農園日誌ー雨の日の農園体験会

2024.4.21(日)曇りのち雨、最高温度21度、最低温度16度

 

                玉葱の収穫作業

 

久しぶりの農園体験会でありましたが、このところの不安定な気候の中、一旦

中止を連絡していましたが、何とかできそうだと10時からに変更して強行開催。

参加人数はかなり減り10名前後での開催と成りました。

天気が小康状態となっていた10~11時玉葱の収穫体験を行いました。

 

オスの玉葱(中に皮膜が出来ています)を見分けながらみんなで玉葱を引きました。

オスは皆様に持ち帰って頂きました。

早い内なら通常の玉葱と同じように使えます。玉葱ドレッシングにしてもらいます。

 

 

雨が降り出しましたので、育苗はハウス内での作業に切り返えて、草木堆肥降振り

草木灰苦土石灰を振りを実践しました。

何しろ狭いハウス内での作業だけに中々混雑しております。

次は三つ叉鍬で土と堆肥を混ぜ込みます。三つ叉鍬で土を堀り揚げる作業は皆

初めてです。見本を示しながらの作業となり、交代で作業に携わりました。

鍬で畝を揚げ、レイ土のならし作業です。道具の中でも一番難しい作業です。

レイキに振り回されて思うに任せず、苦戦しながらも手直しをしてもらいながら

何とか完了です。

              パプリカの定植

苗の植え込みの基本を教え、どうにか無事に完了です。

最後の仕上げに、竹べらでに苗間に筋を引き、葉野菜の種を蒔きました。

これは狭い家庭菜園の最有効活用です。夏野菜と春野菜が一つの畝に同居します。

ここでも種蒔き(筋蒔き)のお勉強です。

 

自然栽培では除草した草・公園の落ち葉・市販の油粕などを混ぜ込み、足で踏んで

圧を掛けて、水分を加え、厚いビニールなどを掛けて2~3ヶ月掛けて堆肥を

作っておきます。

立派な草木堆肥にはなりませんが、少し熟れてくればそれで良いのです。

これで貴方も立派な自然栽培愛好家です。

数年を掛ければきっと美味しく栄養価の高い健全な野菜が育つ土になっている

ことでしょう。ただ、途中で諦めなければですが・・・

肥料を使わず土を育てる自然栽培は根気が要るのです。

最後は竈で蒸した蒸し野菜とマルシェで買って頂いた野菜饅頭・コロッケなどを

ほおばりながら簡単な農園セミナーを開いて強の体験会は終わりました。

子供さん達もこの蒸し野菜を口いっぱいにしながら完食して頂きました。

 

皆様、子供さん達も含めて楽しそうでした。きっと有意義な一日だったと思います。

子供さん達も数日間はこの農園体験会の話をし続けると確信しております。

 

3.健全な農産物とは? PART1

2024.3.30(土)晴れ、最高温度21度、最低温度14度

             夕日に映えるすももの花

 

3,健全な農産物とは?

―農薬より怖い除草剤・抗生物質・化学物質・硝酸態窒素による土壌複合汚染―

有機農産物は安全?有機無農薬野菜?についてどこまで消費者は知っているので

しょうか?

