農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2019.12.11(水曜日)曇り、 最高温度15度、最低温度6度

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                 大豆の収穫風景

 

雑草に覆われているため、草刈り機で大豆と草を刈り取り、大豆だけを全員で拾い集め

脱穀機に掛ける。

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慣行農業(除草剤・化学肥料・農薬使用)ならば、一反に付き3~4袋(一袋30kg

採れるものが、その半分1.5袋程度しか採れない。雑草に負けてしまうのです。

自然栽培と簡単に言うけれど、収量は少なく、リスクと労力の塊となる。

 

 

2019.12.11  「麦物語」-1


今年も残りわずか。草木堆肥によって育てた約一町二反(3,600坪)の穀類畑には、大豆が「ここよ」と言っているかのように雑草に埋もれてわずかに顔を出している。
枝や葉っぱも程良く枯れて小さな実が今にもこぼれそうに見える。
先ずは、雑草にも負けず育ってくれた愛しい大豆を収穫してやらねばならない。
慣行栽培と違って、化学肥料はおろか、除草剤・農薬も一切使ってはいないため、雑草の勢いが強い。
しかも、面積が広く除草作業は難航する。収量は慣行栽培のほぼ半分程になる。
おそらくは、草木堆肥施肥、除草剤・農薬を使わない穀類生産は当農園だけかもしれない。それほどに貴重な自然栽培大豆であり、麦です。

 

※小麦アレルギーは、ハイグルテン使用に品種改良を繰り返したことが大きな要因ではあるが、農園主は、穀類生産には欠かせないこの除草剤の慢性的な使用も大きな要因では無いかと疑っている。
その意味では、大豆アレルギーも全く同じである。

 

収穫後は、性能の悪い色彩選別器で選り分け、その後手作業(目視)でさらに選別する。
来年初め頃からは、これも平野さんの自然栽培のお米を蒸して、米麹を作る。3日ほどして、麹の花が咲いたら、今度は大豆を蒸して、海の塩を使って味噌を仕込まねばならない。
原料全てが自然栽培と言う味噌も商業的生産では、全国でも当農園しか無いと思われる。
嫌みの無い深い味わいが、全てのお客様の支持を得ている。大豆が自然栽培だけに多くは採れないため、現状では、一回当たり、300gしか送れない(年に6回が限度)。
今年は面積を広げ、お一人様、500gはお送りできるかもしれない。

 

最近、ある統計データが発表された。日本人は癌による死亡が多いとのこと。特に朝食メニューの味噌汁・漬物・干物が癌多発の要因では無いかと言う記述があった。つまりは、塩分過多となっているためであると結論付けていた。
とんでもない推論であり、今時朝食に絵に描いたような味噌汁・漬物・干物の朝食を毎日摂っておられる人はそんなに多いわけでは無い。それでも癌発生が多いのには、他に別の要因があるはずである。
日本ほど、食品添加物に溢れた国は無い。約3,800種類の食品添加物が国によって認められている。米国の二倍強となっている。さらには、お米を始め、穀類栽培に慣行的に使われ続けている除草剤も実に怪しい。むしろこれら生産・加工の両面からの化学物質使用が癌発生の要因として疑っているのは、私だけだろうか・・・

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大豆を収穫し終えた暮れなずむ穀類畑に、草木堆肥を撒いている。煙は堆肥の発酵熱です。この時季、使用量が増えるため、草木堆肥を作りこなさないため、作ったら1~2ヶ月内に使ってしまう。堆肥を撒くと一緒に、苦土石灰・焼き灰・蛎殻も撒く。

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ラクターで耕耘しながら、麦の畝幅に揃え、同時に麦の種を蒔く。

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種を蒔きながら、管理機で、土寄せを行う。

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翌日の夕方、ようやく一枚の麦の圃場が完成した。来年の1月、芽を吹き、麦踏み、さらに除草のため、管理機で土寄せを行う。

 

そのことはさておいて、大豆の収穫を終えた圃場に、早速に堆肥を入れて麦作りの準備をしなければならない。できれば年内に中力小麦・裸麦・古代もち麦の3種類の麦蒔き作業を終えたい。
これは女性陣も含め農園スタッフ全員での作業となり、年末まで、野菜の生産管理もあるため、この麦作りに忙殺される。
これらの穀類は、主に加工品となって、定期購入のお客様の元へ届けられるか、農園マルシェに来て頂くお客様にお買い上げ頂くことになる。

