が、分解してくれている。この世に微生物や放線菌(黴)がなければ、世界中は死骸だらけになっている筈。何かと世の中を騒がせているコロナウィルスもその菌の一種です。

有用な菌も居るわけですから全てを悪者扱いしないでやって欲しい。

 

「畜糞を使ったら有機野菜」となるのも有機JAS法や日本の有機農業に対する曖昧さといい加減さがもたらせた結果である。アメリカ産の配合飼料の影響で抗生物質・薬品まみれとなってしまった畜糞を使う有機農業は、畑をむしろ汚していると言う悲しい現実がある。
だからこそ、世界基準のオーガニック野菜の認定から日本の有機JAS野菜は外されている現実を消費者は知らない。本物の有機野菜や無農薬野菜とは一体何なのだろうかと考えざるを得ない。
消費者はもっと有機野菜の現場の苦労や現実を知らなければならない。真摯に土作りを行っている有機農業者のしていることを知れば、そんなに安い有機野菜があろうはずもない。

私達が、無化学肥料・脱除草剤・草木堆肥による土作りに力を入れ、少しでも健全な農産物作りを行っていても、他方では世界一食品添加物を認めている日本の食品の現実を知れば、やや空しさを感じてしまう。消費者の無関心がそれに拍車を掛ける。
安全安心にはコストが掛かる。健全な農産物を求めるのであれば、消費者も相応の負担をしなければならない。自分の健康は国が守ってもくれないし、消費者自身がもっと賢明な消費者とならなくてはいけないと思うのですが・・・

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