農園日誌日ー品質を追求することは!

28.2.3(水曜日)曇り、最高温度12度、最低温度2度

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                       麦踏みの風景

麦は葉っぱが3枚以上になると、麦踏みを行う。
子供のころにしか経験がない。他のスタッフ達は初めての経験。
蟹股になり、丹念に麦を倒していく。外から見ると随分と不格好な姿。
二反ほど踏むと、汗が噴き出す。この麦は、中力粉となる。
草木堆肥と牡蠣殻や焼き灰を全面に振り、二条に種を蒔く。春になると、畝下に
管理機を入れて、除草を行うという意図。除草剤を使わずに如何に麦の栽培が
できるかの実験となる。
遺伝子組み換えの小麦の種が日本に上陸していないことを農業振興局に確認し、
日本産の種を蒔く。
何でも薄力粉や強力粉は日本には存在していないとのこと。北海道などの寒冷地でしか栽培できないそうだ。となると、九州では日本古来の中力粉しかなくなる。

グルテンの含有量の多い順から強力粉・中力粉・薄力粉となるそうだ。
 追肥をすると、中力粉から強力粉に近づくとのことが分かってきた。
 二反分の小麦を追肥する分としない分に分けて育ててみることにした。
 果たしてどのようになることか、楽しみやら、不安やらが入り混じる。

8月頃に製粉して様々な用途に試してみようと思う。それから、皆様に少量分、
お配りしてみることにしている。

イメージ 2大寒波が去り、雨が
降るため、トンネルを
剥ぐり、雨に打たせたり
寒に当てたりして、
野菜を締める。
伸びきってひ弱になるのを防ぐ作業。
みるみる減っていく野菜と成長が遅い冬野菜にやきもきの毎日。
剥ぐってみて初めて
野菜が寒に痛めつけられているのが分かる。


有機野菜というより、自然農に近い葉っぱや草を使用した循環農法を始めて14年目を迎え、分かってきたことがある。
消費者が概念として捉えている有機野菜・自然農の農産物と、農業現場で自然循環農法により実際に育つ野菜は、まったくの異次元の農産物であるということ。

自分で自然野菜を育てたことのある人であれば、低窒素栽培で、虫害を受けて、
あるいは、自然環境(露地栽培)の洗礼を受けた野菜達は、決して均一には育たず
無傷でもいられないことは分かるであろうし、収穫量も少なく、愛おしく感じる筈。

しかしながら、有機市場(専門の通販)やスーパーなどの野菜達は傷もなく、均一な大きさのものが並んでいる。
多くの消費者は、これらの野菜を見慣れており、立派な野菜の価値観が形成されていく。また、野菜への愛着もこだわりもさほどには感じず、商品としての、あるいは、食べなければいけないものとしての認識で買われているのが普通であろう。
そのために、味付けに工夫を凝らして、野菜の味というより、調味料の味と言ったほうが正しいような料理が行われている。
飲食店でも野菜を調理する際、切ってから水に晒し、灰汁抜きを行い、様々な調味料により、味を付け直すことが極く一般的に行われている。
極めつけはサラダ野菜に使うドレッシングである。正しく調味料の味しかしない。
確かにそのような野菜は目をつぶっていれば、何を食べているのか分からないほど、食感も感じず、筋っぽく、無味無臭ではあるが・・・

何時の時代から野菜が美味しくなくなってきたのか?
野菜が嫌いな子供さんが多いのも納得できる。

戦後、国や農協が進めてきた大量生産・農業の近代化・機械化・効率化・単一栽培政策を経て、そして、大量流通及び消費時代を迎えて久しい。
そこでは野菜(農産物)の価値観が規格(均一・均質)に変じており、質(栄養価・
美味しさ)ではなくなってきた。
それに慣らされてきた時代が長く続いてきたため、消費者が本来は持っていなければならなかった美味しさを見極めるだけの知識や舌(感性)が薄くなってきたように思える。

最近のお客様から頂く感想は、「美味しいです」が最も多い。
数年前、当農園のお客様が120余名(現在は240余名)の時には、こちらが唸るような感想が多かったように記憶している。
例えば、こうだ。

「包丁の入りが違う。まるで料理人になったみたい」
これは筋を感じない歯触りの良さ、(食感)を表現している。

「野菜を開いてみたら、今までになくきれいで形が良い。立派に育ったんですね」
この時季は晩春であり、虫食いの痕も多く、見た目は悪い。この方は、今まで有機
通販で様々な野菜を取っていたが、ふと、有機野菜に疑問を感じ出して、当農園を最後と思い、申込された。

「野菜ってこんなに味香りがみな違うんですね。びっくりしました」
この方は、これ以降は、調味料は使用しなくなり、手抜き料理ができると喜んでおられます。

「この野菜達、甘いというより、旨いんです。なんてやさしい味なんでしょうね」
この回答にはこちらこそびっくり。農園主が数年かけてやさしい味のする野菜なんだと認識したことを、只の一回のテスティングで言い当てられました。

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ハウスの中での味噌
作り作業。
これも今年で最後に、
夏には加工場が出来上がり、そこでの加工品作りとなる。
現在、次郎さんが
米麹を作っている。
来年は麹部屋も完成し
少しは味噌作りも
楽になる。
今年の初秋頃から
味噌の出荷が始まる。

※米麹は、温度・湿度管理が難しく、発酵により温度が上がり過ぎると甘酒になり、
  夜中でも温度の上がり過ぎを調整しなければならず、気が抜けない。
  他にも様々なハウツウが必要な作業となる。

畑の土は数年前よりは確実に腐葉土化や団粒構造化は進んでいる。
野菜は益々、味香り・食感・旨味は増してきている。
新たに私たちの仲間に加わったお客様たちも、むかし野菜を食べ続けていけばきっと既成の概念から解き放たれ、感性が磨かれていくことでしょう。

若い農園スタッフ達も野菜を単なる一商品としでではなく、愛しむべき存在として愛情を注ぐ、つまりは野菜達とお話ができるように早くなってくれることを願う。