農園日誌ー徒然なるままに

29.2.1(水曜日)晴れ時々曇り、最高温度10度、最低温度2度

イメージ 1
       寒が一時的に緩み、全てのトンネルを剥ぐ(七番の畑の風景)

 久しぶりに無事に育っている野菜の顔を眺めることになった。
雨が降ってくれれば良かったのだが、お湿り程度に終わった。
それでも一週間ほどは、太陽や風に当たり、野菜はうれしそうにしている。
昨日からの寒の訪れに今はもう閉じている。
これからの時季はトンネルの開け閉めに多くの労力をかけることになる。三寒四温
に、気が抜けない管理作業が続く。

野菜とお話が出来てやっと一人前の農人と成れる。
本人の努力次第ではあるが、ほぼ7年間は要する。それだけ、気候の変化が激しく、なおかつ、野菜の生理を熟知していなければならない。

イメージ 2
春・夏野菜の育苗

1月中旬になると、春野菜は勿論のこと、
夏野菜のの種蒔きが
始まる。
発芽してから、およそ
3カ月間、苗育てに要し
気が抜けない育苗管理が続く。
今ではこれは女性チームの仕事となっている


トレイの下には電熱器が入っており、常に乾燥しているため、水遣りやトンネル被覆の開け閉めが毎日続く。
双葉から本葉が出て、ある程度育てば、ポット揚げを行い、電熱器から外し、踏み込み堆肥を作り、その発酵熱を利用して、苗を育てる。

面白いもので、他から購入してきた苗は、母なる土が異なっているため、定植しても
うまくは育ちにくい。自前で育てた苗は母の土と定植する土が同じであるため、元気に育ってくれる。やはり母乳が良いのは子育てとまったく同じである。

イメージ 3
一月下旬、今年初めての種蒔きを行う。
寒に当て育てた種子は
丈夫に育ってくれる。
冷蔵庫に入れて置き、
種を蒔くと発芽が良い
のと同じかな。

パオパオ(布)を掛け、
トンネルをする。
二重被覆である。
この時季の種蒔きの
パターンである。

寒のきつい1~2月に種を蒔いておかねば、4月以降の春野菜は無いことになる。
この蒔き時が農人の勘であり、自然の変化、季節の訪れを察知する動物的な感覚が必要となる。これは露地栽培ならではのこと。
研修生達もこれを養うことが必要であり、先輩の二人の農人達は、現在この見極めを勉強中である。

研修生達は、ここで多くの農業を学ぶことになる。

竹を割き、削り、トンネルの支柱を作る。そのことで鋸や鉈の使い方を覚える。
大豆を育て、蒸して味噌を作る。純粋な醗酵味噌作りの工程や手順を覚える。
高菜を収穫し、天日干しにし、塩で揉みこむ。樽に蒔くように並べ、重しをする。
後の作業にはなるが、重しをし続けると薄い高菜になるため、途中で重しを軽くしてやるなど伝統的な無添加の漬物作りを学ぶ。
大豆を煎って黄な粉を作る。煎った大豆を粗びきし、トウミで殻を飛ばし、粉にする。
麦を蒔き、麦踏みをする。丈夫な麦の穂を育てる。

今年は自然農の稲作にチャレンジすることにしている。先生は平野さん。
いつかは田北さんの椎茸栽培も学ばせねばならない。

彼等は、大規模農業やハウス栽培では決して学ぶことのない生きていく術をここで
覚える。毎日の作業が目まぐるしく変化していることだろう。

彼等に聞く。
「どうだ!一人で農業をやっていけるか?」
彼等は答える。
「いや!一人ではとても覚えることはできないし、みんなで一緒に作業を行うからこそ
できるのですね」

イメージ 4
              今年は少し早く蠟梅の花が咲き始めた

彼等はこれから、さらに多くのことを学んでいかねばならない。
栽培計画の立て方、マーケティングのこと、コミュニケーションのこと、経営のこと、

農人にはスーパーマンは要らない。一人で生きていけるほど農業の世界は甘くはない。支え合い、助け合い、補い合い、分け合い、邑を支え合い、そして、しっかりと
自分の足で立ち、生きていく術を身に付けてほしいと願っている。

世界では、自己主義より利己主義・民族主義が台頭し始めている。
やがて大きな嵐が吹き荒れようとしている。
そうした嵐の中、この邑社会は、結いの精神が皆を守ってくれると信じている。