むかし野菜の四季ーPART2

2021.11.5(金)晴れ、最高温度21度、最低温度11度

f:id:sato-shizen-nouen:20211105202938j:plain

              玉葱の植え込みが始まる

 

昨日、8千本の玉葱を植え込んだ。ここ10番の畑だけでおよそ6,500本の

苗を植え込みました。年間約7~8万本の苗を植え込みます。

定期購入の全国のお客様、3百数十名の方の年間食べる量が必要となり、年々増えて

おり、植え込む畑を探すのがこの時季の悩みです。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211105203819j:plain

      麦大豆専用の圃場に草木堆肥を振っている風景

 

この畑で軽トラック4杯分の堆肥が必要です。

例年、この季節は玉葱の植え込みと麦蒔きの作業が重なります。

除草剤を使わないため、草が生えたらトラクターで起こすを繰り返し、雑草被害を

防ぎます。

この時季は次第に寒さが増してくる季節であり、10度を下回ると種が発芽し難く

なるため、秋冬野菜の種蒔きも急ピッチで行わねばならず、夏野菜の撤去作業と並行

して、忙しい毎日です。秋の日はつるべ落とし、暮れるのが早く時間が足りません。

f:id:sato-shizen-nouen:20211105210443j:plain

            農園マルシェの野菜売り場

 

むかし野菜の四季

「高密度・多品目栽培の勧め」

農協も含めて農業本には、「この野菜は点蒔き(あるいは筋蒔き)をしてある程度

成長したら、成長の遅い小さな苗を間引き、苗の間隔を12㎝程度に空けます」など

とあります。

これだと、間引き手間がかかり個体の数量が著しく減り、当然に収量も大きく減り

ます。しかも害虫が数少ない個体に群がりますので、3~4日毎に農薬を散布しない

と野菜は一瞬で消えてなくなります。

 

当農園の自然循環農業(高集約農業)では葉野菜や蕪類などを筋蒔きしたら、小さな

苗を間引くのでは無く、そのままの密集状態で育てて行きます。

密集植えされた野菜は競争し合って大きく育とうとしますし、害虫被害のリスクや

厳しい自然の淘汰のリスクも減ります。

競り合って育った野菜は根を精一杯張り、強く育ちます。成長したら、大きな野菜

から収穫を始めます。すると、次に大きい野菜が育ってきます。それを繰り返しな

がら一つの畝で数回収穫を行います。つまり、大きい野菜から順に間引いていくと

言う感覚です。

ただ、野菜より雑草の方が強く草取り作業は野菜が育つまでに2~3回は行います。

高密度栽培は、季節によって種の播き方が変わります。湿気が多く蒸れの起こりや

すい時季は少なめに、畝間はまめに除草作業を行い、共倒れを防ぎます。

この除草作業が大変なため多くの農家は除草剤を使います。

f:id:sato-shizen-nouen:20211105210155j:plain



実物野菜は虫害などがあっても生き残るために、リスクヘッジとして旺盛な側枝・

脇芽や葉っぱが茂らせます。すると、風が通らず、光も差さず害虫の温床となって

しまいます。

そのため、茄子・トマトなどは旺盛に茂った葉を摘除し、枝を誘引し風の途と太陽

の光が入りやすくしてやります。するとミツバチも花を見つけやすくなり、受粉が

進みます。

トマト・茄子などは出荷している間中、剪定誘引作業を続けます。

トマトは一本立ちではなく、枝を3~4本残し、支柱を添えて太陽に向けて南側に

斜め50度に誘引していきます。(畝は当然に南北に切ります)

一本立ちではせいぜい8~10段までしかトマトは成りませんが、この方法だと

12~15段、長さにして3~5メートルまで枝を伸ばすことができます。当然に

収量は数倍になります。ただ、この剪定誘引作業は手間の塊となります。念のために・・・

f:id:sato-shizen-nouen:20211105210312j:plain



草木堆肥による土作りは実際には数年がかりです。そのため、狭い農地で最大の収

量を得なければ成りません。

粗放農業は単作栽培ですから、一つの畑で多くとも2品目程度ですからせいぜい年間

2回転です。

高集約型農業では、一つの畑で年間3~4回転します。しかも、同時に10品目以上

の旬の野菜が一つの畑に植えられておりますから、年間25~30品目の野菜が出荷

される計算になる。これが多品目生産です。

当農園ではおよそ10反の畑がありますので、年間栽培する品目は100種類を超え

ます。一つの季節に30~40種類の野菜を育てております。

単作栽培では、台風・気候不順・虫害などによって出来不出来があり、また、豊作に

なれば農産物価格は一気に暴落するなどのリスクが付きまといます。

多品目栽培の場合は、あれがダメならこれがあるというふうに、農産物の出来不出来

や豊作による価格暴落のリスクは少ない。

日本の農業を壊滅の危機に追い込んでいったもう一つの要因は、量の確保ばかりを唱え、中山間地農業の実態も把握せず単作栽培を奨励していった国及び農協にあり、

その責任は大きいのです。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211105210545j:plain

          農園マルシェの菓子・惣菜売り場

 

奥ではコロッケ・ピザなどをオーダーを受けてから作り始めます。出来たてを

食べてもらいたいからです。

 

