農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2019.12.25(水曜日)曇り後雨、最高温度14度、最低温度3度

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               3番の圃場の冬景色

 

今年は観測史上最も温度の高い冬となっているそうだ。

温暖化が進んでいるのでしょうね。

例年の冬は白い世界に変わっているのだが、今年はビニールトンネルの数も少なく、

グリーンが目立つ畑となっている。未だ氷点下を経験していない。

 

2019.12.25 今年の一年間を振り返ってみれば・・

今年も今日で出荷は終わり、農園は10日間ほどの休園に入る。
農作業は、由布市庄内の麦蒔きも終わり、数張りのビニールトンネルを張り終えれば今年最後の仕事は終わる。問題だったのは、草木堆肥が底を付き来年早々の畑作りができないこと。
丁度、原料の草が手に入り難い季節となっており、急遽、周辺の草を刈り、掻き集め、何とか一月中の植え込みのための堆肥は確保した。
長い間行ってきた自然栽培農園の倣い症で、野菜の在庫が無い、売上が減った、などと言うことより、むかし野菜の生命線である草木堆肥が無いことのほうが、より農園主の心を貧乏にさせてくれるから不思議である。

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こちらは5・6番の圃場。来春用の野菜、ここには色彩豊かな蕪類・大根系の野菜が多く植えられている。

定期購入のお客様から今年はブロッコリーが届かない。好きなので植えてください、とのメールが届いた。植えているのですが、育っていないのです。一見順調な農園風景に見えますが、実は、今年の異常気象で、野菜の歯車が狂っているのか、株は大きくなっているのですが、ブロッコリーの実の成長が遅れているのです。

宅配による定期購入のお客様の場合は、お任せメニューであるため、野菜80%、漬物・味噌・穀類セット(麦ご飯・ブレンド粉・黄な粉など)15%、干物・果物・その他加工品5%と言った構成比率である。
これに対して、今年から始めた農園マルシェ(直販所)に訪れるお客様のお買い上げ頂く構成比率は、野菜45%、穀類15%、菓子類40%となっている。直売では、野菜の購買量が少ないのです。
直売所では、野菜60%、穀類等20%、菓子類20%の販売構成が望ましいのですが・・
関東においても野菜を主とした専門店は、弁当・惣菜・菓子の比率が上がって行き、所謂八百屋さんそのものが立ち行かなくなっている。

一般家庭では、共働き家庭が増えて、中々料理をしなくなっていることも大きな要因の一つではあるが、専業主婦のいるご家庭でも同じような傾向が続いている。
野菜や食材に気を掛けて、家族の健康を考えて良品を選び、家庭料理を重視し、不要な買い物を倹約する賢明な母親像も今では遠い過去のものになっていくのかもしれない。

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当農園では、安全で栄養価の高い野菜を生産している。健全な野菜作りには、手間とコストが掛かるため、一般市場と比較して、1~2割ほど高い。お客様の買い方を見ていると、価格が高いため、野菜を前にして躊躇している姿が垣間見える。
他方では、お菓子類(こちらも手間が掛かってはいるが)にはすーっと手が伸びる。菓子類はほぼ毎回完売状態となっている。ありがたいことではあるが、やや複雑な気持ちになる。

定期購入されておられるお客様へは、隔週配送の場合、野菜だけで14品目程度、漬物味噌・穀類・干物などが2品目程度お送りしている。
初めて定期購入される方の多くは、少量多品目なのが良いと喜ばれているが、中には、野菜が消費できなくなり、中止されたり、月一購入に変更なされる方も少なくはない。
その都度、調理例の提言や形にこだわらず野菜を使いまわすことをお勧めしてはいる。
唯、日本人の食生活は、野菜をほとんど使っていないのだな!と実感させられることが多い。
10年以上ご継続されておられる方も多く、その方々は、総じて野菜が好き、と言う訳ではなく、料理を楽しんでおられる方ではないかと推察される。野菜が美味しいと食卓が楽しくなり、家族だんらんが生まれる。それを願いながら農園から産出される多種類の野菜を組み合わせてお送りしている。

