農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.5.27(水曜日)曇り、最高温度25度、最低温度16度

 

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         無残な姿となったキャベツ

この畝のキャベツ500ヶは、およそ1/3の出荷で終わって

しまった。正に人間が食べるか、虫が食べ尽くすかの競争と

なった結果です。

 

2020.5.19  害虫の異常発生

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葉っぱは穴だらけ、芽は食い倒され、無残な姿となった茄子。

 

先日、とあるお客様から自然栽培を学びたいとの申し出があった。

行く行くは有機無農薬農業をやりたいとのお話であった。
聞けば、高校生・中学生の二児のお母さんであり、夫も感心を持っ

ているとのこと。
そこで、こう申し上げた。有機無農薬野菜なんて無いのですよ。

10年前ならいざしらず、現在の気候は虫たちの天下です。

5月以降~11月までは、野菜によってですが、種を蒔いても

発芽した途端に、虫たちの食糧になってしまいます。

ようやく幼苗時季を終えて成長したとしても完熟期(野菜が

糖質に富む)を迎えると地面から幼虫が雲霞のごとく現れ、

食い尽くします。
本来虫が食べないほうれん草(シュウ酸が含まれている)も

穴だらけになるほどだから、キャベツは地中から湧いて出てくる

夜登虫に食い荒らされ、キャベツの底辺には数十匹が群がって
いる。その他にも茄子は十星テントウムシが付くのだが、

夜になってこの夜登虫が登ってきて葉っぱを食い荒らし、

ひどいものになると、茄子の幹を噛み倒してしまう。
5月中旬頃から11月まで、害虫の発生が続き、5~7月まで

が特にひどい。

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蝶々乱舞。卵を産み付け、青虫の大群で葉っぱはやられ、地中からは夜登虫が

這い出し、キャベツの下部から芯にまで食い込む。

 

当農園は草木堆肥であるだけに土は肥えれば肥えるほどに蛾の

幼虫が卵を産み付け、土中は、虫の住処となっている。
野山の自然の土壌に近づける草木堆肥による土作りと、害虫も

含む虫達の繁殖は相関関係にあり微生物・放線菌・小虫は、

土が肥えれば肥えるほど、増えてくることになる。

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畑で草木堆肥を撒いていた。その上に焼き灰・蛎殻・苦土石灰を振る。

ふと、見ると、蝶々が堆肥の上に群れていた。完熟一歩手前の草木堆肥は

香しい匂いがする。その甘い香りに吊られたのだろう

これからの時代、微生物・放線菌・虫達と共生していかねば

成りません。但し、害虫に対しては、人間が防御してやらねば、

農家は自然の恵みと収入を得られないことになってしまいます。
唯、土を汚すことは絶対に避けねば成りません。
化学物質や菌を殺してしまう浸透性農薬の使用は、自然の循環

及び浄化及び再生の仕組みを壊してしまいますし、土中消毒・

除草剤の使用は微生物・放線菌が棲めない土となってしまいます。
農業現場を知らない学者やメディアそして、無農薬、無農薬と

唱えておられる消費者が考えている概念上の有機野菜とは一線を

画しており、私達は自然栽培と称しております。

近在の農家の方が、私と一緒に農業をしようと考えたそうですが

除草剤を使わないと、広い農地では草取りに追われ、回していけ

ないので、残念せざるを得ないと言っておられます。

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こちらは紫キャベツ。一つの株からおよそ20匹の夜登虫が現れる。

剥いて剥いて、キャベツはどんどん小さくなり、出荷出れば良い方です。

我々の行っている自然循環農業は過酷な作業の連続です。

その上、害虫被害により季節によって半滅・壊滅状態も日常的

に起こり、それが度々重なると心が折れそうになります。
今年は特に異常な気候と害虫の異常発生によって皆様にお届け

する野菜が、底を尽きそうです。
この自然栽培(全て露地栽培)は10年を超える経験と勘や

不屈の精神が要求されます。そして、野菜に対して愛情を注ぐ

人で無ければ続けていくことはできません。

以上のこと申し上げたのですが、現場を踏んでいかねば中々

分からないことだと思います。

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トマトの初期設定作業。トマトは一本の木に2~3本の枝とするように剪定。

竹の支柱を二本、太陽に向けて斜め50度に傾けて枝を伸ばす

最大で5メートルの長さまで伸ばす。もうかわいい玉が付いている。