むかし野菜の四季ーPART2

2021.10.29(金)晴れ、最高温度21度、最低温度15度

f:id:sato-shizen-nouen:20211029184903j:plain

12月初旬から寒波が来るとの予報で、それまでに冬野菜の種を蒔き発芽させて

おかねばと、急ピッチで畑作りを進めねばならない。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211029185326j:plain

               人参の種蒔き

研修生に種の蒔き方を教えているところ。先生は農園歴15年のベテラン女性。

この圃場は草木堆肥歴15年目の畑。人参は当農園の顔であり、プラチナ級の

畑にしか蒔かない。マルシェで「人参はまだか」の催促がかまびかしい。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211029185948j:plain

こちらは農園の李の木。10月なのに季節を勘違いしたのか、花が咲いている。

 

 

むかし野菜の四季ーPART2

「高集約型農業」

アメリカ型の大規模農業の場合は、人の労力を抑えて大型機械を駆使して、広大の農地を耕さねばなりません。従って、化学肥料や農薬、そして除草剤を使う粗放農業が適しており、北海道や干拓地にはその粗放農業が行われております。大豆・麦類・とうもろこし・じゃがいもなどの大量生産型の近代農業が発展してきました。

大量の除草剤を使うため、(除草剤でも死なない)アメリカでは遺伝子組み換え作物が普及しています。

農産物の品目は年間2~3種類程度の大量生産型の単作栽培が行われております。

広大な農地を大型機械を使って栽培する作物は量の確保や拡大が優先され、大量流通に載せるために均一化された農産物が要求されます。これが粗放農業です。もちろん量産型であるため反当収量は少ないです。そこでは、農産物の安全性とか、栄養価とか、美味しさとかはあまり評価されません。

例えば、ジャガイモの種蒔き前に除草剤を使い、収穫直前にじゃがいもの茎や葉を枯らすためにもう一度除草剤を使います。大型の収穫機械を使い易くするためです。

f:id:sato-shizen-nouen:20211029191155j:plain

一つの畑に10数種類の野菜が育っている。昔であれば当たり前の農園風景でした。

家庭菜園の大型バージョンです。

 

日本の国土は狭く、農地は一反(300坪)単位であちこちに点在しており、特に中山間地を多く抱えた日本の農地には大規模(大型)機械化農業は効率が悪く不向きです。

日本では古来から狭い農地を労力を掛けて年間3~4回転させる少量多品種型の高集約農業が行われてきました。反当収量は粗放型農業と比べて3~4倍と高いが、労力や手間が掛かるわけです。

肥料や堆肥にも個性やこだわりがあり、土作りに力を入れて品質や美味しさの競い合い、手作り感がありました。草木堆肥などは大量には作れず施肥する手間も掛かるが、栄養価・安全性・美味しさなどの高品質農産物でした。

むかし野菜の邑は、高集約型農業の現代のモデル農園とも言えます。

しかしながら、戦後、食糧増産を目的としてアメリカ型の近代農業が国策として農協などを通して推進され、急速に日本型の高集約型農業は衰退していきました。

日本の農産物は農産物の内外価格差(4~5倍以上の格差)という課題に直面し、品質の同じ大陸の農産物と競い合わねばならず、大規模な機械化農業と競争しても勝てるわけがありません。このことによって「日本の農産物は安全である」という神話は崩壊しました。

その結果、日本の風土に合わない大規模機械化農業を国策として推進した日本の農業は衰退の一途を辿り、農業生産者は減少し、農業環境や基盤の消滅の危機を迎えております。

今では政府も国民も日本の農業の再生に関心を失い、農業政策が無く未来が見えない農業劣等国に落ちてしまいました。

農産物の自給ができないとなると、食の確保は海外に頼るしか無くなり、気候変動の問題を加味すると国の安全は確保できなくなります。食料安全保障の大きな問題です。

 

同じ品質では数倍の価格差がある安価な海外産の農産物と対抗できないとすれば、日本の農業は、小さな農地でしか、なし得ない労力と手間の掛かる品質重視や安全性を追求した農産物作りを目指し、安価な海外産の農産物に対抗すべきではないでしょうか。

これが日本古来からの高集約型農業です。

次の項で述べますが、高品質野菜は必ず低窒素栽培に行き着きます。

高集約型農業だからといって有機肥料などを多投すると、化学肥料と同じく高窒素土壌となり、土壌は汚れ、品質は落ちていきます。肥料が多いと野菜は良くできるというのは大きな間違いなのです。

草・藁・籾殻・葉っぱ・木屑などの炭素分の多い植物性有機物が土を育てていきますので、念のために申し上げておきますが、肥料は野菜は育てるが土は育ててはくれないのです。

f:id:sato-shizen-nouen:20211029191507j:plain

草木堆肥を作っているところです。草を厚さ10センチに広げ、その上に放牧牛の
牛糞(草が飼料であり輸入飼料を使っていない)を厚さ3センチに置き、さらに剪定屑

や葉っぱを5センチに厚さに重ね、混ぜ合わせます。

草木堆肥は窒素分が少なく炭素分が多く低窒素となり、かつ、ミネラル分の宝庫です。

 

量では無く品質で勝負するとすれば、消費者の支持を得ることが重要になります。

日本の流通事情では、質で評価を得たい農業者は流通を介すること無く消費者と直接やりとりができる直接販売方式が適しているということになります。

そこで、品質志向の農業者はマーケティング能力(販売ターゲット戦略や戦術・商品開発能力・販売促進を行うための消費者とのコミュニケーション能力など)が必要となってきます。