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ネット記事を見ていたら、「安倍政権が切り捨てる日本の食と農。日本だけが輸入する危険な食品」「日本の食と農が崩壊する」などのニュースが飛び込んできた。
これだけ、本音と建て前が分離している政権も珍しい。「日本の農業は守る」と言う言葉の裏には、すでに経済産業省が進める自動車・鉄鋼・電力などの業界優先の政策が打ち出されている。
その輸出を引き替えにして農産物輸入関税を大幅に引き下げ、農産物自由化を進めている。先ずは酪農家にしわ寄せが行っている。牛肉の食糧自給率はすでに36%、豚肉は48%まで低下。
牛乳については北海道の酪農農家は壊滅状態に追い込まれている。
欧州・アメリカなどでは、農業(特に露地栽培や酪農)には手厚い補助金(ほぼ生産額と同額100%の補助)が出されている。国内の食糧確保と国土保全のため、安全政策としての補助金の姿がある。
日本では、補助金内容に制約が多過ぎて、偏り、しかもわずか20~30%程度に過ぎない。日本では農業政策も相も変わらず「助けてやっている」と言う考え方である。これでは、欧米と農産物の価格競争をしても勝てるわけは無い。実にアンフェアーである。ちなみに当農園は農協出荷はしないため、国から1円の補助金ももらっていない。

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自然栽培による大豆の圃場。枯れ葉剤である除草剤を使わないため、草に覆われ、収量は慣行栽培(化学肥料・除草剤使用)の1/3以下となる。それだけに自然栽培の大豆や穀類は単価も高くそれだけ貴重品なのです。

アメリカへの関税引き下げによって2035年には牛肉の食糧自給率は10%以下に、牛乳は日本から消えていく。(当然に国産乳製品もです)
穀類・果実類が次に来る。遺伝子組み換えや成長ホルモン剤・ゲノム編集作物の解禁が進むであろう。
2019年、すでに食品にゲノム編集食品の表示義務も無くなりました。アメリカでも危険と言われ一部販売を自粛している発がん性の極めて高い除草剤成分「グリホサート」や成長ホルモン剤の使用表示もしなくて良くなっております。
日本の食の安全神話はすでに無いことは前回もお伝えしました。唯、それらのことに関心を示そうとしない消費者の意識はどうしたものか?日本全体がモルモット化しようとしているのにです。

欧州では、1989年から成長ホルモンを使用したアメリカ産の牛肉を輸入禁止にしています。中国もロシアもです。

安全・健全・品質には、コストがかかると言うことを忘れてはいけません。我々がすべきことは、安全で安心なものを作ってくれる生産者とそれを支える消費者が手を結ぶことではないでしょうか。
欧州のスイスでは、1ケ80円の卵のほうが1ケ50円の卵より売れているそうです。
1ケ50円の卵は生産現場も分からない輸入品だからです。

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むかし野菜には、5人の若いスタッフがそれぞれ独立農園主として、共同作業を行いながら働いている。健全な食作りを目指して通常の農業と比較してかなり過酷な労働を休みも無く行っている。

彼らの支えは、皆様の健全な食を支えているという自負心のみです。

 

今年の一年間は、送料一斉値上げと約6か月間のホームページ閉鎖(アクシデント)によって、お客様が減少し、苦しい一年間でした。
家計が苦しく定期購入を泣く泣く断念しなければならないと言うメールが寄せられる際は、こちらも辛くなってしまう。送料の大幅値上げには参りました。
それでもむかし野菜を慈しんで頂いたお客様にはこのようにお伝えしております。
エンゲル係数がどうのと言う前に、健全な食を切り詰めるより、無駄な費消を抑える努力をなされたほうが良いと思います。ご家族のご自身の健康は決してお金では贖えないものですよ。と・・・

果たして来年はどのような年になるのか?各国が自国主義に偏り始め、権力が集中してしまっている。政治や行政に、腐臭が漂っている。権力者は自分を律する事を知らない。国民のためと言う言葉がいかにも軽く空しく響く。取り巻きは権力者に忖度し、物事が歪められていく。
それが社会にも拡がり、権力者への忖度が会社という狭い世界で蔓延しており、権力者の監視の役割を担うべき報道も真実を避けて行こうとしている。

自己に籠もり、他を思いやらず寛容性を失い、政治や社会には無関心を装う。負の連鎖が続いている。
まるで、第二次世界大戦前夜のような風習が拡がっていく。

一人一人が自立し、未来のある子供達の将来に思いを馳せることが大切なのでは無いでしょうか。
そうであれば、他を思いやり、政治社会に無関心ではおれないはずなのだが・・・

次週は、農園日誌はお休みを頂きます。
来年は、皆様にとって良き年となるようにお祈りしております。

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