消費者は農産物の安全性について農薬のことしか言いませんが、農産物の安全性を

阻害している以下のような四つの課題があるのです。

PART6.―残留農薬問題―

「畑に残留する危険な農薬の使用」

それでは危険な農薬について詳しく説明いたします。前項では農業者にとって危険な

農薬(劇薬)の話をしました。これは分解スピードが速く、約1日で光合成分解など

で無害となるように設計されていると説明いたしました。つまりは劇薬は出荷直前に

使わない限りは消費者にとって一番安全な農薬となります。

 農薬は分解スピードが遅い農薬(緩効性農薬)ほど効き目が長く続きます。

普通は10日間ほどその農薬の効能は残ります。繰り返し使っているとそれを

残存農薬と言います。

通常、この緩効性農薬は3~5日間隔で使用されております。特に出荷直前に害虫に

葉などを食い荒らされては流通も消費者も買ってはくれませんので、出荷間際まで使

われることが多い。これが消費者にとっては危険なのです。 

農薬はその後、より農業者の人体に危険性が少なく、出荷直前まで使わなくて済むよ

うにと、散布量を減らしてより効能持続性の高い農薬に改良されたネオニコチノイド(人体に大きな影響を及ぼす可能性が高い)を代表とした浸透性農薬が誕生した。

その農薬は野菜に浸透していき、散布した野菜を食べた虫が死ぬ、あるいは、生殖

能力を失わせるというものです。浸透性農薬は害虫だけでは無く、虫・微生物・

菌類も殺してしまいます。土に潜んで居る害虫(線虫・夜登虫など)を駆除するため、土中消毒と称して使われている浸透性農薬も生態系を破壊します。自然の生態系の

破壊は自然の循環機能・浄化・再生の仕組みまでも壊してしまうことになります。


例えば、線虫が猛威を振るう5~8月頃に蕪類・大根などの表面が真っ白な野菜は

この土中消毒を使っているものが多い。また、地域によって異なりますが、みかんや

とうもろこしなどは芯喰い虫が飛び回り卵を産み付けます。すると出荷直前頃にトウ

モロコシは茎が折れてしまいます。みかんは実の中を食い荒らします。このため、

当農園ではトウモロコシ栽培を断念しました。浸透性農薬を使うしか術が無くなった

からです。

浸透性農薬の代表であるネオニコチノイド系の農薬は何故か日本では使用禁止になっ

ておりません。使用量が少なくて済むからと言ってむしろ国が奨励しているくらいです。残念なことに、この浸透性農薬は農薬使用の70%を超えております。農薬が

浸透した野菜を食べた虫が死ぬ。そして生き残った野菜を人が食べることになる。

誠におかしな話です。ちなみに最近になって有機無農薬と言う表現を国が禁止して

おります。農業生産活動において農薬の使用は避けられなくなってきており、有機

農家ですらやむを得ず虚偽表示をせざるを得なくなったからです。

さらには、有機JAS規定が自然界の変化の実態に合わなくなってきており、ついには、「減農薬野菜」と言うわけの分からない野菜を認めております。

どの農薬をどの程度使っているのが減農薬野菜か消費者の方は分からないですね。

健全な農産物とは?ー残留農薬問題ー

2024.3.8(金)晴れ、最高温度11度、最低温度6度

 

―農薬より怖い除草剤・抗生物質・化学物質・硝酸態窒素による土壌複合汚染―

有機農産物は安全?有機無農薬野菜?についてどこまで消費者は知っているので

しょうか?

消費者は農産物の安全性について農薬のことしか言いませんが、農産物の安全性を

阻害している以下のような四つの課題があるのです。

 

PART5.―残留農薬問題―

「必要悪の農薬」

草木堆肥を使って土を育てる「自然栽培」でも、畑には普通に害虫はおります。

そもそも、野山の土には小動物を頂点にして、もぐら・みみず・小虫・微生物・菌類

・ウィルスなどが棲んでおり、自然の生態系を作り上げている。

そのような野山の土壌に近づけようとして、草木有機物を施肥していますから害虫が

居るのも自然態です。彼らも生きていくためには野菜を食べねばなりません。

そのため、当農園も害虫発生が続く時季、幼苗の段階で害虫を瞬殺する劇薬を2~4

回は使います。

ある程度野菜が大きくなってくると、自力で育ってもらい害虫に負けるな!と激励

して回り、害虫を見つけると捕殺します。農業とは殺生の連続です。


※野菜が持つ害虫からの自己防衛機能

野菜本来の味と香りや微毒は害虫から身を守るために野菜が備えている防衛機能であり、肉厚な葉もその防衛機能の一つです。高窒素栽培では葉は薄く茎は細く味香りが

薄く害虫も食べやすくなります。近代農業(高窒素栽培)では化学肥料と農薬は一つ

のセットであり、近代農業の歴史は窒素肥料と農薬の発明の歴史でもある。

畜糞肥料等の有機栽培も高窒素栽培と言う意味では化学肥料と同じなのです。

 