これは別項で詳述致します。

 

むかし野菜の四季ーPART2

2021.10.22(金)晴れ、最高温度19度、最低温度13度

f:id:sato-shizen-nouen:20211022213424j:plain

               サラダセットの畝

この一畝に7種類のサラダ系野菜が植わっている。

水菜・赤水菜・赤辛子水菜・緑辛子水菜・赤マスタード・緑マスタードルッコラ

です。別の畝では赤ほうれん草とスイスチャート、時にはサラダ小松菜などを一セットとして皆様にお届けしている。農園の定番野菜の一つです。

定期購入のお客様が一週間でおよそ140余名・農園マルシェで60余名・レストラン

10数軒に出荷するのに、この一畝で二週間しか持たない。

そのため、この季節だと二週間間隔で他の畝に種を蒔かねばならない。

農園で人気の高いアイテムなので切らす訳にはいかない。この4番の畑に瞬間的には

4畝のサラダセットの畝を用意しなければならなくなります。

写真で言うと白い不織布を掛けているあたりに出荷途中の畝と併せて4畝見えます。

 

同じように葉物野菜・ほうれん草・人参・蕪類・大根系などの定番野菜は概ね4~5本の畝が必要となります。

これを繰り返して野菜が途切れないように頭の中のコンピューターは常に数えているのです。ただ、みなうまく育ってくれるとうれしいのですが、時には気候や虫害などによりそんなにうまく行かない時の方が多いのです。

 

むかし野菜の四季-Ⅱ

 

「露地栽培の危機」

毎年、異常な気候変化が続いており、特に最近の数年間はその異常さは際立っている。気温は乱高下し、雨は降る月と降らない月が極端になり始めている。

蕪類の球が育たず葉っぱだけ大きく葉を広げているが、球は極端に小さく、すでに莟立ちし始めている。九条葱はまだ3月の初めだと言うのに白っぽく葉の色を変え始めている。例年では4月上旬頃葱坊主が出始めるころに見られる変化です。

以上のようにハウス栽培とは異なり、露地栽培は常に気候変化の影響を大きく受ける。

平均気温が1~2度違えば、野菜の成長は狂ってくる。それが一気に10度近く乱高下する気候が続けば、野菜にとっては迷惑な話であり、伸びてよいのか、縮こまったほうがよいのか、迷ってしまい、結果として異常な発育をしてしまう。

 

昨日、ある県会議員が農園を訪れて有機野菜を育てていた農家が廃業したという話をして帰った。(その農家はうちの農園でノウハウを学び独立していった一人でした)

その農家はこう言ったそうだ。「ある予定の時季に出荷を見込んで育てた野菜が早く育ってしまったり、間に合わなかったり、今までの経験が全く役に立たない。出荷先との約束ももうできない。露地栽培は止めてハウス栽培に切り替えるしか無い。それならもうしない」

有機生産者は市場ではなく特定の流通業者へ出荷している。それはいつ頃何をどれくらい

出荷するといった約束事で成り立っている。それが守れなくなったことは生産者にとっては大きい。

 

当農園は農協も含めて流通へは一切出荷をしていない。

全て飲食店や個人消費者などの定期購入顧客や農園マルシェなどで直接販売している。

そこには規格・均一・出荷時期などの制約は無い。常に畑での出来あいの野菜を届けることで成り立っており、サイズは大小様々、見え形は不揃い、虫食いの痕も時季によってはひどいものもある。自然栽培ですから揃っている方が不思議なのです。その代わり、美味しさ・食感・味香り・栄養価などは数倍以上あり、それを評価して頂く消費者との信頼関係が全てと言うことになります。

f:id:sato-shizen-nouen:20211022215855j:plain

3番の畑(左から白菜・キャベツ・露地ニラ・秋の菜花・ほうれん草・大根)

 

それでもこの異常な気候変動による影響は大きく、年間百種類以上の野菜を作り続け、全国のお客様に15種類以上の野菜を定期的に届け続けねばならない。

野菜の安定的な生育が見込めねば、アイテム数の不足と量の確保が難しくなる。

土作りを行い無肥料で育てる自然栽培では、野菜の成長は遅く、気候変動や害虫被害などの影響を受けやすく生産リスクの塊となる。

それに加えて露地栽培には端境期というものがある。ハウス(施設)栽培では加温ハウスも含めて季節を調節できる。わかりやすいのはトマトやイチゴなどです。

トマトは夏の作物でしたが、今では秋・冬の野菜となっています。野菜に旬が消えてしまっています。

露地栽培では気温や天気を調節できませんので季節に順な作物しかできません。植物の種子は元々それが生まれた地域に即した遺伝子を持ち、その野菜にあった気候で育つものです。さらに寒暖の差・雨・風・太陽などの自然に晒され、淘汰され生き残った植物だけが成長します。ですから、季節に順な作物は美味しく栄養価もあるのです。これが旬菜です。

