農園日誌ー有機野菜とは?

24.10.19(金曜日)晴れ、最高温度22度、最低温度14度
 
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   幼い苗が先日来の雨で一斉に芽吹き、生長を始めた。天高く秋が深まる。
 
右から夏の名残のトマト、まだ実を沢山付けてはいるが、色付きが遅くなり、量が極端に減ってきた。通常は撤去時季ではあるが、多くの子供さん達の要望で未だに残している。ぎりぎりまで頑張らせようと思う。
これは桃太郎と言う一般的市場に出回っているものではなく、瑞栄という昔ながらの
酸味があるトマト。内の子供(孫達)もそうだが、ファンが多い。
 
右から二番目の幼苗は大分高菜、12~2月頃の真冬に漬け込む。春以降に出荷となる。この漬物も隠れファンが多い。私も好きだが、滅多に口には入らない。
 
次はエシャロット、聞き慣れない野菜だろうが、根と一緒に素揚げしたり、ソースに刻んで入れたり、そのまま焼いたりするとかなりな存在感が出る。これも春以降に出荷となる。
 
次は大根と聖護院大根、出荷が待ち遠しい。夏に無理やり種を蒔いても、大根類は
美味しくない。やはり、霜が降りるころからが本格的なシーズンとなる。
 
次はサラダ蕪類、レストランでの人気は根強い。家庭では葉も鍋などに入れられ、実に
重宝する。サラダにすると柔らかく旨みがあり、この酢漬は最高。
 
左の幼苗は植えたばかりの玉葱の苗、今年は25,000本植え込む予定。
例年のことだが、最近は極早稲・早稲・晩生のいずれかが不出来になる気候であり、
玉葱不足になり、頭が痛い。
 
ちなみにこの畝は全て一人で堆肥を振って鍬で畝立てを行っている。我ながらしんどい
この五番の畑(600坪)だけではない。これはほんの一部。後継者育成が急がれる。
 
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四番の畑の秋の風景、
水菜やサラダセット系の野菜
小松菜や青梗菜・大根の一番植え
 
畑の色合いは、グリーンの色の
グラジュエーションでその季節が
分る。冬に近づくとさらにグリーン
が濃くなってくる。自分を寒さから
守ろうとし、葉肉が厚くなるため
食感が柔らかくシューシー 
今が一番虫の活発な時季。あわれなすだれ状態
 
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三番の畑、サラダセット野菜の畝
今季はすでに三畝蒔いている。
 
三週間間隔で種蒔きをし続ける
当農園の人気定番メニュー。
切らすわけには行かないが、そんなにうまくは繋がってはいかない。
ハウス栽培と違うところで自然は
簡単には読めない。
つねにこちらの予測を上回って
変化してくる。
 
 
有機野菜とは何?)
 
これに関する問い合わせが最近多い。少し深くこの有機野菜に関わってくる消費者や生産者達は、おそらく皆、疑問に思ってくるのではないだろうか?
次によく来る質問が無農薬野菜について、の問い合わせ。
 
消費者は農薬の害のことは皆語りますが、実の処、どれだけ農薬をやっているのか、
分らないというのが現状でしょう。誰もそれを確認したわけでも、確認出来る訳でもないですから。
 
最近、大手有機野菜の卸販売(つまりは通販宅配)業者が増えてきております。
そこで販売されている有機野菜(中には有機JAS認定のものも多い)はサイズが揃い、
傷一つ無い、虫食い一つ無いきれいな野菜が多いようです。
さらに有機野菜なのに味がしない、香りが無い、旨くないとの疑問を抱いてしまう。
(そこに疑問を抱いておられる賢明な消費者が最近増えてきております)
 
さる有機農業者の処に行った方が「有機農業をして続けていると土ができてきて、虫がいなくなるのだよ。」と説明を受けているようです。
ある方は私に、「佐藤さんの処も虫が居ないのでしょ」と、又ある人は「そんなことを言っているが、そんなわけはないのでは」と私に聞いてくる。
 
ある生産者は有機野菜は農薬をやれないでしょう。それでは野菜ができない。皆全滅してしまう。有機野菜を栽培しても消費者はこんな虫食い!と言って買ってもらえない。
こんなに苦労して売る先もない有機野菜生産なんて!だから私は止めました。
 
 
他所の有機野菜生産者のことは置いといて、私の体験談をお話しましょう。
 
有機農産物とは何か?
国が定めている定義では、「有機物のみ使用し、化学合成した肥料や農薬を使わない
農業生産」となっています。これでは何のことか?
 