害虫多発の5月から10月までの期間、ある程度の虫食い痕のある野菜については、

当農園の定期購入のお客様とのコンセンサスは得ておりますが、出荷に耐えられ無い

ほど食い荒らされた野菜達は、害虫多発の時季、一畝全て抄き込むこともしばしばで

あり、自然栽培とはリスクの塊なのです。

 

※農薬の分解(無力化)

農薬は化学合成されたものであり、それを散布する農業者の人体には危険です。

そのため、一部の農薬を除いて必ず分解して無害になるように当初から設計されて

おります。

分解には、光合成分解・水溶性分解・微生物分解・自然分解があり、即効性の劇薬

ほど分解が早くほぼ一日で分解されるように設計されています。

そうで無いとその劇薬を使用した農業者が危険に晒されるからです。

実は消費者に取っては効能が長く続く(つまりは分解速度が遅い)緩効性農薬

あるいは、浸透性農薬のように効能が消え難い農薬が危ないのです。これが残留農薬

問題です。

劇薬は分解速度が速いので、出荷直前に使わない限りは消費者にとっては一番安全な

農薬となります。

私は苗が害虫から自分を守れない幼い間、2~3回その劇薬を葉面散布しております。野菜が自らをある程度守れる大きさになった場合は農薬の使用を極力抑えます。

貴方は生まれたばかりの赤ちゃんを自然界にそのまま放置できますか?

害虫などの害を防ぐ術も無い幼苗も同じなのです。

 

私が有機栽培を始めた頃、有機栽培の先駆けと言われている先達に教えを請いに行ったときの話です。

彼がハウス内のトマトの撤去をしている場面に出くわしました。「佐藤さん、ハウスに入ってはいかんよ。農薬を使ったばかりだから」

「えっ!農薬を使っているのですか?」と尋ねると、「害虫が発生し始めたのでトマ

トの出荷を止め、木の撤去をしているんだ」「劇薬を使い、害虫を瞬殺しておかないと。次の植え付けの際、困るからな」と・・・

有機栽培をしているのに農薬を使うのですか?」と批判がましく質問をすると、

彼はこう言い切った。

有機であろうとなかろうと、害虫は常に発生しており、農薬を使わないと農業は

できん。同じ使うなら農薬の成分が残り続ける緩効性農薬よりは即分解する劇薬で

瞬殺する方が安全というものだ」

その後、同じような意味の質問が消費者から出てくる度にこの話を思い出す。

私も恥ずかしながら、当時は「有機無農薬ですか?」と質問をする消費者と同じでしたから・・・20数年経過した今、彼と同じことをしている自分がここにいます。

現在の農家は出荷する相手が農協や流通であり、消費者では無いのです。流通側は、

一般消費者がお客様ですから当然に見てくれの良い、虫食いのない均一な野菜を農家

には要求します。

そのため、出荷直前であっても防虫のため効き目が長く続く農薬を散布します。

「それはおかしい」と消費者は農家を非難することは出来ません。彼らも生活がかかっているのですから・・・

当農園主は多少見てくれが悪く虫が喰った痕が残っていても、健全性を保つため、

私たちの取り組み方を理解して頂ける消費者への直接販売の途を選んだのです。

私たちも同じ野菜を食べるわけですから生産者が食べたくない野菜は出荷したくない

のです。

3.健全な農産物とは? 

2024,2,21(水)雨、最高温度11度、最低温度6度

3,健全な農産物とは?