ただ、最近の10年間の露地野菜達は気候変動が激しくいささか戸惑っております。

そこで、当農園では絶えず変化する気候に合わせて数年前から捨て植えを行っている。

例えば、出来るかどうか不安の残る野菜は種蒔き時期をずらし、2~3週間置きに植え込むようにしている。そうするとどちらかが上手く行くという目算です。

ただ、両方とも上手く育ってしまうと野菜がだぶつくことになってしまう。その場合は、増量された野菜が定期購入者(仲間たち)に安価に配られ、農園には出荷手間が

かかるが、お客様は喜ぶ。せっかく自然からもたらされた野菜ですから・・

f:id:sato-shizen-nouen:20211022220143j:plain

          3番の畑(晩秋の定番野菜セロリ)
除草後、草木堆肥の追肥を施し土寄せを完了したセロリの畝。2番の畑にも植わっている。2・3番両方の畑とも草木堆肥歴は15年を超えており、農園主力の畑。

 

欧州では国家が露地栽培農家を手厚く保護している。

例えば、一ヶ250円のキャベツを出荷すれば、同額の支援金を受け取れる。但し、

ハウス栽培には補助金は出ません。利益を追求する商業的施設栽培であるからです。

欧州においては国民の意識の中に、露地栽培農家が「食の確保と国土を維持管理して

くれている」と言う考え方があるからです。

果たして日本の国民にそのようなコンセンサスが得られるでしょうか・・・!

 

日本の場合は露地栽培には支援金は0ですが、ハウス栽培には規定の条件(作物指定等)を満たせば、農協を通して30%前後の補助金が出る。施設には多額の費用が掛かると言う理由のようです。(ただ、この補助金にはがんじがらめの制約が掛けられ、

農家の自由さは一切無いため、この補助金を受けた農家は次第に追い込まれていくことになる)

中山間地を多く抱えている日本の農地は狭く生産効率が悪く手が掛かる。農業離れが

進み、地域から子供の声が消えつつある。それでも日本の食と国土を守ってきたのは、

地域の農業者達でした。膨大の水路や豊かさの象徴であった田園風景を維持する農業者が居なくなれば、中山間地は荒れ果て、雑木が生い茂り鳥獣の住処となり二度と元に

戻すことはできないでしょう。

近い将来、世界が自国の食料確保に走る時、日本では食べるものはすべて海外から得られることになるのでしょうか?

f:id:sato-shizen-nouen:20211022220753j:plain

     日曜日開催の農園マルシェにて販売しているピロシキ

むかし野菜の四季ーPART2

2021.10.15(金)晴れ、最高温度28度、最低温度17度

f:id:sato-shizen-nouen:20211015193830j:plain

          端境期の畑は夏野菜と秋野菜が同居

 

左端から茄子・ズッキーニ・ほうれん草・人参・白菜・里芋と夏秋混成に

植わっている。この状態が11月中旬頃まで続きます。

畑は晩秋にもなると秋冬野菜一色になり、時が止まったかのように「静」の

農園風景となり、私はその時季の畑の風景が一番好きですね。

 

農園は今、夏野菜の撤去と秋野菜の種まき・定植作業が一段落し、やや落ち

着きを取り戻してはいるものの、お客様が漸増しており、出荷する野菜が

少なくなってきており、農園主としてはやや心細い気持ちになっている。

端境期になると毎年同じことを繰り返し、秋野菜の成長の遅さにやきもきと

することになる。

そんな際、捨て植え(できるかどうか分からない野菜のこと)の野菜がいつも

助けてくれる。まさに綱渡りの毎日です。

 

 

むかし野菜の四季

 

「日本の農業の現状」

野菜は本来、味香りや五味や食感などにそれぞれの個性があり美味しさがあります。

時には微量な毒素も含んでいます。これは虫などの外敵から身を守るためのもので

化学肥料や畜糞・ぼかし肥料などの高窒素肥料で育った野菜は、短期間で急成長

するため野菜の個性である味香りを無くしていき、葉肉は薄くなり、倒れないよう

に筋張っていきます。

そのため、害虫の好む食糧となります。そこで肥料の開発が進めば進むほど、害虫

対策として農薬が不可欠となって行きます。近代農業では化学肥料と農薬がセッ

で開発が進められました。(有機肥料も同じです)

有機肥料も畜糞が主体であり、ハウスなどは米糠・油粕・骨粉などのぼかし肥料も

使われておりますが、いずれにしても窒素分は多く、高窒素栽培となっています。

そのため、化学肥料とほとんど同じことになり、農薬使用は不可欠です。

 

勿論、自然栽培でも害虫の発生は抑えられません。にんにく・とうがらし・ドク

ダミなどを使った忌避剤でも他の畝に逃げて行き今度はその畝が被害を受けます。

結果として害虫対策にはなりません。

そのため、有機であれ自然栽培であれ虫の発生しにくい寒冷地でなければ農薬を

多少は使わなければ、野菜を育てることはできません。(農薬の話は後ほど詳述致

します)

よく自然農であれば害虫は寄りつかなくなると主張しているサイトがありますが、

自然界にそんな農場があったら怖いですね。念のために・・・

f:id:sato-shizen-nouen:20211015200853j:plain

 

