野菜が美味しくなるメカニズム

24.2.2(木曜日)雪、最高温度2度、最低温度ー2度
 
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終日、寒く、東北地方ではないかと思われるような寒気に晒される。
今年一番の寒気、というより、農園始まって以来の寒さが訪れる。
野菜が心配で全てのトンネルの中を覗き込む。一応の防御は施した。
あとは、野菜が耐えてくれることを祈る。
 
今日は、私が開いているセミナーの中で、専門書に書かれていないこと、野菜が
どうしたら美味しくなるのかについて、少し触れてみたい。
(メールでの問い合わせがありました)
 
野菜が成長するのは、ほとんどが窒素の力。
健全に成長するかは、燐酸やカリ、その他ミネラル分(12元素)のバランスによる。
 
○窒素が常に多くある土壌は、成長が早い。
(例えば、化学肥料・畜糞の多投により野菜は急速に成長する)
 
①根は張らなくても茎は伸びるが、葉は薄い。
急速に細く伸びた茎では野菜が支えられずに茎などには頑丈な筋が発達する。
そのため、噛んだ時に口の中に筋が残ってしまう。(歯切れが悪くなる)
 
②土中に窒素が多いと成長酵素ミトコンドリアが増え、野菜は急速に伸び
 て、短い期間に大人になる。そして、出荷を迎える。
完熟していない成長途上の野菜となり、デンプン・炭水化物が多く含まれる。
食べた時に苦味を感じるのは、デンプンのせいです。
 
※完熟野菜とは?
土中に窒素分がなくなると、成長酵素ミトコンドリアは極端に減少する。
野菜は概ね成長が止まると(ミトコンドリアがなくなると)生きようとして、
 体内に蓄積したデンプンや炭水化物を分解して糖質・ビタミンに変え、
 それをエネルギーにして生き残ろうとする。
これが完熟野菜であり、甘くて美味しく、従って栄養価が高い野菜となる。
 
○草木堆肥を中熟施肥の場合
(完熟堆肥では微生物や放線菌はすでに活力を失っているため、土中に投下した
 際に、活発な活動はできない。中熟堆肥は未分解の有機物残渣が残っており、
 しかも、まだ活力を失っていない微生物等はそれらの植物性有機物をえさにして
 活動を継続する)
土中は豊かな生命体系(食物連鎖の構造)が生まれる。(土の団粒構造化)
 
①土中には窒素分が未だ多くは供給されておらず、しかも、燐酸・カリ・ミネラ
 ル分のバランスが良く、野菜の細胞発育には良い環境にある。
根は髭根が増え、窒素分を求めて土中に深く広く伸びようとする。
茎の成長は遅く、太い茎と厚い葉脈を作る。
このため、筋は張らず、筋を感じさせない歯切れの良い食感になる。
 
②定植、あるいは、種蒔きから1カ月を経過した頃から、土中には徐々に窒素
 が緩やかに供給され始めると、野菜は根を十分に張り、太い茎を作る。
 2カ月頃から急速に成長を始め、3カ月頃には、土中の窒素分の供給が少なくなり
 やがて野菜は完熟期に入る。(ミトコンドリアが極端に減る)
体内に蓄えたデンプン等を生き残るために分解を始め(分解酵素が活発に)、
 糖質やビタミンが増え、美味しい完熟野菜となる。
 
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         サンチュ・半結球レタスの幼苗が整然と幾何学模様に
 
○美味しい野菜=栄養価が一杯とは?
 
今まで、食感(筋を感じさせない歯切れの良さ)と甘さ(糖質)について述べてきましたが、定的な美味しさの秘密とは、実はバランスの良いミネラル分の含まれた
土壌にある。
 
※岩塩や海の塩と精製塩(塩化ナトリューム)の違いは、その旨みにある。
 岩塩などは、海水に含まれた豊富なミネラル成分により、口に含んだ際に、
 かすかな甘さや旨みを感じないでしょうか?
 
それと同じことが草木堆肥で育った野菜にあると言うことです。
 
※地表30センチには実はミネラル分がかなり少なくなっている。特に野菜をいつも
 生産していると、地中のミネラル分を収奪してしまう。
 しかし、地表の30センチの下には、(特にマントルには)まだ多くのミネラル分が
 残っている。木・竹や草などは地中深く根を張るものがある。
 そのため、木屑・竹・葉・草にはバランスのよいミネラル分が多く含まれている。
 
草や木屑・葉を中心にして作られた草木堆肥にはバランスの良いミネラル分が
多く含まれているために、そこで育った野菜達は味香りや旨みを感じるわけです。
 
ここまでは一つの仮説と私の実証ですでにお分かりでしょう。
しかし、これだけではむかし野菜の美味しさを説明するには、まだまだ未知のものが
多くあり、太陽・雨・風・微生物の活動などの自然の作り出す神秘の世界は、人間の
知恵では説明できないものがあるように思えます。
 
PS.
糖質の少ない食べ物は栄養価が少なく、かつ、糖質に変化していない野菜は、
野菜・人間ともに栄養価として体内に吸収しにくい。
又、温野菜にしたり、油脂とともに食べると吸収率が飛躍的によくなる。
 
農業の奥の深さと自然の神秘は「謎」ままのほうが楽しいです。
 
イメージ 3草木堆肥の切り替えし作業
 
切り替えしによって
空気を入れると
さらに発酵が進む。
 
この煙は微生物が増殖し
熱を発しているためです。
この堆肥の中で豊かな
生命の営みが間断なく
繰り返されている。
 
 
 
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    この子達の将来に豊かな世界が広がっていることを祈らざるを得ない。
 
今の大人たちがしっかりとした考え方を持ち、一生懸命に生きること、そして、
より良い未来を作るために、周りにいる人たちのことを思いやって生きること、
手を繋ぐことを躊躇しないこと、勇気を持ってことを行うようにありたいものです。