2024.2.8(木)曇り、最高温度10度、最低温度4度
2.美味しい野菜(旬菜)が無くなるーPART7.「密集栽培の勧め」
ー露地栽培野菜の衰退―
農協指導書も含めて農業本には、「この野菜は点蒔き(あるいは筋蒔き)をしてある
程度成長したら、成長の遅い小さな苗を間引き、苗の間隔を10㎝程度に空けます」
などとあります。
これだと、間引き手間がかかり過ぎることと、個体の数量が著しく減り収量も上がら
ない。
しかも害虫が数少ない個体に群がりますので、害虫多発時季には3~4日毎に農薬を
散布しないと野菜は数日で網目状になります。さらに昨今の急激な気候変化に耐えら
れなくなった野菜は落ちていき。個体が減ってしまいます。
この方法だと均一な野菜とはなるが、収量は少なく不安定で農薬は多投せざるを得
ない。
そのため、気候の変化や害虫などによるリスク軽減のため野菜同士を競い合わせる
群体での密集栽培は有効なのです。
(葉野菜や根菜の栽培)
当農園の自然循環農業(高集約農業)では葉野菜や蕪類などをある程度の密集蒔きを
行い、小さな苗を間引くのでは無く、そのままの密集状態で育てて行きます。
密集植えされた野菜は競争し合って大きく育とうとしますし、害虫被害のリスクや厳
しい自然の淘汰のリスクも減ります。
不思議なことに間隔を開けてのびのびと育った野菜より、競り合って育った野菜は他
を押しのけようと根や葉を精一杯張りますから、たくましく強く育ちます。
成長したら、大きな野菜から収穫を始めます。すると、二番目に大きい野菜が育って
きます。それを繰り返しながら一つの畝で数回収穫を行います。つまり、大きい野菜
から順に間引いていくと言う感覚です。これを間引き出荷と称しており、収穫量は
3倍になります。
成長過程では雑草と野菜が密集してきます。野菜より雑草の勢いが強く、太陽の光が
当たり難く、風も通り難くなり、蒸れ易くなりますので、草取り作業は2~3回は行
います。
野菜がある程度大きく育ってきたら、今度は野菜が雑草の生長を防いでくれます。
高密度栽培は、季節によって種の播き方が変わります。湿気が多く蒸れの起こりやす
い時季は種を少なめに蒔き、共倒れを防ぎます。
(多くの農家は除草作業に大変な労力が掛かるため除草剤を使いますが、自然栽培
では当然に除草剤は使いません)
密集栽培の場合、まだ苗が幼い段階で一回目の草取りを行います。
苗が育ち大きく葉を拡げてきますと、その陰では雑草が育ちにくくなり、
手間も省けます。露地栽培の場合は、労力が掛かるためなるべく省力化・効率化
できる方法を考えていくことです。
(実物栽培)
実物野菜は虫害などがあっても生き残れるように、リスクヘッジとして自ら旺盛な
側枝・脇芽や葉っぱを茂らせます。これがやっかいであり、風が通らず、光も差さず
実付きも悪く害虫の温床となってしまいます。
そのため、茄子・トマトなどは旺盛に茂った枝が重なり合わないように芽掻きを行い
多すぎる葉を摘除し、枝を誘引し、風の途と光の途を作り風や光を入りやすくしてや
ります。するとミツバチも花を見つけやすくなり受粉が進みます。それは同時に害虫
の発生を抑えます。トマト・茄子などは出荷している間中、定期的に剪定誘引作業を
続けます。
トマトはある程度成長し始めたら勢いのある枝を3~4本残し、残った脇芽は掻き取
ります。この脇芽の掻き取り作業や旺盛な葉っぱの除去作業は延々と続きます。支柱
を添えて太陽に向けて南側に斜め50度に誘引していきます。(畝は当然に南北に切
ります)
農協の指導要領である一本立ちではせいぜい8~10段までしかトマトは成りませんが、この方法だと3~4本の枝に12~15段までトマトの実が付き、長さにして
3~5メートルまで枝を伸ばすことができます。
ただ、この剪定誘引作業は手間の塊となりますが、収量は少なくとも2倍以上になり
ます。
※実物野菜の先肥と追肥(後述)
成りものの場合、先肥をしよく混ぜてから苗を定植します。低窒素な草木堆肥を
補います。
一番果が付き始めたら追肥を畝の側面に施肥します。
実物野菜は次々と実がなるにつれ、窒素不足に陥り、木が弱り次第に実が小さくなっ
てしまい、実付きも悪くなります。
茄子は根元近くに出た脇芽は掻き取り、地表から15センチのところから枝分かれ
してきます。その強い枝を伸ばしていくわけですが、これが本枝となります。
その枝にさらに側枝が付きます。本枝にも側枝にも花が付き実をならせます。
ちなみに側枝は実が生長したら側枝毎、摘除します。枝・葉っぱの密集を避けるため
です。
本枝は放射線状に数本伸ばしていき、太い支柱と黒テープに誘因していきます。
剪定作業は黄色くなった葉っぱや旺盛に茂った葉っぱを除去し続けます。伸ばす本枝
は勢いのある枝を4本程度選び、それにさらに枝が出てきます。その際、弱い枝も
除去していきます。この繰り返しですが、木に勢いがある限りは剪定作業は延々と続
きます。
ピーマン系(パプリカ・満願寺及び伏見とうがらしなど)は無数に枝が出てきます
ので、密集しないように適度に剪定し放射線状に広げて誘引していきます。
その際、折れたり裂けたりし易いため、強引な誘因はしません。その意味では剪定
誘引作業はトマトや茄子ほど面倒ではありません。ただ、細かく側枝が分岐してき
ますので、先端部分は時折弱い側枝を除去します。