―農薬より怖い除草剤・抗生物質・化学物質・硝酸態窒素による土壌複合汚染―

有機農産物は安全?有機無農薬野菜?についてどこまで消費者は知っているので

しょうか?消費者は農産物の安全性について農薬のことしか言いませんが、農産物の

安全性を阻害している以下のような四つの課題があるのです。

 

PART4.「地球温暖化と自然環境の変化による害虫の異常発生」

 農園のメールに時折、「貴農園は有機無農薬野菜ですか?」との問い合わせが舞い

込む。その度に、農薬の話を詳しくして差し上げるのだが、大概の方は「えっ!農薬

を使っているのですか?」と・・・、正直またか!と思ってしまう。

いつの間にか、「有機野菜は無農薬である」と言う間違った概念が定着してしまった。

農業現場で近年起こっている害虫被害の実態を皆様に知っていてもらいたい。

近年になって地球温暖化による異常気象が常態化し始め、害虫の異常発生が続いて

いる。

地方自治体からカメムシやアカダニの異常発生情報が流され、地域の農家に農薬の

散布を要請される。何故なら、一気に撲滅しないとカメムシの繁殖力は強く、その

地域全体に大きな被害がもたらされるからです。

昨年は当農園もピーマン・パプリカ・万願寺とうがらしなど、その80%以上がカメ

ムシ被害に遭い、出荷不能となった。夏の主要な作物が壊滅しました。

 

 

5月頃、巻き始めたキャベツには蝶々が産み落とした卵から孵化した青虫が葉っぱを

食い荒らす。地中からは越冬していた夜登虫が這い上り、キャベツに大穴を開ける。

キャベツは出荷前に腐り始め、葉は簾上に。これでは流石に消費者へは届けられない。

種を蒔き、4日ほどするときれいに新芽が芽吹く。二週間後、本葉が出揃ったころ、

その芯がことごとく食べられている。仕方なく、劇薬で一旦害虫を撲滅して新たに種

を蒔く直す。

シュウ酸と言う微毒性を有するほうれん草も害虫被害から免れない。本来虫も毒を持

つ野菜には近づかない筈であったが、葉っぱを食い荒らした後、その先端で死んで

いる夜登虫の異様な風景に身の毛もよだちます。

臭いの強いニラなどにもアブラ虫が付く。こうなると最早為す術がない。

 

この姿をその質問者に見せてやりたいとの衝動に駆られる。有機無農薬と言う言葉が

独り歩きを始めたものですから、ほとんどの有機農家は、こう答える。「はい!農薬

は全く使用しておりません」と・・・

そう答えないと、その有機農家から野菜を買ってもらう人が居なくなってしまいます。

これが有機JAS認定を取得した農家であっても農薬を使わないと死活問題になります。特に蛹から成虫となった蛾などが飛び回り始める5月中旬頃から11月初旬頃までが

農薬を使用する頻度が上がります。葉っぱなどに産み付けた卵が孵化し、幼虫が

葉っぱを食い荒らすからです。

これが農業現場の実態です。消費者や無農薬野菜とはうんぬんと言っている学者達に

もっと現在の農業現場を知ってもらう必要があります。

消費者や国家の誰が農業者を守ってくれるでしょうか。慣行農業であれ、有機栽培で

あれ、自然栽培であれ、農業者も生きていかねばならないのです。

通常の農家では一ヶ月の間に5~7回ほど農薬を散布します。減農薬栽培でも10日

に一回は散布します。特に出荷直前になると使用頻度は上がってきます。何故なら

虫食い痕のある野菜は消費者が買ってくれないからです。

責められるのは生産者である農家ではありません。流通や消費者達や一部有識者

なのです。

 

