この秋、思うところあり、

23.10.27(木曜日)晴れ、最高温度27度、最低温度12度
 
イメージ 1
                畑一面の緑(じゃがいも畑)
今日5番の畑の作業中、思わず見とれてしまい、きれいだな!と感じる。
生命力に溢れた緑の絨毯は、頭のもやもやを一瞬でも取り払ってくれた。
 
今日は少し、農業以外のことを語りたいと思う。それでもやはりそこに行き付くことに
なるが・・・
 
佐藤自然農園を開いて、もはや8年を過ぎた。
何故、農業を始めたのか?銀行員時代、企業再建に取り組んできたという自負はあり、10数社の再建を果たしたのは事実であり、様々な過去の体験や生き様が
今の自分を支えてくれてもいる!
楽しかったのか?苦しかったのか?只、疲れたという思いはある。
人間は欲のかたまりであり、その欲に苦しめられてきた。エゴと言っても良い。
自分も欲の多い一人だが、母親の薫陶が良かったのか、悪かったのか、金銭欲だけが薄い。
銀行員時代、数人の男と交わってきた。かれらは自負心を持ち、信念と誇りを持っていた。欠点も多く、欲のかたまりでもあったが、決して逃げたりはしなかった。
 
農業を始めた理由は、そこから逃げたかったのではなく、地域を回っていると、
産業もなく、農業しかない地域があまりにも多く、しかも、多くは疲弊し、活力を失いかけている。
農業白書や国の政策や農業の実態を調べれば調べるほど、疲弊するべくして疲弊していることが分かる。農産物価格の内外価格差がひどく、流通システムを見れば、なるほど、農業では飯が食えない仕組みになっている。
そこで、考えた。
もし、農産物を国の考えているような食料としてではなく有機農産物として、一つの商品と考えたら、差別化商品として、有機農産物が商業的に価値を生み出したら、
農業は自立し、再生できるのではないか、そこで集団で取り組んだとしたら流通の壁を乗り越えられるのでないかと考えた。地域ブランドとして・・・
 
イメージ 2
 
 
 
 
落ち野菜に近づいたピーマン
 
この時季のものは、成長に時間を
要し、肉厚でジューシー。
光沢があり、旨みが凝縮している
 
 
 
 
 
イメージ 3
 
パプリカ・セニョリータ
 
涼しさが増すと、色付きが遅くなり
色付くまでに腐ったり、傷んだり
出荷量は激減する。
 
ピーマンと同じく、旨みが濃い。
光沢を増し、レンズを向けると
写されるのを拒むかのように
光を反射する。
これが露地栽培野菜の特徴。
 
 
そう考えた時から、長い永い試行錯誤が始まった。
お陰で、ようやく個人顧客90人、レストラン7先のお客様ができた。
最近台頭し始めている有機専門の大手卸業者が増えている。特に原発ショックの後
急速に有機野菜のニーズが増し、かなり高値で販売されている。
内の野菜の1.5倍ほどの価格で、当農園のお客様が心配してくれる、こんなに安くて良いのですか、と・・・
私はその大手有機専門の業者の扱う有機野菜より数倍も美味しく栄養価が高いと
自負してはいる。
今日、一人のお客様から電話が入る。「その大手販売先の野菜はとにかく値上がりしており、私達では手に届かないし、佐藤さんの野菜の方が数倍美味しい。いつまで
もこの価格を維持して欲しい。そうでないと私達では買えなくなる。他の方達にも
佐藤さんの野菜の話はするのですが、皆、高い野菜や大手の方が信用できると言って、相手にしてくれない」と・・・
私は感謝の言葉とともに、こう言いました。「その方々は多分、自分に自信がないからですよ。そのような人達の事を私はイメージ有機客と呼ぶんですよ。私は自分を信じて、自分の考えで私達の野菜を理解して買っていただける方々がお客様であり、この草木堆肥で出来た栄養価の高い野菜を広くいろんな層の方に買っていただくために、この価格で頑張っているんですよ」と、 ここにも流通の他に、消費者の心理や既成概念の大きな壁が見えたような気がします。
 
イメージ 4
 
 
来週出荷予定の露地栽培の
生バジル。
 
今年は品質がとりわけ良い。
これも久しぶりの秋らしい
気候のせい。
 
整理をしていると、風が逆なのに
バジルの独特の良い香りが
鼻をくすぐる。
 
 
農業が、地域がここまで疲弊し、まったない状況まで追いこまれているにもかかわらず、国も県も市町村などの行政は合いも変わらずのパフォーマンスばかりに力を入れ、何の実績も変化ももたらされていない。
政治家や官僚も、役人も、前例を踏襲し、すべからず事勿れ主義を貫く。
他方では既存の農業者は、農業には諦めの思いが強く、立ち上がる気力も失っている。ここにも事勿れや皆と一緒の横並び主義が全てを占めており、動こうとはしない。
これらが最近の私の頭のもやもやの正体であり、しっかりと、居座っている。
むかし出合った男たちを思い出す。かれらは決して逃げなかった、と・・・
私も逃げなかったし、これからも逃げないと言う自信はあるが、ふと、考えてしまう。
これでは、むかし、私が疲れて去っていった世界(様々な欲がぶつかり合う企業再建の世界)と同じことの繰り返しではないか、と・・・それも私の頭の中のもやもや
の一つになっていることに疲れている自分を見た。
 
今日、畑にとある県議さんが久しぶりに合いに来てくれた。この思いを話してみると
彼女も同じようなもやもやを抱えていることに気がついて思わず苦笑。
 
有機自然農法の世界は自然との折り合いをつけて行く世界であり、厳しくもあるが
やさしさをも与えてくれる野菜達に感謝、そして感謝。