農園日誌ー社会的存在価値ーPARTⅦ-自然循環農法の実践

29.5.31(水曜日)曇り、最高温度28度、最低温度18度

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                          麦刈り

 一面、黄金色に染まった麦畑。
小麦と大麦を植えている。大麦はまだ刈り取るには早いかなと思ったが、来週から梅雨入りの匂いがしており、刈り取りを強行した。
案の定、乾燥機にかけたら、やたらと水分が多く、13%に乾燥するに丸二日はかかりそう。
ここ、庄内地区では麦を植えている処は殆ど無い。米作りですらようやっとと言う処。
老齢化が加速している。

 小麦は予想に反して期待していた収量の半分にも満たない。
逆に大麦は予想の倍の量となってしまった。穀類生産の経験の薄さがなせる仕業。
それでも、草木堆肥施肥による麦の生産をしている人は居ない。
小麦は予想を裏切る美味しさであったので、今年の大麦への期待は増すばかり。
未知の領域を知ることは楽しい。
この大麦は、一部は麦味噌の原料とするが、それでもやや多く、仲間達にお送りしてみようと思っている。
明日は、古代小麦の収穫をする予定であり、お米と大麦、そして古代小麦(一粒小麦
)のご飯などは如何だろうか?間違いなく健康食品にはなるのだが・・・

一部は煎り上げて、粉にしてみようとも思っている。果たしてどのような味になるのか?用途は如何に?

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この畑は、田北さんとの共同作業の圃場。
ラクターでの耕耘とコンバインは田北さんの領域。
我々は、それ以外の仕事を行う。

これも結いの仕組みの一環。
お米と違って麦はやはり手間ががかる。
増して、自然農となればなおさらである。


社会的存在価値―PARTⅦ-自然循環農法の実践       
 
§2.露地栽培
 現在、施設(ハウス)栽培が全盛期を迎えている。さらには、化学的な栽培方法を使って、水耕栽培(フィルム栽培)を大規模に行っている農業もある。
これだと、狭い空間で効率的な育苗管理が可能となり、野菜の生育スピードも露地栽培と比較して1/3となる。最もフィルム栽培では、全ての野菜と言う訳ではなく、主には葉物野菜・トマトなどが主力になっているようだ。
最近、露地栽培の野菜は、キャベツ・玉葱・じゃがいもなど、限られてきているようだ。
そのため、スーパーなどでは季節に関係なく様々な野菜が並び、旬菜は消滅している。
 
 例えば、冬に西瓜や瓜は食べたくない。本来ならば、夏野菜の代表であったトマトは今では、秋から冬にかけて店頭に並んでいる。夏場になると、ハウスではトマトの撤去作業が行われている。真に可笑しなことになってしまった。
そのため、野菜の価値というか評価はガラリ変わってしまっている。
夏に食べる鼻にツンと来る青臭くほのかに甘く香るトマトや胡瓜の味がしなくなっている。
市場では、只、甘さのみが求められている。
野菜は、その育つ季節が一番適しているからこそ、その野菜の美味しさや栄養価がある。種子が覚えているのですね。これが「旬」であり、自然に順な栽培が露地栽培である。

イメージ 3トマトの支柱

今年は、トマトの畝が14畝ある。
瑞英と言って酸味と甘みが応分にある品種。
酸味の無い桃太郎とは異なり、トマト本来の美味しさがある。
鼻に抜ける香と旨みが特徴
他にはフルーツトマトがある。

露地トマトの場合、風が吹き、雨が降る。重みで耐えられなくなり、様々に工夫してきて、今のこの組方が完成した。まだ3畝分しかできていない。

 露地栽培(旬菜)は、当然に自然の条件に左右され、手間がかかる上に、生産量にバラツキがあり、成長も遅い。露地栽培には常に大きな生産リスクが伴う。さらには、露地栽培には生産技術習得の難しさがある。
 
日本の気候が大きく変動してきている。ここ九州では亜熱帯地域になったかのように、梅雨時期は猛烈な雨が降り続き、梅雨が明けると今度は、まったく雨が降らない乾季へと移っていく。雨季と乾季の世界、まさに亜熱帯地域である。
そのため、雨季には畝を深く掘り下げ、野菜が水没しないように管理し、梅雨が明けると同時に、埋まってしまった畝下を掘り上げ(中耕作業)根に酸素を与え、弱ってきた夏野菜を復活させる。
場合によっては、苗そのものを掘り上げて、酸欠となった畝を耕耘し直し、
植え替えを図らねばならない。
乾季になると、軽四トラックにタンクを積んで毎日の水遣り作業を行う。ハウス栽培(施設栽培)のように、常設の冠水チューブを使えない。
自然の中での栽培であるため、野菜の状態を見誤ると、野菜は育たず、最悪、命を全うできない。
手間がかかること夥しい。労を惜しんでも、観察を怠っても、判断を誤っても、野菜は育たない。
 
 特に当農園では、草木堆肥という、低窒素堆肥のみの施肥を行っているため、野菜の成長は遅い。成長時期を逸すると、まともには育たない。
そのため、育てる野菜の特性に応じて堆肥の量を調整したり、草木灰苦土石灰の量を調整したり、また、難しいのが季節によって施肥量も異なる。
こうなると、本人の努力次第ではあるが、一通りのことを覚えるに2~3年、野菜の成長を見る目を養うのに4~5年、栽培計画や作業の段取りを仕切ることができるまでに最低7年の期間を要する。
さらに、出荷量の調整や管理ができるまでは、10年以上の年月を要する。
露地栽培の生産技術の習得には、長い経験と判断能力を要することになり、年月がかかる。
そうなると一人前の農人を育てるのに、つまりは、野菜とお話ができるようになるまでに、10~15年かかることになり、施設栽培のように、あるマニュアルで生産管理ができると言う訳にはいかない。
露地栽培は、生産リスクヘッジ・管理技術能力などの習得が大きな課題となっている。
 
ハウス栽培とは異なるが、黒マルチ(ビニールで畝を被覆する)栽培が極く一般的に行われている。びっくりするのは、自然農と謳っている農家ですら、黒マルチを使っているところもある。
これは除草の手間を省く目的と、地温を上げて野菜を早く大きく成長させるためでもある。
むかし野菜ではこれをしない。除草作業には大きな手間と時間を要する。
私は常々こう言っている。黒マルチでは科学的には呼吸をしているが、自然とは交流していない。

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未だ小さなピーマン系夏野菜達。

ピーマン・パプリカ・セニュリータ(ミニパプリカ)・万願寺トウガラシ・
伏見トウガラシなどが12畝植えられている。

5月の夏野菜植え込み本番の時季、雨が降らず、成長が止まったまま。

春野菜から夏野菜へ繋がねばならず、やきもきとさせられている。

 自然界では暑い太陽が照り付け、風邪が吹き、豪雨があり、乾季があり、寒暖の差に晒され、時には害虫の脅威に晒され、生き残った者のみが大人になる。
露地栽培の特性は、この自然界との交流があるからこそ、伸びたり竦んだりを繰り返し、逞しく、そして、美味しくなる。
 
当農園には、育苗ハウスはあるが、生育ハウスは無く、自然界の過酷な条件に遭遇するたびに、折れそうになる心を抑えて、敢えて露地栽培に固執している。
全ては美味しく、栄養価が高く、安心して食べられ、人を健康にするための野菜作りを目指しているからに他ならない。
真の旬菜は自然の力を受けて、様々な困難を克服して育ってくれる。故に、この時代だからこそ、貴重な野菜と言うことになる。