中力小麦は筑後イズミと言う九州での気候適性が高い品種であり、味も良く、なかなかの良品である。
裸麦は大麦とは異なり、収穫脱穀の際に、ほとんどの殻は飛ばされ、玄麦状態となる。
このいずれも、目安では50%精麦としており、栄養価を大きく損なわないようにビタミンB類をかなり残している。そのため、真っ白にはならない。その分、味香り・栄養価ともに高い。
古代もち麦は、当初、1リットルを分けてもらい、3年がかりで量を増やしていった。
この古代麦は、弥富麦と言って、日本古来から作られていた原始麦であり、味香りが特に高く、おそらくは、小麦アレルギー対策としては相当に有効であると考えた。
そのため、実験として、小麦アレルギーに子供さん達に加工品(野菜饅頭・やせうま・石垣餅・パンなど)を作って、試食してもらった。今の処、約1名の子供さんに少しだけアレルギー反応が出た。
今では、その子供さんもこの古代麦ブレンドだけは、食べられるようになった。

 

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味噌を仕込み、約一年醸造発酵させ、開封する際、わずかばかり緊張が走る。

黴や悪性菌が出ていないか、心配していたが、まろやかな美味しい味噌が今年も出来ていた。ホッとする。

 

(これらの穀類を使った加工品)

無添加醸造味噌 → 大豆(50%) : 自然農米(50%) & 海塩
原料全てが自然栽培と言うものは市場には無く、人気NO1の加工品となっている。

自家焙煎黄な粉 → 大豆100%
自家焙煎の黄な粉は、出荷直前の週に焙煎し、味良く、香り高い大豆を感じる一品となっている。

蒸し大豆    → 大豆100% 竈で蒸し上げる
蒸し大豆は竈で大量に蒸し上げるため、味わい深く、特に子供さんに高い支持を得ている。

麦ご飯セット  → 裸麦(90%) : 弥富もち麦(20%)
五穀米などと違って、麦ご飯セットは、ご飯の味を一流に押し上げてくれる。

自家焙煎麦茶  → 裸麦100%
麦茶はむかしの農家しか知らない本物の麦茶になっており、冷・温両方で楽しめる

ブレンド粉   → 小麦粉(90%) : 弥富麦(10%)
アレルギーにも対応可能であり、むかし野菜の邑での直販所のお菓子作りには不可欠となっている。
ブレンドの率は、試行錯誤の上、ようやく落ち着き、このようになった。

今では、これら穀類加工品は、農園の一つの顔として定着し始めている。

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麦ご飯セット; 裸麦8:弥富もち麦2のブレンド。(紫がかった色が古代麦)

この麦ご飯セットでアレルギーが出たと言う例は今まで無かった。

大変に失礼な言い方ですが、そんなに有名な銘柄米でなくとも、この麦セットを加え、炊飯することによって、一流の味香り・旨みがご飯から漂ってくる。

 

但、ブレンド粉については、むかしおやつ・焼き菓子・饅頭・お焼き・ケーキ・パン・コロッケなど、幅広く商品開発を進めているが、グルテンが少なく、ベーキングパウダーも使わないために、所謂市販のふわふわ状態にはならない。この古代麦がくせ者であり、纏まりが悪く伸び難く水分量の調整が難しく、今でも試行錯誤の繰り返しである。それでもこの深い麦の味香りは何としてでも市場に出したい。
これについては、次回の麦物語-2でお伝え致します。

農園が目指している「健全で健康的な食作り」のテーマはかなりハードルが高いのが実情である。
唯、この麦物語は、自然素材の持つ素朴さと深い味わい、そしてやさしさについては、かなり高いレベルに近づいていることは間違いが無い。
これは大量生産では無く、都度製造する事の出来る小規模生産であるからできるのです。
最もそれだけ手間は掛かることになるのですが・・・

かっては、これら穀類の粉は、石垣餅・流し焼き(クレープのようなもの)・やせうまなどの「むかしおやつ」として、おばあちゃん、そして、お母さんの味の代名詞になっていた。
今では、無添加健康食品とでも呼ぶのかもしれないが、そんなものでは無い素朴さと美味しさがある。

 

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春4月頃、一斉に麦の穂が出てくる。この穂を見るとほっとする。と同時に何故か心が豊かになる。

命の糧ですね。農耕民族の血なのでしょうか。