野菜には炭水化物とデンプンが蓄積され続け、糖質やビタミンへ変換されないまま

出荷されます。肥料過多で育った野菜は苦い味がします。それはデンプンが苦いか

らです。

野菜は基本的には窒素で生長します。地中に窒素分があれば野菜の中に成長酵素

ミトコンドリア)が発生し野菜の成長を促します。そのため、慣行栽培(化学

肥料と農薬)、若しくは畜糞栽培の場合、土中の窒素分が消えない限りは、野菜は

成長し続けることになります。野菜は困ったことに土中に窒素分があればあるほど

吸収してしまう性質を持っているのです。

すると、野菜の中に吸収された窒素分は野菜の体内で生きるエネルギー源として

硝酸態窒素へ転換されます。ここで問題となるのが高窒素土壌で育った野菜は消化

されない硝酸態窒素が野菜の体内に蓄積され続けます。硝酸態窒素は毒素なのです。

化学肥料施肥の歴史が長い欧州において、戦後すぐに「血液が青いブルーベービー」

が生まれたのです。

当時これは大騒ぎになり、硝酸態窒素による農地の汚染を防ぐために有識者達が

低窒素栽培の農法を探し回り、見つけたのが、日本の昔ながらの有機栽培でした。

こうした経緯があり、今から100年ほど前の日本の農業を学んで欧州にて

「オーガニック野菜」が生まれたのです。

 

※硝酸態窒素;野菜に取り込まれた窒素分は硝酸態窒素(毒素)に変化し、イオン

化して野菜に吸収され成長を促す。化学肥料であれ畜糞であれ米糠・油粕であって

も高窒素肥料となる。野菜は土中に窒素分があればあるだけ取り込んでしまう性質

を持っている。有り余った窒素分は野菜や土中に硝酸態窒素で残る。従って、高窒

素栽培の野菜にはこの毒素である硝酸態窒素が多く含まれていることになる。あ

る意味では残存農薬より問題が多いかもしれません

 

皮肉なことに当時、日本では食糧増産を目指し、遅れた日本の農業を近代化させる

ためにアメリカ型の大規模機械化農業を推奨しており、狭い農地をフル回転させて

他品種栽培が主流であった高集約型農業から単一栽培である近代農業(粗放型農業

)へまっしぐらとなっていました。

狭い国土と小規模の農地しか無い日本の農業は元来大規模農業には不適であり、

アメリカとの農産物価格差が数倍ある中では、むしろ高品質農産物で対抗すべき

でした。

日本の農業政策は農協頼みとなり、衰退していく日本の農業に何ら具体的な改善策

を打ち出せておりません。その農協の全国組織では、組織が膨らみその組織を維持

するために金融業に精を出し、本来、農業者を助けて農業振興を行うべき農協の姿

とは遠く離れております。

農政=農協という構図は、国の規制だらけとなっており、自由な農業を阻害し、

農業者の自立を押さえ込んでおり、農協に属さないと、国の支援は実質ゼロとな

ります。メディアも農政・農協に忖度しており、こうした農業の実態は報道され

ません。

 

他方、欧州のオーガニック規程を真似て国民保護という名目で「有機JAS法」を

制定し、奨励政策では無く「規制」に乗り出しました。様々な方法で古来からの

有機野菜を復活させようとしてきた日本の有機農家は有機野菜を名乗ることも出来

ず、ほぼ壊滅しました。

窮屈で日本の気候にそぐわないこの有機JAS野菜は、余りにも実効性が乏しく、

信頼性や信憑性が薄いと言う事で欧州のオーガニック野菜の認証を得られていま

せん。

f:id:sato-shizen-nouen:20211015201236j:plain

さらに課題となるのが膨大な手間の掛かる除草作業です。日本の高温多湿な風土

では雑草除去作業に時間を費やされるため、恒常的に除草剤を使っている農家が

ほとんどです。

当農園は草を抑えるための黒マルチ(地表面を黒いビニールで覆い、穴を開けて

そこに野菜を植える)は使いません。黒マルチは科学的には呼吸しているのです

が、自然とのやりとりはし難い。ハウス栽培に近いものがあり、温室栽培に似て

おります。

そのため、例えば、当農園では人参の草取りは最低三回は行います。

高窒素栽培による硝酸態窒素・農薬・除草剤などにより、日本の農業もアメリ

並みに持続不能な粗放農業へと変わってしまいました。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211015201746j:plain

  むかし野菜で採れた自然栽培の穀類の使った惣菜・お菓子の販売風景

             (農園マルシェにて)

 

むかし野菜の四季ーPART2

2021.10.8(金)晴れ、最高温度31度、最低温度17度

f:id:sato-shizen-nouen:20211008214549j:plain

                  白長茄子

 

相変わらず太陽の日差しは強く、連日季節外れの猛暑が続いており雨も降らない。

そんな中、茄子類は流石に秋の訪れを感じているのか、成長が遅く秋茄子の風情が

漂っており、終わりが近づいている。

f:id:sato-shizen-nouen:20211008215207j:plain

         秋のズッキーニと胡瓜、右隣は黒大豆

 

この季節は秋野菜への繋ぎの時季に当たり、本格的な秋野菜となるまで、夏野菜を

植えます。生育期間は短く中秋の季節までです。黒大豆は枝豆にします。

 

 