むかし野菜の邑でも、こんなメールが飛び込んで来ることもあります。

「こんなにひどい状態の葉物にはお金を払えませんよ。流石にこれはひどいですね」

と写真を添付して送られてきた。確かに葉っぱは虫食いの痕が多く、葉っぱを食い

ちぎられている。

それでもせっかく育った野菜ですから、煮込んでしまえばどうと言うことも無いの

ですが。

お客様の定期購入のお申し込みの際、虫食い痕などのお断りを入れて居たことは

すっかり忘れていらっしゃるようでした。

そこで農園主はこうお返ししました。

「この害虫大量発生時季、出荷できた葉野菜は畝全体の1/3しかないのです。後は

みな鋤き込んでしまいました。

何とか出荷に耐えうるものだけをお送りしたのですが、お支払い頂けないのであれば

やむを得ないですね。この時季は3~4日間隔で農薬を使用すれば良いのですが、

私たちもお客様と同じものを食べますので、農薬の使用はいたしませんでした。

次回からは虫食いの痕の無い野菜をいずれからかお買い求めください」と・・・

このお客様は以降、返信は無いが、未だにご継続頂いております。分かって頂いたと

信じたい。

気持ちは分かるのですが、農業現場の実態を知るべきであり、農薬と害虫のどちらの

方が怖いのでしょうか?と首をかしげてしまう。

美味しい野菜(旬菜)が無くなるーPART7.「密集栽培の勧め」

2024.2.8(木)曇り、最高温度10度、最低温度4度

 

2.美味しい野菜(旬菜)が無くなるーPART7.「密集栽培の勧め」

ー露地栽培野菜の衰退―

農協指導書も含めて農業本には、「この野菜は点蒔き(あるいは筋蒔き)をしてある

程度成長したら、成長の遅い小さな苗を間引き、苗の間隔を10㎝程度に空けます」

などとあります。

これだと、間引き手間がかかり過ぎることと、個体の数量が著しく減り収量も上がら

ない。

しかも害虫が数少ない個体に群がりますので、害虫多発時季には3~4日毎に農薬を

散布しないと野菜は数日で網目状になります。さらに昨今の急激な気候変化に耐えら

れなくなった野菜は落ちていき。個体が減ってしまいます。

この方法だと均一な野菜とはなるが、収量は少なく不安定で農薬は多投せざるを得

ない。

そのため、気候の変化や害虫などによるリスク軽減のため野菜同士を競い合わせる

群体での密集栽培は有効なのです。

 

(葉野菜や根菜の栽培)

当農園の自然循環農業(高集約農業)では葉野菜や蕪類などをある程度の密集蒔きを

行い、小さな苗を間引くのでは無く、そのままの密集状態で育てて行きます。

密集植えされた野菜は競争し合って大きく育とうとしますし、害虫被害のリスクや厳

しい自然の淘汰のリスクも減ります。

不思議なことに間隔を開けてのびのびと育った野菜より、競り合って育った野菜は他

を押しのけようと根や葉を精一杯張りますから、たくましく強く育ちます。

成長したら、大きな野菜から収穫を始めます。すると、二番目に大きい野菜が育って

きます。それを繰り返しながら一つの畝で数回収穫を行います。つまり、大きい野菜

から順に間引いていくと言う感覚です。これを間引き出荷と称しており、収穫量は

3倍になります。

 

成長過程では雑草と野菜が密集してきます。野菜より雑草の勢いが強く、太陽の光が

当たり難く、風も通り難くなり、蒸れ易くなりますので、草取り作業は2~3回は行

います。

野菜がある程度大きく育ってきたら、今度は野菜が雑草の生長を防いでくれます。

高密度栽培は、季節によって種の播き方が変わります。湿気が多く蒸れの起こりやす

い時季は種を少なめに蒔き、共倒れを防ぎます。

(多くの農家は除草作業に大変な労力が掛かるため除草剤を使いますが、自然栽培

では当然に除草剤は使いません)

密集栽培の場合、まだ苗が幼い段階で一回目の草取りを行います。

苗が育ち大きく葉を拡げてきますと、その陰では雑草が育ちにくくなり、

手間も省けます。露地栽培の場合は、労力が掛かるためなるべく省力化・効率化

できる方法を考えていくことです。

 

(実物栽培)

実物野菜は虫害などがあっても生き残れるように、リスクヘッジとして自ら旺盛な

側枝・脇芽や葉っぱを茂らせます。これがやっかいであり、風が通らず、光も差さず

実付きも悪く害虫の温床となってしまいます。

そのため、茄子・トマトなどは旺盛に茂った枝が重なり合わないように芽掻きを行い

多すぎる葉を摘除し、枝を誘引し、風の途と光の途を作り風や光を入りやすくしてや

ります。するとミツバチも花を見つけやすくなり受粉が進みます。それは同時に害虫

の発生を抑えます。トマト・茄子などは出荷している間中、定期的に剪定誘引作業を

続けます。

トマトはある程度成長し始めたら勢いのある枝を3~4本残し、残った脇芽は掻き取

ります。この脇芽の掻き取り作業や旺盛な葉っぱの除去作業は延々と続きます。支柱

を添えて太陽に向けて南側に斜め50度に誘引していきます。(畝は当然に南北に切

ります)