二十数年かけて実践し自然から学んだことを踏まえて、私なりの解釈をしてみます。
 
現在人は文明が進み、人工的に作られた物質に取り囲まれて暮らしております。
確かに便利になり、暮らしぶりは随分と楽になり、一見快適な生活のように見えます。
但し、人間も自然界の一つの生き物に過ぎません。特に食の部分では、進みすぎた
文明は時として、人を追い込んでいきます。
最近まともに赤ちゃんが産まれ難くなって来た、アトピーも含めてアレルギー体質や
虚弱体質の人が増えてきた。健康はお金では買えない訳で、自然回帰の発想が当然のように出てきた。それがオーガニックという理念であり、価値観です。
 
そこから考えていくと、国の定めた有機農産物の定義はあまりにも大雑把ですね。
そして現実の自然の変化(気候変動)には適応できそうもありません。それはオーガニックという概念も同じです。(これは元々北海道のようにドイツなどの寒冷地で日本の
古来からの農業を学んだもの。虫などは少ない地域でのこと)
 
私は有機農業をすることを目的として農業を始めたわけではありませんでした。
ただ、むかしのように美味しく栄養価の高い野菜を作ろうとしただけです。
最初は畜糞を次には米糠や油粕・骨粉を肥料として使いました。納得のいく味香りがでない。食感も硬く、筋が口に残る。甘みだけで旨みを感じない。
最後に、それらの肥料を一切使わずに、草木とわずかな畜糞(発酵促進材)のみの
所謂、草木堆肥のみの農業に変えました。
野菜生産を始めてから15年間は化学物質も含めて農薬は使わずに、とうがらし・にんにく・酒・木酢などの忌避剤を使用し、後は手で小まめに虫を捕殺しておりました。
 
劇的に変わったのは、最近の5年間からです。
 
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今まで成功した栽培方法がことごとく
うまくいかなくなりました。
気候変動です。
 
雨季と乾季が交互に訪れ、野菜の成長がうまくいかず、時には全滅し、
虫は異常に発生し、土の中から湧いてきます。それも毎年虫の種類が変わります。それが野菜作りをさらに難しくしていきました。白菜などは二年間満足にできませんでした。
佐藤さんのところは白菜はないのですか?悲しい思いをしました。なにしろ、種を蒔き新芽を吹いて本葉が出始めたら皆消えていくのですから、何回蒔きなおしても同じでした。
  
以下は当農園を訪れる生産者や消費者にお話しておりますが、
自然界(山野)では、子虫・微生物・放線菌などが食物連鎖により、常に浄化する仕組みになっており、異常にある病原菌だけが繁殖しない自然循環機能によって、秩序が
保たれている。
そうであれば、畑の土の中もそのようにできないか、と考え、草木堆肥によって、ミネラルバランスを保ち、常に完熟一歩前の堆肥を入れ続け、自然界に近い草木の有機物を補給し続け、同時に新たな微生物や放線菌も補充し続ける。
虫は6月頃から11月の始め頃まで活発に活動する。その間はまだ抵抗力を持たない赤ちゃん段階の野菜は、瞬間的に効く葉面散布農薬を二三回使用し、守ってやらねば
それこそ芽を吹いた段階で全滅します。
寒くなってくると、虫達はさなぎになって畑の土の中で眠りに入りますし、あるものは葉の裏に卵となって越冬します。(山野ではよくみる光景)
 
私の仲間達には常に厳しく言っておりますが、「光合成分解し難い残留成分の多い農薬の使用は厳禁、土の中の微生物までも殺してしまう土中消毒も厳禁、自然界を壊す
ホルモン資材(生殖機能を奪う)も厳禁、当然にアレルギーのもとになるような化学合成した肥料は当たり前のように厳禁(その中には配合飼料に入っている抗生物質を多く含む鶏糞・豚糞使用も含まれている)
 
抗生物質とはあるカビの種類で、細菌(微生物など)を殺してしまいます
 
無農薬神話ともいうべき有機野菜の定義がこの自然界の中ではいかに難しいかが分って頂けましたか。
要は、真の情報を公開する信頼できる生産者をパートナーとして、持つほうがよっぽど
安心できるのではないでしょうか?・・・