農園日誌Ⅲ-むかし野菜の四季

2019.12.18(水曜日)曇り、最高温度18度、最低温度11度

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          弥富ブレンド粉で焼いたパウンドケーキ

 

 「麦に味香りがある」このことに皆様は驚かないでしょうか?

農園主は驚きました。去年のことですが、草木堆肥歴4年目の穀類の圃場から採れた麦を食べてみました。最初は弥富ブレンド粉(筑後いずみ小麦と弥富もち麦)をだんご汁にして食べた際、もともちした食感の他に、口の中に広がる麦の香り、そしてその後に来る麦の味にびっくりしました。

むかし農法で栽培した麦は美味しいのです。むかしの人達はこれを食べていたんだな!と実感した瞬間でした。

 

 「麦物語」-2

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今週から麦蒔きが始まった。去年と同じく小麦・裸麦・弥富もち麦(古代麦)の三種である。
今の課題は、大豆・麦類・とうもろこしなどの自然栽培雑穀類による加工品の商品開発、そして、消費者への紹介をしながらの販売活動であり、ブレンド粉を使ったむかしおやつ作りの普及活動である。
何故自然栽培の穀類にこだわっているかというと、今の穀類は、除草剤が恒例化しており、品種改良が進み過ぎて、あるいは、輸入穀類はポストハーベストの問題が大きいなど、本来は命を繋ぐ筈の「糧」となる穀類が健全性からは程遠い存在になりつつからです。むかし野菜としては、野菜・穀類・加工品の三つを食の柱として考えて行こうとしている。

現代病(アレルギー・癌・アトピー等)への対策として、草木堆肥を使って、除草剤を排して5年掛かりで土作りをしてきた圃場での穀類生産(自然栽培)がようやく軌道に乗りつつある。

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加工品の開発に当たって、折角自然素栽培の原料ができたわけだから、その素材を活かしながら危険と言われている化学物質の排除を考えざるを得ない。
加工品製作に、ベーキングパウダーなどの化学合成添加物の塊を加えたら意味が無い。

グルテン含有量の少ない中力小麦の半全粒粉と古代麦の全粒粉の素材は、ドライイーストでパンを焼いても、中々に膨らんでくれない。
商品開発の方向性として、中力小麦粉と弥富麦の粉のブレンドを行った。
当初、小麦粉8:古代麦2の割合で粉にしてみたが、伸びず纏まらずで失敗。
それではと言うことで、小麦粉9:古代麦1の割合でブレンドし、試作を繰り返した結果、ようやく何とかやや硬く食べ難さはあるものの、良い結果が出せた。

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それでもイメージしているパン他の商品開発ができずに悩んでいたら、うちのお客様であるNご姉妹がこれらの素材に興味を持って頂き、パン作りにご協力を頂くことになった。イースト菌の代わりに天然酵母を開発し、小麦粉を膨らませるために、古代麦から起こした天然酵母を元種に使用する事にしてみた。

※この弥富もち麦(古代麦)は、味香りが強烈であるなど個性が強い。その反面、グルテンはほとんど無く、膨らまず、伸びが悪く、纏まりにくいなどの難点がある。
唯、この品種改良を全く行われていない麦は、グルテンフリーと言うだけでは無く、ハイグルテンの優性遺伝子とは真逆にむしろ劣性遺伝子(抗体反応を抑える)を多く持っていると考えられる。
人間の麦に対する抗体反応を抑える役割を担わせようと考えた訳です。勿論、麦アレルギー症状を発症させないためです。この試み(使用実験)は未だ改良中ではあるが、一応の成功を収めている。

※抗体の異常反応がアレルギーであり、ハイグルテン増加のための無理な品種改良の結果、麦アレルギーを引き起こしたわけです。人の体(抗体)は異物が入ったと感じて排除に乗り出す作用がアレルギー反応と考えられます。現在の科学では、このことの解明や明確な解決策を未だ見いだしておりません。

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        コロッケに使う自家製パン粉(ブレンド粉使用)

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ここから、商品開発が次第に加速し始めて、おいもだんだん(石垣餅)・やせうま・クレープが商品として店頭に並び始め、パウンドケーキ・焼き菓子・ドーナツ・クッキー・ビスケット、そして、ハードパン等を製作した。アレルギー対応も考慮して、卵・ベーキングパウダー(亜鉛化合物)を排除させるという徹底ぶりであった。
次に考えたのが、消費者には馴染みのある日常的に食卓に並べられるコロッケである。
旨みを引き出すために、玉葱・葱・セロリなどを通常より倍以上加えた。
これもパン粉を使うため、アレルギー対策として市販のパン粉を避けて、ブレンド粉を使用したハード系パンを焼き、それを砕いてパン粉とした。実に手間のかかる作業行程となった。
販売価格は「農園の売り」の商品にこだわり、1ケ100円とした。原価は加工手間を除いても50%を越していた。完全な赤字となる。

今年、春頃から始めたささやかな農園マルシェの商品棚も、菓子類・コロッケなどが加わり、随分と賑やかになってきた。
女性陣の商品作りの奮闘と男性陣のビラ配りなどにより、徐々に周辺のお客様にも知られるようになってきており、マルシェに訪れて頂くお客様も新規客50%、お馴染み様50%と半ばするようになってきた。
水曜日は近在の方が多く常連さんで支えられ野菜中心に売れており、日曜日は新規客が多く、比較的遠方の方も混じり、加工品中心に売れている。
野菜饅頭は今では農園の定番商品として定着しており、ケーキ類は完売状態、コロッケは10ケ・20ケと注文が入り、お客様もそれが目当てで訪れてくれる方もいるほどになっている。
農園主としては、喜んで良いのか、憂えて良いのか・・・うちは野菜屋さんなのにと、複雑な心境ではあるのだが・・・

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そうした中、課題となっているのが、ベーキングパウダー(膨らし粉)も使わず、グルテンの少ない麦を使い、アレルギー対応など、健全な食の在り方をご提案しているのだが、何分にも生地は硬く、出来上がった商品は歯ごたえがあるものの、一般商品とは距離がある。
直売所に訪れる消費者の方には、なじみの薄い、と言うか、今ではマーケットを席巻しているふわふわとした食感とは程遠い特定商品群とならざるを得ない。
農園の商品コンセプト(健全な食の提案)を守りながら、如何に一般消費者に近づけていくか、あるいは、
あくまでも距離を置いたものとしていくか?大きな課題となっている。
来年は、この課題と向き合う一年となりそうだ。

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別府の保育園にて、父兄会などの催し物がある日、むかし野菜のスタッフ一同がやせうまなどをその場で作り、無料試食会の一コマ。当日は、農園人気の野菜饅頭をお母さん達の手によって販売された。

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この保育園に通っておられる子供さんの母親が、農園の定期購入のお客様であり、その子供さんにこの野菜饅頭を食べさせたところ、小麦アレルギーを持つこのお子さんに何らのアレルギー症状も発症しなかった。

それが契機でこのイベントへの参加となった。