農協の指導要領である一本立ちではせいぜい8~10段までしかトマトは成りませんが、この方法だと3~4本の枝に12~15段までトマトの実が付き、長さにして

3~5メートルまで枝を伸ばすことができます。

ただ、この剪定誘引作業は手間の塊となりますが、収量は少なくとも2倍以上になり

ます。

 

※実物野菜の先肥と追肥(後述)

 成りものの場合、先肥をしよく混ぜてから苗を定植します。低窒素な草木堆肥を

補います。

一番果が付き始めたら追肥を畝の側面に施肥します。

実物野菜は次々と実がなるにつれ、窒素不足に陥り、木が弱り次第に実が小さくなっ

てしまい、実付きも悪くなります。

 

茄子は根元近くに出た脇芽は掻き取り、地表から15センチのところから枝分かれ

してきます。その強い枝を伸ばしていくわけですが、これが本枝となります。

その枝にさらに側枝が付きます。本枝にも側枝にも花が付き実をならせます。

ちなみに側枝は実が生長したら側枝毎、摘除します。枝・葉っぱの密集を避けるため

です。

本枝は放射線状に数本伸ばしていき、太い支柱と黒テープに誘因していきます。

剪定作業は黄色くなった葉っぱや旺盛に茂った葉っぱを除去し続けます。伸ばす本枝

は勢いのある枝を4本程度選び、それにさらに枝が出てきます。その際、弱い枝も

除去していきます。この繰り返しですが、木に勢いがある限りは剪定作業は延々と続

きます。

ピーマン系(パプリカ・満願寺及び伏見とうがらしなど)は無数に枝が出てきます

ので、密集しないように適度に剪定し放射線状に広げて誘引していきます。

その際、折れたり裂けたりし易いため、強引な誘因はしません。その意味では剪定

誘引作業はトマトや茄子ほど面倒ではありません。ただ、細かく側枝が分岐してき

ますので、先端部分は時折弱い側枝を除去します。

露地栽培野菜の衰退ー「多品目栽培・高集約型農業」

2024.2.1(木)雨、最高温度10度、最低温度6度

 

                麦踏みの風景

 

(大量生産型粗放農業)―大規模機械化農業

アメリカ型の大規模農業の場合は、人の労力を抑えて大型機械を駆使して、広大な

農地を耕します。大規模農地では、多大な労力を使う除草作業や土を育てる堆肥を

撒くことは難しく、化学肥料や農薬、そして除草剤を使う粗放農業が適しており、

北海道や干拓地にはその粗放農業が行われております。

大豆・麦類・とうもろこし・じゃがいもなどの大量生産型の近代農業が発展してき

ました。

大量の除草剤を使うため、アメリカでは(除草剤でも死なない野菜)遺伝子組み換え

作物が普及しています。

農産物の品目は年間2~3種類程度の大量生産型の単作栽培が行われております。

広大な農地を大型機械を使って栽培する作物は量の確保や拡大が優先され、大量流通

に載せるために均一化された農産物が要求されます。これが粗放農業です。

反当収量は少ないですが生産規模が大きく大量生産が可能です。

そこでは農産物の安全性とか、栄養価とか、美味しさとかはあまり評価されません。

例えば、ジャガイモの種蒔き前に除草剤を使い、収穫直前にじゃがいもの茎や葉を

枯らすためにもう一度除草剤を使います。大型の収穫機械を使い易くするためです。

国土の狭い日本でも大概の穀類生産はこの粗放型農業を行っております。

これらのことはほとんどの消費者は知りませんし、知ろうともしません。

 

 

          草木堆肥歴18年の圃場(3番)

 