むかし野菜の四季ーPART2

「農法の分類」

当農園のお試しセットを申し込まれるお客様から有機野菜と表示した野菜を取って

はみたものの、見た目がきれいで形が揃っており、果たして安全なのか、

どのような農法なのか、その見極めがわからない、と言う質問が多い。

そんなお客様に当農園の野菜を送ると「そうです。こんな野菜を探していたのです」

と、まだ箱を開けたばかりなのにメールが入る。

確かに農業現場から見ても有機JAS法が制定される以前の有機野菜生産農家のほう

が分かり易く生産者はそれぞれのプライドを持っており安全性や健全性はむしろ

高かったように思える。

そこで、消費者も含めてこれから新たに農業を行おうと思っておられる方にとっ

ては、現在行われている農法の大まかな分類も必要でしょう。

f:id:sato-shizen-nouen:20211008221014j:plain

              農園マルシェの風景

 

慣行農業・・化学肥料・農薬・除草剤などを使った近代農業、ほとんどが農協など

を通してスーパーなどで売られている。マーケットの98%以上がこの野菜です。

低農薬などと表現している慣行農業もありますが、どのような農薬をどの程度使用

しているのか、実に曖昧です。通常マーケットに出ている野菜は虫食い一つあって

もいけませんので最低でも一週間に一回程度の農薬(種類によっては危険度が高い)

は使用しておりますが、これも低農薬の部類に入っているようです。

 

非公認の有機野菜・・有機JAS認定を取得せず、独自の有機肥料を使って生協・有機

専門卸を通して販売を行っている。ただ、自称有機野菜を言っている生産者・流通

会社もあり、実態はわかりにくい。

「大地の会」などは会独自の規格を作り消費者へ販売しているケースもあります。

有機JAS認定取得の煩雑さと手間を嫌って独自の有機肥料を使っているようです。

その有機肥料も畜糞・油粕・米糠などが多く、どうしても窒素過多になっています。

藁や草などを使っている堆肥に近いものもありますが、成長が遅いため、窒素分の

多い有機肥料を使いがちです。マーケットの1.5%程度でしょう。

 

有機JAS認定・・有機JAS認定のマークが付いており、有機専門の卸屋を通して販売

している農家が多い。国からの支援も販売機会点も乏しく、煩雑な手続きと現実対

応し難い規約に嫌気がさしているのか、年々減少しているようです。その結果マー

ケットの0.2%程度しかない。

 

自然農農産物・・無肥料・無農薬栽培としており、ほとんどが家庭菜園レベルであ

り、生産量は限られており、不安定でもあり、小さなグループを形成している場合

が多い。その実態はわかりにくい。

ごく一部に焼き畑農業も存在しているが、こちらのほうが自然農と言っても分かり

易い。

 

自然栽培・・窒素分の少ない草木堆肥によって土を育て、土の地力によって農産物

を育てる。

土作りに最低3年を要し、この農法で農産物を生産できるまでには多くの年月が

掛かります。そのため、この無肥料栽培(低窒素栽培)を筆者は当農園の他2軒

しか見ていない。

実際には土作りに10年以上を掛けてフカフカ・サラサラの土に育ててからが美味

しく栄養価の高い野菜ができます。この栽培方法がこの本のテーマです。

この栽培方法をとっている農業者は数えるほどしか居ないでしょう。

自然栽培農産物と言うワードは公認の言葉ではありませんが、自然循環農業のほう

が通りが良いようです。有機野菜とは一線を画しており、「むかし野菜」と言うべ

きかもしれません。

尚、肥料を使わず、草木堆肥しか施肥しない農園は当農園しかないと思います。

f:id:sato-shizen-nouen:20211008221239j:plain

            アフリカ原産の四角豆の花

透き通ったようなブルーの花を咲かせ、農業者の目を楽しませてくれる。

素揚げにして食べてみると、これが美味しい。

むかし野菜では一年を通して端境期を作らず、季節の変わり目にも何かの野菜を

繋いでいく。この四角豆もその一つです。待っている定期購入者(仲間達)の

ためにも「野菜が無いのです」とは決して言えない。

 

農法より農薬の使用のほうがクローズアップされているが、実は、使われている

肥料の方が重要なのです。最も私が言うところの危険な農薬や除草剤を恒常的に

使用している農業は大きな問題なのですが、化学物質が多く含まれた肥料・畜糞

や肥料過多で育った農産物も危険性は同じなのです。

未来へと繋がっていかねばならない「持続可能な農業」には、健全な土壌が大切

です。

そういった視点でこれらの農法を見比べてみると、今までとは異なった問題点や

価値観が見えてきます。

マーケットに存在している農産物の98%は慣行(近代)農法から産出されたも

のです。ただ、他の2%の農産物はマーケットでは見えにくく、自ら探さねば出

会えないものです。

全国の有機農園と称している生産者及びグループのホームページをご覧になって

ください。

そこに記述あるいは、紹介されている肥料及び堆肥がどのようなものなのか、どの

ような作り方をされているのか、詳細な説明が無いようです。土作りを説明して

いるホームページがあれば、分かり易いですね。

無農薬などとうたっているほかは、詳しく紹介されておらず、観念的で曖昧な表現

しか見当たらず、言葉だけが踊っているように見えるものもが多いのも残念です。

 

むかし野菜の四季ーPART2

2021.10.1(金)晴れ、最高温度30度、最低温度18度

f:id:sato-shizen-nouen:20211001192359j:plain

                サラダセットの畝

 

夏野菜が終わりに近づき、ようやく葉野菜の代表であるサラダセット(数種類の

野菜のセット)や小松菜・青梗菜が虫に食われながらも何とか育ってきた。

 