(多品目生産型高集約農業)―中山間地などの小規模農地

日本の国土は狭く、農地は一反(300坪)単位であちこちに点在しており、特に

中山間地を多く抱えた日本の農地には大規模(大型)機械化農業は効率が悪く不向き

です。

日本では古来から狭い農地を労力を掛けて多品目の野菜を年間3~4回転させる

高集約農業が行われてきました。反当収量は粗放型農業と比べて2~3倍と高いが

労力や手間が掛かります。

各農家は肥料や堆肥にも個性やこだわりがあり、土作りに力を入れて品質や美味しさ

を競い合う手作り感があり、美味しく高品質野菜でした。

戦後、日本では食糧増産を目的としてアメリカ型の近代農業(大規模機械化農業)が

奨励され、単作栽培へと移り、農協などを通して補助金漬け農業政策として推進され

ていましたが、農産物の内外価格差は埋まらず、農業離れは進み、急速に日本型の

多品目栽培・高集約型農業は衰退していきました。

 

※農産物の内外価格差問題

中山間地の多い日本の農地は狭く手間と労力が掛かります。そのため、農産物販売

価格は逆に3~4倍以上高くなり、特に穀類の内外価格差が大きくなり安価な海外産

と比べて競争力が乏しく、日本の農業が衰退した大きな要因ともなっています。

 

この農地は以前は放置された竹藪でした。3年を掛けて伐根から土作りを行い、よう

やく野菜を生産できるまでになりました。草木堆肥歴10年になろうかとしています。

多品種栽培を行っており、大きな家庭菜園と言う処でしょうか。

 

むかし野菜の邑は、破砕機・タイヤショベル・トラクターなどの近代機器は装備して

おりますが、まるで昔にタイムスリップしたかのような古き日本の多品目栽培・高集

約型農業のモデル農園とも言えます。年間100種類以上の品目を栽培し、畑は常に

年間3~4回転させます。

数倍の価格差がある安価な海外産の農産物や近代農業の慣行栽培野菜と対抗できない

とすれば、日本の農業は小さな農地でしかなし得ない労力と手間の掛かる品質や健全

さを追求した高品質野菜を生産し、安価な海外産の農産物に対抗しようとしています。

それを実現するためには、多品目生産に携わるグループ営農が必要となり、消費者と

直接向き合うことが必要となります。

 

次の項で述べますが、高品質野菜や穀類は必ず低窒素栽培に行き着きます。

高集約型農業だからといって有機肥料などを多投すると、化学肥料と同じく高窒素

土壌となり、土壌は汚れ、品質は落ちていきます。

草・藁・籾殻・葉っぱ・木屑などの炭素分の多い植物性有機物は土を育てていきま

すが、肥料は野菜を育てるが土は育ててはくれないのです。肥えた土は安定した収量

が確保できますし、反当収量は粗放農業の2倍以上となります。

慣行野菜栽培では反当年間売上800千円が精一杯ですが、5年以上土作りを行った

圃場では反当2,000千円以上の売上となり、20年を経過すると反当3,000

千円にもなります。

品質で勝負するとすれば、消費者の支持を得ることが重要になります。質で評価を

得たい農業者は流通を介すること無く消費者と直接やりとりができる直接販売方式が

適しているということになります。

消費者と直接向き合うためには品質志向の農業者は必ずマーケティング能力(販売

ターゲット戦略・商品開発能力・消費者とのコミュニケーション能力など)が必要

となってきます。これは別項で後述致します。

ー露地栽培野菜の衰退―

2024.1.13(土)晴れ、最高温度12度、最低温度2度

今年最初の草木堆肥作り、破砕作業と一緒に早朝から行いました。

スタッフ全員年末から年始に掛けて一年に一回の貴重な長期休暇の後でしたので、

皆、いささかお疲れ気味でした。農園にとっては無くては成らない草木堆肥です。

これから始めるのは新年の仕事始めにふさわしいのですね。

 

美味しい野菜(旬菜)が無くなるーPART5.「置き去りにされる露地栽培生産者達」

  