本の出版などがあり、しばらく、お休みしておりましたが、今月から農園日誌

を掲載して参ります。

「失われた先人達の叡智」が自然栽培の入門編でしたが、今回掲載していく

ブログは実践編の出版を念頭に置いた内容となりますので、やや難しくなって

くるかもしれません。よろしくお付き合いください。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211001193226j:plain

           土寄せする前の九条ネギの畝

f:id:sato-shizen-nouen:20211001193333j:plain

           土寄せが完了した九条ネギの畝

 

土寄せは除草作業と根元に酸素を供給してやる作業を兼ねています。

畝下の土をネギの根元に掛けてやり、同時に草を埋め込んでいきます。

そして、この土寄せは深く掘りあげることによってネギの根に酸素を供給して

やることになります。白根の部位が地中に埋まりますと、光合成をするために

さらに上に伸びようとします。

この作業を2~3回繰り返し、太く立派なネギに育ちます。

尚、九条ネギは分厥品種であり、一本のネギが数本に増えていきます。

香りの九条ネギ、味の一本ネギと言われております。

 

1.プロローグ 「日本の農業の歴史」

 

むかしは肥料と言えるものは、草・葉っぱ・柴・人糞くらいしかありませんでした。

それらを混ぜ合わせてほぼ1年間熟れさせた草木堆肥を田畝に施肥しておりました。

それに加えて肥え坪が必ず畑の角にあり、人糞を入れては草や藁などを加え、熟ら

せてから施肥しておりました。子供の頃はよくその肥え坪にはまっていました。

小学校3年生の頃から肥たごを担いで畑に出ておりました。

イカと瓜が好きでそれが食べたい一心でした。私が子供の頃は、スーパーなども

無く、野菜やスイカなどは自分で作るしか無かったのです。

草木堆肥は土作りのための元肥と呼び、肥え坪は野菜を太らせる肥料でしょうか。

 

19世紀、欧州において硫安と言う化学肥料が誕生し、近代の農業は化学肥料に

より野菜を量産する農業へと次第に変わっていきました。農産物の生育期間は

およそ半分に短縮し、生産量は飛躍的に伸びました。

ただ、日本に化学肥料が普及し始めたのは戦後ということになり、戦前の日本は

肥料栽培と言う点においては農業後進国だったわけです。

私がまだ幼少の頃までは、畑の角に草木堆肥場が残っておりましたが、束の間の

記憶にしか残っていませんでした。

日本では戦後、化学肥料肥え坪肥料の併用期間がしばらく続き、昭和30年の

後半になると、肥え坪も無くなり、日本古来からの草木堆肥作りも急速に姿を消

していきました。

化学肥料の普及とともに、農薬の種類も増えていき、化学肥料と農薬の併用を行

う近代農業のことを慣行農業と呼びます。

f:id:sato-shizen-nouen:20211001195927j:plain

             草木堆肥の切り返し作業
ど迫力でしょ。菌類や微生物が増殖中ですからその発酵熱で煙が出ているのです

この草木堆肥の中に無限大の菌類が棲んでいるのです。

コロナの真っ最中ですが、人間も菌類の一つであることをお忘れ無く・・・

 

 

日本が近代農業(慣行農業)に向けて突き進んでいる時期に、欧州では日本の戦

前の農法である有機農業を学び、オーガニック(有機)農業が近代農業のアンチ

テーゼとして行われるようになりました。誠に皮肉な話と言うしかありません。

これに合わせて日本でも有機農業の復活を唱えるグループが出始めました。

その農法は様々でした。牛糞などと藁を混ぜて厩肥を作ったり、海藻や骨粉・

魚腸を米糠に混ぜ込んだり、米糠・油粕を発酵(ぼかし肥料)させたり、様々な

有機農業が生まれていました。その多くは、土作りのための堆肥(元肥)と言う

より有機肥料と呼ばれるものでした。

この有機野菜の時代が約20年間続き、それこそ群雄割拠ともいうべき様々な工夫

がなされていました。

今から15年前頃、日本では有機JAS法なるものが国によって一方的に制定され

有機JASの認定を受けないと有機野菜と言う名称は付けてはならないと言うこと

になり、多くの有機農家は自尊心を傷つけられ、有機JAS認定を拒み、かつ、

高齢化も進み廃業していった有機農家が多かった。

 

有機JAS

有機物ならば何を使っても良い、化学合成された肥料及び農薬は使ってはな

らない」と言うことが基本ではあるが、様々な制約があり毎年煩雑な報告書を

提出し、商品を出荷する際は一枚50銭のシールを貼らねばならない。その規約

にはとても現実的とは言えないようなものもあり、いかにもお役所的なものも多

く、農業現場から見ると首をかしげるような部分も多い。

一番問題となるのは、一度取得してしまえば、事実上立ち入り検査も無く逆に緩

い法規ともなっていることです。

多くの消費者も何が有機栽培なのか分からなくなってしまいます。

その煩雑さと曖昧さから、年々有機JAS認定の農家が減っている。この法規には

規制のみで、有機農家へは国からの保護や支援はほぼ無いに等しいのです。

 