お客様へ直接販売する露地・自然栽培農家では、毎回同じ野菜を届けるわけにはいか

ないので一シーズンに40種類以上の野菜を育て、毎週いくつかのアイテムを変えな

がら15種類以上の野菜を定期的に届け続けねばならない。結果として年間百種類

以上の野菜を栽培するようになりました。

それに加えて露地栽培には端境期というものがある。ハウス(施設)栽培では加温

ハウスも含めて季節を調節できるが、露地栽培では季節に順な旬菜しか採れません。

植物の種子は元々それが生まれた地域に即した遺伝子を持ち、その野菜にあった気候

で育つものです。

さらに寒暖の差・雨・風・太陽などの自然に晒され、淘汰され生き残った植物だけが

成長します。ですから、季節に順な作物は美味しく栄養価もあるのです。

これが旬菜です。

ブロッコリーの定植

草木堆肥を振って耕し、畝立てを終えたら更に草木堆肥を先肥としてスコップ一杯分

施し、混ぜ合わせて定植を行う。窒素分が少ない欠点を先肥を使うことで補っている

のです。

収穫期間の長い野菜にのみ行う農法です。自然栽培には様々な創意工夫が必要です。

 

露地栽培には、その端境期と気候変動を凌ぎきるだけの栽培技術・知識経験とノウハ

ウが必要となり、10年20年と長い実践を積み重ねていかねば続けてはいけない

のです。

処が露地栽培・多品種栽培などの知識・ノウハウを持っていた農業者が居なくなって

います。

私が農業を始めた50代の頃には、農業を教わるお年寄りもいましたが、残念ながら

その農業者そのものが居なくなりました。

今は私がそれらの経験や知識を数少ない次世代の農業後継者に繋げるしか無い事に、

焦燥感さえ抱いております。

 

放棄されていた畑の再生

この畑は竹や蔓そして雑木が生い茂り荒れ地になっていました。4年前にスタッフ

総出で開墾して今は麦・大豆の穀類畑に変わっています。

年間2回草木堆肥を振って土作りの真っ最中です。野菜にはまだ適しません。

数年後には地力が上がり見事な野菜畑に変わっていくでしょう。

このようにして再生を果たした圃場が約1ヘクタール(3,000坪)あります。

 

欧州やアメリカでは国家が露地栽培農家を手厚く保護している。

例えば、一ヶ250円のキャベツを出荷すれば、露地栽培農業には同額の支援金を

受け取れますが、ハウス栽培には商業的施設栽培であると判断され補助金は出ません。

欧州においては国民の意識の中に、露地栽培農家が「食の確保と国土と自然環境を

維持保全してくれている」と言う考え方があり、当然だと認識されているからです。

果たして日本の国民にそのようなコンセンサスが得られるでしょうか・・・!

 

日本の場合は露地栽培には支援金はほぼ0ですが、ハウス栽培には規定の条件

(作物指定等)を満たせば、農協を通して30%前後の補助金が出る。施設には多額

の費用が掛かると言う理由のようです。

(ただ、この補助金には品目指定などのがんじがらめの制約が掛けられ、農家の自由

さは一切無く、市場環境の変化などにより当該品目に市場性が無くなった場合には、

作物変更は受け入れてもらえないためこの補助金を受けた農家は次第に追い込まれて

いくことになる)

中山間地を多く抱えている日本の農地は狭く生産効率が悪く手が掛かる。

農業離れが進み、地域から子供の声が消えており、膨大な水路や豊かさの象徴で

あった田園風景を維持する農業者が居なくなっている。

中山間地は荒れ果て、雑木が生い茂り鳥獣の住処となり二度と元に戻すことはでき

ないでしょう。

日本の食と国土を守ってきたのは、地域の農業者達でした。有史以来1,000

年以上の時を掛けて築き上げてきた農業用水路が消滅するのです。

世界が自国の食料確保に走る時、日本では食べるものはすべて海外から得られるこ

とになるのでしょうか?目前にその危機は迫っています。

それでも日本の政府は小規模農業を保護対象から切り離してしまっており、日本の

地域農業の消滅は時間の問題となっているのです。