政府の農業軽視の姿勢が顕著になり始めており、農業人口の減少に歯止めがか

からない。

このまま無為無策が続いていると近い将来、深刻な食糧危機がもたらされること

を憂慮しています。

地球温暖化と異常気象により、成長が早く見栄えの良いハウスなどの施設栽培が

主流となり、天候に左右される露地栽培農家は減少の一途にあります。

本来、自然とともにあるべき有機栽培もその主流はハウス栽培へと傾きつつあ

ります。

 

異常気象の連鎖の中で害虫の異常発生が繰り返され、除草剤や危険な種類の農

薬が日常的に使われており、農産物の安全性が脅かされている。

県の広報室からこんなニュースが流される。「農家の皆様、ただいまカメムシ

異常発生しております。一斉に農薬を散布してください」

これは農産物をカメムシ被害から守るためには県全体で一斉に農薬を散布しなけ

れば効果が無いからです。

そんな状況下で、近年は「有機無農薬」という概念が先走り、これは流石に国も

非現実的であるとしてこの用語を使うことを禁止せざるを得なくなったのでしょう。

f:id:sato-shizen-nouen:20211001205437j:plain

       9月末、むかし野菜の邑の農園マルシェの風景

 

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2021.4.28(水)曇り後雨、最高温度20度、最低温度12度

f:id:sato-shizen-nouen:20210428224116j:plain

                じゃがいもの花

 

じゃがいもの花が咲いたら、およそ3週間で収穫の適期となる。

春作では、じゃがいもの種類は多い。男爵・アンデス(赤)・メークイン

シャドークィーン(紫)・北あかり(黄)とそれぞれ用途は違う。

 

(戦後日本の農業推移ーその一)

 

 むかしは肥料と言えるものは、人糞くらいしかありませんでした。それも

そんなに大量に確保することはできません。肥え坪が必ず畑の角にあり、

人糞を入れては草や藁などを加え、熟らせてから施肥しておりました。

それだけでは足らず、草木堆肥を数年掛かりで作り土を育て、むかしの農業は

全て低窒素農業でした。

18世紀、欧州において硫安と言う化学肥料が誕生し、近代の農業は肥料によ

り野菜を育てる農業へと変わっていきました。農産物の生育期間はおよそ半分

に短縮し、生産量は飛躍的に伸びました。

日本に化学肥料が普及し始めたのは、戦後ということになります。

農業後進国だったわけです。

私がまだ幼少の頃までは、畑の角に草木堆肥場が残っておりましたが、束の間

の記憶に過ぎません。

日本では戦後、化学肥料と人糞の併用期間がしばらく続き、昭和30年の後半

になると、肥え坪も無くなり、日本古来からの草木堆肥作りも急速に姿を消し

ていきました。

f:id:sato-shizen-nouen:20210428230807j:plain

           ジャーマンカモミールの花が満開 

3番の畑にはこぼれ種で毎年カモミールの花が咲く。

この時季に合わせて、春、フレッシュハーブティセットをお客様にお届けしている。

 

野菜は本来、味香りや五味や食感などにそれぞれの個性があり、時には微効な

毒素を含んでいます。これは虫などの外敵から身を守るためのものです。

化学肥料や畜糞などの高窒素肥料で育った野菜はこの個性を無くしていきます。

そのため、害虫の絶好の食糧となります。そこで化学肥料の開発が進めば進む

ほど、農薬が不可欠となって行きます。近代農業では化学肥料と農薬がセット

で開発が進められました。

勿論、自然栽培でも害虫の発生は抑えられません。よく自然農であれば害虫は

寄りつかなくなると主張しているサイトがありますが、自然界にそんな農場が

あったら怖いですね。念のために・・・

f:id:sato-shizen-nouen:20210428231521j:plain

3月初旬、種を蒔いたビーツ。5月中旬頃、出荷予定。赤い茎が一際目立つ。

「野菜の血液」と言われ、血管を開き、コレステロールを除去してくれる。

女性にとって血液の循環を良くしてくれる優れものの野菜です。

 

 高窒素栽培で育った野菜は生育期間は短く急成長するため、倒れないように茎

には固い繊維があり、葉肉は薄く、食べると繊維が口に残り歯切れが悪く、

苦い味がします。野菜には炭水化物とデンプンが蓄積され続け、糖質やビタミ

ンへ変換されないまま出荷されます。デンプンは苦いのです。

野菜は基本的には窒素で生長します。地中に窒素分があれば野菜の中に成長

酵素ミトコンドリア)が発生し続けます。そのため、慣行栽培(化学肥料

と農薬)、若しくは畜糞栽培の場合、土中の窒素分が消えない限りは、野菜は

成長し続けることになります。

それらの野菜の中に吸収された窒素分は野菜の体内で硝酸態窒素(毒素)とし

て残ります。野菜は困ったことに土中に窒素分があればあるほど吸収してしま

う性質を持っているのです。

化学肥料施肥の歴史が長い欧州において、戦後すぐに「血液が青いブルーベー

ビー」が生まれたのです。地下水脈が繋がっている欧州では化学肥料によって

地中に硝酸態窒素が染み込み、飲み水が汚染され始めていたのです。

当時これは大騒ぎになり、有識者達が低窒素栽培の農法を探し、見つけたのが

日本の昔ながらの有機栽培でした。

こうした経緯があり、欧州にて「オーガニック野菜」が生まれました。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20210428232332j:plain